8 / 10
07 逝く
しおりを挟む
「どうして?
あんなにひどい捨てかたをしておいて、なんで、いまさらになってこんなことをするの?」
アタシが問うと、ファビオはさらに凶悪で素敵な笑みを浮かべた。
骸骨のように痩せた彼も、死神みたいで魅力的だ。
彼はゆっくりと近寄ってきて大きく足を上げると、裸で倒れているアタシの股の部分をためらいなく踏み潰した。
足の裏で味わうように、ぐりぐりと踏みしだく。
あまりの喜びに嬌声をあげて悶えるアタシにいう。
「ひどい捨てかたって、なんのことだ?」
「あ、んっ……と、とぼけるわけ?
悪夢のような仕打ちだったわ。
急に全然殴ってくれなくなったじゃない。
お気に入りのあのナイフで切ることさえしなくなった。
あんな……あんなに愛し合っていたのに」
彼は、舌打ちをしてアタシの顔を蹴り上げた。
アタシはたまらなくなって、近くで倒れていた椅子を引き寄せ、その脚のひとつを自分の股に入れる。
疼いて疼いて、溢れて溢れて仕方がない。
もっと、もっとしてほしい。
「はあっ、ふうっ……はあっ」
「ソフィア、てめえは学習能力が高すぎたんだよ」
なにを、言っているの?
そんなことより、早くこの椅子を強く蹴って。
アタシのなかに入っているこれが、アタシを引き裂いて血が噴き出すくらいに。
「若いころのおれは、自分の暴力性を制御できなかった。
はじめて心から愛し、結婚の約束までした女に、おれの印をつけたい気持ちが強すぎたんだ。
だから殴った。
切った。
刺した。
本当に、手加減なしになんでもやった」
ええ、あなたはそうだった。
すばらしい日々だった。
毎日のように血を吐き、骨が折れ、失血と痛みで気が遠くなりながら、あなたに犯されていた。
思い出すだけで恍惚とする。
「てめえはそれを、愛として学習しちまった。
愛するおれがやることを、すべて愛だと信じた。
いま思えばしおらしい女心だが、当時のおれは急に怖くなったんだ。
……このままじゃ、間違いなく殺すってな」
「殺してくれたらよかったのに!」
アタシは叫んだ。
心から叫んだ。
それが愛なら、アタシは全然構わなかった。
彼は頭をかきむしり、あきらめた顔でいう。
「……ひとつ訊くが、おれはもう、死ぬんだよな?
てめえが素性を隠してここまで潜り込んできたってことは、おれに復讐しにきたってことだ。
そうなるとこの病気も、てめえの仕業だろ?」
「そうよ。
でも、アタシの復讐はあなただけじゃない。
あなたの両親にも復讐することにしたの」
「なぜだ!
おれの不始末に気づいて、てめえを助けてくれようとしたはずだ」
助ける?
あれが善意だというのなら、迷惑な善意もあったものだ。
「あいつらはアタシを入院させて、あなたとの愛を忘れさせようとしたわ。
アタシは絶対に忘れないように、毎日自分で自分を愛して、必死に抵抗した」
傷つけるものをなにも部屋に置いてくれなかったから。
アタシは頑張って、壁や床でみずからを痛めつけた。
あそこですごした最後の日だって、そうだ。
アタシは窓から落ちることを思いついた。
高いところから落ちれば、もっと、何ヶ月も実感できる痛みを得ることができると思った。
そして隙を見て実行した。
痛みだけでなく、脱出して自由を得られたのは本当に僥倖だった。
「親も殺すのか? おれみたいに?」
「いいえ、殺しはしないわ。
彼らには、愛するものを奪われ、愛を否定される恐怖を思い知らせてやるんだから。
そう、愛するこの国を奪って、彼らの国民に対する愛――すべての政策を否定してあげる」
アタシが宣言すると、ファビオは妙な顔をした。
てっきり悔しがると思ったのだけど。
「おれの親……国王が、この国を愛しているだって?
アハハハ。
てめえの言う愛は、本当に歪んでやがる。
まあいい。
てめえはもうおれが殺してやるから、安心しろ」
「本当?
どうやってやるの?」
ファビオがアタシを殺す。
考えただけで、それは心が躍る話だった。
きっと彼なら、彼ならアタシを満たしてくれる。
復讐で満たすよりも間違いなく気持ちがいいだろう。
「そうだな……」
彼が部屋を見渡す。
壁に飾られている剣が目に留まったようだ。
それは、細くて長い刀身をもつ剣だった。
斬るというより刺して使うのかもしれない。
彼はその剣を手に取ると、あのころのような熱のこもった目でアタシを見た。
「その椅子に乗って、股を開け。
それはてめえの身体にあるが、おれの所有物だろう?」
言われた瞬間、アタシのソコが反応した。
まるで絶頂を迎えたように、びくんびくんとうごめく。
なにをされるか想像したのだ。
「はい、ご主人様」
言われたとおり、椅子に乗って股を開く。
さらに、両手の指をすべて使って、もうぐちゃぐちゃに濡れているソコを、彼に向けてぱっくり開いた。
狙いやすいように。
「ああ、最高だボケが。
てめえは本当に救いようのないくらい、最高のクソ女だったよ。
……動くんじゃねえぞ!」
剣の切っ先が、アタシのソコを向いた。
これからあれがアタシに這入ってくるのは間違いない。
きっとものすごく痛い。
でも、すぐには死なない。
出血多量で失血死するまで、きっと彼は、剣でぼろぼろに裂けたアタシのソコを愛してくれるだろう。
そして、そのままアタシは死に包まれる。
「ファビオ、愛してるわ」
アタシは最期に彼の姿を目に焼きつけて、そっと目を閉じた。
あんなにひどい捨てかたをしておいて、なんで、いまさらになってこんなことをするの?」
アタシが問うと、ファビオはさらに凶悪で素敵な笑みを浮かべた。
骸骨のように痩せた彼も、死神みたいで魅力的だ。
彼はゆっくりと近寄ってきて大きく足を上げると、裸で倒れているアタシの股の部分をためらいなく踏み潰した。
足の裏で味わうように、ぐりぐりと踏みしだく。
あまりの喜びに嬌声をあげて悶えるアタシにいう。
「ひどい捨てかたって、なんのことだ?」
「あ、んっ……と、とぼけるわけ?
悪夢のような仕打ちだったわ。
急に全然殴ってくれなくなったじゃない。
お気に入りのあのナイフで切ることさえしなくなった。
あんな……あんなに愛し合っていたのに」
彼は、舌打ちをしてアタシの顔を蹴り上げた。
アタシはたまらなくなって、近くで倒れていた椅子を引き寄せ、その脚のひとつを自分の股に入れる。
疼いて疼いて、溢れて溢れて仕方がない。
もっと、もっとしてほしい。
「はあっ、ふうっ……はあっ」
「ソフィア、てめえは学習能力が高すぎたんだよ」
なにを、言っているの?
そんなことより、早くこの椅子を強く蹴って。
アタシのなかに入っているこれが、アタシを引き裂いて血が噴き出すくらいに。
「若いころのおれは、自分の暴力性を制御できなかった。
はじめて心から愛し、結婚の約束までした女に、おれの印をつけたい気持ちが強すぎたんだ。
だから殴った。
切った。
刺した。
本当に、手加減なしになんでもやった」
ええ、あなたはそうだった。
すばらしい日々だった。
毎日のように血を吐き、骨が折れ、失血と痛みで気が遠くなりながら、あなたに犯されていた。
思い出すだけで恍惚とする。
「てめえはそれを、愛として学習しちまった。
愛するおれがやることを、すべて愛だと信じた。
いま思えばしおらしい女心だが、当時のおれは急に怖くなったんだ。
……このままじゃ、間違いなく殺すってな」
「殺してくれたらよかったのに!」
アタシは叫んだ。
心から叫んだ。
それが愛なら、アタシは全然構わなかった。
彼は頭をかきむしり、あきらめた顔でいう。
「……ひとつ訊くが、おれはもう、死ぬんだよな?
てめえが素性を隠してここまで潜り込んできたってことは、おれに復讐しにきたってことだ。
そうなるとこの病気も、てめえの仕業だろ?」
「そうよ。
でも、アタシの復讐はあなただけじゃない。
あなたの両親にも復讐することにしたの」
「なぜだ!
おれの不始末に気づいて、てめえを助けてくれようとしたはずだ」
助ける?
あれが善意だというのなら、迷惑な善意もあったものだ。
「あいつらはアタシを入院させて、あなたとの愛を忘れさせようとしたわ。
アタシは絶対に忘れないように、毎日自分で自分を愛して、必死に抵抗した」
傷つけるものをなにも部屋に置いてくれなかったから。
アタシは頑張って、壁や床でみずからを痛めつけた。
あそこですごした最後の日だって、そうだ。
アタシは窓から落ちることを思いついた。
高いところから落ちれば、もっと、何ヶ月も実感できる痛みを得ることができると思った。
そして隙を見て実行した。
痛みだけでなく、脱出して自由を得られたのは本当に僥倖だった。
「親も殺すのか? おれみたいに?」
「いいえ、殺しはしないわ。
彼らには、愛するものを奪われ、愛を否定される恐怖を思い知らせてやるんだから。
そう、愛するこの国を奪って、彼らの国民に対する愛――すべての政策を否定してあげる」
アタシが宣言すると、ファビオは妙な顔をした。
てっきり悔しがると思ったのだけど。
「おれの親……国王が、この国を愛しているだって?
アハハハ。
てめえの言う愛は、本当に歪んでやがる。
まあいい。
てめえはもうおれが殺してやるから、安心しろ」
「本当?
どうやってやるの?」
ファビオがアタシを殺す。
考えただけで、それは心が躍る話だった。
きっと彼なら、彼ならアタシを満たしてくれる。
復讐で満たすよりも間違いなく気持ちがいいだろう。
「そうだな……」
彼が部屋を見渡す。
壁に飾られている剣が目に留まったようだ。
それは、細くて長い刀身をもつ剣だった。
斬るというより刺して使うのかもしれない。
彼はその剣を手に取ると、あのころのような熱のこもった目でアタシを見た。
「その椅子に乗って、股を開け。
それはてめえの身体にあるが、おれの所有物だろう?」
言われた瞬間、アタシのソコが反応した。
まるで絶頂を迎えたように、びくんびくんとうごめく。
なにをされるか想像したのだ。
「はい、ご主人様」
言われたとおり、椅子に乗って股を開く。
さらに、両手の指をすべて使って、もうぐちゃぐちゃに濡れているソコを、彼に向けてぱっくり開いた。
狙いやすいように。
「ああ、最高だボケが。
てめえは本当に救いようのないくらい、最高のクソ女だったよ。
……動くんじゃねえぞ!」
剣の切っ先が、アタシのソコを向いた。
これからあれがアタシに這入ってくるのは間違いない。
きっとものすごく痛い。
でも、すぐには死なない。
出血多量で失血死するまで、きっと彼は、剣でぼろぼろに裂けたアタシのソコを愛してくれるだろう。
そして、そのままアタシは死に包まれる。
「ファビオ、愛してるわ」
アタシは最期に彼の姿を目に焼きつけて、そっと目を閉じた。
1
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…
satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる