逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!

花宵

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第18話 ターゲットその2、ローレンツ公爵家のレオンハルトを駆逐せよ!

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 辛い侍従訓練を経て、何とか俺は正式にテオドール公爵令嬢エレインの侍従だと認められた。
 まぁ学園内ではエミリオ付きの侍従という事になっているが。
 エミリオの復学はもう少しかかるようだが、渾身的なサンドリア様の支えでリハビリは順調に進んでいるらしい。

 あの一件以降、サンドリア様のはからいでティアナはプリムローズ侯爵家の後見を得た。
 それにより以前より女子からの風当たりは弱まったようだが、全てが無くなったわけではない。
 サンドリア様とはクラスが離れているようで、目の行き届かない所で小さな嫌がらせは続行中だそうだ。
 同じクラスだというレオンハルトを次のターゲットにしたい所だが、噂を聞く限り正義感も強く周囲からの信頼も厚い。
 放課後、エレインの雑用を手伝いながらピースケでレオンハルトの尾行をしているものの、何も粗が見つからないのが現状だった。
 そのくせチラチラとピースケの方を見るから、怪しまれているんじゃないかと不安になり長時間の尾行も難しい。

「ねぇ、ルーカス。聞いてる? そこのハーブに水をあげて」
「はい、かしこまりました」
「それ、ラベンダーだよ」
「す、すみません……」
「それはカモミール。さっきから君、全然集中してない。そんなにティアナの事が気になる?」
「それは……」
「サンドリアが後見についたんだ。風当たりは柔らかくなったと思うけど」
「そうですね……その節は、本当にありがとうございました」

 エレインとサンドリア様がティアナの味方についてくれたのは、平民の俺達にとってはかなりありがたい事だった。
 それでも、ティアナの周りに纏わりつく残り三人のエリート達をどうにかしないと根本的な解決にはならない。
 ゲルマンの情報も役に立たなかったし、何か糸口が掴めるとすれば……目の前に居るじゃないか。

「あの、エレイン様」

 温室の水やりを終えて研究室に戻ってきた所で、俺はエレインに呼びかけた。

「何?」
「レオンハルト様ってどんなお方ですか?」

 北と南の公爵家と王家は親戚だって言ってたし、エレインなら何か有意義な情報を持ってるに違いない。

「僕が無料で教えてあげると思ってる?」
「いえ、全く」

 ですよね。そう簡単には教えてくれませんよね。この食えない腹黒ご主人様は。

「美味しいザッハトルテが食べたいな」
「…………買ってきましょうか?」
「作って」
「……はい?」
「君の創造魔法で作ってよ」
「まじですか……」

 食べ物なんて作ったことないんだが。それ以前に魔法で創った物が食えるのか?

「だって君の魔法、童話『森の守り人』に出てくる王子と同じ魔法でしょ? ご馳走を創造魔法で創った描写あるし、みんな美味しそうに食べてたじゃない。出来るでしょ?」

 童話と現実を一緒にしないで欲しいんだが。

「食べ物を創る魔法を試したことがないので、出来るかどうかは分かりません」
「じゃあ出来るようになったら、レオンのこと教えてあげる」
「頑張ります! あの、ところでエレイン様……」
「何?」
「ザッハトルテとはどのようなお菓子なのでしょうか?」
「知らないで買ってくるつもりだったわけ?!」
「お店の人に聞けば分かるかなと……」

 仕方ないだろ!
 庶民の俺が、お貴族様御用達の高級菓子食べる機会なんてないんだから!

「ザッハトルテというのはね……」

 自信満々にホワイトボードに絵を描いてくれたけど、全然分かんねぇ。

「あの、エレイン様……それって木炭か何かですか?」
「ザッハトルテだよ! 周りをこう綺麗にチョコレートでコーティングしてあるんだ。僕が食べたいのは世に出回っている偽物じゃなくて、『スイーツの聖地』ガルシア公国の最高権力者である製菓長のみが引き継ぐといわれる本家秘伝のレシピで作られたザッハトルテ」

 何その本家秘伝のレシピで作られたザッハトルテって。希少価値高くて絶対手に入らない奴じゃん。いいじゃん普通ので。
 しかもガルシア公国って、エルグランド王国の南方にある属領の島国だ。船乗らないと行けない所じゃん。生まれてこの方船とか乗った事ないんだけど。ていうか俺に頼むよりも――

「ヘンリエッタ様に頼まれた方が早いのでは?」

 相手は公国の公女様とはいえ、エレインも高位貴族なんだから学年違っても繋がりくらいあるだろ?
 俺の調べた情報によると、レオンハルトの婚約者、ヘンリエッタ・ガルシアはガルシア公国の第二公女様だ。
 一年A組のリーダーで、姫として大事に守られ傍らにはいつも騎士や侍女のようなクラスメイトが多数居る。
 あまりにもガードが固すぎて、誰もが知ってるような情報しか掴めなかった。

「今の僕は兄様の代理だから、この姿で普通にヘンリエッタと話せるわけないじゃない」

 確かにそれも一理ある。

「それにガルシア公国はエルグランド王国の属領ではあるけど、あそこにはかなり独自の文化があるんだ」
「それが何か……?」
「僕が正規の手続きを踏んでヘンリエッタの生家、シュガーナイト城に招き入れてもらうのは色々と面倒臭いんだよ!」

 なるほど、それが本音か。

「ヘンリエッタと仲良くなればレオンの事も分かってくると思うし、悪い話じゃないでしょ? それにルーカスが作れるようになれば、僕はいつでも好きな時間に、誰の目も気にする事なく、あのザッハトルテが食べれるようになるんだ」

 キラキラと瞳を輝かせるエレインを横目に、「俺の目を気にしろよ、太るぞ」と心の中でそっと悪態をつく。
 半分くらいはエレインの私欲のためって感じもするが、打開策がない今レオンハルトを見張り続けるよりは、婚約者のヘンリエッタと接触を図るのも悪くないだろう。だが問題は……

「クラスも違いますし、平民の俺がヘンリエッタ様と話す機会なんて持てないと思うのですが……」
「もうすぐ新入生歓迎オリエンテーションがあるでしょ。一年生は強制参加だから、上手くいけばチャンスはあるよ」

 なるほど。それを見込んでのわがまま発動というわけか。
 とりあえず今は、レオンハルトの情報が欲しい。
 誰もが知っている上辺の情報じゃなくて、口外しちゃいけないようなディープな秘密を。

「分かりました」
「じゃあ、一週間以内によろしく」

 無理だろ!

 と、声を大にして主張したいが、『テオドール公爵家の名の下に、妥協は許されないよ』という言葉が返ってくるのが目に見えている。

「かしこまりました。善処します」

 結局、どんな無茶ぶりにも何としてでも応えるしかないのが現状だった。

「進捗状況を確認したいから試しに今、何か食べ物を作ってみてよ」
「構いませんが……あまり、期待はしないで下さいよ?」

 俺は昼に食べたミックスサンドを思い浮かべた。生ハムにマスタードをかけて、トマトとチーズ、シャキシャキのレタスが挟んであるボリュームのあったサンドイッチ。ついでに乗っていた皿も。それらを思い浮かべて創造魔法を発動した。

「見た目は完璧だね。でも問題は味かな。食べてみて」

 恐る恐る口に運んで嚙むと、柔らかなパンとシャキシャキのレタスの感触がした。けれど、何の味もしない。

「何の味もしません」
「きちんと味を思い浮かべて創った?」
「いいえ……」

 だって味なんか覚えてねぇよ。
 さぁ食おうって時に! 貴女様に呼び出しくらって、水で流し込んで味わう暇なかったし!

「三日以内に、何とかして」
「出来なければ……?」
「罰ゲーム」
「かしこまりました。善処します」

 いちいちスパルタすぎるよ、テオドール公爵家! だが、やるしかない。
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