エンリルの風 チートを貰って神々の箱庭で遊びましょ!

西八萩 鐸磨

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12.ともに

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**************



「エルや、聞こえておるか?」


 え?

 エア神様の像の前で、お祈りを捧げていたら、頭の奥に誰かの声が聞こえてきた。


「あなたは?」

「そなたの目の前に、おるじゃろう」

「エア神様?」


 そんなことあるはずが!

 あたしは、隣りにいるはずの、セイヤくんと、コリンちゃんの方を見た。


「!」


 お祈りしたまま、固まってる!

 全然、動かない!

 どうして?

 死んじゃったの?


「大丈じゃ、2人とも死んではおらんよ」

「はっ!」


 神像が、しゃべった?


「驚くのも無理はないが、ワシは、直接そなたの心へ、話しかけているのじゃ」

「本当に、エア神様なのですか?」

「ああ、本当じゃ」


 そんな・・・。


「そんな!!どうして・・どうしてあの時もっと早く、助けに来てくれなかったんですか!?」


 どうして、もっと・・・。


「あのときは、すまんかったのう。クサリクのやつを、封印するのに手間取ってしまって、そなたのいた町まで到達したのが、最後になってしまったのじゃ」

「でもそのために!そのために、みんな殺されて・・・お母さんも、お父さんも・・・・」

「すまぬ・・」


 あたしは、憎かった。

 お母さんとお父さんを奪った、魔物を。

 あたしは、許せなかった。

 救ってくれなかった、神様たちを。

 だから、強くなろうと思った。


 あのとき・・・・。



***************


 あるとき、町の司祭様が町のみんなを集めておっしゃった。

 神々が戦争を始めたと。

 いにしえの神、アプス神とエア神たち新しい神々が。

 
 アプス神は、11の魔物の内の一つ。

 有翼の牡牛クサリクを使役して、神々を相手に攻めてきた。


 クサリクは、ミノタウロスを配下としていた。

 数百、数千を超えるミノタウロスとその他の魔物の軍勢は、村や町、王都を破壊しつくした。


 やがて、エルの故郷、イナンナの町も、ミノタウロスの軍勢が侵攻してきた。

 またたく間に魔物に襲われて、多くの人々が殺された。


 エア神の率いる神々の軍が、クサリクを封印し、その配下のミノタウロス軍を掃討し、エアの計略によりアプスが倒されると、ようやく戦争は終結した。


 しかし・・・イナンナの町に神々の軍が到着し、町が救われる直前に、エルの両親は、ミノタウロスによって、エルの目の前でその身を引き裂かれて死んでいたのだった。


 幼かったエルは、ぎりぎりのところで命が助かったものの、天涯孤独となった。


 幼いながらに、魔物を憎み、間に合わなかった神々のことも恨んだ。

 ・・・・その反面内心では、助けてくれたことへの感謝もあった。


 目の前で両親を惨殺されたエルは、普段は滅多に感情を見せることが、ほとんどなくなった。


 エルは、独りで生きるため、魔物に復讐するため、冒険者として力をつけ続けた。


 力をつけるため、来る日も来る日も、ただ淡々と、魔物を狩り続けた。


 あるとき、Aランクの魔物と遭遇し、瀕死の重傷を負う。

 偶然助けられたものの、エア村の神殿に運ばれて、司祭のエリスによって、ヒールをかけてもらい、辛うじて一命をとりとめたのだった。


 それから、少しずつ感情を見せるようになったものの、相変わらず日々淡々と魔物を狩り、やがてAランクの冒険者となった。



***************


「あたしのことを・・・お母さんとお父さんのことを、助けてくれなかった神様が、今さらあたしに何の用があるっていうんですか!?」

「じつはな、頼みがあるんじゃ」

「ふっ、何もしてくれなかった神様が、頼みですか?」


 図々しいにも、程がある。

 どの面下げて、頼みなんて・・・。


「図々しいのは、承知の上じゃ」




 あたしは、頼みなんて聞く気はなかった。

 でも、耳を塞いだって、声は聞こえてくる。


「実はな、11の魔物がもうすぐ、復活するのじゃ」

「えっ!アプス神は、エア神様たちが、倒したんじゃ?」


 一瞬にして、あのときの光景が目の前に蘇った。

 廃墟と化したイナンナの町、無数の死体が焼け焦げる臭い。

 そして、お母さんとお父さんの・・・。


「・・それに、クサリクは封印したのでは?」

「アプスの妻のティアマトが、我らに復讐するため、邪神に堕ちたのじゃ」

「では、ティアマトが?」

「息子のキングウを使い、11の魔物を復活させようとしている」


 あたしは、どうしようもなく腹が立ってきた。

 神々の諍いに、なぜあたしたちが、巻き込まれなきゃいけないのか。


「でも、また神様たちが、倒してくれるんでしょう?」

「それが、そうもいかないのじゃ。ティアマトは、邪に堕ちた。堕ちたということは、もはや神ではない。神ではないものと、神である我らが戦うことは出来ぬ」


 そんな、勝手な!


「それにな、ティアマトの狙いは、この世界そのものの破壊なのじゃ。ティアマトとアプスが、大元を創り、ワシらが完成させた、この世界がな」


 だからどうしろと、いうのだ。

 あのときと同じように、ただなす術なく、見ているだけしか出来ないのではないか。


「この村や人々のことを、どう思っておる?」

「どうって、別に・・・こんなあたしでも、優しくしてくれるし、エリス様、司祭様には命を助けていただいたし・・・」

「セイヤやコリンのことは、どうじゃ?」

「セイヤくんたちと一緒にいると、楽しいし、なんか落ち着くけど・・・」


 何を言っているの?

 魔物の大群の侵攻が、始まろうとしているのに、何が言いたいの?


「頼みというのはの、セイヤを助けてやってほしい、ということじゃ」

「どうしてここで、セイヤくんの話しが出てくるんですか?」


 魔物の脅威と、昨日今日会ったばかりの人を助けることと、どう関係があるというのだろう。


 「それは、セイヤに邪神の討伐を託したからじゃ」


 ちょっと、ふざけんじゃないわよ!


「あたしを、からかっているんですか!?今日、冒険者登録したばかりの、Eランクの初心者に、邪神討伐なんて、出来るわけがないでしょう!!!」

「からかっている訳ではない。彼には、特別な加護が授けられているのじゃ」

「あたしだって、加護ぐらい持っているわ!エンリル様の加護が!!」

「そうではない、邪神を倒しうる加護が授けられているのじゃ」

「はん!だったら、あたしなんて要らないんじゃないですか?の加護しか、持っていませんので!」


 もーほんとよく分かんない、あたしに何をさせたいの!


「そうもいかんのじゃ、そなたもさっき言ったとおり、セイヤは戦いに関しては、素人じゃ。いくら、特別な加護があろうとも、使いこなせねば、意味を成さん」

「それは、エア神様の人選ミスだったんじゃないですか?」

「彼が選ばれる理由があったのじゃ、その理由について、言うことは出来ぬが・・・」

「フン。で、結局あたしに何をしろと?」

「セイヤに戦い方を教えてやって欲しい。そして、共に戦ってやって欲しいのじゃ」


 ま、そうだろうとは思ったけど・・・。


「戦い方を、教えるのは構わないけど、どうして一緒に戦わなければならないの?」

「それは・・・・そなたが、一番よく分かっているんじゃないかの?」

「えっ?」

「なぜ、そこまで強くなろうとした?」

「それは・・・・」


 あたしは、強く成りたかった。

 両親を殺した奴らに、復讐するため。

 独りでも、生きていけるようになるため。

 ・・・・・うううん、もう二度と大切なものを、失くさないため。


「・・・分かりました。あたしに出来ることがあるなら、全力でやってみます」


 こんなあたしでも、優しくしてくれる村の人たちも、命を助けてくれたエリス様も・・・せっかく、友だちになれそうな、セイヤくんやコリンちゃんたちのことも、失いたくない!


「それと、コリンのことも、助けてやって欲しい」

「コリンちゃんは、まだ5歳です。あんな幼い子が、一緒に戦いの場にいるなんて、危険なだけじゃなく、足手まといになるだけではないですか?」

「それが、彼女の運命さだめであり、彼女自身が望んだことじゃ。だから、せめてそばにいて助けてやって欲しいのじゃ」

運命さだめというのは、納得はいきませんが、あの子がそう望むなら、支えてあげたいと思います」

「ありがとう。ならば、そなたに新たな加護を授けよう。その能力ちからをもって、彼らを支えてやってくれ」


**************
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