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44、それぞれの言い分
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もどかしいのか、自らの手に吐いた唾を潤滑代わりに、急かすように穴を開きにかかっている。
昨夜はそれほどしなかったせいか、乾いたものを剥がすヒリとした感触があって薄く眉を寄せ。
寝台の枠にアギレオが隠している練り薬の容器を取り、指に乗せ、手をやってアギレオのペニスにたっぷり塗りつけてやる。
話している時は気づかなかったというのに、触れれば手を押し返しそうに硬く反り返っている怒張に驚く間もなく。
手を引き剥がされ、けれどそうされれば、もう予想外ではない。
濡らしただけの尻の穴に、強引に押し込まれるペニスを、息を吐いて受け入れる。
「ゥ、……ふ…」
腹の中に、熱く脈打つ肉棒が出入りする。たまらず力が抜けそうにもなるが、贅沢をいえばもう少し潤いが欲しい。
大丈夫だ、できる。そんなものは自分で用意することもできる。
「は、あ、あア、…ぁ、アギレオ、」
脇からすくうように背を抱けば、腕の中に押し込めるよう抱き寄せられ、逃がさぬように肩を掴んで下から突き上げられて声が出てしまう。
相変わらず時折噛みついているが、こうしていれば、噛み締めるほどではないのではないだろうか。
互いに短く吐息を浮かせ、アギレオがしたがるようになるよう、身を開いて受け入れ。
ただしきりに腹の中を掻き回されているだけだが、同じ動きを繰り返されるのは、これはこれでいい。
「はっ、ぁっ、」
意地悪く極めさせられた時ほどではない、心地良いような絶頂に、一呼吸遅れて腹の中に精をやられ、甘い心地に満たされる。
「ぁイッ!」
けれどまた、今度は肩口に噛みつく力が強く、腹の内でやれやれと息をついた。研究の余地はありそうだ。
「ハァ…、あァ、クソ、駄目だ……」
「んっ」
引き抜いて身体を離され、名残り惜しむよう残る手先がアギレオの肘を掴む。
駄目だ、と、その手を掴んで離され、眉が下がる。
「…やっぱ、ちょっとレビんとこ行っとけ。……全然駄目だ、自分で制御できねえ…」
「嫌だ」
寝台からも立ち上がってしまうのを、手を伸ばして、その前腕を掴み。
「…ア?」
「断る。何故私が出て行かなければならないのだ。こんなことがしたいなら、したいだけすれば済むだろう」
「……ハ?」
身を起こして座り直せば、距離を保つようアギレオが退がるのに、小さく傷つく。
「いやそうじゃねえだろ。お前に無茶苦茶するとか、押さえつけてどうにかしてえとか、それ自体じゃねえよ。それを自分で抑えらんねえんだよ」
「……人前では困るが…。…そうでないなら、お前の好きにすればいい。出て行くのはお断りだ」
「ハア!? …ハ? いやもう、なんだっつうんだ…」
額を押さえてこするアギレオの様子に、とにかく座らせようと手を引けば、振りほどかれた。
「…クソッ、お前はほんと、肝心な時に言うこと聞きやがらねえよな、」
手のやり場がなくなって、膝から垂らし。けれどムッと口角を下げる。
「お前が理不尽だからだ。大体、落ち着くとはなんだ。何なのか分からないのに、当てもなくいつまでも余所に厄介になれないだろう」
額を擦っていた手を下ろし、何か言おうとしたアギレオの口が止まり。目を上向け、はああ…と大きく息を吐くのに、瞬く。
「…おま、…。……ンな顔しても駄目だ。とにかくちょっと離れてろ。お前がいるよりはいねえ方がマシなんだよ!」
それが一体、どんな顔だったのか分からずじまいだが。
あの状況で服だけ無理矢理着させて追い出すなど、まったく情を疑う。腹を立てながら水から上がり、身体を拭って着替え直し。首筋に手をやり探って、牙の跡が襟で隠せないかもしれないと、少し唸る。
襟の内側を埋めるようにスカーフを巻いて隠し、リーの家を訪ねた。
ノックに応じて顔を出してくれたのは奥方のルーの方で、寝入り際の時刻に訪れた非礼を詫び、いくらか雑談を交わしている内に、リーが奥から現れた。
上がって話すといい、というのに、すぐに発つつもりなのだ、と遠慮して。簡単に、今朝アギレオから追い払われた経緯を説明し。
「それで、アギレオがあんな様子だからな。リーから見て問題なければ、この機に王都へ顔を出してこようと思うのだ」
へえ、と、小さく声を上げてから、リーが頷く。
「問題はない。…が。レビのとこよりは、ずいぶん遠くに行くことにしたんだな」
突然ね、とルーが相槌を打つのに、肩を竦めてみせる。
「その後のことなど、色々軍に戻って確認しておきたいとは、アギレオと話していたんだ。今回のことも、少し調べてみるには、王都がやはり便利だからな。……一時とて、アギレオと離れたくないのは山々なのだが」
嘆息するのに、おっおう、と詰まったような声を返され、思わずリーの顔を見る。少し目を丸くしているリーに瞬き、ルーに目をやれば、分かるわよとでも言うよう笑顔で大きく頷かれ、首をひねった。
「…いや……情熱的なんだか冷静なんだか、って思っただけだ。気をつけて行ってこいよ」
ああ、と、得心して目で頷いて。
「冷静でありたいと思ってはいるのだがな。では、すまないがアギレオにもそう伝えておいてくれ」
分かった、いってらっしゃい、と二人に送り出され、馬を選んで東への隠れ道へと手綱を引いた。
馬を一頭借りていく、と告げて背を向け、馬小屋の方へと歩いて行くハルカレンディアの背を見送りながら、口許を覆い、リーは顎を捻った。
「聞けば聞くほど、“アレ”にしか見えないんだが…」
そうね、と、リーを目だけで振り返り、またハルカレンディアが歩き去った方を見て、ルーも首を傾げる。
「昨夜、アギレオは長いこと川で水をかぶってたわよ」
それを聞いたリーが、ゴホ、と咽せ。
「まるっきりアレだな…」
肩をふるわせるリーに、ルーは少し肩を上げてからかうような笑みを浮かべる。
「あなたもやってたのを思い出したわ」
「おッ!? 俺、の、それは14の時だろ!?」
「それよね。そういう年でもないわよねえ」
今日は寝ましょ、と促すルーと踵を返し、リーが玄関を閉めに手をやって。
そもそもアギレオは獣人じゃないしなあ、そうよねえ、と穏やかに息の合う声を昼の眠りに連れ、扉が閉じた。
王都に着けば、まず厩舎を訪れた。
しばらく前に手引きしてもらったままだった馬を連れて、手引きしてくれた当のアェウェノールと相談して。
乗り継ぎに交換した馬達を戻す手配については心配いらないと請け負われ、手伝うことはないかと尋ねれば、あなたでは分からないからと笑われて息をつく。
だが、それはそう思っていたところでもあり、手土産にと勝手に持ち出した、もちろん食用の蜂蜜を進呈の上でよくよく礼を言って、愛馬との再会も果たした。
次は、と忙しなく走り回り、略式の軍装に袖を通せばふいに、懐かしいような思いが胸を揺する。
こうして、日々あれこれと騎士隊の中を走り回っていた。たった一年前まで、四百年もの間。
柔らかな木漏れ日や、木の葉が和らげた細雨が届くばかりの、穏やかな森の国。
外の世界はめまぐるしいものだと思っていた。だが今は、この王都が、世界の中で厚く守られた場所なのだと感じる。
感慨深さは胸の内に、隊舎をあちこち尋ね歩いて、国軍でもきっての多忙なエルフ、参謀長であるマゴルヒアの背を見つけ、早足にそれを追った。
「ハルカレンディアか」
癖のない黒髪を背に垂らした、聡明さに満ちた額や眉。掛けた声に振り返り、己の顔を見留め、こちらで名乗るよりも早く名を指すマゴルヒアに額を下げる。
「マゴルヒア殿、ご無沙汰しております」
「ハルカレンディア――…。新設した境の森守備に赴いているな。お前の報告書は、近頃目に余る」
ハッ、と。短く応じて、額を下げたまま聞く。
名を思い出せば、続いて細かく把握するその仕事ぶりについての指摘が口をついて出るのは、この参謀長の特技といってもいいほどだ。
「長く勤めた連隊長を退き、新設の隊は容易いことばかりではなかろう。手の回りきらぬこともあろうが、以前よりも粗雑だぞ。長く書け、多く盛り込めというのではない。伝えるべきが伝わるよう、必要なことを書き入れ、不要なことは省けばよいのだ。忘れたか」
「――ハッ。改善いたします」
「それにお前、剣の稽古はしているのか。抜きん出た弓の腕に甘んじて剣の腕を磨くことを怠れば、すぐに錆びつく。馬術が得意であったはずだな。尚のこと騎馬剣術を研究すべきだぞ」
「――ハッ。仰せの通りに」
微に入り細を穿ち、国軍への報告、騎士隊との連携、軍人としての戦技や態度、生活の送り方にいたるまでの指導に、12回の「はい」と、4回の「改善いたします」、5回の「仰せの通りに」でひとつひとつ受け入れ、額を下げる。
「――それで、何用だ」
ようやく水を向けられ、ハッと短く応じて顔を上げた。
「先日、境の森で中規模の戦闘がありました」
聞いている、とばかりに、浅く相槌を打って先を促すマゴルヒアに、簡単に成り行きを語り。
「――境の森の守備においては、ベスシャッテテスタルとの情勢が重要です。ご報告申し上げた戦闘の後、クリッペンヴァルト、ベスシャッテテスタル両国の国境外にて、両王陛下の会談がなされたと存じますが、後報はありません。風向きが善いにせよ悪いにせよ、今後の備えに関わりますので、ご存じであればお教えいただきたく、お呼び止めいたしました」
うん、と、先とまったく同じく浅い相槌を打つ参謀長の、開く口を見守る。
「お前の言う通りだが、今は待て。両王会談により動きはある。だが、まだ伝える段階ではないのだ。境の森守備の備えについては、特別に変更の必要はない」
ハッと短く応じながら、なるほど、と頭を巡らせる。
あれほどの騒ぎがありながら、これまで王都より下る使者がない。流れが戦に傾いているなら、国境へ知らせぬということはないだろう。
よい風向きであればこれ以上のことはない。ベスシャッテテスタルが難癖でもつけているのでなければいいが。
ともあれ、どう転ぶにしても今少し足場を立て直す時はありそうだ。
昨夜はそれほどしなかったせいか、乾いたものを剥がすヒリとした感触があって薄く眉を寄せ。
寝台の枠にアギレオが隠している練り薬の容器を取り、指に乗せ、手をやってアギレオのペニスにたっぷり塗りつけてやる。
話している時は気づかなかったというのに、触れれば手を押し返しそうに硬く反り返っている怒張に驚く間もなく。
手を引き剥がされ、けれどそうされれば、もう予想外ではない。
濡らしただけの尻の穴に、強引に押し込まれるペニスを、息を吐いて受け入れる。
「ゥ、……ふ…」
腹の中に、熱く脈打つ肉棒が出入りする。たまらず力が抜けそうにもなるが、贅沢をいえばもう少し潤いが欲しい。
大丈夫だ、できる。そんなものは自分で用意することもできる。
「は、あ、あア、…ぁ、アギレオ、」
脇からすくうように背を抱けば、腕の中に押し込めるよう抱き寄せられ、逃がさぬように肩を掴んで下から突き上げられて声が出てしまう。
相変わらず時折噛みついているが、こうしていれば、噛み締めるほどではないのではないだろうか。
互いに短く吐息を浮かせ、アギレオがしたがるようになるよう、身を開いて受け入れ。
ただしきりに腹の中を掻き回されているだけだが、同じ動きを繰り返されるのは、これはこれでいい。
「はっ、ぁっ、」
意地悪く極めさせられた時ほどではない、心地良いような絶頂に、一呼吸遅れて腹の中に精をやられ、甘い心地に満たされる。
「ぁイッ!」
けれどまた、今度は肩口に噛みつく力が強く、腹の内でやれやれと息をついた。研究の余地はありそうだ。
「ハァ…、あァ、クソ、駄目だ……」
「んっ」
引き抜いて身体を離され、名残り惜しむよう残る手先がアギレオの肘を掴む。
駄目だ、と、その手を掴んで離され、眉が下がる。
「…やっぱ、ちょっとレビんとこ行っとけ。……全然駄目だ、自分で制御できねえ…」
「嫌だ」
寝台からも立ち上がってしまうのを、手を伸ばして、その前腕を掴み。
「…ア?」
「断る。何故私が出て行かなければならないのだ。こんなことがしたいなら、したいだけすれば済むだろう」
「……ハ?」
身を起こして座り直せば、距離を保つようアギレオが退がるのに、小さく傷つく。
「いやそうじゃねえだろ。お前に無茶苦茶するとか、押さえつけてどうにかしてえとか、それ自体じゃねえよ。それを自分で抑えらんねえんだよ」
「……人前では困るが…。…そうでないなら、お前の好きにすればいい。出て行くのはお断りだ」
「ハア!? …ハ? いやもう、なんだっつうんだ…」
額を押さえてこするアギレオの様子に、とにかく座らせようと手を引けば、振りほどかれた。
「…クソッ、お前はほんと、肝心な時に言うこと聞きやがらねえよな、」
手のやり場がなくなって、膝から垂らし。けれどムッと口角を下げる。
「お前が理不尽だからだ。大体、落ち着くとはなんだ。何なのか分からないのに、当てもなくいつまでも余所に厄介になれないだろう」
額を擦っていた手を下ろし、何か言おうとしたアギレオの口が止まり。目を上向け、はああ…と大きく息を吐くのに、瞬く。
「…おま、…。……ンな顔しても駄目だ。とにかくちょっと離れてろ。お前がいるよりはいねえ方がマシなんだよ!」
それが一体、どんな顔だったのか分からずじまいだが。
あの状況で服だけ無理矢理着させて追い出すなど、まったく情を疑う。腹を立てながら水から上がり、身体を拭って着替え直し。首筋に手をやり探って、牙の跡が襟で隠せないかもしれないと、少し唸る。
襟の内側を埋めるようにスカーフを巻いて隠し、リーの家を訪ねた。
ノックに応じて顔を出してくれたのは奥方のルーの方で、寝入り際の時刻に訪れた非礼を詫び、いくらか雑談を交わしている内に、リーが奥から現れた。
上がって話すといい、というのに、すぐに発つつもりなのだ、と遠慮して。簡単に、今朝アギレオから追い払われた経緯を説明し。
「それで、アギレオがあんな様子だからな。リーから見て問題なければ、この機に王都へ顔を出してこようと思うのだ」
へえ、と、小さく声を上げてから、リーが頷く。
「問題はない。…が。レビのとこよりは、ずいぶん遠くに行くことにしたんだな」
突然ね、とルーが相槌を打つのに、肩を竦めてみせる。
「その後のことなど、色々軍に戻って確認しておきたいとは、アギレオと話していたんだ。今回のことも、少し調べてみるには、王都がやはり便利だからな。……一時とて、アギレオと離れたくないのは山々なのだが」
嘆息するのに、おっおう、と詰まったような声を返され、思わずリーの顔を見る。少し目を丸くしているリーに瞬き、ルーに目をやれば、分かるわよとでも言うよう笑顔で大きく頷かれ、首をひねった。
「…いや……情熱的なんだか冷静なんだか、って思っただけだ。気をつけて行ってこいよ」
ああ、と、得心して目で頷いて。
「冷静でありたいと思ってはいるのだがな。では、すまないがアギレオにもそう伝えておいてくれ」
分かった、いってらっしゃい、と二人に送り出され、馬を選んで東への隠れ道へと手綱を引いた。
馬を一頭借りていく、と告げて背を向け、馬小屋の方へと歩いて行くハルカレンディアの背を見送りながら、口許を覆い、リーは顎を捻った。
「聞けば聞くほど、“アレ”にしか見えないんだが…」
そうね、と、リーを目だけで振り返り、またハルカレンディアが歩き去った方を見て、ルーも首を傾げる。
「昨夜、アギレオは長いこと川で水をかぶってたわよ」
それを聞いたリーが、ゴホ、と咽せ。
「まるっきりアレだな…」
肩をふるわせるリーに、ルーは少し肩を上げてからかうような笑みを浮かべる。
「あなたもやってたのを思い出したわ」
「おッ!? 俺、の、それは14の時だろ!?」
「それよね。そういう年でもないわよねえ」
今日は寝ましょ、と促すルーと踵を返し、リーが玄関を閉めに手をやって。
そもそもアギレオは獣人じゃないしなあ、そうよねえ、と穏やかに息の合う声を昼の眠りに連れ、扉が閉じた。
王都に着けば、まず厩舎を訪れた。
しばらく前に手引きしてもらったままだった馬を連れて、手引きしてくれた当のアェウェノールと相談して。
乗り継ぎに交換した馬達を戻す手配については心配いらないと請け負われ、手伝うことはないかと尋ねれば、あなたでは分からないからと笑われて息をつく。
だが、それはそう思っていたところでもあり、手土産にと勝手に持ち出した、もちろん食用の蜂蜜を進呈の上でよくよく礼を言って、愛馬との再会も果たした。
次は、と忙しなく走り回り、略式の軍装に袖を通せばふいに、懐かしいような思いが胸を揺する。
こうして、日々あれこれと騎士隊の中を走り回っていた。たった一年前まで、四百年もの間。
柔らかな木漏れ日や、木の葉が和らげた細雨が届くばかりの、穏やかな森の国。
外の世界はめまぐるしいものだと思っていた。だが今は、この王都が、世界の中で厚く守られた場所なのだと感じる。
感慨深さは胸の内に、隊舎をあちこち尋ね歩いて、国軍でもきっての多忙なエルフ、参謀長であるマゴルヒアの背を見つけ、早足にそれを追った。
「ハルカレンディアか」
癖のない黒髪を背に垂らした、聡明さに満ちた額や眉。掛けた声に振り返り、己の顔を見留め、こちらで名乗るよりも早く名を指すマゴルヒアに額を下げる。
「マゴルヒア殿、ご無沙汰しております」
「ハルカレンディア――…。新設した境の森守備に赴いているな。お前の報告書は、近頃目に余る」
ハッ、と。短く応じて、額を下げたまま聞く。
名を思い出せば、続いて細かく把握するその仕事ぶりについての指摘が口をついて出るのは、この参謀長の特技といってもいいほどだ。
「長く勤めた連隊長を退き、新設の隊は容易いことばかりではなかろう。手の回りきらぬこともあろうが、以前よりも粗雑だぞ。長く書け、多く盛り込めというのではない。伝えるべきが伝わるよう、必要なことを書き入れ、不要なことは省けばよいのだ。忘れたか」
「――ハッ。改善いたします」
「それにお前、剣の稽古はしているのか。抜きん出た弓の腕に甘んじて剣の腕を磨くことを怠れば、すぐに錆びつく。馬術が得意であったはずだな。尚のこと騎馬剣術を研究すべきだぞ」
「――ハッ。仰せの通りに」
微に入り細を穿ち、国軍への報告、騎士隊との連携、軍人としての戦技や態度、生活の送り方にいたるまでの指導に、12回の「はい」と、4回の「改善いたします」、5回の「仰せの通りに」でひとつひとつ受け入れ、額を下げる。
「――それで、何用だ」
ようやく水を向けられ、ハッと短く応じて顔を上げた。
「先日、境の森で中規模の戦闘がありました」
聞いている、とばかりに、浅く相槌を打って先を促すマゴルヒアに、簡単に成り行きを語り。
「――境の森の守備においては、ベスシャッテテスタルとの情勢が重要です。ご報告申し上げた戦闘の後、クリッペンヴァルト、ベスシャッテテスタル両国の国境外にて、両王陛下の会談がなされたと存じますが、後報はありません。風向きが善いにせよ悪いにせよ、今後の備えに関わりますので、ご存じであればお教えいただきたく、お呼び止めいたしました」
うん、と、先とまったく同じく浅い相槌を打つ参謀長の、開く口を見守る。
「お前の言う通りだが、今は待て。両王会談により動きはある。だが、まだ伝える段階ではないのだ。境の森守備の備えについては、特別に変更の必要はない」
ハッと短く応じながら、なるほど、と頭を巡らせる。
あれほどの騒ぎがありながら、これまで王都より下る使者がない。流れが戦に傾いているなら、国境へ知らせぬということはないだろう。
よい風向きであればこれ以上のことはない。ベスシャッテテスタルが難癖でもつけているのでなければいいが。
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