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第36話 大治癒の奇跡
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担架に乗せられている子を見たであろう女性がパニック状態になっているようだ。
母親だろうか?
その彼女の悲痛な叫び声が私の胸を抉る。
ダメだ。やっぱりここで人任せになんかしているなんて!
私なら助けられるんだ。ここで助けなかったら一生後悔するし、おじいちゃんなら絶対に助けるはずだ。
「すみません! どいてください。私は薬師です。私が治します!」
「え?」
私は意を決して先ほどまで私を止めていた衛兵さんの脇をすり抜け、担架の側に駆け寄った。すると担架の上には顔面蒼白になっている十歳くらいの男の子が乗せられていた。
どうやら両足があの瓦礫に押しつぶされてしまったようで、両足がぐちゃぐちゃに潰れている。
「ちょっと! 君!」
「大丈夫です! 治せます! それにこのままじゃこの子、病院に着く前に死んでしまいます!」
「何を……」
「いいから! 五秒でいいのでやらせてください!」
「お願いします! どうかバートちゃんを!」
半狂乱になった女性が必死に縋りついてくる。
「大丈夫です! これならまだ間に合います!」
担架を運んでいる二人に私は頷くと、命が失われつつあるその小さな体にそっと触れ、奇跡を発動した。
すると私の全身からキラキラとした金色の光があふれだし、担架の上に横たわる男の子を包み込む。
「え?」
「なんだ? あれ……」
「きれい……」
周囲からは様々な声が聞こえてくるが、私は男の子を治療するのに集中する。
そうしているとやがてぐちゃぐちゃに潰れていた両足が徐々に元通りとなり、やがて流れ落ちる血も止まった。
「はい。もう大丈夫です」
「え?」
「あ、あ、あ、バートちゃん! バートちゃん!」
女性は担架に乗せられた男の子に縋りついて号泣し、担架を担いでいた二人はポカンとした表情でその様子を見守っている。
「おい! 何をしているんだ! 早く病院に運びなさい! 手遅れになったらどうするんだ!」
先ほどニール兄さんと怒鳴り合いをしていた人の声がしたので振り返ると、そこには白衣を着た薬師らしき男性が額に青筋を立てながら怒鳴り散らしている。
「で、ですが……」
「おい! 早く……ん?」
男性は担架の上に寝かされ、安らかな寝息を立てている男の子の両足を見て固まった。
「い、一体何が……?」
「間に合わないと思ったので、私が大治癒の奇跡で治療しました」
「は? きせ……き? いや、だがこれは奇跡としか……」
男性は何かをぶつぶつと呟いている。
「あ、えっと、失った血は戻っていませんから、お肉とか、血を増やす食べ物をよく食べてください」
「ああ! はい! はい! ありがとうございます!」
女性は涙を流しながらお礼を言ってくる。
「いえ、当然のことをしただけですから」
すると救助活動を終えたニール兄さんが歩いてきた。
「ホリー、お疲れ」
「ニール兄さんこそ」
するとニール兄さんはニヤリと笑い、ぶつぶつと何かを呟いている男性に向かって勝ち誇ったように声をかけた。
「な? 言っただろ? ホリーなら助けられるから早く呼べって」
「……」
それに対して男性はどこか呆然としたような表情でニール兄さんのほうを見ている。
すると突然男性は私のほうに向き直った。
「おい! 君! あれは一体なんなのかね?」
そう言うと私の肩を掴もうと腕を伸ばしてきたが、ニール兄さんが間に割って入って守ってくれた。
「何かね? 君は! 私はその人族の少女に聞いているのだ!」
「見ず知らずの女の子の肩をいきなり掴もうとするやつに答える義理なんかないだろう! 大丈夫か?」
「え? あ、うん」
私はさっとそのままニール兄さんの背後に隠れる。
「あ、いや、その……」
男性はそう言われて冷静になったのか、もごもごと何かを口ごもる。
「あの、先ほども言いましたけど、さっきのは奇跡という人族の女性にしか使えない魔法のようなものです。あの、それじゃあ、そういうことで……」
「あっ……」
男性はまだ何かを聞きたそうにしているが、これ以上遅くなると宿も取れなくなってしまうかもしれない。
「ニール兄さん、行こ?」
「ああ、そうだな。早く宿を取らないと」
「お待ちください」
今度は男性ではなく衛兵さんに呼び止められた。
「なんですか? 俺たちは今日着いたばかりで、早く宿を取らないといけないんですけど」
「はい。そういったご事情でしたら、我々が責任をもってホテルをご用意いたします。救助にご協力いただき、子供の命を救ってくださった方をタダで帰したとあればシュワインベルグの名折れというものです」
「……俺たち、そんなにお金はないんで」
「もちろん、宿泊費も我々が負担いたします」
するとニール兄さんが私のほうをちらりと見たので、私は小さく頷いた。
「そういうことなら、お世話になります」
「ありがとうございます。では、こちらへ」
こうして私たちは衛兵さんに案内され、詰め所へと向かうのだった。
母親だろうか?
その彼女の悲痛な叫び声が私の胸を抉る。
ダメだ。やっぱりここで人任せになんかしているなんて!
私なら助けられるんだ。ここで助けなかったら一生後悔するし、おじいちゃんなら絶対に助けるはずだ。
「すみません! どいてください。私は薬師です。私が治します!」
「え?」
私は意を決して先ほどまで私を止めていた衛兵さんの脇をすり抜け、担架の側に駆け寄った。すると担架の上には顔面蒼白になっている十歳くらいの男の子が乗せられていた。
どうやら両足があの瓦礫に押しつぶされてしまったようで、両足がぐちゃぐちゃに潰れている。
「ちょっと! 君!」
「大丈夫です! 治せます! それにこのままじゃこの子、病院に着く前に死んでしまいます!」
「何を……」
「いいから! 五秒でいいのでやらせてください!」
「お願いします! どうかバートちゃんを!」
半狂乱になった女性が必死に縋りついてくる。
「大丈夫です! これならまだ間に合います!」
担架を運んでいる二人に私は頷くと、命が失われつつあるその小さな体にそっと触れ、奇跡を発動した。
すると私の全身からキラキラとした金色の光があふれだし、担架の上に横たわる男の子を包み込む。
「え?」
「なんだ? あれ……」
「きれい……」
周囲からは様々な声が聞こえてくるが、私は男の子を治療するのに集中する。
そうしているとやがてぐちゃぐちゃに潰れていた両足が徐々に元通りとなり、やがて流れ落ちる血も止まった。
「はい。もう大丈夫です」
「え?」
「あ、あ、あ、バートちゃん! バートちゃん!」
女性は担架に乗せられた男の子に縋りついて号泣し、担架を担いでいた二人はポカンとした表情でその様子を見守っている。
「おい! 何をしているんだ! 早く病院に運びなさい! 手遅れになったらどうするんだ!」
先ほどニール兄さんと怒鳴り合いをしていた人の声がしたので振り返ると、そこには白衣を着た薬師らしき男性が額に青筋を立てながら怒鳴り散らしている。
「で、ですが……」
「おい! 早く……ん?」
男性は担架の上に寝かされ、安らかな寝息を立てている男の子の両足を見て固まった。
「い、一体何が……?」
「間に合わないと思ったので、私が大治癒の奇跡で治療しました」
「は? きせ……き? いや、だがこれは奇跡としか……」
男性は何かをぶつぶつと呟いている。
「あ、えっと、失った血は戻っていませんから、お肉とか、血を増やす食べ物をよく食べてください」
「ああ! はい! はい! ありがとうございます!」
女性は涙を流しながらお礼を言ってくる。
「いえ、当然のことをしただけですから」
すると救助活動を終えたニール兄さんが歩いてきた。
「ホリー、お疲れ」
「ニール兄さんこそ」
するとニール兄さんはニヤリと笑い、ぶつぶつと何かを呟いている男性に向かって勝ち誇ったように声をかけた。
「な? 言っただろ? ホリーなら助けられるから早く呼べって」
「……」
それに対して男性はどこか呆然としたような表情でニール兄さんのほうを見ている。
すると突然男性は私のほうに向き直った。
「おい! 君! あれは一体なんなのかね?」
そう言うと私の肩を掴もうと腕を伸ばしてきたが、ニール兄さんが間に割って入って守ってくれた。
「何かね? 君は! 私はその人族の少女に聞いているのだ!」
「見ず知らずの女の子の肩をいきなり掴もうとするやつに答える義理なんかないだろう! 大丈夫か?」
「え? あ、うん」
私はさっとそのままニール兄さんの背後に隠れる。
「あ、いや、その……」
男性はそう言われて冷静になったのか、もごもごと何かを口ごもる。
「あの、先ほども言いましたけど、さっきのは奇跡という人族の女性にしか使えない魔法のようなものです。あの、それじゃあ、そういうことで……」
「あっ……」
男性はまだ何かを聞きたそうにしているが、これ以上遅くなると宿も取れなくなってしまうかもしれない。
「ニール兄さん、行こ?」
「ああ、そうだな。早く宿を取らないと」
「お待ちください」
今度は男性ではなく衛兵さんに呼び止められた。
「なんですか? 俺たちは今日着いたばかりで、早く宿を取らないといけないんですけど」
「はい。そういったご事情でしたら、我々が責任をもってホテルをご用意いたします。救助にご協力いただき、子供の命を救ってくださった方をタダで帰したとあればシュワインベルグの名折れというものです」
「……俺たち、そんなにお金はないんで」
「もちろん、宿泊費も我々が負担いたします」
するとニール兄さんが私のほうをちらりと見たので、私は小さく頷いた。
「そういうことなら、お世話になります」
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こうして私たちは衛兵さんに案内され、詰め所へと向かうのだった。
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