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第9話:美男美女しかいなくない?
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ヤクザ教師の授業が終わって、休み時間となった。
驚いたことに授業内容はただの数学で、前世で習ったものと変わらない。
筋肉のなせるわざなのか微動だにせず立っているマッスリーヌに、雑談っぽく訊いてみる。
「魔法学校って名前だけなの?」
「? と、言いますと?」
「いや、その、魔法の授業とかないのかなって。
杖を構えてびゅーって飛ばすのとか。
ヘンテコな草を調合して、変身する薬を作ったり」
言ってて恥ずかしくなってきたが、魔法学校のイメージってそういうものではないだろうか。
が、マッスリーヌはすこし笑って言った。
「そういう習得するタイプの魔法は、おとぎ話でしか聞いたことがありませんね。
校名にある魔法とは、スキルの昔の呼びかたです。
集団生活を通してスキルの使いかたを学ぶということで、魔法学校とつけられたと聞いております」
わたし以外に「スキルなし」がいないとなると、スキルは誰もが等しく持っているものだ。
ありふれすぎて言葉自体がそこまで大層な意味を持っていないのかもしれない。
修学旅行で修学する学生なんていないのと同じ……って、これは違うかな?
いい例えがないかとうなっているわたしに、誰かが近づいてきた。
「モブリンくん、今日も一段と謎めいているね。
レッドじゃなくても興味を引かれてしかたないよ」
見上げると、銀髪ロン毛の男子生徒がわたしの顔を見つめている。
背も高いし、めっちゃくちゃイケメンだ。
なんだこのひと、ゲームの主人公かなにか?
「ど、どうも……」
「俺の名前は、ゼファー。
疾風のゼファーと呼んでくれてもいい。
大気を操るスキル、《ウィンド》を持っている」
名乗った直後、屋内なのに銀髪がふぁさ~っと風になびいた。
わざわざ登場演出のためにスキルを使ったということだろう。
なんてキザなやつ。
でも悔しい、顔がいいからわりと許せる。
「わたしになんて興味持たなくていいよ。
判定する価値もない、つまんないスキルだから」
「お、それはヒントかな?
価値がない……ふむ、わかってきたぞ。
相手を価値なきものに貶めるスキルじゃないか?
だから能力判定器が価値を失い、きみのスキルを見逃した。
おお、なんて恐ろしいスキルなんだ」
「違うから」
無効化スキルなんて、主人公が使うタイプのやつだ。
そんなもの、モブのわたしは持っていない。
もし持っていたら、さっきのレッド戦で迷わず無効化していたのに。
と、そこにもうひとりクラスメイトがやってきた。
今度は女子だ。
「へっ、疾風のゼファーが聞いて呆れるぜ。
判定器は無効化スキルでも無効化されない。
中身は空っぽで、過去に判定スキルを持っていた人間の概念だけを封じ込めてあるってのは有名な話さ」
「わ、わかっている。
今のは……そう、ただの冗談だよ。
モブリンの反応を見たかっただけだ」
「どーだかな」
言って、その女子生徒はわたしのほうに「よっ」と軽く挨拶した。
青い髪を短く刈り上げた、ボーイッシュな子だ。
顔は可愛いというよりカッコいい。
切れ長の目で見つめられると、同性のわたしでもくらっときてしまう。
「アタシはターコイズ。
ターコって呼ぶやつが多いな。
スキルはこれさ」
手のひらを上に向けると、ポシュッと音がして、そこに一輪の青いバラの花が出現した。
「お花が現れるスキル?」
「ははっ、《クリエイト》っつーんだ。
花だけじゃなくて、なんでも創れる。
早弁したいときは、言ってくれたら食べたいものを出してやるよ」
「な、なんでも?」
つっよ!
強いなんて言葉では表現できない、神様のスキルだ。
主人公なんかは逆に持てないレベル。
だって物語が破綻しちゃうんだもの。
「は~、みんなすごいね……」
思わず出た、正直な感想だった。
時間を飛ばす《スキップ・オブ・ザ・ワールド》。
重力を操る《グラヴィティ・コントロール》。
人を従わせる《ザ・ワード》。
大気を操る《ウィンド》。
そして、万物を創造する《クリエイト》。
どれもこれも、絶対に脇役なんかが所持するわけがない、主役級スキルばかり。
これ以外にも、この教室には、死にかけたわたしを治した生徒と、激しく壊れた教室をきれいに復元した生徒が存在する。
しかもクラスじゅう、見渡すかぎり全員、顔がいい。
凶悪フェイスの先生だって、極道映画の主役が張れそうな感じの男前だ。
とんでもない異世界に来てしまった。
スキルなし&平凡顔のわたしが、これでは逆に目立ってしまう。
「ははっ、モブリンの顔見てると、なんか和むな。
アタシ、あんたの親友になりたい。
親友を通り越して恋人でもいいくらいさ」
「お嬢様の貞操は、わたくしが守ります。
いえ、わたくしのこの筋肉だけが、お嬢様を愛することを許されているのです」
「お? やるか?」
おーい……。
わたしのことで争わないで。
いや本気で、争われたらモブじゃなくなるから。
驚いたことに授業内容はただの数学で、前世で習ったものと変わらない。
筋肉のなせるわざなのか微動だにせず立っているマッスリーヌに、雑談っぽく訊いてみる。
「魔法学校って名前だけなの?」
「? と、言いますと?」
「いや、その、魔法の授業とかないのかなって。
杖を構えてびゅーって飛ばすのとか。
ヘンテコな草を調合して、変身する薬を作ったり」
言ってて恥ずかしくなってきたが、魔法学校のイメージってそういうものではないだろうか。
が、マッスリーヌはすこし笑って言った。
「そういう習得するタイプの魔法は、おとぎ話でしか聞いたことがありませんね。
校名にある魔法とは、スキルの昔の呼びかたです。
集団生活を通してスキルの使いかたを学ぶということで、魔法学校とつけられたと聞いております」
わたし以外に「スキルなし」がいないとなると、スキルは誰もが等しく持っているものだ。
ありふれすぎて言葉自体がそこまで大層な意味を持っていないのかもしれない。
修学旅行で修学する学生なんていないのと同じ……って、これは違うかな?
いい例えがないかとうなっているわたしに、誰かが近づいてきた。
「モブリンくん、今日も一段と謎めいているね。
レッドじゃなくても興味を引かれてしかたないよ」
見上げると、銀髪ロン毛の男子生徒がわたしの顔を見つめている。
背も高いし、めっちゃくちゃイケメンだ。
なんだこのひと、ゲームの主人公かなにか?
「ど、どうも……」
「俺の名前は、ゼファー。
疾風のゼファーと呼んでくれてもいい。
大気を操るスキル、《ウィンド》を持っている」
名乗った直後、屋内なのに銀髪がふぁさ~っと風になびいた。
わざわざ登場演出のためにスキルを使ったということだろう。
なんてキザなやつ。
でも悔しい、顔がいいからわりと許せる。
「わたしになんて興味持たなくていいよ。
判定する価値もない、つまんないスキルだから」
「お、それはヒントかな?
価値がない……ふむ、わかってきたぞ。
相手を価値なきものに貶めるスキルじゃないか?
だから能力判定器が価値を失い、きみのスキルを見逃した。
おお、なんて恐ろしいスキルなんだ」
「違うから」
無効化スキルなんて、主人公が使うタイプのやつだ。
そんなもの、モブのわたしは持っていない。
もし持っていたら、さっきのレッド戦で迷わず無効化していたのに。
と、そこにもうひとりクラスメイトがやってきた。
今度は女子だ。
「へっ、疾風のゼファーが聞いて呆れるぜ。
判定器は無効化スキルでも無効化されない。
中身は空っぽで、過去に判定スキルを持っていた人間の概念だけを封じ込めてあるってのは有名な話さ」
「わ、わかっている。
今のは……そう、ただの冗談だよ。
モブリンの反応を見たかっただけだ」
「どーだかな」
言って、その女子生徒はわたしのほうに「よっ」と軽く挨拶した。
青い髪を短く刈り上げた、ボーイッシュな子だ。
顔は可愛いというよりカッコいい。
切れ長の目で見つめられると、同性のわたしでもくらっときてしまう。
「アタシはターコイズ。
ターコって呼ぶやつが多いな。
スキルはこれさ」
手のひらを上に向けると、ポシュッと音がして、そこに一輪の青いバラの花が出現した。
「お花が現れるスキル?」
「ははっ、《クリエイト》っつーんだ。
花だけじゃなくて、なんでも創れる。
早弁したいときは、言ってくれたら食べたいものを出してやるよ」
「な、なんでも?」
つっよ!
強いなんて言葉では表現できない、神様のスキルだ。
主人公なんかは逆に持てないレベル。
だって物語が破綻しちゃうんだもの。
「は~、みんなすごいね……」
思わず出た、正直な感想だった。
時間を飛ばす《スキップ・オブ・ザ・ワールド》。
重力を操る《グラヴィティ・コントロール》。
人を従わせる《ザ・ワード》。
大気を操る《ウィンド》。
そして、万物を創造する《クリエイト》。
どれもこれも、絶対に脇役なんかが所持するわけがない、主役級スキルばかり。
これ以外にも、この教室には、死にかけたわたしを治した生徒と、激しく壊れた教室をきれいに復元した生徒が存在する。
しかもクラスじゅう、見渡すかぎり全員、顔がいい。
凶悪フェイスの先生だって、極道映画の主役が張れそうな感じの男前だ。
とんでもない異世界に来てしまった。
スキルなし&平凡顔のわたしが、これでは逆に目立ってしまう。
「ははっ、モブリンの顔見てると、なんか和むな。
アタシ、あんたの親友になりたい。
親友を通り越して恋人でもいいくらいさ」
「お嬢様の貞操は、わたくしが守ります。
いえ、わたくしのこの筋肉だけが、お嬢様を愛することを許されているのです」
「お? やるか?」
おーい……。
わたしのことで争わないで。
いや本気で、争われたらモブじゃなくなるから。
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