弟、異世界転移する。

ツキコ

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2章

23

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「魔王の気配が途切れて、アンデット達が1箇所に集まってると思ったらケイちゃんだもんなー」

「その、ありがとうございました…」

手を差し伸べられ、助け起こしてもらう。
彼の首からペンダントのような謎の小瓶がぶら下がっている。
もしかするとアンデット達はこれに叫んでいたのだろうか。

「いーよいーよ。それよかさ、なんでこんなとこいたの?魔王は?」

「えっと…」

何から話せばいいのやら。
そもそも会ったのなんていつぶりだろう。
あれから何日経っているのかももうよくわからない。

「ん?ケイちゃんなんか…」

ケイがどう言えばいいか悩んでいる時、その顔色に気がついた。
走ったせいだけではない顔色に手を伸ばすユリウス。

「…それ以上この子に触るな」

しかしその手がケイに触れることはなく、別のひやりと冷たい手がそれを捕える。
まるで掴まれたそこから凍っていくようだった。

「お兄ちゃん…」

「待て待て待て。おかしくない?えっなんで?なんでお兄ちゃん?」

魔王だということは溢れ出る魔力からわかっていたがつっこまずにはいられない。
手首から全身へ冷気が広がっていく。
いつも余計なことを言ってしまうのはユリウスの悪い癖だ。

「ボクとこの子は家族なんだからおかしくないよ。楽しんでたのに邪魔しやがって…」

「あの、えと、帰ろ…?ね?」

さらに強まった冷気と圧力にユリウスが顔を歪ませるとケイが慌てて止めに入った。
小さく震えながら言う様は庇護欲を、あるいは加虐心を唆る。

「……。うん、そうだねぇ。ケイくんもだいぶよくなったもんねぇ」

すっと瞳を細め、ユリウスを見ていた表情のままケイを見た。
しかしそれは一瞬のことですぐに顔に笑みを浮かべる。

「あ、そうだ。アイツにケイくんは元気ですって伝えてくれるぅ?」

完全に挑発である。
お前なんかいなくても元気ですよ、という意味だ。

「あいつ?」

「そうだよぉ。アイツはアイツ。ケイくんの呼び声に応えたボクじゃないもう1人のことだよぉ」

「もう、1人…」

言い方が少しよくわからなかったがそれでも誰かがもう1人いることはわかった。
彼とその人の仲がよくないこともわかった。

「それじゃ早く帰ろうねぇ。ボク、ケイくんと一緒に飛ぶ方法思いついたんだぁ」

飛ぶ方法はなんとも簡単。
魔王様もお得意の闇魔法で背中から翼を生やすだけ。

そうするとあら不思議。
誰でも簡単に空を飛べちゃいます。
ただしコントロールは各自自己責任でお願いします。

ケイが魔王に連れられて空へ飛んで行く。
ユリウスはそれを見上げながら自分に投げられた伝言にため息を吐いていた。
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