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本編 燦聖教編
これって?!嫌がらせとしか……
しおりを挟む少し早起きしてパールを起こし、コンちゃんを連れて異空間を出ようとしたら……背後からついてくる足音が。
『主~!また我を置いて何処に行くのだ。コンちゃんだけ一緒とかズルいのだ!』
『そうだぜ!俺様を置いて行くとは良い度胸だな?』
銀太の頭にスバルが乗りドタバタと後を追いかけて来た様だ。
はぁーっ……銀太やスバルが一緒だと絶対に大騒ぎになるから置いて行きたかったのに……。
「ん?」
などと考えてたら遠方から慣れ親しんだ軽快なリズムが流れてきた。
ジャイ♪ジャイ♪ジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
やばい!ハクとロウまで踊りながらやって来た!
「銀太!スバル分かったよ!だが絶対に大人しくしてると約束してくれよ? それなら一緒に連れて行く」
『そんなの当たり前なのだ!』
『任せとけ!』
二匹から言質はとった!俺はドタバタと大慌てで扉をぬけると、急いで扉を閉めた。
ハクとロウよ。すまん。これ以上の騒がしメンバーを連れて行くのは無理だ。
異空間から宿屋の部屋出ると、外に出る扉がドンドンと激しく叩かれていた。
何か叫んでいる声も聞こえる。
あー……そう言えば昨日、燦聖教の奴が宿屋に迎えに来るって言ってたな。
そんなに激しくドアを叩かなくても良いだろ?出ます出ますよ!
急いで扉を開けると燦聖教の下っ端達が迎えに来ていた。
「ったく!何回叩けば良いんですか?何故か扉は開きませんし……さぁ!闘技場まで急いで迎いますよ!」
迎えに来た男達は部屋の扉が開かずイライラしてたみたいだ。
そんなの知らないよ。何時に迎えに来るとか言ってなかったくせに。頭ごなしにキレるとかおかしくないか?
まぁ俺からしたら、闘技場での闘い自体が一番おかしな出来事だけどな?
燦聖教に見られる前に、スバルは可愛いミニスバルの姿に、銀太は獣人の姿に変身してもらった。
フェンリルとグリフォンを連れてるとか、目立つ以前の問題だ。
燦聖教の男に連れられ闘技場まで歩いて行くと、着くなり、「この部屋で始まるまで待機して下さいね」と机と椅子しか無い狭い部屋に押し込められた。
そして思い出したかのように紙を机の上に置いた。
「これが本日のメインイベントのトーナメント表です。目を通しといて下さいね」
燦聖教下っ端の男は不敵に笑うと部屋を出て行った。
「それを見せるのじゃ!」
パールが机に置かれたトーナメント表とやらを真剣に見入る。
「……なんじゃこのティーゴにだけ理不尽な闘いは」
「え?俺だけ?」
パールに言われ俺もトーナメント表を見ると書かれていたのは。
①ティーゴvs賢者レント
②ティーゴvs剣聖タケシ
③ティーゴvs勇者ヒイロ
はっ?何で俺だけ出突っ張りなんだ?!
連続で闘うとか聞いてねーし!
あの中の誰か一人と闘うんじゃねーの?
全員と闘うとか!勘弁してくれ。
「まぁ……あんな弱いやつらイチコロじゃ!ティーゴの強さをしらしめるのじゃ」
パールは興奮気味に俺の強さとか言ってるけど、三人連続で勝てるのか?
一人悶々としてる内に扉が開き第一試合が始まると、燦聖教の男が呼びにきた。
案内された待機場所で一人静かに座っていると、興奮気味のパールが走って来た。
いつの間にか姿を消していたパール。
何処に行ったのかと心配していた所だった。
「ティーゴにワシは金貨千枚かけたのじゃ!頑張るのじゃぞ?」
「はぁ?きっ……金貨千枚って!?パール桁がおかしい!」
「クククッ……オッズがのうティーゴが八十、相手が二じゃ……かてば金貨八億枚じゃ!」
パールが不敵な笑みで笑った。
金貨八億枚って……もう俺には数字が理解不能なんだけど。
とにかく勝たないと金貨千枚が無くなるんだよな!それだけは絶対に阻止しないと!
試合が近くなると、燦聖教の男が高貴なるオソロなどの身につけていたアイテムを、預かるから寄越せと言って来た。
闘技場では魔道具などは何も付けずに闘うらしい。
高貴なるオソロを燦聖教に預けるのは嫌なのでパールに渡そうかと見ると。
「大丈夫じゃ。アレはティーゴ以外は付けることが出来ない様になっておる。渡してもどうにも出来んよ」
パールが大丈夫だと言ってくれたので、嫌だが渡すことにした。
後でちゃんと返してもらうからな!
「ではワシらは二階にある応援席で試合を見てるからの!」
パールはスバルと銀太を連れてニ階席へと移動した。
コンちゃんだけは何故か俺の横に居て良いと燦聖教の男が言って来た。
何かありそうで気味が悪いけど、側にコンちゃんが居てくれるだけで少し緊張が和らぐのでありがたかった。
『主殿!無理しないで欲しいのじゃ!何かあったら妾が絶対に助けるから!』
コンちゃんが心配そうに舞台袖に立ち励ましてくれる。
「任せて!俺だって意外と強いって所をみせてやるよ!」
俺は胸を力強く叩くと、やるぞーっと鼓舞した。
『さすがは主殿なのじゃ!』
コンちゃんが尻尾をぎゅっと握りしめキラキラした目で俺を見つめた。何だその可愛い顔は!
コンちゃんの為にも意地でも勝たないとな。
よし舞台に歩いて行くか!
俺は正方形の形をした。闘技場の舞台に立った。
目の前には異世界人のレントとかいう奴が俺を睨み殺気を放ち立っているのだが、何も怖さを感じなかった。
んん?もしかしてこいつ、そんなに強くないんじゃ……。
ピィィーーーーーーーーーッ!
少し疑問に思い首を傾げて見ていたら、始まりの合図が鳴った。
始まった以上弱くても勝たせてもらう。なんせ金貨一千枚がかかってるからな!
レントとか言う男は始まるや否や、ぶつぶつと一人何か呪文を唱えている。
その姿は、はっきり言って無防備だ。
これって……攻撃していいのかな?俺は低ランク魔法サンダーを放ってみた。
「いててっ!いきなり何するんだよ!せっかく今お前が腰を抜かすくらい驚く高ランク魔法の詠唱を唱えてたのに!」
魔法は簡単に命中し、髪がチリチリになったレントが詠唱を言い終わるまで待てと文句を言って来た。
イヤイヤこれって闘いだろ?何でわざわざ待たないとダメなんだよ。
こいつ本当に賢者か?
もしかして……もの凄く弱いんじゃ。
この時ティーゴは大事な事を忘れていた。
全ての魔法は詠唱が必要だと。
無詠唱で魔法を放つなど普通は到底無理な事なのだと。
無詠唱で魔法をバンバン使う聖獣やパール達と一緒に居すぎて忘れていたのだ。
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