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番外編
愛する彼女と王妃様②
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「今日は本当にありがとうございました」
「えぇ、こちらこそ。ぜひ王都に戻った際には顔を見せてね」
「そうさせていただきます。その際は主人も一緒に」
しかし、王妃様は首を横に振った。
「いいのよ、私はあなたから話が聞ければ。あの子は私にはそっけないもの」
「そんなこと――」
「メロディア!」
遠くから駆けてきたのはアヴィス様だった。まだ仕事中のはずなのにどうしたんだろう?
「王妃殿下! 妻を呼び出すなど、私は事前に聞いていません!」
確かに王妃様から招待の手紙が届いたのはアヴィス様が出仕した後だった。
だが、午前中に昼下がりのティータイムの招待だったので、そこまで急ではなかったし、普通にあり得ることなのに、アヴィス様は何がそんなに不満なのかしら?
「だって、私がメロディアちゃんを招待するって言ったら、駄目だって言うでしょう? だから、直接ご招待したのよ。とっても楽しかったわよねー?」
「はい! とても楽しい時間を過ごさせていただきました!」
私がそう言うと、王妃様は頭を撫でてくれた。少し照れるけど嬉しい。
えへへ……と私と王妃様は二人で笑い合った。
「ほぉら。この笑顔を見ても、なんか文句あるかしら?」
「っ……。妻が楽しかったなら、まぁ……いいです……」
私のことを心配してくれたのかな? 少ししょんぼりしているアヴィス様が可愛くて、私はアヴィス様の隣に並び、彼の腕に手を絡ませた。彼が私の手に気付くと、手を重ねて、ほわっと微笑んでくれた。
「うわぁ……そんな顔するのね……」
「う、煩いですっ」
「アヴィス様、王妃殿下になんてこと言うんですか!」
「ふふふっ! あー、本当に楽しいわ!」
王妃様は相当面白かったのか、笑いながら、涙を拭った。
「良かったわ……本当に。
でも、あと一週間もしたら王都を離れてしまうのね……寂しくなるけど、これからも二人仲良くね」
私とアヴィス様は、顔を見合わせ、二人で頷いた。
「はい。色々と助けていただき、本当にありがとうございました」
アヴィス様がそう言うと、王妃様は瞳を潤ませた。
「こちらこそ、今まで宰相として王家を支えてくれてありがとう。これからは公爵として、国の発展に寄与してくれると嬉しいわ」
「精進いたします」
「メロディアちゃん、最後にハグをしてもいいかしら?」
「は、はい! もちろん」
私は身体を固くして、王妃様のハグを受け止めた。とても柔らかく良い香りがする……
その時、王妃様がこそっと私の耳元で囁いた。
「ルルゥの私室の一番下の本棚。右奥に隠し戸棚があるわ。そこに彼女からあなたへのプレゼントがあるわよ」
「え?」
どういうことか聞く前にハグは終わった。私たちだけの秘密よ?とでもいうように、王妃様は私にウィンクを投げる。
「どうしたメロディア? 何か王妃殿下に言われたか?」
硬直する私の顔をアヴィス様が心配そうにのぞき込む。
「い、いえっ! そんなことないです!」
「そうよ。私は夫婦が仲良くする秘訣を教えてあげただけ」
「私は陛下とは違うので、あまり参考にならなそうですね。では、執務も残っているので、このあたりで失礼させていただきます」
「あら、宰相もハグしてあげようと思ったのに」
王妃様が腕を広げたけれど、アヴィス様は一歩下がった。
「結構です。私は妻以外の女性と接触しないと決めましたので」
「あ、アヴィス様っ!」
「お熱いわねぇ」
ニコニコと王妃様がこちらを見つめる視線が生温かくて、恥ずかしい……
しかし、アヴィス様は全く気にならないようで淡々と言った。
「第一、私が王妃殿下にハグされたら、怒り狂うお方がいるでしょうに。冗談でもおやめください」
「まぁ、そうね。うちの人が大変なことになっちゃう。
じゃあ、メロディアちゃん、またね。今度はもっとゆっくりお茶しましょう」
私は王妃様と別れて、アヴィス様と執務室への道を歩いていた。
「アヴィス様はまだお仕事残っているんですよね? 私、先に帰っていますね」
「あー、もし、メロディアが良ければなんだが……」
「どうしました?」
私がそう尋ねると、アヴィス様は扉の前で止まった。気付けば、もう執務室の前だった。
「もう少しで仕事が終わるから、待っていてくれないか? 一緒に執務室で」
「いいんですか!?」
まさかの提案に私は内心嬉しくて、飛び上がりそうだった。執務室でお仕事をしている姿を見てみたいと常々思っていたけれど、宰相を辞めることが決定したからもう叶わないことだと思っていた。なのにこんなチャンスが来るなんて!
「今日は引継ぎの書類をまとめるだけだから、会議の予定もないし、比較的すぐに終わると思うんだ。折角だし一緒に帰ろう」
「嬉しいです!」
「良かった。何も楽しいことはないと思うが、すぐに終わらせるから」
アヴィス様が扉を開けてくれて、私は初めて執務室に足を踏み入れた。
「えぇ、こちらこそ。ぜひ王都に戻った際には顔を見せてね」
「そうさせていただきます。その際は主人も一緒に」
しかし、王妃様は首を横に振った。
「いいのよ、私はあなたから話が聞ければ。あの子は私にはそっけないもの」
「そんなこと――」
「メロディア!」
遠くから駆けてきたのはアヴィス様だった。まだ仕事中のはずなのにどうしたんだろう?
「王妃殿下! 妻を呼び出すなど、私は事前に聞いていません!」
確かに王妃様から招待の手紙が届いたのはアヴィス様が出仕した後だった。
だが、午前中に昼下がりのティータイムの招待だったので、そこまで急ではなかったし、普通にあり得ることなのに、アヴィス様は何がそんなに不満なのかしら?
「だって、私がメロディアちゃんを招待するって言ったら、駄目だって言うでしょう? だから、直接ご招待したのよ。とっても楽しかったわよねー?」
「はい! とても楽しい時間を過ごさせていただきました!」
私がそう言うと、王妃様は頭を撫でてくれた。少し照れるけど嬉しい。
えへへ……と私と王妃様は二人で笑い合った。
「ほぉら。この笑顔を見ても、なんか文句あるかしら?」
「っ……。妻が楽しかったなら、まぁ……いいです……」
私のことを心配してくれたのかな? 少ししょんぼりしているアヴィス様が可愛くて、私はアヴィス様の隣に並び、彼の腕に手を絡ませた。彼が私の手に気付くと、手を重ねて、ほわっと微笑んでくれた。
「うわぁ……そんな顔するのね……」
「う、煩いですっ」
「アヴィス様、王妃殿下になんてこと言うんですか!」
「ふふふっ! あー、本当に楽しいわ!」
王妃様は相当面白かったのか、笑いながら、涙を拭った。
「良かったわ……本当に。
でも、あと一週間もしたら王都を離れてしまうのね……寂しくなるけど、これからも二人仲良くね」
私とアヴィス様は、顔を見合わせ、二人で頷いた。
「はい。色々と助けていただき、本当にありがとうございました」
アヴィス様がそう言うと、王妃様は瞳を潤ませた。
「こちらこそ、今まで宰相として王家を支えてくれてありがとう。これからは公爵として、国の発展に寄与してくれると嬉しいわ」
「精進いたします」
「メロディアちゃん、最後にハグをしてもいいかしら?」
「は、はい! もちろん」
私は身体を固くして、王妃様のハグを受け止めた。とても柔らかく良い香りがする……
その時、王妃様がこそっと私の耳元で囁いた。
「ルルゥの私室の一番下の本棚。右奥に隠し戸棚があるわ。そこに彼女からあなたへのプレゼントがあるわよ」
「え?」
どういうことか聞く前にハグは終わった。私たちだけの秘密よ?とでもいうように、王妃様は私にウィンクを投げる。
「どうしたメロディア? 何か王妃殿下に言われたか?」
硬直する私の顔をアヴィス様が心配そうにのぞき込む。
「い、いえっ! そんなことないです!」
「そうよ。私は夫婦が仲良くする秘訣を教えてあげただけ」
「私は陛下とは違うので、あまり参考にならなそうですね。では、執務も残っているので、このあたりで失礼させていただきます」
「あら、宰相もハグしてあげようと思ったのに」
王妃様が腕を広げたけれど、アヴィス様は一歩下がった。
「結構です。私は妻以外の女性と接触しないと決めましたので」
「あ、アヴィス様っ!」
「お熱いわねぇ」
ニコニコと王妃様がこちらを見つめる視線が生温かくて、恥ずかしい……
しかし、アヴィス様は全く気にならないようで淡々と言った。
「第一、私が王妃殿下にハグされたら、怒り狂うお方がいるでしょうに。冗談でもおやめください」
「まぁ、そうね。うちの人が大変なことになっちゃう。
じゃあ、メロディアちゃん、またね。今度はもっとゆっくりお茶しましょう」
私は王妃様と別れて、アヴィス様と執務室への道を歩いていた。
「アヴィス様はまだお仕事残っているんですよね? 私、先に帰っていますね」
「あー、もし、メロディアが良ければなんだが……」
「どうしました?」
私がそう尋ねると、アヴィス様は扉の前で止まった。気付けば、もう執務室の前だった。
「もう少しで仕事が終わるから、待っていてくれないか? 一緒に執務室で」
「いいんですか!?」
まさかの提案に私は内心嬉しくて、飛び上がりそうだった。執務室でお仕事をしている姿を見てみたいと常々思っていたけれど、宰相を辞めることが決定したからもう叶わないことだと思っていた。なのにこんなチャンスが来るなんて!
「今日は引継ぎの書類をまとめるだけだから、会議の予定もないし、比較的すぐに終わると思うんだ。折角だし一緒に帰ろう」
「嬉しいです!」
「良かった。何も楽しいことはないと思うが、すぐに終わらせるから」
アヴィス様が扉を開けてくれて、私は初めて執務室に足を踏み入れた。
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