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聖女の旅路
第十三章第44話 次の目的地
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「さて、フィーネ殿。これからどうするでござるか? 目的の嵐龍王はああなったでござるし、ルミア殿の妹君もこの国の制度を考えるといない気がするでござるよ。」
お腹いっぱいになったらしいビビが私のベッドのど真ん中を占領して眠りにつくと、シズクさんがそう切り出してきた。
「そうですね。ルーちゃんの妹について可能性がありそうなのはレッドスカイ帝国ですけど……」
「ちょっと今は近づきづらいでござるな」
「はい」
ちらりとルーちゃんのほうを見ると、ルーちゃんは小さく頷いた。
「となると、あとは地龍王を探したいですね。でも手掛かりがまったくないですし……」
「手掛かりはないでござるが、ある程度予想はできるでござるよ」
「え?」
「龍王たちが封じられていた場所を考えれば分かりやすいでござるよ」
「場所ですか? ええと、冥龍王が極北の地ですね。それから水龍王がゴールデンサン巫国で、炎龍王がイエロープラネット首長国連邦。それと嵐龍王がグリーンクラウド王国にいましたね」
「そうでござる。正確にはレッドスカイ帝国との境界線上でござるな」
「はい。そうですね。それがどうしたんですか?」
「フィーネ殿、あと一つ抜けている場所があるでござるよ」
「え? 残る龍王は地龍王と聖龍王ですけど、地龍王はどこに封印されているかわからないですし、聖龍王は瘴気で滅んだって精霊神様が言っていましたよ?」
しかしシズクさんは真剣な表情のまま小さく首を横に振った。
「違うでござるよ。大魔王でござる。大魔王は魔大陸に封じられているのでござろう?」
「え? でも大魔王は龍王じゃないと思いますけど……」
「大魔王も龍王たちも、瘴気を集めるためにその身を犠牲にしたのでござるよ。その意味では同じでござる」
「それはそうですね」
「その経緯を考えれば、龍王たちは瘴気を効率よく集めるために、他の龍王たちとは離れた場所で自らを封印したと考えられるのではござらんか?」
「あ! なるほど……」
「となると考えられる候補は三つでござる」
「三つ、ですか?」
「そうでござる。一番有力な候補はブラックレインボー帝国でござるな。他のどの龍王とも離れているでござるからな。空白を埋めるという意味ではそこが一番でござろう」
「なるほど。他にはどこがあるんですか?」
「一つはレッドスカイ帝国の北でござる。北には凍った大地が広がっているでござるが、一応空白地帯ではあるでござるな」
「なるほど」
「もう一つはホワイトムーン王国でござる」
「ホワイトムーン王国ですか?」
「極北の地とはかなり距離が離れているでござるし、イエロープラネット首長国連邦からもそれなりに離れているでござるよ」
「それはそうですね」
「あとは、拙者たちの知らない大陸がどこかにあるのなら、それもありかもしれないでござるが、それを言いだすときりがないでござるからなぁ」
うん。それはそのとおりだ。新大陸を見つけるためにあてどなく航海をするというのはあまり考えたくない。
「分かりました。それじゃあブラックレインボー帝国に行ってみましょう。そこならホワイトムーン王国を通ることにもなりますし」
「賛成でござるよ」
こうして私たちは次の目的地をブラックレインボー帝国に決めたのだった。
◆◇◆
それから私たちはヴェダに戻ってきた。今は王宮の一室に泊まっているのだが、色々と異変がある。
まず一つ目は、ビビがあっという間に大きくなったところだ。チャーヴァでは体長ニ十センチメートルほどで、片手で抱っこできるほど小さかったのだが、今はもう一メートルくらいある。首と頭、それに尻尾を含めればもう私よりも大きいため、片手で抱っこはおろかおんぶすらも厳しい。
もちろん連れてきたときは大層驚かれたが、私が育てているホーリードラゴンだと説明するとあっさり受け入れてもらえた。そんなわけで同じ部屋に泊めてもらっているのだが……。
「キュー!」
部屋の向こうからビビが猛スピードで向かって飛び込んできた。
そう。ビビは体がもう大きくなっているにもかかわらず、まだ自分の体が小さいと思っているのかこうしてしきりにじゃれついてくるのだ。
「キューンキューン」
そして私の顔をべろべろと舐めてくる。
「ああ、はいはい」
「キュゥゥゥ」
頭を抱えて撫でてやると気持ちよさそうに目を細めながら甘えた鳴き声を上げる。
顔を舐めてくるところといい、撫でると気持ちよさそうにしているところといい、なんとも犬っぽいがビビはドラゴンだ。
ドラゴンということもあってかビビはルーちゃんに負けず劣らずの大食いなため、このペースで大きくなると考えると先行きがやや不安ではある。
「あ! ビビ! また姉さまの顔を舐めまわしてるっ! ダメだよっ!」
「キュウウウ?」
バナナの房を持って戻ってきたルーちゃんがビビを注意した。しかしバナナを見たビビはルーちゃんのほうへと飛んでいく。
「ビビ! 待て!」
ルーちゃんに言われ、ビビは床におりてお座りをする。するとルーちゃんはバナナの皮をむいてビビに差し出した。
「よしっ!」
するとビビは美味しそうにルーちゃんの手からバナナを食べる。嬉しいのか尻尾がブンブンと振られており、ますます犬にしか見えないのだが、ビビはドラゴンだ。
……のはずだ。
そんなことを考えつつもルーちゃんとビビの様子を見守っていると、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します」
すると扉が開かれ、ラージャ三世が入ってきた。どうやらもう一つの異変、いや、事件について説明しにきたようだ。
お腹いっぱいになったらしいビビが私のベッドのど真ん中を占領して眠りにつくと、シズクさんがそう切り出してきた。
「そうですね。ルーちゃんの妹について可能性がありそうなのはレッドスカイ帝国ですけど……」
「ちょっと今は近づきづらいでござるな」
「はい」
ちらりとルーちゃんのほうを見ると、ルーちゃんは小さく頷いた。
「となると、あとは地龍王を探したいですね。でも手掛かりがまったくないですし……」
「手掛かりはないでござるが、ある程度予想はできるでござるよ」
「え?」
「龍王たちが封じられていた場所を考えれば分かりやすいでござるよ」
「場所ですか? ええと、冥龍王が極北の地ですね。それから水龍王がゴールデンサン巫国で、炎龍王がイエロープラネット首長国連邦。それと嵐龍王がグリーンクラウド王国にいましたね」
「そうでござる。正確にはレッドスカイ帝国との境界線上でござるな」
「はい。そうですね。それがどうしたんですか?」
「フィーネ殿、あと一つ抜けている場所があるでござるよ」
「え? 残る龍王は地龍王と聖龍王ですけど、地龍王はどこに封印されているかわからないですし、聖龍王は瘴気で滅んだって精霊神様が言っていましたよ?」
しかしシズクさんは真剣な表情のまま小さく首を横に振った。
「違うでござるよ。大魔王でござる。大魔王は魔大陸に封じられているのでござろう?」
「え? でも大魔王は龍王じゃないと思いますけど……」
「大魔王も龍王たちも、瘴気を集めるためにその身を犠牲にしたのでござるよ。その意味では同じでござる」
「それはそうですね」
「その経緯を考えれば、龍王たちは瘴気を効率よく集めるために、他の龍王たちとは離れた場所で自らを封印したと考えられるのではござらんか?」
「あ! なるほど……」
「となると考えられる候補は三つでござる」
「三つ、ですか?」
「そうでござる。一番有力な候補はブラックレインボー帝国でござるな。他のどの龍王とも離れているでござるからな。空白を埋めるという意味ではそこが一番でござろう」
「なるほど。他にはどこがあるんですか?」
「一つはレッドスカイ帝国の北でござる。北には凍った大地が広がっているでござるが、一応空白地帯ではあるでござるな」
「なるほど」
「もう一つはホワイトムーン王国でござる」
「ホワイトムーン王国ですか?」
「極北の地とはかなり距離が離れているでござるし、イエロープラネット首長国連邦からもそれなりに離れているでござるよ」
「それはそうですね」
「あとは、拙者たちの知らない大陸がどこかにあるのなら、それもありかもしれないでござるが、それを言いだすときりがないでござるからなぁ」
うん。それはそのとおりだ。新大陸を見つけるためにあてどなく航海をするというのはあまり考えたくない。
「分かりました。それじゃあブラックレインボー帝国に行ってみましょう。そこならホワイトムーン王国を通ることにもなりますし」
「賛成でござるよ」
こうして私たちは次の目的地をブラックレインボー帝国に決めたのだった。
◆◇◆
それから私たちはヴェダに戻ってきた。今は王宮の一室に泊まっているのだが、色々と異変がある。
まず一つ目は、ビビがあっという間に大きくなったところだ。チャーヴァでは体長ニ十センチメートルほどで、片手で抱っこできるほど小さかったのだが、今はもう一メートルくらいある。首と頭、それに尻尾を含めればもう私よりも大きいため、片手で抱っこはおろかおんぶすらも厳しい。
もちろん連れてきたときは大層驚かれたが、私が育てているホーリードラゴンだと説明するとあっさり受け入れてもらえた。そんなわけで同じ部屋に泊めてもらっているのだが……。
「キュー!」
部屋の向こうからビビが猛スピードで向かって飛び込んできた。
そう。ビビは体がもう大きくなっているにもかかわらず、まだ自分の体が小さいと思っているのかこうしてしきりにじゃれついてくるのだ。
「キューンキューン」
そして私の顔をべろべろと舐めてくる。
「ああ、はいはい」
「キュゥゥゥ」
頭を抱えて撫でてやると気持ちよさそうに目を細めながら甘えた鳴き声を上げる。
顔を舐めてくるところといい、撫でると気持ちよさそうにしているところといい、なんとも犬っぽいがビビはドラゴンだ。
ドラゴンということもあってかビビはルーちゃんに負けず劣らずの大食いなため、このペースで大きくなると考えると先行きがやや不安ではある。
「あ! ビビ! また姉さまの顔を舐めまわしてるっ! ダメだよっ!」
「キュウウウ?」
バナナの房を持って戻ってきたルーちゃんがビビを注意した。しかしバナナを見たビビはルーちゃんのほうへと飛んでいく。
「ビビ! 待て!」
ルーちゃんに言われ、ビビは床におりてお座りをする。するとルーちゃんはバナナの皮をむいてビビに差し出した。
「よしっ!」
するとビビは美味しそうにルーちゃんの手からバナナを食べる。嬉しいのか尻尾がブンブンと振られており、ますます犬にしか見えないのだが、ビビはドラゴンだ。
……のはずだ。
そんなことを考えつつもルーちゃんとビビの様子を見守っていると、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します」
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