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第19話 根回しほど重要なものはないですわ その1
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ここが運命の分かれ道。
ボロを出さないよう細心の注意が必要となる。
正解は一本しかなく、絶対に間違えられない。
道は複雑に入り組んでいるも、レーナは自分が正しい道を選べると信じていた。
「レオ国王、わたくし、民衆の気持ちを理解したいと思いますの」
「おおー、それはいいと思うぞ。やはり民衆あっての国だからな」
「つきましては、しばらくの間、街を見て回りたいのですがよろしいでしょうか?」
美しすぎる声だけで魅了されるレオ。
寂しさが心に刻まれるも、レーナを縛れば嫌われる可能性がある。そう思うと許すしか選択肢はない。
たった数日という短い時間を耐えればいいだけ。
悲しみを押し殺し、レオは笑顔でレーナを送り出した。
婚約者として街を歩くのは初めて。
パレードで見た風景とは違い全てが新鮮に感じる。
それは復讐を忘れるほどで、心からの笑顔が表に出ていた。
「楽しむのもいいんですけど、目的を忘れてはいけませんわ。さてと、わたくしへの支持を集めませんとね」
浮かれている場合ではない。民衆を手懐けなければならないからだ。
貴族のように傲慢な態度ではダメ。
あくまでも、民衆に寄り添う優しい貴族を演じる必要がある。
そう、気持ちさえ寄り添えれば、あとは美貌で全てが上手くいくはず。
自信しか湧き上がらず、レーナは止めていた歩みを動かし始めた。
最初に訪れたのは拠点とすべき宿。
それも贅沢なところではなく、いかにも庶民的な外観である。
「ここにしますか。ちょうどよさげな雰囲気ですし、それに──わたくしのイメージを上げるのに打って付けね」
当然ながら公爵家の者が泊まるような宿ではない。
しかも今は国王の婚約者という立場。
普通なら貸し切るのが一般的であるが、レーナは敢えてそれをせず、庶民の目線に合わせる事を選んだ。
全ては復讐のためだけに──それが全てであり、プライドなど些細な問題にしかなかった。
「ごめんくださいな。しばらくこの宿に泊まりたいんですけれど」
宿の中は趣がある作りで、悪く言えば古くさい。
おそらく庶民ですら泊まるのに躊躇するであろう。
だがレーナの中には迷いなど一切なかった。
「あいよー、ちょっと待ってねー」
奥から出てきたのは中年の女性。
親しみやすそうな雰囲気で、噂話が好きそうに見える。
まさに好都合──ここで自分の株を上げて広めて貰えればいい。
心の中で笑みを浮かべ、レーナは優しい声で返事をした。
「忙しいところ申し訳ありません。お部屋は空いていますでしょうか?」
「えっ……。れ、レーナ様!? 部屋は空いてますが、こんなところでよろしいのでしょうか?」
「わたくしはこの宿がいいのです」
全く笑顔を崩さないレーナに、宿の女将は何が起きたのか理解できずにいた。どうしてこの宿が──貴族が泊まるとは考えておらず、頭の中は真っ白となる。
「大丈夫ですか? もしかして、わたくしは泊まってはダメなのかしら」
「そ、そんな事はありません。お部屋に案内いたしますね」
女将の時間を動かすレーナの優しい声。
いまだに混乱しているが、丁寧な対応でレーナを部屋へ案内した。
ボロを出さないよう細心の注意が必要となる。
正解は一本しかなく、絶対に間違えられない。
道は複雑に入り組んでいるも、レーナは自分が正しい道を選べると信じていた。
「レオ国王、わたくし、民衆の気持ちを理解したいと思いますの」
「おおー、それはいいと思うぞ。やはり民衆あっての国だからな」
「つきましては、しばらくの間、街を見て回りたいのですがよろしいでしょうか?」
美しすぎる声だけで魅了されるレオ。
寂しさが心に刻まれるも、レーナを縛れば嫌われる可能性がある。そう思うと許すしか選択肢はない。
たった数日という短い時間を耐えればいいだけ。
悲しみを押し殺し、レオは笑顔でレーナを送り出した。
婚約者として街を歩くのは初めて。
パレードで見た風景とは違い全てが新鮮に感じる。
それは復讐を忘れるほどで、心からの笑顔が表に出ていた。
「楽しむのもいいんですけど、目的を忘れてはいけませんわ。さてと、わたくしへの支持を集めませんとね」
浮かれている場合ではない。民衆を手懐けなければならないからだ。
貴族のように傲慢な態度ではダメ。
あくまでも、民衆に寄り添う優しい貴族を演じる必要がある。
そう、気持ちさえ寄り添えれば、あとは美貌で全てが上手くいくはず。
自信しか湧き上がらず、レーナは止めていた歩みを動かし始めた。
最初に訪れたのは拠点とすべき宿。
それも贅沢なところではなく、いかにも庶民的な外観である。
「ここにしますか。ちょうどよさげな雰囲気ですし、それに──わたくしのイメージを上げるのに打って付けね」
当然ながら公爵家の者が泊まるような宿ではない。
しかも今は国王の婚約者という立場。
普通なら貸し切るのが一般的であるが、レーナは敢えてそれをせず、庶民の目線に合わせる事を選んだ。
全ては復讐のためだけに──それが全てであり、プライドなど些細な問題にしかなかった。
「ごめんくださいな。しばらくこの宿に泊まりたいんですけれど」
宿の中は趣がある作りで、悪く言えば古くさい。
おそらく庶民ですら泊まるのに躊躇するであろう。
だがレーナの中には迷いなど一切なかった。
「あいよー、ちょっと待ってねー」
奥から出てきたのは中年の女性。
親しみやすそうな雰囲気で、噂話が好きそうに見える。
まさに好都合──ここで自分の株を上げて広めて貰えればいい。
心の中で笑みを浮かべ、レーナは優しい声で返事をした。
「忙しいところ申し訳ありません。お部屋は空いていますでしょうか?」
「えっ……。れ、レーナ様!? 部屋は空いてますが、こんなところでよろしいのでしょうか?」
「わたくしはこの宿がいいのです」
全く笑顔を崩さないレーナに、宿の女将は何が起きたのか理解できずにいた。どうしてこの宿が──貴族が泊まるとは考えておらず、頭の中は真っ白となる。
「大丈夫ですか? もしかして、わたくしは泊まってはダメなのかしら」
「そ、そんな事はありません。お部屋に案内いたしますね」
女将の時間を動かすレーナの優しい声。
いまだに混乱しているが、丁寧な対応でレーナを部屋へ案内した。
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