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第二章
第80話 勝利しました
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2021/07/24 誤字を修正しました
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「ツェツィーリエ様。この私が前衛を務めさせていただきます」
ツェツィーリエさんが闘技場の中へと向かおうとしたところ、公子様がそう名乗り出ました。
「あら。カルリア公国の公子様にそのようなことは……」
「いえ。私は今戦っているアンドレイ王太子殿下とは共に切磋琢磨しております。連携には問題ございませんし、こういったときに率先して動かぬ者に人々を導く資格はございません」
あ……。何だかすごくかっこいいこと言っています。
「そのとおりです。私も戦います」
隣にいたいつも目の笑っていないドレスク先輩も名乗り出ました。今日は真剣な表情をしているので別に怖くありません。
「わかりました。お願いしましょう」
「はっ」
「お任せください」
「レジーナさん。あなたは出ようなどと思ってはいけませんよ?」
「っ!」
ツェツィーリエさんに釘を刺されたレジーナさんは決まりの悪そうな表情になりました。
「あなたは未来の王妃なのですから、無茶をしてはいけません」
「わ、分かっていますわ」
何だか意外です。レジーナさんってそういう人だったんですね。
あれれ? そういえばツェツィーリエさんはどうしてこんなに偉い人たちと親し気にお話しているんですか!?
「それではレフ殿下、エルネストくん。参りましょう」
「「はい」」
二人は揃って返事をすると王太子様とゴーレムたちの待つ闘技場へと向かったのでした。
◆◇◆
「それじゃあ、中心に集めてくれるかしら?」
「はい」
公子様が王太子様のほうへと走っていきました。一方のドレスク先輩は突っ込んでいくのではなくて魔術を使う準備をしています。
「アンドレイ!」
「レフ! コアの場所は分かったのか?」
「いや。だが、ツェツィーリエ様は間に合った。中心に集めて結界で閉じ込める」
「わかった。エルネスト!」
「お任せください!」
ドレスク先輩が小さな火の矢を飛ばし、ゴーレムのギリギリを通過させてて気を弾きます。
そこを王太子様と公子様が後ろから蹴ったりして攪乱し、一ヵ所に誘導していきます。
「レフ! 今だ」
王太子様がそう叫ぶと、いつの間にか少し離れていた公子様が魔術を発動します。
「氷結!」
一ヵ所に固まったゴーレムの足が突然凍り付き、動きが完全に止まりました。
「よくやりました。結界」
ツェツィーリエさんは優しくそう言うと結界を張り、十体のゴーレムたちをその中に閉じ込めたのでした。
す、すごい。いくらゴーレムの動きが遅かったとはいえ、十体もいるのにあんなにあっさりと捕まえられるなんて!
三人の息もぴったりです。
今までは怖がっていましたが、もしかしたらこの人たちって本当はすごい人なのかもしれません。
王太子様は女の子の胸ばかり見るのをやめて、あの高圧的な話し方をやめてくれればきっとかっこよくなると思います。それと、ドレスク先輩だってあの目だけ笑っていない変な作り笑いをやめてくれればきっと普通にお話できそうな気がします。
そんなことを思いつつも結界の中に閉じ込められたゴーレムたちを遠巻きに観察していると、ゲラシム先生が学園長先生に連れられてやってきました。
ゲラシム先生は結界の中に閉じ込められたゴーレムを見るなり目を見開いて驚きました。
「おい! どうしてこんなもんがここにあるんだ!? こいつは帝国の兵器だぞ!」
え? 帝国? 兵器?
「ゲラシム先生。どういうことかね?」
学園長先生がゲラシム先生に尋ねます。
「どういうことも何も、こいつはハプルッセン帝国の兵器だ。国章こそ付いてないが、間違いなくこの系統のゴーレムはハプルッセンの軍で開発されているやつだ。こんなにいるってことは、部位破壊をして分裂させた愚か者がいるのだろう」
あ、す、すみません。あたし、そんなの知らなくて……。
「まあいい。こいつを倒す方法はいくつか知られている。一つは頭にあるコアを潰すこと。もう一つは溶かすことだ。こいつらは溶かせば分裂しないのだが……」
ゲラシム先生はあたしたちをぐるりと確認します。
「それなら私が炎で!」
「この戦力なら核を潰すほうが早そうだな」
「なっ!?」
「ん? 何かね?」
ドレスク先輩が抗議の声を上げようとしましたが、ゲラシム先生に睨まれてそのまましゅんと縮こまってしまいました。
でもこんなに増えたのがあたしのせいなら、あたしも協力したほうがいいですよね?
「あ、あのっ! コアって頭のどこにあるんですか? 知らないで増やしちゃったのはあたしのせいですから、その……」
「……顔の部分に、人間の目のようになっている場所があるのが見えるかね? そのちょうど間にコアがある。だが、一年の君には無理だろう。責任を感じるならよく学び、よく鍛練し、我が魔法学園の卒業生に相応しい人間に成長したまえ」
「あ、えっと、その、動いていなければいけます」
「ほう?」
「いいぞ。ローザ。やってみろ」
「そうね。ローザちゃん。合図で結界を解くから、気負わずにやりなさい?」
「はいっ!」
みんなの視線が集中してちょっと怖いですけど、あたしがやっちゃったことです。
ちゃんとコアを破壊して、倒さないと!
あたしは狩りをするときのように腕を前に突き出すと狙いをつけます。
「お願いします」
「はい。解除」
ツェツィーリエさんが結界を解除した瞬間、一斉にゴーレムたちがこちらを向きます。でも、まだ公子様の作った氷で拘束されているので動けないようです。
そんなゴーレムの眉間にレーザーを当てて……炎弾!
パシュン。
眉間を撃ち抜かれたゴーレムは一瞬で動きを止め、すぐにバラバラになって崩れ落ちました。
やったぁ! これなら!
レーザーを当てて……炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾!
十発の炎弾でゴーレムは全て倒れ、バラバラになって崩れ落ちたのでした。
や、やった。 やった! やりました!
「ミャー」
あ! ユキ!
ユキがジャンプしてあたしの肩の上に乗り、ほっぺたにおでこをすりすりしてくれました。
あたしが頬を寄せようと思った瞬間、突然後ろから抱きつかれました。
「すごい! すごいね! ローザちゃん!」
「すごかったよ! ローザ」
リリアちゃんとヴィーシャさんです。
「えへへ。ありがとう。リリアちゃん。ヴィーシャさん」
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「ツェツィーリエ様。この私が前衛を務めさせていただきます」
ツェツィーリエさんが闘技場の中へと向かおうとしたところ、公子様がそう名乗り出ました。
「あら。カルリア公国の公子様にそのようなことは……」
「いえ。私は今戦っているアンドレイ王太子殿下とは共に切磋琢磨しております。連携には問題ございませんし、こういったときに率先して動かぬ者に人々を導く資格はございません」
あ……。何だかすごくかっこいいこと言っています。
「そのとおりです。私も戦います」
隣にいたいつも目の笑っていないドレスク先輩も名乗り出ました。今日は真剣な表情をしているので別に怖くありません。
「わかりました。お願いしましょう」
「はっ」
「お任せください」
「レジーナさん。あなたは出ようなどと思ってはいけませんよ?」
「っ!」
ツェツィーリエさんに釘を刺されたレジーナさんは決まりの悪そうな表情になりました。
「あなたは未来の王妃なのですから、無茶をしてはいけません」
「わ、分かっていますわ」
何だか意外です。レジーナさんってそういう人だったんですね。
あれれ? そういえばツェツィーリエさんはどうしてこんなに偉い人たちと親し気にお話しているんですか!?
「それではレフ殿下、エルネストくん。参りましょう」
「「はい」」
二人は揃って返事をすると王太子様とゴーレムたちの待つ闘技場へと向かったのでした。
◆◇◆
「それじゃあ、中心に集めてくれるかしら?」
「はい」
公子様が王太子様のほうへと走っていきました。一方のドレスク先輩は突っ込んでいくのではなくて魔術を使う準備をしています。
「アンドレイ!」
「レフ! コアの場所は分かったのか?」
「いや。だが、ツェツィーリエ様は間に合った。中心に集めて結界で閉じ込める」
「わかった。エルネスト!」
「お任せください!」
ドレスク先輩が小さな火の矢を飛ばし、ゴーレムのギリギリを通過させてて気を弾きます。
そこを王太子様と公子様が後ろから蹴ったりして攪乱し、一ヵ所に誘導していきます。
「レフ! 今だ」
王太子様がそう叫ぶと、いつの間にか少し離れていた公子様が魔術を発動します。
「氷結!」
一ヵ所に固まったゴーレムの足が突然凍り付き、動きが完全に止まりました。
「よくやりました。結界」
ツェツィーリエさんは優しくそう言うと結界を張り、十体のゴーレムたちをその中に閉じ込めたのでした。
す、すごい。いくらゴーレムの動きが遅かったとはいえ、十体もいるのにあんなにあっさりと捕まえられるなんて!
三人の息もぴったりです。
今までは怖がっていましたが、もしかしたらこの人たちって本当はすごい人なのかもしれません。
王太子様は女の子の胸ばかり見るのをやめて、あの高圧的な話し方をやめてくれればきっとかっこよくなると思います。それと、ドレスク先輩だってあの目だけ笑っていない変な作り笑いをやめてくれればきっと普通にお話できそうな気がします。
そんなことを思いつつも結界の中に閉じ込められたゴーレムたちを遠巻きに観察していると、ゲラシム先生が学園長先生に連れられてやってきました。
ゲラシム先生は結界の中に閉じ込められたゴーレムを見るなり目を見開いて驚きました。
「おい! どうしてこんなもんがここにあるんだ!? こいつは帝国の兵器だぞ!」
え? 帝国? 兵器?
「ゲラシム先生。どういうことかね?」
学園長先生がゲラシム先生に尋ねます。
「どういうことも何も、こいつはハプルッセン帝国の兵器だ。国章こそ付いてないが、間違いなくこの系統のゴーレムはハプルッセンの軍で開発されているやつだ。こんなにいるってことは、部位破壊をして分裂させた愚か者がいるのだろう」
あ、す、すみません。あたし、そんなの知らなくて……。
「まあいい。こいつを倒す方法はいくつか知られている。一つは頭にあるコアを潰すこと。もう一つは溶かすことだ。こいつらは溶かせば分裂しないのだが……」
ゲラシム先生はあたしたちをぐるりと確認します。
「それなら私が炎で!」
「この戦力なら核を潰すほうが早そうだな」
「なっ!?」
「ん? 何かね?」
ドレスク先輩が抗議の声を上げようとしましたが、ゲラシム先生に睨まれてそのまましゅんと縮こまってしまいました。
でもこんなに増えたのがあたしのせいなら、あたしも協力したほうがいいですよね?
「あ、あのっ! コアって頭のどこにあるんですか? 知らないで増やしちゃったのはあたしのせいですから、その……」
「……顔の部分に、人間の目のようになっている場所があるのが見えるかね? そのちょうど間にコアがある。だが、一年の君には無理だろう。責任を感じるならよく学び、よく鍛練し、我が魔法学園の卒業生に相応しい人間に成長したまえ」
「あ、えっと、その、動いていなければいけます」
「ほう?」
「いいぞ。ローザ。やってみろ」
「そうね。ローザちゃん。合図で結界を解くから、気負わずにやりなさい?」
「はいっ!」
みんなの視線が集中してちょっと怖いですけど、あたしがやっちゃったことです。
ちゃんとコアを破壊して、倒さないと!
あたしは狩りをするときのように腕を前に突き出すと狙いをつけます。
「お願いします」
「はい。解除」
ツェツィーリエさんが結界を解除した瞬間、一斉にゴーレムたちがこちらを向きます。でも、まだ公子様の作った氷で拘束されているので動けないようです。
そんなゴーレムの眉間にレーザーを当てて……炎弾!
パシュン。
眉間を撃ち抜かれたゴーレムは一瞬で動きを止め、すぐにバラバラになって崩れ落ちました。
やったぁ! これなら!
レーザーを当てて……炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾!
十発の炎弾でゴーレムは全て倒れ、バラバラになって崩れ落ちたのでした。
や、やった。 やった! やりました!
「ミャー」
あ! ユキ!
ユキがジャンプしてあたしの肩の上に乗り、ほっぺたにおでこをすりすりしてくれました。
あたしが頬を寄せようと思った瞬間、突然後ろから抱きつかれました。
「すごい! すごいね! ローザちゃん!」
「すごかったよ! ローザ」
リリアちゃんとヴィーシャさんです。
「えへへ。ありがとう。リリアちゃん。ヴィーシャさん」
応援ありがとうございます!
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