明日の君は俺を知らない。

マジ卍

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翌朝。目を覚ました蓮は、胸に重くのしかかる違和感を感じた。

 布団のぬくもりは残っている。けれど、隣にいるはずの悠人の気配がなかった。
 隣に寝ていたはずの人間が、そこにはいない。それだけで、心の奥に冷たい不安が差し込んだ。

 「……悠人?」

 寝室から出て、リビングへと向かった瞬間、蓮の目に飛び込んできた光景に、呼吸が止まった。

 部屋が、荒らされていた。

 倒れた本棚。ひび割れたテレビ。床に散らばる紙とガラスの破片。
 無惨に壊された日常が、そこにあった。

 「な、に……これ……」

 震える声でつぶやきながら、蓮は恐る恐る室内を歩く。
 キッチンも、洗面所も、すべてがバラバラに荒らされていた。
 悠人の部屋に入ると、そこは……空だった。

 彼の服も、スマホも、財布も、そして大切にしていたギターさえも消えていた。

 まるで、最初から存在していなかったみたいに。



 その後、警察が来た。
 部屋の状況を見て、彼らは「空き巣の可能性が高い」と言った。だが、それ以上のことは何もわからなかった。

 「一緒に住んでいた人の情報を教えていただけますか?」

 そう聞かれて、蓮は口を開いた。けれど、警察の表情は曇ったままだった。

 「悠人……です。悠人って名前で、一緒に住んでて……」

 「すみません。そのお名前、こちらの記録には一切ありません」

 ——嘘だ。

 だって、昨日まで隣にいた。毎朝コーヒーを入れてくれた。寝る前には、欠かさず「おやすみ」って言ってくれた。

 そのすべてが、「記録にない」の一言で消されてしまった。



 警察が帰ったあと、呆然としたままリビングに座り込んだ蓮は、ふとソファの隙間に紙のようなものが挟まっているのに気づいた。

 それは、小さく折りたたまれた手紙だった。

 泥がついて、文字が滲んでいる。
 でも、蓮にはその字が誰のものか、すぐにわかった。

 それは、悠人の筆跡だった。

 > 俺がいなくても、お前はきっと生きていける。
 > でも、俺は……たぶん、無理なんだ。
 >
 > ごめんな。蓮が泣いてる顔、俺は見たくないんだ。
 >
 > だから、笑っててくれよ。……じゃあな。

 手紙を読み終えたとき、蓮の視界は滲んでいた。
 声も出せずに、ただ、涙だけが頬をつたって落ちていく。

 「……バカ……なんでそんなこと……っ」

 蓮は、その紙を胸に抱きしめて泣いた。
 誰にも届かない声で、何度も、何度も名前を呼びながら。
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