ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした

葛西さんとお母さん2 side葛西

side葛西

午前のうちに移動を開始して沙織ちゃんのお母さん…智代子さんがいると言う居酒屋に着いたのは午後4時だった。


＿ガララッ…

居酒屋ぽい音がする入り口を開くと「いらっしゃいませー！」と居酒屋のノリで声が飛んでくる。


…正直 一人で居酒屋へ入るなんて嫌だった。

「いらっしゃいませー。…一名様ですか？」

バイトらしき女の子が気まずそうに一名様かと聞いて来て余計気分が沈む。


「こちらに奥崎 智代子さんという方がいらっしゃると思うんですが、今日は出勤してますか？」

そう聞くと、彼女の後ろで食事を運んでいた男性が飛んできて「なにか？」と睨みをきかせてきた。


…事情を知っている方だろう。

「突然すいません。智代子さんの娘さんについてお話があるんですが」

あの店の名刺では無く、春憂の経営している別のバーの名刺を出してその男性に声をかける。

彼は最初に出てきた女の子に「これ3番席に」と言ってお盆をバトンタッチして「奥へどうぞ」と通してくれた。



「借金取りの方ですか」


その言葉に「違いますが、一応繋がりはあります」と返す。


「彼女に危険が及ぶなら彼女には会わせられません。」

一番奥の個室で彼はそう言った。
…仲のいい友達の家で暮らしているはずだったが、彼氏だろうか？

「借金は今娘さんを預かっている方が全部返済しました。
娘さんの今後について直接お話したいのですが」

そういうと、彼は「は？」というように口をあんぐりと開けた。

「沙織ちゃんを預かって人質ということですか？」

その言葉に「違いますが、信じ難いのはわかります」と返す。



「…あなたは智代子さんの恋人とかでしょうか？」


そう聞くと男性は横に首を振って「幼馴染で、今 智代子を預かっている友人の旦那です」と返す。


それもすぐ信じれるかというとNOだったが「そうですか」と笑顔を返して「智代子さんはげんきですか」と問う。

彼は小さく頷いて「少しお待ちください」と言って部屋を出て行った。