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第二章
第81話 ツェツィーリエさんの正体がわかりました
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2021/07/24 誤字を修正しました
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「ローザちゃんのそれ、本当にすごいのねぇ」
「え?」
ツェツィーリエさんに言われてあたしは我に返りました。
魔術じゃなくて魔法だから、バレないようにって思ってたのに……。
それからツェツィーリエさんがあたしと近くにやってきて、耳元で囁きました。
「あなたのそれ。やっぱり魔法ね?」
「っ!?」
ば、バレちゃいました。ど、ど、ど、どうしたら……。
焦ってちょっとパニックになって、頭が真っ白になっちゃいました。
でもそうしたら、ぎゅってツェツィーリエさんが抱きしめてくれました。
「大丈夫。これまで、誰にも相談できずにいたのね。でも、もう安心ですよ」
「え、えっと……」
「これからは、リリアちゃんと一緒に授業を受けられますからね」
「え? え?」
あたしが戸惑っていると、ツェツィーリエさんがまた耳元囁きます。
「ローザちゃんは光と火だけじゃなくて、風属性にも適性があるのね?」
「っ!? そ、それは……」
そうでした。照準を合わせるために光も使っちゃったんでした。
あれれ? 風はどうして?
「大丈夫よ。あなたの可愛いお友達が戦えば、すぐにバレるもの」
「え?」
「あの可愛らしいミミズクちゃんは、ホーちゃんといったかしら? あの子はさっきの戦いで、本来は持っていないはずの風の魔力を使っていたでしょう?」
「ええっ?」
いつの間に使っていたんでしょうか?
「前に会ったとき、あの子が使っていたのは闇の魔力だけだったもの。だから、これはローザちゃんがあげた魔力のおかげね」
「え? え? 最初から闇の魔力を?」
「ええ、そうよ。その子はアサシンオウルという魔物だもの。普通は従魔になんかできないはずなのだけれど、ローザちゃんは特別なのね」
「え? 魔物? ホーちゃん、魔物だったんですか?」
「あらあら。そこからなの?」
ツェツィーリエさんはそう言ってくすくすと笑いました。
「いい? ローザちゃんには特別な力があるわ。魔法が使えて、こんなにかわいくて優しいお友達だってできちゃう」
「……」
「でもね。今のローザちゃんにはその力を使いこなす知識が足りていません」
「う……」
「だからこの学園でしっかり学んで、正しい道を選びとれるようになってほしかったのだけれど……」
そう言うと、ツェツィーリエさんは王太子様と学園長を順々に見ます。それから深いため息をつきました。
「どうしてこんな決闘騒ぎになってなっているんでしょうね?」
「も、申し訳ありません。ツェツィーリエ先生。ですが貴族が名誉を懸けると言ったならば……」
え? あの、その話を出したのって王太子様でしたよね?
そんな疑問があたしの顔に出ていたのか、ツェツィーリエさんが王太子様を注意してくれます。
「……なんでもすぐにそうやって決闘で解決しようなどと考えるのはあなたの悪い癖です。国王になったあとも、問題の仲裁でいちいち決闘をさせるつもりですか? 部下がいなくなってしまいますし、他の国とのだったら戦争になりますよ」
「う……」
なんだか、王太子様が素直に聞いています。
すごいなって思ってその様子を眺めていると、王太子様の視線がまたあたしの胸をロックオンしているのに気が付きました。
き、気持ち悪い……。
あたしは胸を見られないようにさっとツェツィーリエさんの後ろに隠れます。
「こら! 叱られている最中にどこを見ているんですか! 女性の胸ばかりジロジロ見るんじゃありません! あなたは小さいころから!」
「い、いや、その……」
ツェツィーリエさんが初めて大声で怒り、それにビビったのか王太子様が小さくなりました。
それからも延々とツェツィーリエさんのお説教が続き、すっかり王太子様はしょぼくれてしまいました。
……もしかして、ツェツィーリエさんに言いつければいいんでしょうか?
「それと、学園長もです。なぜこんな決闘なんて許したんですか!」
「そ、それは……」
今度はツェツィーリエさんの矛先が学園長に向きました。
「そもそも、ローザちゃんはオーデルラーヴァからの留学生なのですよ? しかも、事情を聞いてみれば嫌がらせに端を発しているそうですね?」
「そうなのですが……」
「もしこれでローザちゃんが負けて、退学することになったらどう責任を取るおつもりだったのですか?」
「ですがそれは決闘の結果ですので……」
「……下手をすれば、外交問題になりますよ? 嫌がらせをした挙句に難癖をつけ、決闘をして留学生を追い出したなど」
「いや、それは……」
その様子を見たツェツィーリエさんは額に手を当てると、大きくため息を吐きました。
「わたしはあなたたちに任せられると思ったから、引退したのですよ? もうわたしの人生で残された時間は長くないのです。どうかわたしに夫との大切な時間を過ごさせてください」
「も、申し訳ございません」
寂しそうにそう言ったツェツィーリエさんに学園長が謝ります。
「そんなわけですから、リリアちゃんだけでなくローザちゃんにも光属性に関する指導は行いましょう。ですが何度も言っているとおり、学園長への復帰はお断りしますからね。いつまでもわたしのような老人に頼っていてはいけません」
「……はい」
え? じゃあ、ツェツィーリエさんって昔は学園長先生だったんですか?
あ、そっか。だからあんなに詳しかったんですね。
ジャイアントマーダーベアの件でも炎弾が火属性じゃないって見破られていたみたいですし、きっと魔法を使っているって最初から見抜かれていたんですね。もしかしたら、光属性を持っていることもが見抜かれていたかもしれません。
「それと、きちんとした立場のある誰かにローザちゃんの後見をお願いしないといけませんね」
「え?」
「ええ。こんなことがありましたからね」
そう言った瞬間、王太子様と目の笑っていないドレスク先輩、さらに公子様がピクリと反応します。
「どこかの女性の胸が大好きで決闘をけしかけるような人から、きちんと守ってくれる人が必要ですからね」
王太子様が目を見開きました。えっと、自覚、あったんですね……。
ドレスク先輩と公子様も顔を見合わせています。
それから公子様が何かを言おうとした瞬間、レジーナさんがそれに先んじて申し出てくれました。
「ツェツィーリエ先生。ローザのことはこのわたくしが保護いたしますわ」
そういえば決闘の前に踏みつぶしてくれるって言っていましたし、心強いかもしれません。
「そう。ローザちゃんはそれで良いのかしら?」
「えっと、その、いいんですか?」
「あら。わたくしが言い出したんですのよ? それに、マレスティカ公爵家の名に誓って、守ってあげますわ。そこのお友達二人もね」
レジーナさんはそう言ってリリアちゃんとヴィーシャさんをちらりと見ました。
「えっ?」
「よろしいのですか!?」
「ええ。わたくしに二言はありませんわ」
「ありがとうございます!」
「精一杯、お仕えいたします!」
リリアちゃんたちはすごく嬉しそうです。
これならきっと大丈夫、ですよね?
「はい。お願いします」
あたしがそう答えると、レジーナさんはにっこりと微笑んだのでした。
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「ローザちゃんのそれ、本当にすごいのねぇ」
「え?」
ツェツィーリエさんに言われてあたしは我に返りました。
魔術じゃなくて魔法だから、バレないようにって思ってたのに……。
それからツェツィーリエさんがあたしと近くにやってきて、耳元で囁きました。
「あなたのそれ。やっぱり魔法ね?」
「っ!?」
ば、バレちゃいました。ど、ど、ど、どうしたら……。
焦ってちょっとパニックになって、頭が真っ白になっちゃいました。
でもそうしたら、ぎゅってツェツィーリエさんが抱きしめてくれました。
「大丈夫。これまで、誰にも相談できずにいたのね。でも、もう安心ですよ」
「え、えっと……」
「これからは、リリアちゃんと一緒に授業を受けられますからね」
「え? え?」
あたしが戸惑っていると、ツェツィーリエさんがまた耳元囁きます。
「ローザちゃんは光と火だけじゃなくて、風属性にも適性があるのね?」
「っ!? そ、それは……」
そうでした。照準を合わせるために光も使っちゃったんでした。
あれれ? 風はどうして?
「大丈夫よ。あなたの可愛いお友達が戦えば、すぐにバレるもの」
「え?」
「あの可愛らしいミミズクちゃんは、ホーちゃんといったかしら? あの子はさっきの戦いで、本来は持っていないはずの風の魔力を使っていたでしょう?」
「ええっ?」
いつの間に使っていたんでしょうか?
「前に会ったとき、あの子が使っていたのは闇の魔力だけだったもの。だから、これはローザちゃんがあげた魔力のおかげね」
「え? え? 最初から闇の魔力を?」
「ええ、そうよ。その子はアサシンオウルという魔物だもの。普通は従魔になんかできないはずなのだけれど、ローザちゃんは特別なのね」
「え? 魔物? ホーちゃん、魔物だったんですか?」
「あらあら。そこからなの?」
ツェツィーリエさんはそう言ってくすくすと笑いました。
「いい? ローザちゃんには特別な力があるわ。魔法が使えて、こんなにかわいくて優しいお友達だってできちゃう」
「……」
「でもね。今のローザちゃんにはその力を使いこなす知識が足りていません」
「う……」
「だからこの学園でしっかり学んで、正しい道を選びとれるようになってほしかったのだけれど……」
そう言うと、ツェツィーリエさんは王太子様と学園長を順々に見ます。それから深いため息をつきました。
「どうしてこんな決闘騒ぎになってなっているんでしょうね?」
「も、申し訳ありません。ツェツィーリエ先生。ですが貴族が名誉を懸けると言ったならば……」
え? あの、その話を出したのって王太子様でしたよね?
そんな疑問があたしの顔に出ていたのか、ツェツィーリエさんが王太子様を注意してくれます。
「……なんでもすぐにそうやって決闘で解決しようなどと考えるのはあなたの悪い癖です。国王になったあとも、問題の仲裁でいちいち決闘をさせるつもりですか? 部下がいなくなってしまいますし、他の国とのだったら戦争になりますよ」
「う……」
なんだか、王太子様が素直に聞いています。
すごいなって思ってその様子を眺めていると、王太子様の視線がまたあたしの胸をロックオンしているのに気が付きました。
き、気持ち悪い……。
あたしは胸を見られないようにさっとツェツィーリエさんの後ろに隠れます。
「こら! 叱られている最中にどこを見ているんですか! 女性の胸ばかりジロジロ見るんじゃありません! あなたは小さいころから!」
「い、いや、その……」
ツェツィーリエさんが初めて大声で怒り、それにビビったのか王太子様が小さくなりました。
それからも延々とツェツィーリエさんのお説教が続き、すっかり王太子様はしょぼくれてしまいました。
……もしかして、ツェツィーリエさんに言いつければいいんでしょうか?
「それと、学園長もです。なぜこんな決闘なんて許したんですか!」
「そ、それは……」
今度はツェツィーリエさんの矛先が学園長に向きました。
「そもそも、ローザちゃんはオーデルラーヴァからの留学生なのですよ? しかも、事情を聞いてみれば嫌がらせに端を発しているそうですね?」
「そうなのですが……」
「もしこれでローザちゃんが負けて、退学することになったらどう責任を取るおつもりだったのですか?」
「ですがそれは決闘の結果ですので……」
「……下手をすれば、外交問題になりますよ? 嫌がらせをした挙句に難癖をつけ、決闘をして留学生を追い出したなど」
「いや、それは……」
その様子を見たツェツィーリエさんは額に手を当てると、大きくため息を吐きました。
「わたしはあなたたちに任せられると思ったから、引退したのですよ? もうわたしの人生で残された時間は長くないのです。どうかわたしに夫との大切な時間を過ごさせてください」
「も、申し訳ございません」
寂しそうにそう言ったツェツィーリエさんに学園長が謝ります。
「そんなわけですから、リリアちゃんだけでなくローザちゃんにも光属性に関する指導は行いましょう。ですが何度も言っているとおり、学園長への復帰はお断りしますからね。いつまでもわたしのような老人に頼っていてはいけません」
「……はい」
え? じゃあ、ツェツィーリエさんって昔は学園長先生だったんですか?
あ、そっか。だからあんなに詳しかったんですね。
ジャイアントマーダーベアの件でも炎弾が火属性じゃないって見破られていたみたいですし、きっと魔法を使っているって最初から見抜かれていたんですね。もしかしたら、光属性を持っていることもが見抜かれていたかもしれません。
「それと、きちんとした立場のある誰かにローザちゃんの後見をお願いしないといけませんね」
「え?」
「ええ。こんなことがありましたからね」
そう言った瞬間、王太子様と目の笑っていないドレスク先輩、さらに公子様がピクリと反応します。
「どこかの女性の胸が大好きで決闘をけしかけるような人から、きちんと守ってくれる人が必要ですからね」
王太子様が目を見開きました。えっと、自覚、あったんですね……。
ドレスク先輩と公子様も顔を見合わせています。
それから公子様が何かを言おうとした瞬間、レジーナさんがそれに先んじて申し出てくれました。
「ツェツィーリエ先生。ローザのことはこのわたくしが保護いたしますわ」
そういえば決闘の前に踏みつぶしてくれるって言っていましたし、心強いかもしれません。
「そう。ローザちゃんはそれで良いのかしら?」
「えっと、その、いいんですか?」
「あら。わたくしが言い出したんですのよ? それに、マレスティカ公爵家の名に誓って、守ってあげますわ。そこのお友達二人もね」
レジーナさんはそう言ってリリアちゃんとヴィーシャさんをちらりと見ました。
「えっ?」
「よろしいのですか!?」
「ええ。わたくしに二言はありませんわ」
「ありがとうございます!」
「精一杯、お仕えいたします!」
リリアちゃんたちはすごく嬉しそうです。
これならきっと大丈夫、ですよね?
「はい。お願いします」
あたしがそう答えると、レジーナさんはにっこりと微笑んだのでした。
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