4 / 36
第一章 リアルチーター
四本目 初ボス討伐&ぼっち応援称号の入手
しおりを挟む《ボスエリアに入りました》
夕飯を食べ終え、ゴブリンと戦闘をした平原を進んでいるとそんな機械的な声が脳内に届いた。
「ん?ボスエリア?」
突然すぎない?前触れとかないんだね。いや僕が知らないだけ?
《ボスモンスター『クリムゾンボア』との戦闘に入ります》
その言葉が聞こえた瞬間、木々をなぎ倒し真っ赤な猪が現れる。
―――――――
クリムゾンボア Lv25
ルミリエイスのエリアボス
―――――――
「クリムゾンボア、か。でっかいなー。てかルミリエイスって何?」
見ればわかる。普通の猪じゃない。
多分4mくらいかな?牙もかなり長い。1mぐらいはあると思う。
ボスエリアってことは多分ショートが言ってたフィールドのボスだろう。
ふふっ、さっきまでゴブリン達しか出てこなかったからなぁ。
ボスってくらいだし比べ物にならないくらい強いはず!
期待が膨らむねぇ。
「さて、やりますかー」
「ブモォッ!!」
猪が突進してくる。
あれは食らったらヤバそうだなぁ
まぁ、当たったらの話だけど。
突進してくる猪へ向けて走り出す。
そのまま地面へすべりこみ・・・即ちスライディングをする。
「身体が無駄に大きいせいで足下ががら空きだよ」
猪の腹の下を通り・・・ショートから教えられた〈インベントリ〉から取り出した剣で腹を切る。
が、狭い空間では当然剣を振る事は出来ず、表面の皮を斬っただけだった。
現在使っている剣は―――
―――――――――
〈木の剣〉
Damage+2
耐久:20
ほぼすべての町で買える木で出来た剣
壊れやすく攻撃力も低い代わりにとても安い。
初心者御用達
―――――――――
というもの。
最初から持っているお金だけで買えたからこれにしたんだけどね。
正直初心者なのに御用達という表現はどうかと思う。
ちなみに所持金を知りたいときはそのまま頭の中で念じる。
すると、
―――――――
MONEY
1000G
―――――――
と出てきた。
木の剣を買い、ゴブリンのドロップアイテムを売ったところ、現在の所持金は1700Gになっている。
・木の剣-100G
・ゴブリンの魔石+100G ×4
・ホブゴブリンの魔石+400G
というのが詳細。
あと、ゴブリンやホブゴブリンがドロップした石は魔石というらしい。
おっと、考え事する時間じゃなかったね。
木の剣では大猪の腹を切り裂くことはできなかった。
けれど、どうやら突進した相手が逃げもせずに自分の腹を切りつけたことに驚いたらしく、
「ブモッ!?」
と驚愕の声をあげながら急ブレーキ。すぐに後ろを振り返ろうとする。
が――――
「遅い。無駄な動きが多いよ」
大猪が振り向いた瞬間に木の剣を左目につきたて、猪の牙を蹴って離脱。
どうやらこのゲームは血が出ることがないらしい。
代わりに赤いエフェクトが舞っている。
《部位破壊・目 『クリムゾンボア』の目を破壊しました》
おっと、部位破壊なんてのもあるんだ。多分体の一部が使えなくなると出てくるんじゃないだろうか。
「ボオオオオオオ!!」
大猪が悲鳴を上げ、怒りに染まった顔で再び突進。
けどなぁ・・・
「さらに単純になってどうするのさ」
直前で躱す。すると、そのまま背後にあった大岩にぶつかった。
おっと、岩が割れちゃった。やっぱりパワーはあるんだね。
「でも力だけじゃ・・・足りないよ」
岩にぶつかり勢いの止まった大猪の首筋に一閃―――
大猪の首に赤い線が奔る。まぁ真っ赤だからすごく分かりにくいけど。
どうやらこのゲームでは首の一部を切ったからといって即死なわけではないらしい。
「根性なのか、システムなのか。まぁどっちでもいいか・・・ん?」
大猪が立ち上がる。しかし、様子がおかしい。
真っ赤だった体の毛皮の色が・・・いや、毛皮ではない。周囲に赤黒いオーラのようなものが出ている。
これは――――
「ボス特有のパワーアップってとこかな・・・面白い!!」
口角が上がるのを感じる。
雰囲気で分かる。先ほどまでに比べれば、随分マシになってる。
僕の顔は今ニヤけてるのかな。
「来い」
「ゥガァァァ!!!!」
大猪の咆哮が響き渡る。
これは・・・鼓膜が破れちゃいそうだなぁ。
あ、回復魔法で鼓膜って直せるのかな?破れちゃったらやってみよう。
「ガァッ!!!」
「よっ、と」
大猪の牙による突きを横に跳躍して回避。
すると首を振って牙をぶつけようとしてきた。
それ・・・現実なら首ちぎれると思うんだけど・・・
今度は背後に跳躍して躱す。
大猪が忌々しそうに睨みつけてくる。
「ガァァ・・・!!」
「ははっ、怖いなぁ。さっきから声が猪っぽくないよ?」
怖いと言いつつも笑ってしまう。
言葉は分からずとも馬鹿にされていることを理解したのか、クリムゾンボアは駆け出した。
「・・・ここまでかな」
「ブ・・・ガッ・・・!?」
真横に跳躍。タイミングを僅かにずらし、剣を振るう。
先ほど首を切りつけた時は、大猪の右側から斬る。
今度は左から。
「ふっ!!」
気合の声と共に、一閃
首の右側にあった赤い線と太刀筋がちょうど重なるように切断。
現実なら首が落ちていたと思うけれど、このゲームではそんなことはないらしい。
まぁこのゲーム子供も出来るようになってるからね。
さすがにそこまでリアルにはしないか。
まぁゴブリンは腕とか普通に切れてたけど
腕と首じゃ扱いが違うのかな?
なんて考えていると――――
《エリアボス『クリムゾンボア』の単独討伐に成功》
《〈紅い大猪の牙〉を入手しました》
《〈紅い大猪の毛皮〉を入手しました》
《【孤高の戦士】の称号を手に入れました》
《【孤高の僧兵】の称号を手に入れました》
おおっ!?
何か一杯頭の中に流れてきた。
まぁとりあえず、ステータス確認してみようか
――――――――
Name:リューセイ
JOB:聖法士
Lv:8
HP:142(初期値100+1Lvごとの増加量6×7Lv)
MP:324(初期値240+1Lvごとの増加量12×7Lv)
STM:135(初期値100+1Lvごとの増加量5×7Lv)
STR:142(初期値100+1Lvごとの増加量6×7Lv)
AGI:142(初期値100+1Lvごとの増加量6×7Lv)
VIT:142(初期値100+1Lvごとの増加量6×7Lv)
(通常のステータス増加量は1Lvごとに5)
Skill:【剣術】Lv2.【無手術】Lv3.【身体操作】Lv2.
【回復魔法】Lv1.【火魔法】Lv2
称号:【孤高の戦士】【孤高の僧兵】
――――――――
おおー結構ステータス上がってるね。剣は耐久がないからクリムゾンボア以外には使ってないんだけど・・・Lv2になってる。
聖法士はMPが魔導士の次に上がりやすいらしい。けどそれ以外も少しだけ上がりやすいみたいだ。
確か近接系の職業ならHP・STR・AGI・VITだけ上がりやすいはずだから、聖法士は魔導士と近接職の中間なのかな?
まぁかなり中途半端だから人気ないのもしょうがないか・・・パーティの役割分担ではやりづらいし。
得意の回復魔法も他の人が使えるんじゃね・・・近接職でもスキルが上がりにくいだけらしいから。
魔法系のスキルは初期のものを最初の街で〈スキルブック〉として入手できるみたい。お金が全く足りなかったから買ってないけどね・・・
無詠唱が出来ないなら誰でも使えるわけじゃない気がする。
ただ、スキルLvが低いとたとえ無詠唱で使えても魔力の消費が大きいらしい。
さらに、無詠唱だと集めた魔力が足りないと威力は落ちる。逆に無詠唱なら本来弱い魔法もつぎこむ魔力次第で強くなるらしいけどね。
まぁ聖法士もソロでやるならいいんじゃないかな?回復魔法まだ使ってないけどね
新しく手に入れた中で気になるのは称号ってやつだね。名前は似てるけど、どういうものなのかな
えっと、意識を集中すると詳細が見れるはず・・・
――――――
称号【孤高の戦士】
取得条件:ボスを適正レベル未満で単独討伐する
効果:パーティを組んでいない時にステータス微増
――――――
いい効果だとは思うんだけど・・・ぼっちを応援する称号かな?
名前もかっこいい・・・けどぼっちをかっこよく言い換えただけな気がするのは僕だけ?
うん、僕は試しにソロやってるだけだから気にしないようにしよう。
次。
――――――
称号【孤高の僧兵】
取得条件:ボスを適正レベル未満の聖法士で単独討伐する
効果:魔法職の職業特性による物理ダメージ削減と被物理ダメージ増加を軽減する
――――――
おおー!これはいいね!
聖法士は職業特性で物理ダメージを70%に下げ、逆に物理ダメージを食らった場合120%に増やすらしい。
まぁ、剣を振る速度でダメージが変化するみたいだから、ボス相手にも通用してたけど。
これならもっと戦いやすくなるね!
けどぼっちを応援する称号多くない?
アイテムも手に入ったみたいだけど、今すぐ使えるようなものではないかな。
さっきの戦いで木の剣が壊れちゃったからなぁ・・・
まぁ、素手でも問題ないか。ショートが言うにはエリアボスを倒して少し進めば街があるらしいから、そっちに行けば買えるだろう。多分。
次の街に行ってみよー!
あれ?そういや前の街の名前なんだっけ?
※ルミリエイスです
0
あなたにおすすめの小説
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる