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雲が月を覆う。
無我夢中で求めあったふたり。達した快楽のままにぼんやりと抱きあっているうちに、いつの間にか眠ってしまったようだ。起き上がったカーライルは息を整えながら、自分は適当に、そしてイヴリアの身繕いを丁寧に終え、そっと彼女を抱き寄せる。
狭い寝台でぴったりと重なり合う身体。カーライルの勃ち上がっていたソレは、すっかり落ち着いていた。
セシルによる、妖精のイタズラ。
かくなる上は陰茎を切り落とそう、と思っていたのは本当で、でもそれはさすがに少し怖いな、と思っていたのも本当で、常に冷静なイヴリアなら何とかしてくれるんじゃないか、と思っていたのも本当だ。
幼馴染だから、愛したんじゃない。
イヴリアだから、恋をした。
イヴリアがきっと、例えば共通学校で初めて出会った相手だったとしても、自分は間違いなく恋に落ちていたとカーライルは思う。
だって、その全てが大好きでたまらないから。
薄水色のさらさらとした髪も、理知的でどこか冷めた色を載せているこの静かな藍色の眼差しも、その癖みょうにぼんやりしていて、鈍感でのんびり屋なところも。華奢な白い肌とスラリとした体躯も。常に冷静で淡々としたその口調も、思い切りのいい性格も大好きだ。早くに身内を喪っているからか時折見せる影のある表情も、たまらなく優しいところも、ちょっと照れたような、はにかんだその笑い方も全部。
明るくて元気、快活で凛々しいなどと評され、他の女性から言い寄られることも多々あるカーライルだけれど、実際にはかなりの臆病者で、慎重で、本来の性格は別に明るくもなんともない、ただの本と考古学好きの根暗だと自分では思っている。
イヴリアが好きだから隣にいるとにこにこと笑顔になってしまうのを、他人に見られて「いつでも笑顔で快活」などと言われ、イヴリアと話すから嬉しくてつい声が大きくなってしまうところを「声もハキハキしていて元気だ」と評され、イヴリアが「ライルを見てると元気になるの」なんて言うから、つい、そういう振る舞いを心がけて周囲の人間にも「お前の前向きさに元気づけられるな」なんて言われてしまうだけで――そして、それを、全て勝手に誤解されているだけで。
カーライルのこの振る舞いは、すべてがイヴリアのためなのだ。
そもそもイヴリアのことがこんなに好きなのに、5歳で好きだと自覚してから恋人になるまでに10年を要すほどのヘタレが、明るくて快活で元気な男なわけないだろうと思う。
『あんた、イヴを他の男にとられたらどうするつもりなのよ!?』と相棒妖精のセシルにはっぱをかけられ続けてこれなのだから、自分でも呆れるほどのビビリだ。
本当は告白と同じように、イヴリアのことを大切にしながら、ゆっくりと体の関係を育んでいくつもりだったのに。それでも――と、さっきまでの甘いひとときを思い出して、カーライルは人知れず頬を染める。これで、よかったのかもしれない。
このまま結婚していたら「イヴリアが大切過ぎて抱けない」なんてことになって、10年近く頭を抱えていたかもしれないから。
「大好きだよ――イヴ……」
愛しい幼馴染にして恋人――そして今日からは、最愛の妻。
俺の全て。絶対に、俺が君を幸せにするから。
そう誓いながらカーライルは、隣で眠るイヴリアをそっと抱き締めたのだった。
無我夢中で求めあったふたり。達した快楽のままにぼんやりと抱きあっているうちに、いつの間にか眠ってしまったようだ。起き上がったカーライルは息を整えながら、自分は適当に、そしてイヴリアの身繕いを丁寧に終え、そっと彼女を抱き寄せる。
狭い寝台でぴったりと重なり合う身体。カーライルの勃ち上がっていたソレは、すっかり落ち着いていた。
セシルによる、妖精のイタズラ。
かくなる上は陰茎を切り落とそう、と思っていたのは本当で、でもそれはさすがに少し怖いな、と思っていたのも本当で、常に冷静なイヴリアなら何とかしてくれるんじゃないか、と思っていたのも本当だ。
幼馴染だから、愛したんじゃない。
イヴリアだから、恋をした。
イヴリアがきっと、例えば共通学校で初めて出会った相手だったとしても、自分は間違いなく恋に落ちていたとカーライルは思う。
だって、その全てが大好きでたまらないから。
薄水色のさらさらとした髪も、理知的でどこか冷めた色を載せているこの静かな藍色の眼差しも、その癖みょうにぼんやりしていて、鈍感でのんびり屋なところも。華奢な白い肌とスラリとした体躯も。常に冷静で淡々としたその口調も、思い切りのいい性格も大好きだ。早くに身内を喪っているからか時折見せる影のある表情も、たまらなく優しいところも、ちょっと照れたような、はにかんだその笑い方も全部。
明るくて元気、快活で凛々しいなどと評され、他の女性から言い寄られることも多々あるカーライルだけれど、実際にはかなりの臆病者で、慎重で、本来の性格は別に明るくもなんともない、ただの本と考古学好きの根暗だと自分では思っている。
イヴリアが好きだから隣にいるとにこにこと笑顔になってしまうのを、他人に見られて「いつでも笑顔で快活」などと言われ、イヴリアと話すから嬉しくてつい声が大きくなってしまうところを「声もハキハキしていて元気だ」と評され、イヴリアが「ライルを見てると元気になるの」なんて言うから、つい、そういう振る舞いを心がけて周囲の人間にも「お前の前向きさに元気づけられるな」なんて言われてしまうだけで――そして、それを、全て勝手に誤解されているだけで。
カーライルのこの振る舞いは、すべてがイヴリアのためなのだ。
そもそもイヴリアのことがこんなに好きなのに、5歳で好きだと自覚してから恋人になるまでに10年を要すほどのヘタレが、明るくて快活で元気な男なわけないだろうと思う。
『あんた、イヴを他の男にとられたらどうするつもりなのよ!?』と相棒妖精のセシルにはっぱをかけられ続けてこれなのだから、自分でも呆れるほどのビビリだ。
本当は告白と同じように、イヴリアのことを大切にしながら、ゆっくりと体の関係を育んでいくつもりだったのに。それでも――と、さっきまでの甘いひとときを思い出して、カーライルは人知れず頬を染める。これで、よかったのかもしれない。
このまま結婚していたら「イヴリアが大切過ぎて抱けない」なんてことになって、10年近く頭を抱えていたかもしれないから。
「大好きだよ――イヴ……」
愛しい幼馴染にして恋人――そして今日からは、最愛の妻。
俺の全て。絶対に、俺が君を幸せにするから。
そう誓いながらカーライルは、隣で眠るイヴリアをそっと抱き締めたのだった。
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