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葛西さんとお母さん3 side智代子
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side智代子
「智代子」
厨房で調理をしていると、大間くんに名前を呼ばれた。
大間くんとは小学生のころまでの幼馴染で、高校で親友になり今もお世話になっている美羽の旦那さんだった。
「どうしたの?」
エプロンで軽く手を拭いて彼の元へ駆け寄ると、彼はこそっと耳に口元に手を当てて話した。
「今、智代子にお客さんがきてる。一応名刺は貰ったけど、沙織ちゃんを預かってるとかなんとか…」
…沙織?
「沙織ちゃんのこと置いてきたって言ったよね?ってことは沙織ちゃんを預かってるイコール借金取りとかかもしれないんだけど…」
置いてきた…
その言葉に心臓がぐっと痛くなって、家を出る瞬間の殺風景な部屋が頭に浮かんだ。
「…どうしよう…」
今 働いて収入の目処はついている。
沙織のことも本当に悪いと思っているし、沙織が怒っていなければちゃんともう一度親子で暮らしたい。
…ただ今ここでこの場所を知られ、今住んでいる美羽の家を知られるとまた仕事も辞めなきゃいけなくなり美羽にまで迷惑がかかる。
…それに、何されるかわからないのが一番怖い。
「怖い?」
彼の優しい声に小さく頷く。
「けど、置いていかれた沙織ちゃんはもっと怖かったんだよ。」
その言葉に自然と涙が溢れる。
「ごめん、智代子さん休憩入ります」
彼は厨房スタッフにそう言って「かしこまりましたー」と返事が聞こえる。
「…会わなくていい。隣の部屋から聞いていて」
彼に肩を押されて私はその方の元へ足を向けた。
「智代子」
厨房で調理をしていると、大間くんに名前を呼ばれた。
大間くんとは小学生のころまでの幼馴染で、高校で親友になり今もお世話になっている美羽の旦那さんだった。
「どうしたの?」
エプロンで軽く手を拭いて彼の元へ駆け寄ると、彼はこそっと耳に口元に手を当てて話した。
「今、智代子にお客さんがきてる。一応名刺は貰ったけど、沙織ちゃんを預かってるとかなんとか…」
…沙織?
「沙織ちゃんのこと置いてきたって言ったよね?ってことは沙織ちゃんを預かってるイコール借金取りとかかもしれないんだけど…」
置いてきた…
その言葉に心臓がぐっと痛くなって、家を出る瞬間の殺風景な部屋が頭に浮かんだ。
「…どうしよう…」
今 働いて収入の目処はついている。
沙織のことも本当に悪いと思っているし、沙織が怒っていなければちゃんともう一度親子で暮らしたい。
…ただ今ここでこの場所を知られ、今住んでいる美羽の家を知られるとまた仕事も辞めなきゃいけなくなり美羽にまで迷惑がかかる。
…それに、何されるかわからないのが一番怖い。
「怖い?」
彼の優しい声に小さく頷く。
「けど、置いていかれた沙織ちゃんはもっと怖かったんだよ。」
その言葉に自然と涙が溢れる。
「ごめん、智代子さん休憩入ります」
彼は厨房スタッフにそう言って「かしこまりましたー」と返事が聞こえる。
「…会わなくていい。隣の部屋から聞いていて」
彼に肩を押されて私はその方の元へ足を向けた。
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