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第一章
第27話 死霊術士、勇者パーティーを殲滅する
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心臓を貫かれたジョーキットはその場で崩れるようにしてうつ伏せに倒れた。
刺さったままの剣がその衝撃で傷口を更に広げ、鮮血が飛び散る。
さすがのジョーキットもあれでは動けまい。
俺はアサルドとフローリアの使役を解除した。
その瞬間、フローリアの身体はまるで糸の切れた人形のように倒れた。
ジョーキットを倒すためにはやむをえなかったとはいえ、死者を弄んでしまったことへの罪悪感が俺の心を少しだけ締めつけた。
「勝者……クラウス・アイゼンシュタイン……」
グラッドレイがぼそりと呟いた。
エレナも何が起きたのかわけがわからないという目で道場の光景を見ている。
さて、ここからどうしたものか……。
依然、この状況がピンチであることに変わりはない。
エレナを助けたいが、彼女は未だグラッドレイの側で縛られている。
それにここから逃げることができても、グラッドレイが何をするかわからない。
奴はまずエレナを監禁し、彼女の言っていた汚職の証拠とやらを処分させるはずだ。
そして俺やリリスを指名手配するだろう。
そうなれば俺たちはこのサラマンドの町にいられなくなり、魔王討伐の旅の準備をするどころではなくなってしまう。
もっとも、昨日の俺の活躍が狂言であると証明することでエレナを処刑するというグラッドレイの目論見は砕かれたわけだが。俺にとっても予想外の形とはいえ、俺の強さは証明できたはずだからな――。
――と思ったのだが、どうやらそうでもないようだ。
「素晴らしい! クラウス君、君は実に素晴らしい!」
そう言いながら、グラッドレイは懐から取り出したナイフをエレナの首元に当てているではないか。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
エレナが悲鳴を上げる。
「グラッドレイ!? エレナをどうする気だ? 俺は強さを証明したぞ! つまりお前の推理は否定されたんだ! 彼女を解放すべきじゃないのか!?」
「んん~? 何を言っているんだね? ジョーキットたちは仲間割れの末に自滅したのだよ。現に、ジョーキットはアサルドとフローリアの凶刃によって倒れたではないか」
「な、何を言っているんだ!?」
「やはり私の推理は間違っていなかった。ジョーキットたちは君に操られていたのだ。この戦いも、すべて君の自作自演なのだ! 君がC級のカスであることに変わりはない!」
め、滅茶苦茶だ。
そもそもジョーキットたちが俺に不利なことをグラッドレイに吹き込んだのがこの状況の始まりだというのに。
まったく論理が通っていないじゃないか。
「そんなの誰が信じるっていうんだ!? アサルドとフローリアが倒れる瞬間も、しっかりと兵士たちが見ているんだぞ!」
「そうだな。だが……兵士どもはジョーキットが倒れる瞬間は見ていない。途中でここから逃げ出しおったからな……おい! 兵士ども! いつまで外にいるつもりだ!!!」
グラッドレイが怒声を上げると、外に出ていた兵士たちがぞろぞろと中に入ってきた。
「え……どうしてジョーキットが倒れているんだ?」
「あんなにクラウスが劣勢だったのに……」
「何が起きたんだ?」
「フローリアの死体が何であそこに?」
「アサルドの死体も移動しているぞ! 俺が向こうへ運んだのに!」
入ってきた兵士たちが口々に感想を述べる。
この流れは、ヤバい……。
「さて我が兵たちよ。ここで何が起きたのか知りたいであろう! そう、すべてはこのクラウスの自作自演だったのだ!!」
「わ、わけのわからないことを言うな! そんな証拠がどこにある!」
「証拠、か。クラウス君に唐突な質問があるのだが……先ほどの光景を見た者がここには何人いる?」
そりゃ、もちろん俺と、グラッドレイと――。
「はっ!?」
「そう――エレナもその目でしっかり見ているんだよ! エレナに先ほど見たことを証言してもらうとしようか! ちょうど、記憶をはっきりさせる魔法薬が私の部屋にはあるからな!」
魔法薬の中には、本人が見たこと聞いたことを嘘偽りなく吐かせてしまうものがあると聞いたことがある。
その類のものを使ってエレナにさっきの光景を話させるつもりか。
まずいな。確かにエレナもアサルドとフローリアがジョーキットを刺す瞬間を見ている。
エレナからしてみても、先ほどの光景は理解できないはずだ。彼女は俺が死霊術士だと知らないからな。
そして仮に俺がここで死霊術士だと主張したところで、それを信じる者はまずいないだろう。死霊術士は五百年前に滅ぼされたことになっているんだから。
今から死霊術を披露して見せたところでうやむやにされるのがオチだ。
魔法薬を使って引き出された証言はれっきとした証拠となる。
ジョーキットがアサルドとフローリアによって刺されたということがエレナの証言により事実として認められれば、俺の立場は危うくなる。
もはや、万事休すか――。
そう思って俺は天井を見上げた。
「……へ?」
その光景に、俺は思わず呆けた声を上げた。
初め、それは目の錯覚か何かだと思った。
だが、パラパラと降ってくる木屑とともに、何かが天井を突き破ってこちらに落下してきているのがはっきりと見えた。
「クラウスさあぁぁぁぁぁん! 助けに来ましたあぁぁぁぁぁぁ!!!」
大槍を持った赤い髪の女がそう叫びながら天井から降ってくる。
その可憐な容姿に似合わぬ、鬼神のごとき強さ。
五百年前から蘇った最強の勇者。
他の誰かと見間違えるはずもない。
リリスが――来てくれた。
刺さったままの剣がその衝撃で傷口を更に広げ、鮮血が飛び散る。
さすがのジョーキットもあれでは動けまい。
俺はアサルドとフローリアの使役を解除した。
その瞬間、フローリアの身体はまるで糸の切れた人形のように倒れた。
ジョーキットを倒すためにはやむをえなかったとはいえ、死者を弄んでしまったことへの罪悪感が俺の心を少しだけ締めつけた。
「勝者……クラウス・アイゼンシュタイン……」
グラッドレイがぼそりと呟いた。
エレナも何が起きたのかわけがわからないという目で道場の光景を見ている。
さて、ここからどうしたものか……。
依然、この状況がピンチであることに変わりはない。
エレナを助けたいが、彼女は未だグラッドレイの側で縛られている。
それにここから逃げることができても、グラッドレイが何をするかわからない。
奴はまずエレナを監禁し、彼女の言っていた汚職の証拠とやらを処分させるはずだ。
そして俺やリリスを指名手配するだろう。
そうなれば俺たちはこのサラマンドの町にいられなくなり、魔王討伐の旅の準備をするどころではなくなってしまう。
もっとも、昨日の俺の活躍が狂言であると証明することでエレナを処刑するというグラッドレイの目論見は砕かれたわけだが。俺にとっても予想外の形とはいえ、俺の強さは証明できたはずだからな――。
――と思ったのだが、どうやらそうでもないようだ。
「素晴らしい! クラウス君、君は実に素晴らしい!」
そう言いながら、グラッドレイは懐から取り出したナイフをエレナの首元に当てているではないか。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
エレナが悲鳴を上げる。
「グラッドレイ!? エレナをどうする気だ? 俺は強さを証明したぞ! つまりお前の推理は否定されたんだ! 彼女を解放すべきじゃないのか!?」
「んん~? 何を言っているんだね? ジョーキットたちは仲間割れの末に自滅したのだよ。現に、ジョーキットはアサルドとフローリアの凶刃によって倒れたではないか」
「な、何を言っているんだ!?」
「やはり私の推理は間違っていなかった。ジョーキットたちは君に操られていたのだ。この戦いも、すべて君の自作自演なのだ! 君がC級のカスであることに変わりはない!」
め、滅茶苦茶だ。
そもそもジョーキットたちが俺に不利なことをグラッドレイに吹き込んだのがこの状況の始まりだというのに。
まったく論理が通っていないじゃないか。
「そんなの誰が信じるっていうんだ!? アサルドとフローリアが倒れる瞬間も、しっかりと兵士たちが見ているんだぞ!」
「そうだな。だが……兵士どもはジョーキットが倒れる瞬間は見ていない。途中でここから逃げ出しおったからな……おい! 兵士ども! いつまで外にいるつもりだ!!!」
グラッドレイが怒声を上げると、外に出ていた兵士たちがぞろぞろと中に入ってきた。
「え……どうしてジョーキットが倒れているんだ?」
「あんなにクラウスが劣勢だったのに……」
「何が起きたんだ?」
「フローリアの死体が何であそこに?」
「アサルドの死体も移動しているぞ! 俺が向こうへ運んだのに!」
入ってきた兵士たちが口々に感想を述べる。
この流れは、ヤバい……。
「さて我が兵たちよ。ここで何が起きたのか知りたいであろう! そう、すべてはこのクラウスの自作自演だったのだ!!」
「わ、わけのわからないことを言うな! そんな証拠がどこにある!」
「証拠、か。クラウス君に唐突な質問があるのだが……先ほどの光景を見た者がここには何人いる?」
そりゃ、もちろん俺と、グラッドレイと――。
「はっ!?」
「そう――エレナもその目でしっかり見ているんだよ! エレナに先ほど見たことを証言してもらうとしようか! ちょうど、記憶をはっきりさせる魔法薬が私の部屋にはあるからな!」
魔法薬の中には、本人が見たこと聞いたことを嘘偽りなく吐かせてしまうものがあると聞いたことがある。
その類のものを使ってエレナにさっきの光景を話させるつもりか。
まずいな。確かにエレナもアサルドとフローリアがジョーキットを刺す瞬間を見ている。
エレナからしてみても、先ほどの光景は理解できないはずだ。彼女は俺が死霊術士だと知らないからな。
そして仮に俺がここで死霊術士だと主張したところで、それを信じる者はまずいないだろう。死霊術士は五百年前に滅ぼされたことになっているんだから。
今から死霊術を披露して見せたところでうやむやにされるのがオチだ。
魔法薬を使って引き出された証言はれっきとした証拠となる。
ジョーキットがアサルドとフローリアによって刺されたということがエレナの証言により事実として認められれば、俺の立場は危うくなる。
もはや、万事休すか――。
そう思って俺は天井を見上げた。
「……へ?」
その光景に、俺は思わず呆けた声を上げた。
初め、それは目の錯覚か何かだと思った。
だが、パラパラと降ってくる木屑とともに、何かが天井を突き破ってこちらに落下してきているのがはっきりと見えた。
「クラウスさあぁぁぁぁぁん! 助けに来ましたあぁぁぁぁぁぁ!!!」
大槍を持った赤い髪の女がそう叫びながら天井から降ってくる。
その可憐な容姿に似合わぬ、鬼神のごとき強さ。
五百年前から蘇った最強の勇者。
他の誰かと見間違えるはずもない。
リリスが――来てくれた。
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