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8.お買い物
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チュン チュン チュ。
異世界二日目。
心地の良い鳥のさえずりに、俺は目を覚ました。
昨日はやっぱり色々とあり過ぎた怒涛の一日だったようで、まだちょっと、朦朧としている。
敷いてある毛皮がモフモフで、意外と寝心地が良かった。
それに、抱いている尻尾もフサフサで、最高に気持ちいい・・・・・ん?
「なんで、お前が俺のベッドにいるんだーーっ!!」
俺は、寝起きのはっきりしない頭で、その手触りを楽しんでいた物体が、俺の懐にすっぽりハマるように丸まっている、コリンであることに気がついて、思わずとび起きた。
「フニャフニャ・・・あ。セイヤお兄ちゃん、おはようございましゅ」
狼狽している俺のことをよそに、コリンが目をこすりながら、ムクリと起き上がった。
「お、おはよう。・・・じゃなくて、隣に寝かせたはずなのに、なんで俺のベッドにいたのかと聞いているんだ」
「だって、寂しかったんだもん」
コリンが、目を伏せて言った。
「なっ・・・・そ、そうか」
そうか、そうだよな。
身寄りのない5歳の女の子が、見知らぬ土地で一人・・だもんな。
「分かった、しょうがないな。許す」
俺はそう言って、コリンの頭を撫でた。
「ありがとう!じゃあ、今晩も一緒に寝てくれる?」
「へ?あ、ああ・・・仕方ない、いいぞ」
「ほんと?やったーーー!!」
相手は、5歳の幼い子供だ。
別にやましい気持ちはないし、いや、あるわけないし、いいだろう。
両手を挙げて、喜びまくっているコリンの姿を見て、俺はそう思った。
「よし、まずは顔を洗ったら、朝飯だな」
「うん」
水瓶の水を使って洗顔を終えると、1階の食堂に下りていった。
食堂は結構広くて、20人くらいがいっぺんに座れるくらいの席数があった。
厨房も、オープンキッチンのようになっており、とても開放感のある気持ちのいいスペースだ。
「「おはようございます!」」
テーブルの間を、料理を持って運んでいた、サリーさんに挨拶をする。
「おはよう。昨夜はよく眠れたかい?」
「「はい!」」
「それは良かった。好きな席に座っていいんだけど、あっちの席の方がいいんじゃない?」
朝から、満面の笑顔のサリーさんが、窓際の朝陽が差し込むテーブルを、手に持った料理の皿で指した。
そこには、エルが1人で座って、朝食を食べていた。
「ありがとうございます」
俺はコリンと、サリーさんに頭を下げてエルが座っている方へ移動していった。
「エル、おはよう」
「エルお姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう」
俺たちが声をかけると、ちぎったパンを口に運びながら、外の景色を眺めていたエルが、こちらに振り向いて、挨拶を返してきた。
言い方がぶっきらぼうだが、口元は微笑んでいる。
どうやら、機嫌はいいらしい。
「さあ召し上がれ!」
俺たちが、エルの向かいの席につくと、サリーさんが料理を運んできて、テーブルの上に並べてくれた。
パンにバター、スープに目玉焼き、白いふわふわしたチーズが載ったサラダ・・あ、俺このチーズ知ってる、モッツァレラチーズだ。
このチーズうまいんだよな、パンは丸いちょっと固めのパンだ。
「あれ?」
「どうかした?」
「いや・・」
俺が、並べられた朝食一式に、違和感を感じて声をあげると、エルが怪訝そうにこっちを見た。
小さな器に入ったスープには、木のスプーンが付いていた。
パンは手でちぎって食べるし、バターは・・まあ、なんとかなるだろう。
でも、サラダは?
目玉焼きは?
ボウル状の器に入ったサラダは、さっき言ったチーズが入っていて、ドレッシングみたいなものもかかっている。
でも、朝食セットは以上だった。
フォークとか箸とかは?
そういえば、昨日の晩飯は、手で持って食べても違和感のないものばかりだったから、気が付かなかったけど、こっちに来て、スプーン以外のカトラリーを見ていない。
「これは・・・」
俺がその疑問を口にしようとした時、エルが自分のサラダを三本の指で器用に食べた。
そういうことですか。
「ん?」
「いや、なんでもないです」
エルがサラダを咀嚼しながら、小首をかしげてきたので、慌ててごまかした。
「・・・おいしい」
俺は、エルの真似をして、直接手を使ってサラダを食べてみると、その意外なおいしさに目を見開いた。
「でしょ」
エルが、そんな俺の様子を見て、少し微笑んで言った。
純粋な味つけは、塩と胡椒にオリーブオイルと、とても単純なのだが、通常の食感を含めた味覚に、指先から伝わってくる触感が加わることで、いままで経験したことのない、おいしさなのだ。
「セイヤおにひひゃん、食べないの?」
未体験の感動に固まっていた俺に、コリンが口いっぱいに頬張りながら、言ってきた。
「あ、ああ。たべる、食べる」
「で、案内してほしいって言ってたけど、どこを見たい?」
食後のお茶~ハーブティーみたいなもの~を飲みながら、エルが聞いてきた。
「そうだな、まずこの服なんだけど、これじゃあちょっと目立つかなと思うんだよね。それと、魔物の解体用のナイフとか、コリンにも持たせたいから武器、防具のたぐいだな」
「じゃあ、服屋と武具屋ね」
「それから、この村で見ておいたほうがいいところってないかな?」
「じゃあ、ジッグラトね」
「ジッグラト?」
「あんた、ジッグラトも知らないの?神殿のことよ」
いや、うちは真言宗で・・・。
「なんか言った?」
「あ!いや、べつになんも言ってません。そうか、神殿かあ・・そんなに立派なの?」
やべ、ひとり言が聞こえてた。
「そうね、エアがまだ栄えていた頃に建てられたものだから、だいぶ劣化が進んでいるけど、ソコソコ凄いわよ。なにしろ、世界の創造者であり、知識および魔法を司る神、エアを祀っているんだから」
「あー、エア村って、そのエアなんだ」
「あんた、ほんと何も知らないのね」
「スイマセン」
朝食後、一旦部屋に戻り、身支度を整えたあと3人で出かけた。
大通りを少し戻り、昨日夕飯を食べた店の向かいにあった、服屋に向かった。
店の前には、色とりどりの布が、うず高く積み上げられている。
素材は、木綿やウール、絹、亜麻、麻など様々だ。
「ごめんくださ~い。」
商品の山の間を縫って、店の中に入り、声をかけた。
「はいよ~」
奥の方から、猫人の店員が出てきた。
20代後半の、ナイスバディなお姉さんだ。
猫というより、豹だな。
「服を買いたいんですけど、適当に見繕ってもらえませんか?」
俺がそう言ってみると、店員のお姉さんは、頭からつま先まで舐めるように見たあと、ふっと奥に消えた。
「これなんかどお?」
しばらくすると、手に持ってきたものを、俺の体にあてて聞いてきた。
木綿でできたそれは、チュニックというやつで、古代ギリシャとかの壁画によく描かれているような、ワンピースみたいなやつだ。
袖の縁飾りに、チョトだけ房飾りがついている。
「ん、いいと思う」
「そだね。これください!」
エルとコリンが勝手に決めている。
「お、俺の意見は?」
「男がグダグダ言わない」
「セイヤお兄ちゃんのコーデはあたしが決める」
「ハイ・・・」
革製のサンダルも勝手に選ばれて、あっという間に俺の服装は決定してしまった。
「コリンもなんか買ったらどうだ?」
オーバーオールもかわいいが、少々くたびれているのがかわいそうだと思い、そう言ってみた。
「もう決まってる。これ」
コリンの姿が、いつの間にかその場から消えており、その言葉と共に奥から出てきた。
「どう?」
「おまっ、その格好!」
その姿を見て、俺は絶句した。
ベリーダンスの衣装そのままじゃんか。
確かにピンク色の透け素材の衣装は、コリンにピッタリだったが、露出がやばいだろ。
だいたい、お前まだ5歳だぞ!
「だめ?」
上目使いをしてきやがった。
どこでおぼえた?
「だめじゃないが・・・」
「じゃ、いいんだね。ヤッター!」
んー、買い物はやっぱり女子にはかなわん・・・。
「全部で、25000シケルになります」
「じゃあ、次は武具屋ね」
支払いを済ますと、エルが、さっさと店を出ていく。
「お願いします・・・」
何かに負けた気持ちの俺は、スキップしながらそのあとをついて行く、コリンのそのまたうしろを、トボトボとついて行った。
服屋を出たあと、今度は大通りを村の中心部へと向かった。
月のらくだ館の前を通り過ぎ、さらに進むと、左手の一軒の店へ入った。
「親父さんいる?」
エルが、店の奥の方に声をかけた。
店の中は、武器、防具の類が、所狭しと置いてある。
雑然として、無秩序に置かれている状態を見ると、ドン・キホーテを思い出す。
ただ、商品は丁寧に磨き込まれており、ホコリは被っていない。
「おう」
辛抱強く待っていると、野太い声が聞こえてきた。
ガタガタと、何かをひっくり返す音が聞こえたあと、ひげもじゃ、ずんぐりむっくりの爺さんが出てきた。
「なんじゃ、ウチに売りモンはないぞ」
いや、ここにいっぱい並んでいるじゃありませんか。
「なに相変わらず、バカなこと言っているのよ。あたしよ」
「おー、おー。エルじゃないか。元気にしとったか?」
「ん、元気」
「そうか、そうか。相変わらずカワイイのう」
ひげもじゃの厳つい爺さんを、バカ呼ばわりするエルも凄いが、そのエルの顔を見て、途端に目尻を下げてご機嫌をとる爺さんもなんだかなあ~・・・。
出てきたのは、道具関係でおなじみの、ドワーフの爺さんだった。
相当皺くちゃなんだが、いったい何歳なんだろう?
「今日は友達に、武具を売って欲しい」
ん?いま友達って言ったよな?
おー!友達って思ってくれているんだ。
なんか嬉しい。
「ほう、お前に友達ができたか。それは、それは・・・フム」
爺さんは、俺の顔をまじまじと見て、そのあとコリンのことも見た。
「フム。で、何がほしい?」
??なんかよく分からんが、合格らしい。
どうしようかな。
「ショートソードと、あと解体用にも使えるダガーみたいなやつを」
「なるほど・・・・じゃあ、これじゃな。」
俺の要望を聞いて、奥の棚から二本の剣を出してきた。
どちらも、すこし透明感のある銀色の刀身をしていて、持ち手には何かの図象の象嵌が施してある。
「お前さん、レベルはまだまだじゃが、魔法もそこそこ扱えるのじゃろ?その剣は、ミスリルが20%含まれとる。最初に持つ分には十分じゃろ」
「は、はい。ありがとうございます」
なんで分かるんだ?
他人のステータスって見れないんだろ?
「フン、不思議そうな顔をしておるな。200年もこの稼業をしていれば、相手がどれくらいの実力かぐらい見れば分かるわ」
「そ、そうなんですか?」
スゲー!
長寿族すげー!
「そっちのお嬢ちゃんには、これなんかどうじゃ?」
コリンに渡してきたのは、ショートスピアだった。
柄の部分が透明感のある真っ白な素材で、穂先は俺のと同じ素材のようだ。
「穂先は、あんちゃんの剣と同じ、ミスリル入りのもので、柄の部分は鋼よりも硬い焼物じゃ」
もしかして、セラミックス?
でも強度がなあ、衝撃に弱いだろ・・・安定化ジルコニア、あれか。
なんでそんなもの知っているか・・・・うちの父さんが、某メーカーでファインセラミックスの研究やってたんだよね。
それにしてもどうやって作ったんだ?
まあ、ミスリルっていうファンタジー素材がある時点で、なんでもありか。
「わー、ありがとう!お爺いちゃん!!」
「こら、コリン。ここで振り回すな!」
嬉しいのは分かるが、こんな狭いところで振り回されたら、危なくてかなわん!
「あと、防具はあまり体の動きを邪魔しないのがいいんですけど」
「じゃあ、革製のやつで要所をカバーするだけのにしておけ」
「分かりました」
そう言って、レザー・アーマーを2セット出してくれた。
「あとは、何か必要になれば、また来ればいいわ」
エルが言ってくる。
「そうだな、あの~お爺さん」
「ガンツじゃ」
「ガンツさん、全部でおいくらですか?」
「200万シケル。」
「ええっ!そんなに持ち合わせないんですけど・・・」
「と、言うところじゃが、エルの友達ということで、くれてやるよ」
そう言うと、ガンツさんは店の奥へ行こうとした。
「い、いいんですか?なんか、悪いような・・」
「未来への投資じゃ。若いものが、細かいことを気にするな」
言いながら、本当に店の奥に消えてしまった。
「ありがとうございます!」
「ます!」
俺が、ガンツさんの消えた方へ頭を下げてお礼を言うと、コリンも真似して隣で頭を下げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
異世界二日目。
心地の良い鳥のさえずりに、俺は目を覚ました。
昨日はやっぱり色々とあり過ぎた怒涛の一日だったようで、まだちょっと、朦朧としている。
敷いてある毛皮がモフモフで、意外と寝心地が良かった。
それに、抱いている尻尾もフサフサで、最高に気持ちいい・・・・・ん?
「なんで、お前が俺のベッドにいるんだーーっ!!」
俺は、寝起きのはっきりしない頭で、その手触りを楽しんでいた物体が、俺の懐にすっぽりハマるように丸まっている、コリンであることに気がついて、思わずとび起きた。
「フニャフニャ・・・あ。セイヤお兄ちゃん、おはようございましゅ」
狼狽している俺のことをよそに、コリンが目をこすりながら、ムクリと起き上がった。
「お、おはよう。・・・じゃなくて、隣に寝かせたはずなのに、なんで俺のベッドにいたのかと聞いているんだ」
「だって、寂しかったんだもん」
コリンが、目を伏せて言った。
「なっ・・・・そ、そうか」
そうか、そうだよな。
身寄りのない5歳の女の子が、見知らぬ土地で一人・・だもんな。
「分かった、しょうがないな。許す」
俺はそう言って、コリンの頭を撫でた。
「ありがとう!じゃあ、今晩も一緒に寝てくれる?」
「へ?あ、ああ・・・仕方ない、いいぞ」
「ほんと?やったーーー!!」
相手は、5歳の幼い子供だ。
別にやましい気持ちはないし、いや、あるわけないし、いいだろう。
両手を挙げて、喜びまくっているコリンの姿を見て、俺はそう思った。
「よし、まずは顔を洗ったら、朝飯だな」
「うん」
水瓶の水を使って洗顔を終えると、1階の食堂に下りていった。
食堂は結構広くて、20人くらいがいっぺんに座れるくらいの席数があった。
厨房も、オープンキッチンのようになっており、とても開放感のある気持ちのいいスペースだ。
「「おはようございます!」」
テーブルの間を、料理を持って運んでいた、サリーさんに挨拶をする。
「おはよう。昨夜はよく眠れたかい?」
「「はい!」」
「それは良かった。好きな席に座っていいんだけど、あっちの席の方がいいんじゃない?」
朝から、満面の笑顔のサリーさんが、窓際の朝陽が差し込むテーブルを、手に持った料理の皿で指した。
そこには、エルが1人で座って、朝食を食べていた。
「ありがとうございます」
俺はコリンと、サリーさんに頭を下げてエルが座っている方へ移動していった。
「エル、おはよう」
「エルお姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう」
俺たちが声をかけると、ちぎったパンを口に運びながら、外の景色を眺めていたエルが、こちらに振り向いて、挨拶を返してきた。
言い方がぶっきらぼうだが、口元は微笑んでいる。
どうやら、機嫌はいいらしい。
「さあ召し上がれ!」
俺たちが、エルの向かいの席につくと、サリーさんが料理を運んできて、テーブルの上に並べてくれた。
パンにバター、スープに目玉焼き、白いふわふわしたチーズが載ったサラダ・・あ、俺このチーズ知ってる、モッツァレラチーズだ。
このチーズうまいんだよな、パンは丸いちょっと固めのパンだ。
「あれ?」
「どうかした?」
「いや・・」
俺が、並べられた朝食一式に、違和感を感じて声をあげると、エルが怪訝そうにこっちを見た。
小さな器に入ったスープには、木のスプーンが付いていた。
パンは手でちぎって食べるし、バターは・・まあ、なんとかなるだろう。
でも、サラダは?
目玉焼きは?
ボウル状の器に入ったサラダは、さっき言ったチーズが入っていて、ドレッシングみたいなものもかかっている。
でも、朝食セットは以上だった。
フォークとか箸とかは?
そういえば、昨日の晩飯は、手で持って食べても違和感のないものばかりだったから、気が付かなかったけど、こっちに来て、スプーン以外のカトラリーを見ていない。
「これは・・・」
俺がその疑問を口にしようとした時、エルが自分のサラダを三本の指で器用に食べた。
そういうことですか。
「ん?」
「いや、なんでもないです」
エルがサラダを咀嚼しながら、小首をかしげてきたので、慌ててごまかした。
「・・・おいしい」
俺は、エルの真似をして、直接手を使ってサラダを食べてみると、その意外なおいしさに目を見開いた。
「でしょ」
エルが、そんな俺の様子を見て、少し微笑んで言った。
純粋な味つけは、塩と胡椒にオリーブオイルと、とても単純なのだが、通常の食感を含めた味覚に、指先から伝わってくる触感が加わることで、いままで経験したことのない、おいしさなのだ。
「セイヤおにひひゃん、食べないの?」
未体験の感動に固まっていた俺に、コリンが口いっぱいに頬張りながら、言ってきた。
「あ、ああ。たべる、食べる」
「で、案内してほしいって言ってたけど、どこを見たい?」
食後のお茶~ハーブティーみたいなもの~を飲みながら、エルが聞いてきた。
「そうだな、まずこの服なんだけど、これじゃあちょっと目立つかなと思うんだよね。それと、魔物の解体用のナイフとか、コリンにも持たせたいから武器、防具のたぐいだな」
「じゃあ、服屋と武具屋ね」
「それから、この村で見ておいたほうがいいところってないかな?」
「じゃあ、ジッグラトね」
「ジッグラト?」
「あんた、ジッグラトも知らないの?神殿のことよ」
いや、うちは真言宗で・・・。
「なんか言った?」
「あ!いや、べつになんも言ってません。そうか、神殿かあ・・そんなに立派なの?」
やべ、ひとり言が聞こえてた。
「そうね、エアがまだ栄えていた頃に建てられたものだから、だいぶ劣化が進んでいるけど、ソコソコ凄いわよ。なにしろ、世界の創造者であり、知識および魔法を司る神、エアを祀っているんだから」
「あー、エア村って、そのエアなんだ」
「あんた、ほんと何も知らないのね」
「スイマセン」
朝食後、一旦部屋に戻り、身支度を整えたあと3人で出かけた。
大通りを少し戻り、昨日夕飯を食べた店の向かいにあった、服屋に向かった。
店の前には、色とりどりの布が、うず高く積み上げられている。
素材は、木綿やウール、絹、亜麻、麻など様々だ。
「ごめんくださ~い。」
商品の山の間を縫って、店の中に入り、声をかけた。
「はいよ~」
奥の方から、猫人の店員が出てきた。
20代後半の、ナイスバディなお姉さんだ。
猫というより、豹だな。
「服を買いたいんですけど、適当に見繕ってもらえませんか?」
俺がそう言ってみると、店員のお姉さんは、頭からつま先まで舐めるように見たあと、ふっと奥に消えた。
「これなんかどお?」
しばらくすると、手に持ってきたものを、俺の体にあてて聞いてきた。
木綿でできたそれは、チュニックというやつで、古代ギリシャとかの壁画によく描かれているような、ワンピースみたいなやつだ。
袖の縁飾りに、チョトだけ房飾りがついている。
「ん、いいと思う」
「そだね。これください!」
エルとコリンが勝手に決めている。
「お、俺の意見は?」
「男がグダグダ言わない」
「セイヤお兄ちゃんのコーデはあたしが決める」
「ハイ・・・」
革製のサンダルも勝手に選ばれて、あっという間に俺の服装は決定してしまった。
「コリンもなんか買ったらどうだ?」
オーバーオールもかわいいが、少々くたびれているのがかわいそうだと思い、そう言ってみた。
「もう決まってる。これ」
コリンの姿が、いつの間にかその場から消えており、その言葉と共に奥から出てきた。
「どう?」
「おまっ、その格好!」
その姿を見て、俺は絶句した。
ベリーダンスの衣装そのままじゃんか。
確かにピンク色の透け素材の衣装は、コリンにピッタリだったが、露出がやばいだろ。
だいたい、お前まだ5歳だぞ!
「だめ?」
上目使いをしてきやがった。
どこでおぼえた?
「だめじゃないが・・・」
「じゃ、いいんだね。ヤッター!」
んー、買い物はやっぱり女子にはかなわん・・・。
「全部で、25000シケルになります」
「じゃあ、次は武具屋ね」
支払いを済ますと、エルが、さっさと店を出ていく。
「お願いします・・・」
何かに負けた気持ちの俺は、スキップしながらそのあとをついて行く、コリンのそのまたうしろを、トボトボとついて行った。
服屋を出たあと、今度は大通りを村の中心部へと向かった。
月のらくだ館の前を通り過ぎ、さらに進むと、左手の一軒の店へ入った。
「親父さんいる?」
エルが、店の奥の方に声をかけた。
店の中は、武器、防具の類が、所狭しと置いてある。
雑然として、無秩序に置かれている状態を見ると、ドン・キホーテを思い出す。
ただ、商品は丁寧に磨き込まれており、ホコリは被っていない。
「おう」
辛抱強く待っていると、野太い声が聞こえてきた。
ガタガタと、何かをひっくり返す音が聞こえたあと、ひげもじゃ、ずんぐりむっくりの爺さんが出てきた。
「なんじゃ、ウチに売りモンはないぞ」
いや、ここにいっぱい並んでいるじゃありませんか。
「なに相変わらず、バカなこと言っているのよ。あたしよ」
「おー、おー。エルじゃないか。元気にしとったか?」
「ん、元気」
「そうか、そうか。相変わらずカワイイのう」
ひげもじゃの厳つい爺さんを、バカ呼ばわりするエルも凄いが、そのエルの顔を見て、途端に目尻を下げてご機嫌をとる爺さんもなんだかなあ~・・・。
出てきたのは、道具関係でおなじみの、ドワーフの爺さんだった。
相当皺くちゃなんだが、いったい何歳なんだろう?
「今日は友達に、武具を売って欲しい」
ん?いま友達って言ったよな?
おー!友達って思ってくれているんだ。
なんか嬉しい。
「ほう、お前に友達ができたか。それは、それは・・・フム」
爺さんは、俺の顔をまじまじと見て、そのあとコリンのことも見た。
「フム。で、何がほしい?」
??なんかよく分からんが、合格らしい。
どうしようかな。
「ショートソードと、あと解体用にも使えるダガーみたいなやつを」
「なるほど・・・・じゃあ、これじゃな。」
俺の要望を聞いて、奥の棚から二本の剣を出してきた。
どちらも、すこし透明感のある銀色の刀身をしていて、持ち手には何かの図象の象嵌が施してある。
「お前さん、レベルはまだまだじゃが、魔法もそこそこ扱えるのじゃろ?その剣は、ミスリルが20%含まれとる。最初に持つ分には十分じゃろ」
「は、はい。ありがとうございます」
なんで分かるんだ?
他人のステータスって見れないんだろ?
「フン、不思議そうな顔をしておるな。200年もこの稼業をしていれば、相手がどれくらいの実力かぐらい見れば分かるわ」
「そ、そうなんですか?」
スゲー!
長寿族すげー!
「そっちのお嬢ちゃんには、これなんかどうじゃ?」
コリンに渡してきたのは、ショートスピアだった。
柄の部分が透明感のある真っ白な素材で、穂先は俺のと同じ素材のようだ。
「穂先は、あんちゃんの剣と同じ、ミスリル入りのもので、柄の部分は鋼よりも硬い焼物じゃ」
もしかして、セラミックス?
でも強度がなあ、衝撃に弱いだろ・・・安定化ジルコニア、あれか。
なんでそんなもの知っているか・・・・うちの父さんが、某メーカーでファインセラミックスの研究やってたんだよね。
それにしてもどうやって作ったんだ?
まあ、ミスリルっていうファンタジー素材がある時点で、なんでもありか。
「わー、ありがとう!お爺いちゃん!!」
「こら、コリン。ここで振り回すな!」
嬉しいのは分かるが、こんな狭いところで振り回されたら、危なくてかなわん!
「あと、防具はあまり体の動きを邪魔しないのがいいんですけど」
「じゃあ、革製のやつで要所をカバーするだけのにしておけ」
「分かりました」
そう言って、レザー・アーマーを2セット出してくれた。
「あとは、何か必要になれば、また来ればいいわ」
エルが言ってくる。
「そうだな、あの~お爺さん」
「ガンツじゃ」
「ガンツさん、全部でおいくらですか?」
「200万シケル。」
「ええっ!そんなに持ち合わせないんですけど・・・」
「と、言うところじゃが、エルの友達ということで、くれてやるよ」
そう言うと、ガンツさんは店の奥へ行こうとした。
「い、いいんですか?なんか、悪いような・・」
「未来への投資じゃ。若いものが、細かいことを気にするな」
言いながら、本当に店の奥に消えてしまった。
「ありがとうございます!」
「ます!」
俺が、ガンツさんの消えた方へ頭を下げてお礼を言うと、コリンも真似して隣で頭を下げた。
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