エンリルの風 チートを貰って神々の箱庭で遊びましょ!

西八萩 鐸磨

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35.王都本部

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 城門前の広場にやってきた俺たちは、ある1棟の建物の前に立っていた。


 王都へやってきた者が、城門をくぐり見上げた時に、最初に目に飛び込んでくるのが、この建物だ。


 広場を挟んで正面にそびえ立つそれは、ハルバト国冒険者ギルドの王都本部である。


 日干しレンガを使って、どのような技術で造られたのかは分からないが、高さ30mくらいある建物は、地球でいう所謂ビザンチン様式の建造物だった。



 スザンヌさんを先頭に、装飾の施された重厚な扉を開けて、中へ入ろうとしたちょうどその時、手をかけようとしたその扉が内側から勢い良く開かれた。


「ちょっと、何なのよ!」(スザンヌ)

「うわ!」(俺)

「きゃ!」(アイリス)

「っと!」(エル)

「ほよ!」(コリン)

「にゃ!」(・・・・)


 慌てて体をひねって避けた俺たちのすぐ脇を、20人程の冒険者たちがゾロゾロと出ていく。


「よーしぃ、一旦集まってくれぇ!・・・これからイナンナの町へ向かうがぁ!馬車は5台しか無いぃ!パーティー毎に乗ってもいいがぁ!アブレたやつは、ソロと同乗してくれぇ!」


 ギルド職員とは思えない、ごつい感じの男が冒険者たちに言っている。

 言われた冒険者たちは、広場に停めてあった馬車に、それぞれ分乗していった。


「乗ったなぁ?・・・じゃあ出発だぁ!」


 馭者たちが馬にムチを入れると、ガタガタと音を立てて、馬車が走り去って行った。




「・・・・なんなんでしょう?」(俺)

「さあ?」(スザンヌ)

「イナンナの町って言ってた」(エル)

「言ってましたね」(アイリス)

「ほよ?」(・・・)

「みゃ。」(・・・・)





 改めて、気を取り直した俺たちは、ギルドの中へと足を踏み入れた。



「・・・すげえ」(俺)

「ハア・・・」(アイリス)

「ほよ~~」(コリン)


 入口からすぐのロビーは吹き抜けのホールになっており、円柱が林立している。

 壁と天井は、曲線で構成された壮麗な装飾が規則正しく埋め尽くしており、見上げるほど高い位置にあけられた、ステンドグラスがはめ込まれた縦長の窓からは、厳かな雰囲気の明かりが差し込んでいた。



「ヒタト国の建物は、どれも無骨で、どちらかというと質実剛健な感じなので、とっても新鮮です」


 アイリスは胸の前で両手を組み、目をキラキラさせて言っている。


「ステンドグラスあるんだ・・」

「え?」


 俺が小さくつぶやくと、エルが聞き返してくる。


「いや、なんでもない。・・それにしても、ここ神殿じゃないよな?」

「なに言ってるの、当たり前でしょう。神殿から、あんなにゾロゾロと冒険者が出て来る訳ないじゃない」

「そりゃそうですね」


 アホなこと言ったら、スザンヌさんに窘められてしまった。


「ほら、ぼーっとしてないで行くわよ」


 スザンヌさんはそう言って、ずんずん広いロビーを横断していく。


「あの、どこ行くんですか?受付はあっちみたいですけど?」


 俺は、10個ほど並んでいるカウンター窓口を指差した。

 さすがに王都本部だけあって、窓口の数が多い。


「いいのよ、そんなの後回しでも」


 一瞥もせずに進んでいき、奥の方にある手摺のついた立派な螺旋階段を昇り始めた。

 スザンヌさん以外の俺たちは、頭に『???』を浮かべながら、あとをついて行く。



「さあここよ!」


 螺旋をなん回転かして、ようやく最上階とおぼしきところまでたどり着いた時、スザンヌさんが言った。


 目の前には木製のでっかい扉。

 
 ここって・・?


「お久しぶり~~」


 あの、ノックとか大丈夫ですか?



  





 扉を開けたらすぐに広い部屋・・な訳はなく、小部屋があって机が一つある。

 その机には、スザンヌさんの声に反応して顔を上げた女性が一人。

 薄目のブロンドの髪で、スラリとしたナイスプロポーションの、エルフの女性だ。


「あ、あの・・アポイントメントは?」


 目の前を素通りするスザンヌさんに、慌てて立ち上がって声をかける。


「そんなの無いわ」


 スザンヌさんは、そのまま奥の扉に手をかけて、思いっきり開け放った。

 俺たちはどうしていいか分からずに、とりあえず愛想笑いでその女性にヘコヘコ頭を下げている。


「こ、困ります!」

「おひさー、ベンちゃん!元気してたあ?」


 おねえさんの抗議の声を、一切取り合わず、扉の奥の人物に声をかけた。


「だから前々から言っているだろう、ノックくらいしろと」


 メガネを外しながら(メガネあるんだ)、窓際の馬鹿でかい机の向こうに座っていた男の人が、立ち上がった。


 えらい渋い声だなあ。


 立ち上がってみると、結構デカイ。

 スザンヌさんよりかは、ちょっとだけ低いかな?

 筋骨隆々の身体に、わずかに白髪の混じったブラウンの短髪髭面の精悍な顔立ち。

 今でこそ渋いおじさんだが、若い頃は相当のイケメンだったんだろう。


「あら、あたしとあなたの仲だもの、そんな他人行儀なことはいらないでしょう?」


 そう言って、スザンヌさんはズカズカと部屋の中を移動して、机の横にあったソファーセットの内の1つに、どかりと腰を下ろした。


「まったく・・・相変わらずだな。だいたい、誤解を生むような言い回しはやめてくれんか?スザンヌ」


 そのひとは肩をすくめると、苦笑を洩らした。


 笑うと、ちょっとだけ下がった目尻のシワがかわいい。


「君たちも適当に座ってくれたまえ」


 俺たちの方を見て、言ってくれる。


「あ、ありがとうございます」


 二人のやり取りを、ホケーと見ていた俺たちは、これまた恐縮しながら部屋を横断し、スザンヌさんの周りのソファーに腰を下ろす。

 ライアンはなぜか、俺の膝の上だ。


「・・それで?あの『剛力の牆壁』が、こんな可愛い子たちを引き連れて押しかけて来るなんて、どういうことですかな?」


 スザンヌさんの隣の、一人がけソファーに腰を下ろしながら、そのベンちゃん?さんは言った。


「『剛力の乙女』よ。大体、その呼び方はやめてって言ってるでしょう?・・・なんかのどが乾いたわね?」


 スザンヌさんが、俺たちを見回したので、みんな一斉に首をカクカクと縦に振る。


「わかった、わかった。あー、ミレリ君!みなさんに飲み物を」


 さっきのおねえさんに、指示をしてくれた。


「あら、催促したみたいでごめんなさいね」

「別に構わん。・・で?」

「随分せかすわね、久しぶりなんだから、一息ついてからでもいいでしょう?」

「まったく・・。これでもギルド長兼本部長だからな、そこそこ忙しい身なんだぞ?」

「それは、ベンちゃんが自分で引き受けてしまったんだから、しょうがないでしょう?・・あ、エリリンに頼まれたんだっけ?」

「古い話だ・・・それより、そっちこそ職員の前で『ベンちゃん』呼ばわりはやめてくれないか?」

「あら、どうして?親近感が増していいじゃない」

「示しがつかんだろ」

「お待たせしました」


 よくわからない二人のやり取りを、唖然として聞いていたら、ミレリさんが飲み物を持って戻ってきた。


「「「「ありがとうございます」」」


 ミレリさんは、俺たちの声の揃ったお礼に、ニッコリ微笑むと、一礼して部屋を出ていった。




「そう言えば、紹介がまだだったわね」


 スザンヌさんは、いい香りのする紅茶を一口飲んだあと、おもむろに言った。


「この男の子は、セイヤくん。Bランクの冒険者よ。膝に乗っているのが、使役獣のライアンちゃんね」

「ほう、この若さでBランクかね」

「ま、まあ。たまたまです」


 俺は、頭を掻きながらヘコヘコする。
(ちょっと!ヘコヘコしない)

 エルに、陰で肘打ちされた。

 ライアンは、アクビをしている。

 
「で、この子は妹さんのコリンちゃん」

「どもです~~!」

「それから、この子は知ってるわよね。Aランク冒険者のエルちゃんよ」

「ああ、もちろん知っているとも。久しぶりだね」

「ども」

「最後に、この子はアイリスちゃんよ。ヒタト国出身よ」

「アイリスです。よろしくお願いします」

「なに!ドワーフ族だからもしやと思っていたが、やはりそうなのか?!」

「は、はい」


 なにやら、めちゃくちゃ喰いついてくる。


「ああ、その話はそのうちにね。で、こっちのシブメンが、冒険者ギルド王都本部のギルドマスター兼本部長の、ベンちゃん。通称ベンジャミンよ」

「逆だ!あ~、ベンジャミンだ。よろしくな」


 ベンジャミンさんは、そう言って俺達の方を向き、ニッコリ笑った。

 目尻にシワができる。



「で、こんなに大勢若いのを引き連れて、なにしに来た?」

「ん?ああ、あたしギルマスやめたから。一応その報告に?みたいな」

「なんだってぇーーー!!!」


 ベンジャミンさんが、バンとテーブルを叩いて立ち上がった。


「や、辞めただと?!な、なにを勝手に!」


 ベンジャミンさんは、立ち上がったまま、握りこぶしをプルプルと震わせている。


「あら、いいじゃない。あとは、ガイちゃんに任せたからなんとかなるでしょ」


 スザンヌさんは、自分でポットから紅茶を注ぎ、ズズズとすすった。


「そういうことを言っているのではない!エリムがどういう思いで、お前をエア村あそこのギルマスに任命したと思っている?・・・だいたい、この大変なときによりにもよって!」


 ストンとソファーに戻り、ベンジャミンさんは両手で頭を抱えている。




「「エリム?」」


 そんな二人を尻目に、エルとアイリスが小さくつぶやいて、首を傾げた。


「どうした?」


 俺は隣のエルに体を寄せて、小声で聞き返した。


「ん、あとで」
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