その気が全くなかったがいつの間にかハーレム王と呼ばれてしまう 〜約束の赤い糸〜

第5話 愛のバカンス

リゾートは危険がいっぱい その二

「こちらの船であの島へ渡りますの。足元に気をつけて乗船して下さいね。それと、ポンコツアイドルには、木製の筏を用意しておりますゆえ、そちらで島までお越し下さい」
「ポンコツじゃないわよっ！それより、筏ってどういう事よ。私だけ扱いが雑過ぎない？なおや～、そこの恐ろしい魔女がいたいけな美少女をいじめてくるよぉ」

　葵は甘える様に直哉に助けを求めたのだ。直哉が葵の頭を撫でながらなだめていると、大きなため息をついた沙織が冗談だと明かしたのだ。

　船は直哉達を乗せると、静かな海を切り裂く様に島へ向けて進んでいた。ウミネコが上空を旋回し、時たま水しぶきが船内に侵入してくる。

　夏の日差しが直哉達を照りつける中、船は無事に島へと到着した。

「やっと着いたよぉ～。ん～、空気が美味しいよねぇ～。亜子も早く降りなよ～、気持ちいいからぁ～」
「全くもう、優子ったら子どもみたいにはしゃいじゃって」
「はしゃぎたくなる気持ち分かりますよ。海がこんなに綺麗だなんて･･････初めて見ました」

「ここで写真撮ったら、私の人気がまた上がってしまうわね。でも、直哉安心してね。私の心は貴方だけの物よ」
「南雲様はここが気に入りましたのね。そうですわ、今度はアイドル無人島生活一年とか企画したら面白そうね」
「沙織･･････冗談よね？本気じゃないよね？冗談っていっよぉ～」

　妹をからかう様に笑う沙織の姿は、以前の葵との関係が少し良くなったと直哉の目には映ったのだ。今日からここで過ごす二泊三日は、きっと忘れられない思い出の一ページになるであろう。

　荷物を降ろした直哉達は、舗装された道を歩いて別荘へ向かった。船着場から別荘まではほんの数分で到着し、すぐ目の前には白い砂浜が直哉達を誘惑する様に広がっていた。

「大きな別荘だよねぇ。こんな所に泊まれるなんて夢みたい」
「ふふふ、中は涼しくなっておりますので、中に入ってから部屋割りとか決めましょう。くれぐも、悪巧みをしないように」
「やだなぁ、そんな悪巧みなんて、私がする訳ないじゃない。直哉もそう思うよね？」

「わたくしは南雲様とは言っておりませんわ。それとも、何か心当たりでもあるのかしらね」
「沙織さん、楽しそうに葵さんをからかってますよね。まるで本当の姉妹見たいに見えますよ」
「姉妹でしたら･･････もっと遠慮はしませんわ」

沙織が別荘の鍵を開けながら直哉に答えると、葵は顔を膨らませ少し拗ねた素振りを見せていた。