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吸血鬼と聖女と聖騎士と
第一章第28話 薬師見習い
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私はジェズ薬草店への弟子入りが決まったため、私は住み込みで働かせてもらうことになった。ホテル代がかからないって素晴らしい!
ちなみに、クリスさんの分のスペースはないといったら、即日で隣の建物の一室を借りてきていた。恐るべき行動力だ。ちなみに、その一室は丁度その日、たまたま空きが出たらしい。なんという偶然だろうか、私に与えられた部屋の窓の丁度真向いだ。
何か、恐ろしい執念のようなものを感じる。
さて、ジェズ薬草店(調合した薬を売っていても、薬草店と名乗るのが一般的らしい)の朝は早い。まず、朝5時には工房を開け、今日届ける分の薬の調合を行うのだ。当然、工房を開けて掃除をするのは私の仕事なので、私の活動開始はそれよりも早い。
そして、朝7時には調合を終えて近隣の病院に配達する。配達については、私は単なる付き添いだ。病院の状況を聞き取ったりする必要があるそうなので、私だけに任せることはできないらしい。
そのうちの一か所に私が大赤字の治癒活動をしたときに回った病院があったのだが、案の定驚かれた。
「え? フィーネ様? どうしてジェズさんと薬を届けにいらしたんですか?」
「はい。魔法だけでなく薬も勉強したいと思いまして」
「え? 聖女様がお薬も? え? え?」
「これが普通の感覚なんだよ。しかし、あんたホントに聖女様だったんだな……」
「まあ、周りの人たちが言っているだけですから」
「はあ、聖女ってだけでも誇るモンなのに、あんたは本当に変わってるな」
「そうでしょうか……」
そして配達が終わると朝食を取って開店準備だ。食事は朝昼晩、親方の奥さんが用意してくれるのでとても助かる。食事時にはクリスさんがやってきて、ちゃっかり一緒に食べている。食費は払っているそうなので、ジェズ家としては問題ないそうだ。
開店時間は準備が整ったら、という適当っぷり。大体10時までには開店できているかな。今までは奥さんが店番をしていたけれど、若い女の子が来たんだからと私にバトンタッチすることになった。接客のバイトはやったことあるし、同僚の女子がやっていたのを参考にやってみることにしよう。
などと考えていると、20 代くらいの男性のお客さんがやってきた。
「いらっしゃいませ~♪」
にっこり、営業スマイル。
あれ? なんだか驚いているぞ?
「あ、あ、ええと、家族が怪我をして、傷薬と痛み止めが欲しいんだが」
「はい。かしこまりました。お怪我はどのようなものですか? 切り傷ですか? 擦り傷ですか?それとも噛まれた傷ですか? あと、お怪我をされた場所はどちらですか?」
「あ、えっと、うちの子供が転んで膝を擦り剥いて。それから手と顔にも軽い擦り傷が」
「まあ、それは心配ですね。それでしたら、こちらの傷薬(中)が良いですね。そして、痛み止めは必要ありません。傷薬と併せてゲルタシル草を原料とした化膿止め軟膏を塗っていただくと良いですよ。よろしければ、調合いたしますがいかがなさいますか?」
あれ、何だかお客さんがポカンとしている?
「お客様、いかがなさいますか?」
「え、あ、ああ。頼む」
「はい。少々お待ちください。包帯とガーゼはおありですか?」
「い、いや」
「そちらもお買い上げになりますか?」
「あ、ああ、頼む」
「はい。かしこまりました。傷薬(中)、ゲルタシル軟膏、包帯とガーゼが一週間分、そして調合手数料で、ええと、あれ? 少々お待ちください。親方~! 傷薬(中)とゲルタシンの調合手数料っていくらですか~?」
私が工房の親方に声をかけると、遠くから「小銀貨 1 !」という声が聞こえてきた。なるほど。混ぜるだけの奴は小銀貨 1 枚約 1,000 円のようだ。
「それでは、合計で銀貨 1 枚と小銀貨 2 枚となります」
「あ、ああ」
なにやら呆然としながらお金を支払ってくるのでそのままうけとる。それにしても、何をそんなに呆然としているんだ?
「それでは、調合してまいりますので少々お待ちください」
私はそう言って傷薬(中)を持って工房へと走っていく。
「親方、ゲルタシルを調合して混ぜてください。一回塗れば済むように、一つの軟膏にしてあげてください」
「は? ん? ああ、そうか。混ぜていいのか。なるほど。たしかにそうすれば使い勝手がいいな」
そう言って、親方はゲルタシル草をベースにした軟膏を作り、手早く傷薬(中)と混ぜ合わせて一つの薬にする。
「ほれ、できたぞ。いいアイデアだな」
「ありがとうございます」
まあ、現実世界で薬と保湿剤を混ぜたものを貰ったことがあるから知ってただけだけどね。
そして、私は急いで店頭に戻る。
「お待たせしました。こちらが傷薬(中)とゲルタシル軟膏を混ぜたものです。一日に二回、傷口を清潔な水で良く洗ってから塗って、その上からガーゼを当ててあげてくださいね」
「お、おう」
「はい、こちらが商品となります。お大事にどうぞ~」
どうも釈然としないような顔をしてお客さんが出ていく。一体何がおかしいというんだ?
そしてそれ以降、お客さんが来ることはなく、親方のお腹がすいてきたということなので午前の営業は終了となった。私は店頭のドアにかかった札を休憩中にして一旦店を閉じると、親方たちと一緒に昼食をとる。病院への販売が稼ぎ頭なのか、店頭販売にあまり重きをおいていないようでジェズ薬草店の営業時間はかなり適当だ。
そして午後の営業が始まる。午前中のお客さんと同様に、私が接客すると皆キツネにつままれたような顔をしている。一体何が不思議なのか?
そんなこんなで夕方を迎える。ジェズさんがもういいや、と思ったら店は閉店。今日は午後4時の鐘を聞いてもういいや、と思ったらしく閉店の運びとなった。
その後は朝に病院から回収した注文書の薬を届けるための準備となる。必要な薬草をすりつぶしたり、薬草から成分を煮出したり。そして在庫の棚卸作業をして、足りない原料があれば発注書を書いて掃除をして一日は終了だ。ちなみに、どんぶり勘定らしく、お金の計算はしないそうだ。
おいおい、どんぶり勘定でいいのか?
ちなみに、クリスさんの分のスペースはないといったら、即日で隣の建物の一室を借りてきていた。恐るべき行動力だ。ちなみに、その一室は丁度その日、たまたま空きが出たらしい。なんという偶然だろうか、私に与えられた部屋の窓の丁度真向いだ。
何か、恐ろしい執念のようなものを感じる。
さて、ジェズ薬草店(調合した薬を売っていても、薬草店と名乗るのが一般的らしい)の朝は早い。まず、朝5時には工房を開け、今日届ける分の薬の調合を行うのだ。当然、工房を開けて掃除をするのは私の仕事なので、私の活動開始はそれよりも早い。
そして、朝7時には調合を終えて近隣の病院に配達する。配達については、私は単なる付き添いだ。病院の状況を聞き取ったりする必要があるそうなので、私だけに任せることはできないらしい。
そのうちの一か所に私が大赤字の治癒活動をしたときに回った病院があったのだが、案の定驚かれた。
「え? フィーネ様? どうしてジェズさんと薬を届けにいらしたんですか?」
「はい。魔法だけでなく薬も勉強したいと思いまして」
「え? 聖女様がお薬も? え? え?」
「これが普通の感覚なんだよ。しかし、あんたホントに聖女様だったんだな……」
「まあ、周りの人たちが言っているだけですから」
「はあ、聖女ってだけでも誇るモンなのに、あんたは本当に変わってるな」
「そうでしょうか……」
そして配達が終わると朝食を取って開店準備だ。食事は朝昼晩、親方の奥さんが用意してくれるのでとても助かる。食事時にはクリスさんがやってきて、ちゃっかり一緒に食べている。食費は払っているそうなので、ジェズ家としては問題ないそうだ。
開店時間は準備が整ったら、という適当っぷり。大体10時までには開店できているかな。今までは奥さんが店番をしていたけれど、若い女の子が来たんだからと私にバトンタッチすることになった。接客のバイトはやったことあるし、同僚の女子がやっていたのを参考にやってみることにしよう。
などと考えていると、20 代くらいの男性のお客さんがやってきた。
「いらっしゃいませ~♪」
にっこり、営業スマイル。
あれ? なんだか驚いているぞ?
「あ、あ、ええと、家族が怪我をして、傷薬と痛み止めが欲しいんだが」
「はい。かしこまりました。お怪我はどのようなものですか? 切り傷ですか? 擦り傷ですか?それとも噛まれた傷ですか? あと、お怪我をされた場所はどちらですか?」
「あ、えっと、うちの子供が転んで膝を擦り剥いて。それから手と顔にも軽い擦り傷が」
「まあ、それは心配ですね。それでしたら、こちらの傷薬(中)が良いですね。そして、痛み止めは必要ありません。傷薬と併せてゲルタシル草を原料とした化膿止め軟膏を塗っていただくと良いですよ。よろしければ、調合いたしますがいかがなさいますか?」
あれ、何だかお客さんがポカンとしている?
「お客様、いかがなさいますか?」
「え、あ、ああ。頼む」
「はい。少々お待ちください。包帯とガーゼはおありですか?」
「い、いや」
「そちらもお買い上げになりますか?」
「あ、ああ、頼む」
「はい。かしこまりました。傷薬(中)、ゲルタシル軟膏、包帯とガーゼが一週間分、そして調合手数料で、ええと、あれ? 少々お待ちください。親方~! 傷薬(中)とゲルタシンの調合手数料っていくらですか~?」
私が工房の親方に声をかけると、遠くから「小銀貨 1 !」という声が聞こえてきた。なるほど。混ぜるだけの奴は小銀貨 1 枚約 1,000 円のようだ。
「それでは、合計で銀貨 1 枚と小銀貨 2 枚となります」
「あ、ああ」
なにやら呆然としながらお金を支払ってくるのでそのままうけとる。それにしても、何をそんなに呆然としているんだ?
「それでは、調合してまいりますので少々お待ちください」
私はそう言って傷薬(中)を持って工房へと走っていく。
「親方、ゲルタシルを調合して混ぜてください。一回塗れば済むように、一つの軟膏にしてあげてください」
「は? ん? ああ、そうか。混ぜていいのか。なるほど。たしかにそうすれば使い勝手がいいな」
そう言って、親方はゲルタシル草をベースにした軟膏を作り、手早く傷薬(中)と混ぜ合わせて一つの薬にする。
「ほれ、できたぞ。いいアイデアだな」
「ありがとうございます」
まあ、現実世界で薬と保湿剤を混ぜたものを貰ったことがあるから知ってただけだけどね。
そして、私は急いで店頭に戻る。
「お待たせしました。こちらが傷薬(中)とゲルタシル軟膏を混ぜたものです。一日に二回、傷口を清潔な水で良く洗ってから塗って、その上からガーゼを当ててあげてくださいね」
「お、おう」
「はい、こちらが商品となります。お大事にどうぞ~」
どうも釈然としないような顔をしてお客さんが出ていく。一体何がおかしいというんだ?
そしてそれ以降、お客さんが来ることはなく、親方のお腹がすいてきたということなので午前の営業は終了となった。私は店頭のドアにかかった札を休憩中にして一旦店を閉じると、親方たちと一緒に昼食をとる。病院への販売が稼ぎ頭なのか、店頭販売にあまり重きをおいていないようでジェズ薬草店の営業時間はかなり適当だ。
そして午後の営業が始まる。午前中のお客さんと同様に、私が接客すると皆キツネにつままれたような顔をしている。一体何が不思議なのか?
そんなこんなで夕方を迎える。ジェズさんがもういいや、と思ったら店は閉店。今日は午後4時の鐘を聞いてもういいや、と思ったらしく閉店の運びとなった。
その後は朝に病院から回収した注文書の薬を届けるための準備となる。必要な薬草をすりつぶしたり、薬草から成分を煮出したり。そして在庫の棚卸作業をして、足りない原料があれば発注書を書いて掃除をして一日は終了だ。ちなみに、どんぶり勘定らしく、お金の計算はしないそうだ。
おいおい、どんぶり勘定でいいのか?
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