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本編 浮島編
魔導書物
しおりを挟むパールが魔導書を読みふけってる間に、俺は研究者たちの話を聞く事にした。別にあれだぞ? する事が何もなくていたたまれないとかじゃないぞ?
「じゃあココにある書物は宰相オルクスって奴が全て用意したのか?」
宰相オルクスって、王城で国王より偉そうにしていた奴だよな。いきなり転移して逃げられて……やっぱりアイツが黒幕なんだな。
「はい。私共はオルクス様に言われ色々な魔導を研究し作ってました。この書物に書かれている物を同じように作れと言われ、作れないなら寝るなと、寝ずに研究し作っていました」
「そうなのか……大変だったな。でももう嫌なことはしなくて良いからな? 宰相オルクスはもうこの国にいないから! 安心してくれ」
「「「「いない!?」」」」
「ああ。逃してしまったけど、必ず捕まえるから、だからもうこの国を脅かす者はいない」
「あっありがとうございます」
「ふうっううっ……」
「もうっ自由なんだ……ううっ」
「ありっありっ……がとっううっ」
安心だと言うとテンサを筆頭に研究者たちが泣きくずれ、俺の前にひれ伏した。ああ……ええと気まずいな。なんで毎回こうなるんだ?
「頼むから普通にしてくれ! なっ?」
「でっですがっ……ずびっ。恐れ多いです」
「恐れ多くないし、俺は普通が好きなの!」
「神様がそう言うなら……普通が好きなんて変わってますね」
テンサ達は、少し納得いかないけれど、神様が望むなら仕方ないですね。とでも言ってるような雰囲気を醸し出し、仕方なしに椅子に座る。
おいおいテンサ達よ? 俺を変な性癖がある奴みたいな言い方をしないでくれ。どう考えても普通が一番だろ?
「これは凄いぞティーゴ!」
そんな気まずい空気を断ち切ったのはパールだった。スクッと立ち上がり「過去にここまで凄い魔導研究者がいたなんて!」っと興奮気味に詰め寄って来た。
「パール? 分かったから落ち着いてくれ」
「過去にワシが封印した禁忌とされる魔導書物よりも、さらに危険な事がこの書物には書かれておるんじゃ! 落ち着いてなどおれんじゃろ!」
興奮状態のパールが更に俺に詰め寄ってくる。距離が近ずきだよパール! 興奮しすぎて距離感がバグってるぞ。
「そうか、うん。うん。分かったから。そんなに凄いならココにある書物は全てパールが貰えば良いじゃないか」
「ぬっ!? ワシが……!?」
そう言うと動きがピクリと止まるパール。
次の瞬間、「全てワシの物じゃ」っと次々にアイテムボックスに収納していく。何も無い所に消えていく魔導書物をテンサたちは不思議そうに見ていた。
全てを入れ終わるとスッカリ満足したのか、部屋を出て行こうとするパール。おいおい本来の目的を忘れてないか?
「パール、ここにいる人たちの危険な魔導に関する記憶を消さないと!」
「ああっそうじゃったの。未知の魔導書物に出会い、スッカリ忘れておったわ」
パールは少し恥ずかしそうに鼻の頭をポリポリとかく。
俺はテンサに、「危険な魔導についての記憶を消して良いか?」 と確認すると、予想に反し「今すぐ消して下さい。こんな危険な情報は持っていたくないのです」と喜ばれた。テンサたちは人のために使える魔導を研究したいのだとか、良い奴らなんだな。
それが分かっただけでも、なんだか嬉しい。
「よし、では屋上庭園に戻るとするか。ハクたちが人を集め終えてそうじゃしの」
「そうだな」
この場所を自分たちの好きなように改良すると、意気込んでいるテンサたちに別れを告げ、俺たちは屋上庭園へと戻った。
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