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本編 浮島編
レミアール王との謁見
しおりを挟む「で? 何処におるんじゃ?」
偉大なる大賢者カスパール姿をしたパールが、ワッキヤクの首根っこを無造作に掴むと、ふわりと再び浮き上がる。
「ひゃああっ」
突然体が空中に浮き、驚き声を荒らげるワッキヤク、それを見たパールが眉間に皺を寄せ、少し鬱陶しそうに見つめる。
「うるさいのう? これぐらいで変な声を出すでない」
パールはワッキヤクを掴んだまま、どんどん空高くに舞い上がる
。
「さて、王はどの建物におるんじゃ?」
「あっあわっ……」
恐怖のあまり今にも気絶しそうなワッキヤク。だがそれをパールが許してくれるはずも無く、白目を向くワッキヤクを揺さぶり起こし案内させる。
「ヒィァァァァァ! いいっ言いますからっ揺らさないで下さいっ」
気絶しそうな恐怖をどうにか堪え、ワッキヤクは王が住まう建物を指さした。
「あの一番西にある、細く尖った建物が王城になります」
その建物は、とてもじゃないが王城と思えない歪な形をした作りをしていた。
筒状に細長くその周りを魔導兵器がぐるりと囲み、屋根の先端は剣先の如く鋭利に尖っていて、まるで建物そのものが武器のようにも思える。
「ほう……こりゃまた面白い建物じゃのう」
パールはまるで悪巧みを考えているかの如く含み笑いをしながら、王城を見つめる。そしてゆっくりと顎髭をさわりながら、何かを調べるかのごとく静観している。
「ほう……王城そのものが武器となっておるのか……無闇に近寄ると危険じゃのう」
「えっ何故その事を!?」
自身の発言に驚くワッキヤクを放置し、パールは静かに王城に右手を向けた。
次の瞬間、右手から光の光線が現れ王城のあちこちが爆破され煙があがる。王城の周りにぐるりと備え付けてあった魔導兵器を光魔法で全て壊したようだ。
王城の周り守っていた兵器が破壊され、さらには電気の帯が走る。
少しの時間が過ぎると、電気の帯もなくなり、少し沈静化する。
「もう大丈夫かのう」
パールはそう呟くと王城に向かって飛んで行く。一番大きな窓を魔法で消し去ると、そこから中に侵入した。
王城の中に入ると、兵士達は侵入者であるパール達に目もくれず走り回っていた。
それもそのはず、最新技術を誇る魔導兵器で守られていて、一番安全な場所だと言われている王城の全ての兵器が、突然破壊されたのだから。
「おいっ! 王は何処におる」
パールは一人の兵士を捕まえ国王の居場所を訪ねた。
「はぁ?! なんだジーさん何処から入って来たんだ?」
「何処からってあそこじゃが」
パールは先程入って来た、窓があったであろう壁に空いた風穴を指さす。
「はっはぁぁぁ!? ジーさん何を言ってるんだ? お前がっあぐぐっ」
パールをバカにする発言を言うと思ったのだろう。ワッキヤクが兵士の口を無理やり塞ぐ。
「お前は何を偉そうに喋ってるんだ!」
「へっ? あっワッキヤク隊長!? このジーさんと知り合いで?」
怯えるワッキヤクを不思議そうに見つめる兵士に、小声でボソボソとパールに聞こえない様に説明をいれる。
「このお方をジーさんなどと軽々しく呼んだりするなっ! いいか? このお方は神だ。死にたくなかったら黙って国王様の所に案内しろ!」
「ひっ! かかかっ神?!」
「しっ! 声が大きいっ! いいから怒らせぬよう案内しろ」
「はっ!」
ワッキヤクの余りの迫力に青ざめ、慌ててレミアール王がいる場所へと案内する兵士。
レミアール王は、王城の攻撃に驚き自室に隠れていた。部屋の扉を乱暴に開けると、そこには肥太った男が一人ワインを片手に震えていた。どうやら恐怖を和らげる為に、お酒を飲もうとしたらしい。
「なんだ? いきなり何も言わずに部屋に入ってくるなど無礼であろう! むっ? ワッキヤクではないか、どうしたと言うのだ」
「お主がこの国の王か」
「なっ? なんじゃお前は偉そうに! ワッキヤク! この無礼なジーさんを縛りあげろっ」
王がワッキヤクに命令するも、ピクリとも動こうとしないワッキヤク。それを見て苛立ち、さらに声を荒げようとするが
「あっ……あぐぐっ」
「お主はちぃと声が癇に障るのじゃ、少し黙っておれ! さてと……お仕置の時間じゃのう」
パールはそう言うと口角を少し上げ不敵に笑った。
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