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Ep.2-3 《絡みつく蛇の罠》
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無数の蛇がアーニャの体に絡みつく。
いくら払いのけようとしても、蛇は次から次へとアーニャの体を這いずり回り、とてもこの拘束から逃げられそうにない。
ニヤリと笑うダリオの顔を、アーニャは睨みつける。
「お前は、亜人種……ッ!」
「クヒヒ、ソーだヨォ……別にコノ大会には、普通の人間以外の体で出場してはイケナイってルールはナいからネェ……」
『で、出たー! ダリオ選手の十八番、体の中に巣食う無数の蛇をダリオ選手は意のままに動かす《操蛇術》! これがダリオ選手がスネークマンと呼ばれる所以だーッ!』
(それって、比喩表現とかじゃなくて見たままの姿でしょ……ッ!)
そう心の中でボヤくも、状況は変わらない。
『この大会に一般的な競技用人型アバターで参加しなければならないというルールはない。だからダリオ選手のような亜人種体型のアバターを使用したとしても、問題はないわけです』
『そう! これこそがミヨ様主催、最強王決定戦の醍醐味なのですッ!』
盛り上がる観衆の声がザァっと響く。
どうやらこの大会においては、ダリオのように亜人種アバターを使用することは普通のことらしい。
普通の人間型アバターで参戦していたアーニャは、ゲーム開始時点で既に不利な状況だったと言える。
(くっ、なんとかこの状況を……)
「ほ~ら、食べちゃうヨォッ!」
「い”ッ!?」
不意に、注射針で刺されるような痛みが右手首に走る。
視線を向けると、一匹の蛇が手首に噛み付いていた。
「こ、の……っ」
「ほらほら、モット抵抗してみなヨ?」
「あッ……ぐぅ……っ!」
手首だけじゃなく横腹や太もも。
体のいたるところに痛みが走る。
数が多すぎて、もはや体のどこを蛇に噛まれているのか視認することもできない。
『ああーっと! アーニャ選手、体のあちこちを蛇に噛まれていくッ! このまま何もできずに終わってしまうのかーッ!?』
(こんな、ところで……)
なんとか勝機を見出そうとするアーニャだったが、体は既に皮膚が見えなくなるほどの無数の蛇に締め付けられ、ここから逃げ出すのは絶望的な状況だった。
『それにしても常軌を逸した光景ですね。例えここが仮想世界とはいえ、本来人間にない体の部位を自分の意思で動かすのは相当なセンスと才能が必要と聞きます。それをあれほどまでの数の蛇を自分の意思で動かすなんて…………ダリオ選手の操蛇術はとても人間技とは思えません』
『た、確かにそうですね! 一時期フロンティアで猫耳アバターブームがありましたが、当時は猫耳をピクピク動かせるだけですごいすごいと言われていましたもんね!』
(この蛇全てを自分の意思で動かしている……? でも、それって……)
ジューンとクランの会話を聞いて、アーニャはあることに気づく。
ダリオが動かすこの蛇は独立した生命体ではなく、すべてダリオの体の一部。
つまりは一つの体に複数の生物が入り混じったキメラのようなものだ。
そう、全ての蛇がダリオの体の一部、ということは……
もしかしてと思い、アーニャは腕の周りに纏わりついていた蛇を一匹掴むと、それを力強く握りしめた。
「……ギッ」
ダリオの顔が一瞬歪む。
予想通り。
ダリオはこの全ての蛇を繊細に自分の意思で動かすため、知覚を共有している。
それはつまりこの蛇一匹一匹に感覚神経が巡らせてあるということであり、この蛇に与えた攻撃は痛みとしてダリオにフィードバッグされるということ。
それに気づいたアーニャはすぐさま行動に出る。
「よし……あーぐッ!」
アーニャはちょうど口元の近くにいた一匹の蛇に、力強く噛み付いた。
「ギァッ!?」
ダリオが悲鳴を上げるのと同時に、全身の拘束が緩む。
「よしッ!」
締め付けが緩んだ隙をついて、アーニャはするりと拘束から抜け出す。
そして近くにあるアイテムボックスへと駆け出した。
『なっ、なんとアーニャ選手! ダリオ選手の拘束から抜け出しましたッ!』
『なるほど、ダリオ選手は自身の蛇を繊細な動かすことが可能な分、感覚神経も強く結びついているようですね。そこに気づくとは、流石はアーニャ選手です』
『ま、まさかあの状況から抜け出すとはッ! この戦い、どちらが勝つか分からなくなってきましたよ~!』
亜人種相手に生身で勝つなど絶対に不可能。
今のうちに武器を取り、戦略を変える必要がある。
アーニャは近くにあったアイテムボックスにまでたどり着き、箱を開ける。
「くっ……ナイフか……」
ないよりはマシだが、あの無数の蛇を前にこれ一本でなんとかなる気がしない。
すかさずアーニャはもう少し先にあるアイテムボックスへと駆け出す。
「クッ……ヤッテくれたネェ……」
ダリオが近づいてくる。
3つ目のアイテムボックス取りに行く余裕はないだろう。
だからこそ目の前にある2つ目のアイテムボックスの中身に賭けるしかない。
アーニャはそのアイテムボックスに手をかけ、中に入っていたものを取り出した。
「…………当たりッ!」
その武器を持ってすぐさま振り向く。
アーニャの手にはハンドガンが握られていた。
『アーニャ選手の手にした武器はハンドガン! これは決まったかー!?』
アーニャとダリオとの距離は3メートルほど。
遮蔽物のないこのフィールドで、銃弾を回避するのは難しいだろう。
アーニャは勝利を確信し、引き金を引く。
バァン!
響く銃声。
そうしてダリオの胸をめがけて放たれたその銃弾は、ダリオから数メートル離れた虚空を貫き壁に着弾する。
「え?」
狙った場所と全く違う場所に着弾したその光景を見て、アーニャは何が起きたのか分からず唖然とする。
すると同時に、視界がグニャリと歪んでいく。
「ぐっ……これ、は……」
歪む視界のせいで前後左右の認識が曖昧になり、アーニャはその場に片膝をつく。
「どうヤら、毒が効いテきたミタイだネェ……」
クククと笑いながら、ゆっくりとした足取りでダリオが近づいてくる。
『あぁーっとアーニャ選手! 折角銃を手に入れたのに、その場に崩れてしまったーッ!』
『ダリオ選手の蛇に体を何度か噛まれていましたからね。蛇の毒が回ってきたのでしょう』
体が不規則に震え、視界も揺れる。
これが毒の効果なのだろう。
それでもアーニャは諦めず、ぷるぷると震える手で再度ダリオに銃を向ける。
「サせないヨ」
「あっ」
だがその銃を持つ腕に蛇がまとわりつき、強く締められると手にしていた銃をその場に落としてしまう。
毒のせいか、アーニャは自身に近づく蛇の姿すら認識しきれなくなっていた。
「アノ状態から一度逃げ出したのハ驚いたケド、もうココマデ、チェックメイトだヨ」
再び無数の蛇がアーニャを囲む。
早く逃げなければならないのに、足が動かない。
「く、そ……」
一度は千載一遇のチャンスを手にし蛇の拘束から逃げ出したアーニャだったが、それもここまで。
「ほぉラ、しっかりとファンサービスをしねとネェ!」
一匹の蛇がアーニャの足に絡みつく。
そのまま強い力で引っ張られ、地面を引きずられる。
「ぐう……ッ!」
アーニャの体がダリオに近づくと今度は足を真上の方向に引っ張り上げられ、その強い力でアーニャの体が宙を浮く。
(くっ、最悪……ッ!)
吊り上げられるのと同時に湧き上がる歓声に苛立つ。
宙吊りの状態にされたアーニャは、重力でめくれ上がる自身のスカートを手で押さえた。
『あ、アーニャ選手! これは恥ずかしい格好です!』
『この体勢ではもう、何もできませんね』
体を揺さぶって拘束から逃げようとするが、両足の締め付けが緩む気配はない。
「ムダムダ、ココの住人はコノ程度のサービスシーンじゃ満足シないんでネ。モっと楽しませてモらうヨ」
そう言ってダリオは絡みつく蛇たちに命令を送る。
すると両足に絡みついていた蛇の動きが変わり、今度はアーニャの足を締め付けたまま、左右に引っ張り始める。
「なっ、やめ……っ」
少しづつ開かれていくアーニャの股。
毒のせいで力が入らないながらも、股を閉じようと必死に力を入れる。
「ジレったいネェ……なら、こうしてあげるヨ」
ぷるぷると震えるアーニャの両方の太ももに、同時に蛇が噛み付く。
「うあぁ……ッ!」
刺すような痛みに甲高い悲鳴を上げるアーニャ。
その瞬間一気に力が抜け、グイっと勢いよく両足が左右に引っ張られる。
同時に手錠を駆けられるように両手首も拘束され、アーニャは宙吊りの状態のまま、足を大きく開かされてしまう。
アーニャの白いショーツが露わになり、観客席が再び湧く。
「どうダいアーニャちゃん? 今の気分ハ?」
「う、ぐ……っ! ……本当に、趣味が悪い……ッ!」
アーニャはギッと歯を食いしばる。
今のアーニャにできることと言えば、ニヤニヤと笑うダリオの顔を紅潮した顔で睨むことくらいだった。
いくら払いのけようとしても、蛇は次から次へとアーニャの体を這いずり回り、とてもこの拘束から逃げられそうにない。
ニヤリと笑うダリオの顔を、アーニャは睨みつける。
「お前は、亜人種……ッ!」
「クヒヒ、ソーだヨォ……別にコノ大会には、普通の人間以外の体で出場してはイケナイってルールはナいからネェ……」
『で、出たー! ダリオ選手の十八番、体の中に巣食う無数の蛇をダリオ選手は意のままに動かす《操蛇術》! これがダリオ選手がスネークマンと呼ばれる所以だーッ!』
(それって、比喩表現とかじゃなくて見たままの姿でしょ……ッ!)
そう心の中でボヤくも、状況は変わらない。
『この大会に一般的な競技用人型アバターで参加しなければならないというルールはない。だからダリオ選手のような亜人種体型のアバターを使用したとしても、問題はないわけです』
『そう! これこそがミヨ様主催、最強王決定戦の醍醐味なのですッ!』
盛り上がる観衆の声がザァっと響く。
どうやらこの大会においては、ダリオのように亜人種アバターを使用することは普通のことらしい。
普通の人間型アバターで参戦していたアーニャは、ゲーム開始時点で既に不利な状況だったと言える。
(くっ、なんとかこの状況を……)
「ほ~ら、食べちゃうヨォッ!」
「い”ッ!?」
不意に、注射針で刺されるような痛みが右手首に走る。
視線を向けると、一匹の蛇が手首に噛み付いていた。
「こ、の……っ」
「ほらほら、モット抵抗してみなヨ?」
「あッ……ぐぅ……っ!」
手首だけじゃなく横腹や太もも。
体のいたるところに痛みが走る。
数が多すぎて、もはや体のどこを蛇に噛まれているのか視認することもできない。
『ああーっと! アーニャ選手、体のあちこちを蛇に噛まれていくッ! このまま何もできずに終わってしまうのかーッ!?』
(こんな、ところで……)
なんとか勝機を見出そうとするアーニャだったが、体は既に皮膚が見えなくなるほどの無数の蛇に締め付けられ、ここから逃げ出すのは絶望的な状況だった。
『それにしても常軌を逸した光景ですね。例えここが仮想世界とはいえ、本来人間にない体の部位を自分の意思で動かすのは相当なセンスと才能が必要と聞きます。それをあれほどまでの数の蛇を自分の意思で動かすなんて…………ダリオ選手の操蛇術はとても人間技とは思えません』
『た、確かにそうですね! 一時期フロンティアで猫耳アバターブームがありましたが、当時は猫耳をピクピク動かせるだけですごいすごいと言われていましたもんね!』
(この蛇全てを自分の意思で動かしている……? でも、それって……)
ジューンとクランの会話を聞いて、アーニャはあることに気づく。
ダリオが動かすこの蛇は独立した生命体ではなく、すべてダリオの体の一部。
つまりは一つの体に複数の生物が入り混じったキメラのようなものだ。
そう、全ての蛇がダリオの体の一部、ということは……
もしかしてと思い、アーニャは腕の周りに纏わりついていた蛇を一匹掴むと、それを力強く握りしめた。
「……ギッ」
ダリオの顔が一瞬歪む。
予想通り。
ダリオはこの全ての蛇を繊細に自分の意思で動かすため、知覚を共有している。
それはつまりこの蛇一匹一匹に感覚神経が巡らせてあるということであり、この蛇に与えた攻撃は痛みとしてダリオにフィードバッグされるということ。
それに気づいたアーニャはすぐさま行動に出る。
「よし……あーぐッ!」
アーニャはちょうど口元の近くにいた一匹の蛇に、力強く噛み付いた。
「ギァッ!?」
ダリオが悲鳴を上げるのと同時に、全身の拘束が緩む。
「よしッ!」
締め付けが緩んだ隙をついて、アーニャはするりと拘束から抜け出す。
そして近くにあるアイテムボックスへと駆け出した。
『なっ、なんとアーニャ選手! ダリオ選手の拘束から抜け出しましたッ!』
『なるほど、ダリオ選手は自身の蛇を繊細な動かすことが可能な分、感覚神経も強く結びついているようですね。そこに気づくとは、流石はアーニャ選手です』
『ま、まさかあの状況から抜け出すとはッ! この戦い、どちらが勝つか分からなくなってきましたよ~!』
亜人種相手に生身で勝つなど絶対に不可能。
今のうちに武器を取り、戦略を変える必要がある。
アーニャは近くにあったアイテムボックスにまでたどり着き、箱を開ける。
「くっ……ナイフか……」
ないよりはマシだが、あの無数の蛇を前にこれ一本でなんとかなる気がしない。
すかさずアーニャはもう少し先にあるアイテムボックスへと駆け出す。
「クッ……ヤッテくれたネェ……」
ダリオが近づいてくる。
3つ目のアイテムボックス取りに行く余裕はないだろう。
だからこそ目の前にある2つ目のアイテムボックスの中身に賭けるしかない。
アーニャはそのアイテムボックスに手をかけ、中に入っていたものを取り出した。
「…………当たりッ!」
その武器を持ってすぐさま振り向く。
アーニャの手にはハンドガンが握られていた。
『アーニャ選手の手にした武器はハンドガン! これは決まったかー!?』
アーニャとダリオとの距離は3メートルほど。
遮蔽物のないこのフィールドで、銃弾を回避するのは難しいだろう。
アーニャは勝利を確信し、引き金を引く。
バァン!
響く銃声。
そうしてダリオの胸をめがけて放たれたその銃弾は、ダリオから数メートル離れた虚空を貫き壁に着弾する。
「え?」
狙った場所と全く違う場所に着弾したその光景を見て、アーニャは何が起きたのか分からず唖然とする。
すると同時に、視界がグニャリと歪んでいく。
「ぐっ……これ、は……」
歪む視界のせいで前後左右の認識が曖昧になり、アーニャはその場に片膝をつく。
「どうヤら、毒が効いテきたミタイだネェ……」
クククと笑いながら、ゆっくりとした足取りでダリオが近づいてくる。
『あぁーっとアーニャ選手! 折角銃を手に入れたのに、その場に崩れてしまったーッ!』
『ダリオ選手の蛇に体を何度か噛まれていましたからね。蛇の毒が回ってきたのでしょう』
体が不規則に震え、視界も揺れる。
これが毒の効果なのだろう。
それでもアーニャは諦めず、ぷるぷると震える手で再度ダリオに銃を向ける。
「サせないヨ」
「あっ」
だがその銃を持つ腕に蛇がまとわりつき、強く締められると手にしていた銃をその場に落としてしまう。
毒のせいか、アーニャは自身に近づく蛇の姿すら認識しきれなくなっていた。
「アノ状態から一度逃げ出したのハ驚いたケド、もうココマデ、チェックメイトだヨ」
再び無数の蛇がアーニャを囲む。
早く逃げなければならないのに、足が動かない。
「く、そ……」
一度は千載一遇のチャンスを手にし蛇の拘束から逃げ出したアーニャだったが、それもここまで。
「ほぉラ、しっかりとファンサービスをしねとネェ!」
一匹の蛇がアーニャの足に絡みつく。
そのまま強い力で引っ張られ、地面を引きずられる。
「ぐう……ッ!」
アーニャの体がダリオに近づくと今度は足を真上の方向に引っ張り上げられ、その強い力でアーニャの体が宙を浮く。
(くっ、最悪……ッ!)
吊り上げられるのと同時に湧き上がる歓声に苛立つ。
宙吊りの状態にされたアーニャは、重力でめくれ上がる自身のスカートを手で押さえた。
『あ、アーニャ選手! これは恥ずかしい格好です!』
『この体勢ではもう、何もできませんね』
体を揺さぶって拘束から逃げようとするが、両足の締め付けが緩む気配はない。
「ムダムダ、ココの住人はコノ程度のサービスシーンじゃ満足シないんでネ。モっと楽しませてモらうヨ」
そう言ってダリオは絡みつく蛇たちに命令を送る。
すると両足に絡みついていた蛇の動きが変わり、今度はアーニャの足を締め付けたまま、左右に引っ張り始める。
「なっ、やめ……っ」
少しづつ開かれていくアーニャの股。
毒のせいで力が入らないながらも、股を閉じようと必死に力を入れる。
「ジレったいネェ……なら、こうしてあげるヨ」
ぷるぷると震えるアーニャの両方の太ももに、同時に蛇が噛み付く。
「うあぁ……ッ!」
刺すような痛みに甲高い悲鳴を上げるアーニャ。
その瞬間一気に力が抜け、グイっと勢いよく両足が左右に引っ張られる。
同時に手錠を駆けられるように両手首も拘束され、アーニャは宙吊りの状態のまま、足を大きく開かされてしまう。
アーニャの白いショーツが露わになり、観客席が再び湧く。
「どうダいアーニャちゃん? 今の気分ハ?」
「う、ぐ……っ! ……本当に、趣味が悪い……ッ!」
アーニャはギッと歯を食いしばる。
今のアーニャにできることと言えば、ニヤニヤと笑うダリオの顔を紅潮した顔で睨むことくらいだった。
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