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第一章
第24話 vs魔術師フローリア
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国家魔法研究所の元研究員だったフローリアは知的な戦いを得意としている。
まるでボードゲームで相手を追い詰めるかのように怜悧に魔物を仕留めてゆく様は何度見ても圧巻だった。
「クラウス……あたしはあんたには別に恨みもないし、何も思うところはないけれど……ジョーとの末来の為に死んでもらうわ」
そこには先ほどの甘ったるい表情は欠片も残っておらず、目の前の敵を葬らんとする冷酷な魔術師がいるのみだった。
特大剣を構え、俺はフローリアから目を離さぬように意識を集中する。
「ファイア!!」
先手を取ったのはフローリアだった。
左手に持った杖先から人間の頭サイズの火球が飛び出す。
俺は横っ飛びでそれを避けた――
「ファイア! ファイア! ファイア!」
と思いきや、次々と飛んでくる火球。
一つだけなら、今の俺なら避けるのは造作もないが、こうも連発されるとキツイな。
「うわああぁぁぁぁ!」
「よ、避けろおぉぉぉ!」
「これ剣術大会だよな!?」
外野の兵士たちにも流れ弾が飛んでいるようで、彼らの悲鳴が聞こえてくる。
これでは建物が燃えてしまって戦闘どころでは――と思ったが、この道場は特殊な素材でできているようで、ちょっとやそっとの炎では火が点くことはないようだ。恐らく建築資材に魔防素材が使用されているのだろう。
「ファイア! ファイア! ファイア!」
「くそっ!」
あれだけ連発していれば相当な魔力を消耗するはずだが、さすがフローリアというべきか、息一つ切らしていない。
しかし、これでは埒が明かないな。避けるだけでは――
いや、これは――ッ!!
「かかったわね!!」
横に跳ぶはずが、俺はへこんだ床に足を取られた。
どうしてこんなへこみが――
あ、そうか!
フローリアの奴は闇雲に攻撃していたわけではなく、火球を床に当てることで床を変形させて足場を不安定にしていやがったのか!
俺がバランスを崩したその瞬間、放たれた火球が俺の右の肩口を掠めた。
「うぐぅッ!?」
肩が……あ、熱い!
「チッ! あれじゃ浅いわね……!」
幸い傷はそれほどではなく、肩は負傷したが腕は何とか上がるようだ。
俺は床のへこみから足を抜き、体勢を立て直した。
しかし、さすがフローリアだな。激しい攻撃で俺の意識を逸らしている間に床に罠をしかけていたとは。
「あんたも少しはやれるようになったみたいだけど……そんなんじゃあたしには勝てないわよ! ファイア!」
「くっ!」
どうしたものか。
近づいて斬撃を浴びせたいが、こうも連続して魔法を撃たれては接近もままならない。
こうして避けている間にも床はどんどん変形し戦いづらくなってしまう。
フローリアは生粋の魔術師。遠距離での戦いのスペシャリストだ。
反面、近距離での戦いには弱い。
何とかして接近戦に持ち込みたいが……。
……いや、ちょっと待てよ。
「ファイア! ファイア! ファイア!!!」
もしかしたら――俺にも使えるんじゃないか? 魔法。
リリスが憑依しているとき、彼女は何度か攻撃魔法を使っていた。
そのときの感覚は俺の身体に残っている。
魔法を発動するには体内で魔力を練る必要があるのだが、その魔力を練るという作業が非常に感覚的なもので複雑な工程であり、どうしてもそれができない人間が多く、魔術師になることのハードルを高める一番の要因となっているのだ。
だが魔力を練る感覚はリリスが身体で教えてくれた。
「ファイア! ファイア!」
隙が無く撃たれ続ける火球を何とか見切り、俺は狙いをつけやすい場所に立った。
そして急いで魔力を練る。
この感覚だ。リリスもこの感覚で魔法を撃っていた。
よし、いけるぞ。
「やっと諦めたかしら! そろそろ死になさい! フレア!!」
俺が立ち止まったのを見計らって、フローリアは炎魔法上位のフレアを放ってきた。
恐ろしい魔物のような猛炎が唸りを上げて俺に向かってくる。
これは賭けだ。もし魔法を撃てなければあのフレアが俺を直撃する。
俺は左手を前に出し、手のひらをフローリアに向けて叫んだ。
「――ヘルファイア!!!」
ヘルファイア。
リリスが使っていた、最強の炎魔法だ。
俺の左手から、悍ましいほど深く紅い渦を巻きながら業火が現れ、轟音とともに放たれた。
道場が燃えてしまったらエレナにも危害が及んでしまうので、魔力は抑えたつもりだが……それでもかなりのものだろう。
業火はフローリアのフレアを飲み込み――
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そのままフローリアに直撃した。
煙と、床やらが焼けこげる臭いが充満する。
やったのか?
「ふ、フローリアァァァァァァァァ!!!!!!」
ジョーキットが叫びながらぼんやりとした黒煙の中に飛び込む。
そこには、焦げて朽ちた衣服と肌との境目もわからないくらいボロボロに焼けたフローリアの姿があった。
「じょ、ジョー……ごめん、負けちゃった……」
まだ息はあるようだ。すんでのところで魔法障壁でも張ったのか、致命傷は避けたようだ。
だがあれでは長くはないだろう。
「フローリア……すまない! うぅ……俺は君を守れなかった……!」
仰向けのフローリアを抱き、ジョーキットは言った。
「ゴホッ! はぁ、はぁ……良いのよ、ジョー。あたし、あなたの為に戦って死ねるのなら本望だわ。最期にこうしてあなたの手に抱かれて眠れるなんて幸せよ……」
「もう喋るなフローリア! 今、魔術医のところへ連れて行ってやるからな!」
ジョーキットは剣も攻撃魔法も達者ではあるが、回復魔法だけは使えないのだ。
あの怪我では、フローリア自身で回復魔法を使用するのも不可能だろうな。
たとえ使えたとしても並の回復魔法で治る怪我ではないだろうが。
「駄目よ、ジョー。あなたはすることがあるでしょ?」
「え?」
「クラウスを倒さなきゃ。いつか侯爵に男爵位を貰うんでしょ? これを逃したら爵位を得る機会なんてそうそうないわ。勇者の使命なんて忘れて、あなたはあなたの幸せを掴んで……」
「フローリア!? おい! フローリアアァァァ!!!」
フローリアの首がかくんと落ちた。
絶命したのだろうか。
「第二試合、勝者……クラウス・アイゼンシュタイン!!」
ニタニタと笑いながらグラッドレイが叫んだ。
あいつにとって状況は悪い方向に進んでいるのに……どうして笑顔なんだ?
アサルドとフローリアはまごうことなき優秀な人材だ。奴はそれを失ったというのに――。
ん?
よく見ると、グラッドレイの視線はフローリアとうなだれたジョーキットの方へ向いている。
あいつ――もしかして、フローリアの無残な姿と悲嘆に暮れるジョーキットを見て笑っているのか?
エレナと俺を始末するという自分の目的をひとまず置いておいて、奴はこの残虐なショーを楽しんでやがるんだ。
当初は俺がいたぶられるのを肴にする予定ではあったのだろうが、これはこれで良い見世物だとでも思っているのだろう。
グラッドレイ・ユリルドローム……なんて悪趣味な奴なんだ。
ジョーキットたちも紛れもないクズだ。
奴らは、俺が絶望に落ちる表情を見る為だけに俺をパーティーに誘った。
仲間だと認めたふりをして、腹の中では俺を見下し、いつ捨ててやろうかと楽しんでいやがったんだ。
だが、それでもあいつらは魔王討伐に関しては真剣だった。何度も死地を潜り抜け、恐ろしい目に遭いながらも旅を続けていたのだ。誰にでもできることじゃない。
ジョーキットたちは、魔物のいない世界を作るという人類の夢を背負っていたのだ。
責任もあるし、当然辛い旅だっただろう。娯楽も必要だったはずだ。その娯楽は……まぁ悪趣味なものではあったけれど。
デスマウンテンで捨てられたことを許してやるつもりはないが、何か少しでも楽しみが欲しかったという奴らの気持ちは理解できなくはないのだ。仮にも、俺だってあいつらとともに死線を潜ったパーティーメンバーだったからな。
だからこそ、魔王討伐という辛い旅をやめて貴族になって暮らしたいという奴らの気持ちも俺は否定するつもりはなかった。
魔王討伐なんてのは俺たち非力な民がジョーキットたち優秀な人間に無責任に背負わせた願望でもあるから。
まぁ、一度のみならず、こうして二度も俺を利用して嵌めようとしたことは許せないけどな。
だが……グラッドレイ、あいつはジョーキットたち以上のクズだ。
私利私欲を満たすためだけに周囲の人間を駒のように扱い、弄んで、高みの見物を決め込む。
挙句の果てに娘までをその手にかけようとしているのだ。
「なんだ? クラウス君。随分怖い顔で見てくるじゃないか」
ゴブレットを揺らし、余裕の表れかグラッドレイは脚を組んで言った。
「さて、君の快進撃もここまでかな? 次は真打のご登場だからな」
グラッドレイの視線の先では、ジョーキットがフローリアを抱いて外野の方へと向かっていた。
何とも言えない表情の兵士たちがぞろぞろと道を開けると、ジョーキットは道場の壁際にフローリアの身体をそっと置いた。
そして、ジョーキットは刃のように鋭い眼差しを俺に向けて言った。
「クラウス……お前だけは許さん。フローリアの仇は取らせてもらう」
「待て、ジョーキット。本当に倒すべきなのは――」
「黙れッ!!! この恨み……貴様の血でもって贖ってもらうぞ!!」
やはりこうなってしまうか……。
「それでは第三試合! 勇者……もとい、復讐者ジョーキット対鬼畜クラウス!」
アサルドとフローリアも強敵だったが、ジョーキットは次元が違う。
いくら俺も強化されているとはいえ、リリスなしでS級冒険者のジョーキットに勝てるのだろうか。
「――――始めッ!!!!」
まるでボードゲームで相手を追い詰めるかのように怜悧に魔物を仕留めてゆく様は何度見ても圧巻だった。
「クラウス……あたしはあんたには別に恨みもないし、何も思うところはないけれど……ジョーとの末来の為に死んでもらうわ」
そこには先ほどの甘ったるい表情は欠片も残っておらず、目の前の敵を葬らんとする冷酷な魔術師がいるのみだった。
特大剣を構え、俺はフローリアから目を離さぬように意識を集中する。
「ファイア!!」
先手を取ったのはフローリアだった。
左手に持った杖先から人間の頭サイズの火球が飛び出す。
俺は横っ飛びでそれを避けた――
「ファイア! ファイア! ファイア!」
と思いきや、次々と飛んでくる火球。
一つだけなら、今の俺なら避けるのは造作もないが、こうも連発されるとキツイな。
「うわああぁぁぁぁ!」
「よ、避けろおぉぉぉ!」
「これ剣術大会だよな!?」
外野の兵士たちにも流れ弾が飛んでいるようで、彼らの悲鳴が聞こえてくる。
これでは建物が燃えてしまって戦闘どころでは――と思ったが、この道場は特殊な素材でできているようで、ちょっとやそっとの炎では火が点くことはないようだ。恐らく建築資材に魔防素材が使用されているのだろう。
「ファイア! ファイア! ファイア!」
「くそっ!」
あれだけ連発していれば相当な魔力を消耗するはずだが、さすがフローリアというべきか、息一つ切らしていない。
しかし、これでは埒が明かないな。避けるだけでは――
いや、これは――ッ!!
「かかったわね!!」
横に跳ぶはずが、俺はへこんだ床に足を取られた。
どうしてこんなへこみが――
あ、そうか!
フローリアの奴は闇雲に攻撃していたわけではなく、火球を床に当てることで床を変形させて足場を不安定にしていやがったのか!
俺がバランスを崩したその瞬間、放たれた火球が俺の右の肩口を掠めた。
「うぐぅッ!?」
肩が……あ、熱い!
「チッ! あれじゃ浅いわね……!」
幸い傷はそれほどではなく、肩は負傷したが腕は何とか上がるようだ。
俺は床のへこみから足を抜き、体勢を立て直した。
しかし、さすがフローリアだな。激しい攻撃で俺の意識を逸らしている間に床に罠をしかけていたとは。
「あんたも少しはやれるようになったみたいだけど……そんなんじゃあたしには勝てないわよ! ファイア!」
「くっ!」
どうしたものか。
近づいて斬撃を浴びせたいが、こうも連続して魔法を撃たれては接近もままならない。
こうして避けている間にも床はどんどん変形し戦いづらくなってしまう。
フローリアは生粋の魔術師。遠距離での戦いのスペシャリストだ。
反面、近距離での戦いには弱い。
何とかして接近戦に持ち込みたいが……。
……いや、ちょっと待てよ。
「ファイア! ファイア! ファイア!!!」
もしかしたら――俺にも使えるんじゃないか? 魔法。
リリスが憑依しているとき、彼女は何度か攻撃魔法を使っていた。
そのときの感覚は俺の身体に残っている。
魔法を発動するには体内で魔力を練る必要があるのだが、その魔力を練るという作業が非常に感覚的なもので複雑な工程であり、どうしてもそれができない人間が多く、魔術師になることのハードルを高める一番の要因となっているのだ。
だが魔力を練る感覚はリリスが身体で教えてくれた。
「ファイア! ファイア!」
隙が無く撃たれ続ける火球を何とか見切り、俺は狙いをつけやすい場所に立った。
そして急いで魔力を練る。
この感覚だ。リリスもこの感覚で魔法を撃っていた。
よし、いけるぞ。
「やっと諦めたかしら! そろそろ死になさい! フレア!!」
俺が立ち止まったのを見計らって、フローリアは炎魔法上位のフレアを放ってきた。
恐ろしい魔物のような猛炎が唸りを上げて俺に向かってくる。
これは賭けだ。もし魔法を撃てなければあのフレアが俺を直撃する。
俺は左手を前に出し、手のひらをフローリアに向けて叫んだ。
「――ヘルファイア!!!」
ヘルファイア。
リリスが使っていた、最強の炎魔法だ。
俺の左手から、悍ましいほど深く紅い渦を巻きながら業火が現れ、轟音とともに放たれた。
道場が燃えてしまったらエレナにも危害が及んでしまうので、魔力は抑えたつもりだが……それでもかなりのものだろう。
業火はフローリアのフレアを飲み込み――
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そのままフローリアに直撃した。
煙と、床やらが焼けこげる臭いが充満する。
やったのか?
「ふ、フローリアァァァァァァァァ!!!!!!」
ジョーキットが叫びながらぼんやりとした黒煙の中に飛び込む。
そこには、焦げて朽ちた衣服と肌との境目もわからないくらいボロボロに焼けたフローリアの姿があった。
「じょ、ジョー……ごめん、負けちゃった……」
まだ息はあるようだ。すんでのところで魔法障壁でも張ったのか、致命傷は避けたようだ。
だがあれでは長くはないだろう。
「フローリア……すまない! うぅ……俺は君を守れなかった……!」
仰向けのフローリアを抱き、ジョーキットは言った。
「ゴホッ! はぁ、はぁ……良いのよ、ジョー。あたし、あなたの為に戦って死ねるのなら本望だわ。最期にこうしてあなたの手に抱かれて眠れるなんて幸せよ……」
「もう喋るなフローリア! 今、魔術医のところへ連れて行ってやるからな!」
ジョーキットは剣も攻撃魔法も達者ではあるが、回復魔法だけは使えないのだ。
あの怪我では、フローリア自身で回復魔法を使用するのも不可能だろうな。
たとえ使えたとしても並の回復魔法で治る怪我ではないだろうが。
「駄目よ、ジョー。あなたはすることがあるでしょ?」
「え?」
「クラウスを倒さなきゃ。いつか侯爵に男爵位を貰うんでしょ? これを逃したら爵位を得る機会なんてそうそうないわ。勇者の使命なんて忘れて、あなたはあなたの幸せを掴んで……」
「フローリア!? おい! フローリアアァァァ!!!」
フローリアの首がかくんと落ちた。
絶命したのだろうか。
「第二試合、勝者……クラウス・アイゼンシュタイン!!」
ニタニタと笑いながらグラッドレイが叫んだ。
あいつにとって状況は悪い方向に進んでいるのに……どうして笑顔なんだ?
アサルドとフローリアはまごうことなき優秀な人材だ。奴はそれを失ったというのに――。
ん?
よく見ると、グラッドレイの視線はフローリアとうなだれたジョーキットの方へ向いている。
あいつ――もしかして、フローリアの無残な姿と悲嘆に暮れるジョーキットを見て笑っているのか?
エレナと俺を始末するという自分の目的をひとまず置いておいて、奴はこの残虐なショーを楽しんでやがるんだ。
当初は俺がいたぶられるのを肴にする予定ではあったのだろうが、これはこれで良い見世物だとでも思っているのだろう。
グラッドレイ・ユリルドローム……なんて悪趣味な奴なんだ。
ジョーキットたちも紛れもないクズだ。
奴らは、俺が絶望に落ちる表情を見る為だけに俺をパーティーに誘った。
仲間だと認めたふりをして、腹の中では俺を見下し、いつ捨ててやろうかと楽しんでいやがったんだ。
だが、それでもあいつらは魔王討伐に関しては真剣だった。何度も死地を潜り抜け、恐ろしい目に遭いながらも旅を続けていたのだ。誰にでもできることじゃない。
ジョーキットたちは、魔物のいない世界を作るという人類の夢を背負っていたのだ。
責任もあるし、当然辛い旅だっただろう。娯楽も必要だったはずだ。その娯楽は……まぁ悪趣味なものではあったけれど。
デスマウンテンで捨てられたことを許してやるつもりはないが、何か少しでも楽しみが欲しかったという奴らの気持ちは理解できなくはないのだ。仮にも、俺だってあいつらとともに死線を潜ったパーティーメンバーだったからな。
だからこそ、魔王討伐という辛い旅をやめて貴族になって暮らしたいという奴らの気持ちも俺は否定するつもりはなかった。
魔王討伐なんてのは俺たち非力な民がジョーキットたち優秀な人間に無責任に背負わせた願望でもあるから。
まぁ、一度のみならず、こうして二度も俺を利用して嵌めようとしたことは許せないけどな。
だが……グラッドレイ、あいつはジョーキットたち以上のクズだ。
私利私欲を満たすためだけに周囲の人間を駒のように扱い、弄んで、高みの見物を決め込む。
挙句の果てに娘までをその手にかけようとしているのだ。
「なんだ? クラウス君。随分怖い顔で見てくるじゃないか」
ゴブレットを揺らし、余裕の表れかグラッドレイは脚を組んで言った。
「さて、君の快進撃もここまでかな? 次は真打のご登場だからな」
グラッドレイの視線の先では、ジョーキットがフローリアを抱いて外野の方へと向かっていた。
何とも言えない表情の兵士たちがぞろぞろと道を開けると、ジョーキットは道場の壁際にフローリアの身体をそっと置いた。
そして、ジョーキットは刃のように鋭い眼差しを俺に向けて言った。
「クラウス……お前だけは許さん。フローリアの仇は取らせてもらう」
「待て、ジョーキット。本当に倒すべきなのは――」
「黙れッ!!! この恨み……貴様の血でもって贖ってもらうぞ!!」
やはりこうなってしまうか……。
「それでは第三試合! 勇者……もとい、復讐者ジョーキット対鬼畜クラウス!」
アサルドとフローリアも強敵だったが、ジョーキットは次元が違う。
いくら俺も強化されているとはいえ、リリスなしでS級冒険者のジョーキットに勝てるのだろうか。
「――――始めッ!!!!」
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