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もうやめましょう⑸
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「……ふぇ?」
少し身体を起こし、温かさを感じたお腹に目をやると……
真っ白でネバネバとした液体が広がっていた。
「これって……」
「くそっ……。悪い……ウィンディアナまで汚れちまった」
はぁーっと大きな溜息をついたセレーノ様は、顔を大きく手で覆い、隠している。
「いえ……大丈夫、です」
私は自分の下腹部についた白濁を指に取って、見つめた。
これって……子種……よね?
平静をなんとか保つが、ふつふつと喜びが沸いてきてしまう。
距離を置こうと決めたのに、彼に抱かれることをもう諦めようとしたのに、彼が私で興奮して吐精までしてくれたと思ったら、嬉しくて……
彼はなんだか落ち込んでいるのか、まだ横たわって、また溜息を吐いた。
私は彼が見ていないのをいいことに……自分の指先を咥え、舐めてみた。
美味しい……とは言えないが、なんだか嫌な気分はしない。
彼の子種だと思えば愛おしいくらいで……
「……こくっ……ん」
私はわずかなそれを飲み込んだ。お腹がきゅんっと熱くなる。
「い……今、飲んだのか?」
見られてたーっ!
セレーノ様と目が合う。そんなに見つめないでほしい……
穴が開きそう。
「え、えぇと……はい……。ごめん、なさい……」
セレーノ様は信じられないという顔でまだ私のことを凝視している。そんなにいけないことだったんだろうか?
「あ……き、気持ち悪かったですよね! もうしませんから!」
「別に気持ち悪くなんてない。ただ、んなもん口にしてもまずいだろ」
セレーノ様は優しく私を身体から降ろし、立ち上がる。そして、私に背中を向けた。
やっぱり怒っているのか、私の方は向いてくれない。結局セレーノ様は背中を向けたまま、ガウンを拾い上げた。どうやらもう部屋を後にするらしい。
一緒に寝たかったな……
そう思っても、セレーノ様を困らせると思えば、言えるはずもなくて。
「じゃあ、今日はもう行くな。おやすみ」
「あ……はい。おやすみなさい……」
扉は優しく閉められたが、セレーノ様は私の顔も見たくないのか、顔は見えなかった。
「セレーノさま……っ」
彼の太い陰茎を思い出し、下に手を伸ばす。
でも、それで身体の熱は解消できなくて……より熱が溜まった身体を一人持て余すことになったのだった。
☆ ★ ☆
「くそっ……あんなの……っ!」
俺は自室に戻り、先ほどのウィンディアナとの夜を反芻していた。
ネグリジェ一枚で俺の上で踊るウィンディアナは、妖艶で、美しかった。
子供だと馬鹿にしていた最初の頃が思い出せないほど、彼女は女の顔をしていた。神々しいまでのキラキラとした銀髪をなびかせながらも、その蒼い瞳には確かに熱が灯っていて……
ネグリジェを持ち上げる可愛い胸の頂と、俺と繋がることを期待して濡れた蜜口。
それを健気に一生懸命こすり付けてくるのだから、耐えられるはずもなく、吐精してしまった。
「しかも、それを飲むとか……信じらんねぇ……」
ウィンディアナは無意識なのか、とても嬉しそうに俺の子種を口にしたのだ。こくんと飲んだ後にペロッと赤い舌が出てきて、唇を舐めて、照れたように笑った。
その上、あの薄く白い腹に俺の子種が少しでも入ったと思ったら、理性がはち切れそうだった。
おかげでその姿を見てから、俺の息子は一向に収まりそうになく、このままだとウィンディアナの制止も聞かず、襲い掛かってしまいそうだったから、慌てて寝室を出てきたのだ。
「ウィンディアナ……うっ」
一人むなしく達する。一体、俺は何をやっているのか……。馬鹿馬鹿しくなり、そのままベッドに倒れ込む。
「このまま……ウィンディアナを……」
でも、俺はその言葉の続きを飲み込んだ。その言葉を口にすれば、兄貴の意に反することになる。
「くそっ、俺は何を考えてるんだ……。兄貴が正しいんだ。兄貴の言うことは絶対だろうが……っ」
俺は生まれた時から出来損ないだった。
王妃であった母は、俺を生んだ時に命を落とした。当時国王であった父は、愛する妻を殺したも同然の俺を酷く嫌っていた。国王である父親に愛されない第二王子など、王宮内ではいないも同然であった。
でも、王宮内でただ一人、俺を人間として尊重してくれる人がいた。
それが、兄貴だった。
兄貴だけは俺を俺として扱ってくれ、弟として愛してくれた。
いつしか俺の世界は兄を中心に回り出した。
王宮でいつも息苦しそうな俺を見かねて、平民が集う城下へ連れ出してくれたのも、体格を生かして戦う術を身に着けろと道筋を示してくれたのも、辺境伯として俺の居場所を作ってくれたのも……全部、兄貴だった。
俺は兄貴のためなら何でもやる決意で、今日まで一緒に国を守ってきた。幸いにも恵まれた体格と、人並みはずれた力があったから、兄貴は俺を必要としてくれた。
そして、病に伏してあっけなくこの世を去った父に代わり、兄は国王となった。
国民からの指示も高い、若く聡明な自慢の国王だ。
俺は、その兄貴の頼みなら何でも聞くつもりだった。
帝国の姫であるウィンディアナと結婚しろと言われた時も驚きはしたが、断る気などなかった。兄貴がそう言うなら正しいことなのだろうと思ったからだ。
「惚れるなよ? 帝国の姫は、一年で帝国に返すつもりだ」
真顔でそう言われた時には歳の離れた小娘に欲情などするかと、笑いながら受け入れたが……
こんな気持ちになる日が来るなんて思いもしなかった。
次、ウィンディアナに触れれば、俺は……
自分を制御できないだろう。
だが、そうなれば、兄貴を裏切ることになる。
俺の存在理由を作ってくれた大切な家族を。
兄貴を裏切るなんて出来るはずない……
一線は越えないように意識はしてきたが、もう無理だろう。
ウィンディアナにはもう、近付いてはいけない。
そう頭では分かっているのに、ウィンディアナに触れたいと……彼女を本当の妻にしたいという思いばかりが溢れてくる。
「俺はどうしたらいい……?」
窓の外を眺めて見ても、月が偉そうに俺を見下しているだけだった。
少し身体を起こし、温かさを感じたお腹に目をやると……
真っ白でネバネバとした液体が広がっていた。
「これって……」
「くそっ……。悪い……ウィンディアナまで汚れちまった」
はぁーっと大きな溜息をついたセレーノ様は、顔を大きく手で覆い、隠している。
「いえ……大丈夫、です」
私は自分の下腹部についた白濁を指に取って、見つめた。
これって……子種……よね?
平静をなんとか保つが、ふつふつと喜びが沸いてきてしまう。
距離を置こうと決めたのに、彼に抱かれることをもう諦めようとしたのに、彼が私で興奮して吐精までしてくれたと思ったら、嬉しくて……
彼はなんだか落ち込んでいるのか、まだ横たわって、また溜息を吐いた。
私は彼が見ていないのをいいことに……自分の指先を咥え、舐めてみた。
美味しい……とは言えないが、なんだか嫌な気分はしない。
彼の子種だと思えば愛おしいくらいで……
「……こくっ……ん」
私はわずかなそれを飲み込んだ。お腹がきゅんっと熱くなる。
「い……今、飲んだのか?」
見られてたーっ!
セレーノ様と目が合う。そんなに見つめないでほしい……
穴が開きそう。
「え、えぇと……はい……。ごめん、なさい……」
セレーノ様は信じられないという顔でまだ私のことを凝視している。そんなにいけないことだったんだろうか?
「あ……き、気持ち悪かったですよね! もうしませんから!」
「別に気持ち悪くなんてない。ただ、んなもん口にしてもまずいだろ」
セレーノ様は優しく私を身体から降ろし、立ち上がる。そして、私に背中を向けた。
やっぱり怒っているのか、私の方は向いてくれない。結局セレーノ様は背中を向けたまま、ガウンを拾い上げた。どうやらもう部屋を後にするらしい。
一緒に寝たかったな……
そう思っても、セレーノ様を困らせると思えば、言えるはずもなくて。
「じゃあ、今日はもう行くな。おやすみ」
「あ……はい。おやすみなさい……」
扉は優しく閉められたが、セレーノ様は私の顔も見たくないのか、顔は見えなかった。
「セレーノさま……っ」
彼の太い陰茎を思い出し、下に手を伸ばす。
でも、それで身体の熱は解消できなくて……より熱が溜まった身体を一人持て余すことになったのだった。
☆ ★ ☆
「くそっ……あんなの……っ!」
俺は自室に戻り、先ほどのウィンディアナとの夜を反芻していた。
ネグリジェ一枚で俺の上で踊るウィンディアナは、妖艶で、美しかった。
子供だと馬鹿にしていた最初の頃が思い出せないほど、彼女は女の顔をしていた。神々しいまでのキラキラとした銀髪をなびかせながらも、その蒼い瞳には確かに熱が灯っていて……
ネグリジェを持ち上げる可愛い胸の頂と、俺と繋がることを期待して濡れた蜜口。
それを健気に一生懸命こすり付けてくるのだから、耐えられるはずもなく、吐精してしまった。
「しかも、それを飲むとか……信じらんねぇ……」
ウィンディアナは無意識なのか、とても嬉しそうに俺の子種を口にしたのだ。こくんと飲んだ後にペロッと赤い舌が出てきて、唇を舐めて、照れたように笑った。
その上、あの薄く白い腹に俺の子種が少しでも入ったと思ったら、理性がはち切れそうだった。
おかげでその姿を見てから、俺の息子は一向に収まりそうになく、このままだとウィンディアナの制止も聞かず、襲い掛かってしまいそうだったから、慌てて寝室を出てきたのだ。
「ウィンディアナ……うっ」
一人むなしく達する。一体、俺は何をやっているのか……。馬鹿馬鹿しくなり、そのままベッドに倒れ込む。
「このまま……ウィンディアナを……」
でも、俺はその言葉の続きを飲み込んだ。その言葉を口にすれば、兄貴の意に反することになる。
「くそっ、俺は何を考えてるんだ……。兄貴が正しいんだ。兄貴の言うことは絶対だろうが……っ」
俺は生まれた時から出来損ないだった。
王妃であった母は、俺を生んだ時に命を落とした。当時国王であった父は、愛する妻を殺したも同然の俺を酷く嫌っていた。国王である父親に愛されない第二王子など、王宮内ではいないも同然であった。
でも、王宮内でただ一人、俺を人間として尊重してくれる人がいた。
それが、兄貴だった。
兄貴だけは俺を俺として扱ってくれ、弟として愛してくれた。
いつしか俺の世界は兄を中心に回り出した。
王宮でいつも息苦しそうな俺を見かねて、平民が集う城下へ連れ出してくれたのも、体格を生かして戦う術を身に着けろと道筋を示してくれたのも、辺境伯として俺の居場所を作ってくれたのも……全部、兄貴だった。
俺は兄貴のためなら何でもやる決意で、今日まで一緒に国を守ってきた。幸いにも恵まれた体格と、人並みはずれた力があったから、兄貴は俺を必要としてくれた。
そして、病に伏してあっけなくこの世を去った父に代わり、兄は国王となった。
国民からの指示も高い、若く聡明な自慢の国王だ。
俺は、その兄貴の頼みなら何でも聞くつもりだった。
帝国の姫であるウィンディアナと結婚しろと言われた時も驚きはしたが、断る気などなかった。兄貴がそう言うなら正しいことなのだろうと思ったからだ。
「惚れるなよ? 帝国の姫は、一年で帝国に返すつもりだ」
真顔でそう言われた時には歳の離れた小娘に欲情などするかと、笑いながら受け入れたが……
こんな気持ちになる日が来るなんて思いもしなかった。
次、ウィンディアナに触れれば、俺は……
自分を制御できないだろう。
だが、そうなれば、兄貴を裏切ることになる。
俺の存在理由を作ってくれた大切な家族を。
兄貴を裏切るなんて出来るはずない……
一線は越えないように意識はしてきたが、もう無理だろう。
ウィンディアナにはもう、近付いてはいけない。
そう頭では分かっているのに、ウィンディアナに触れたいと……彼女を本当の妻にしたいという思いばかりが溢れてくる。
「俺はどうしたらいい……?」
窓の外を眺めて見ても、月が偉そうに俺を見下しているだけだった。
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