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第92話 蠢く陰謀
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2022/12/29 騎士団長の名前の間違いを修正しました
================
ここはサンプロミトにある聖導教会の大聖堂。その一室で二人の男が何やら話をしている。
「ルーカス、調子はどうだ?」
そう呼びかけたのは教皇だ。もう一人の男は長い金髪と青い瞳で、女性と見まごうほどの美しい顔をしている。だがその表情はゾッとするほど冷たい。
彼こそが聖騎士団の団長ルーカスである。
「問題ありません。潜在魔力も開花しましたし、洗脳もほぼ完璧です」
ルーカスは感情を感じさせない声で淡々と答えた。
「うむ。ところであの剣聖を名乗る男の素性はわかったのか?」
「いえ。経歴は不明です」
「……だが勇者に剣を教えているのだろう? 大丈夫なのか?」
「腕は確かです。剣の腕だけで言えば聖騎士団にも敵う者はおりません」
「自分から魔族と戦いたいと言ってきたのだったな?」
「はい」
「……まあいい。次の戦争では最前線にでも投入してやればいいだろう」
ルーカスは何も答えず、じっと教皇を見続ける。
「な、なんだ? 何か文句でもあるのか?」
「いえ」
すると教皇はふうっと大きなため息をついた。
「ゾンビはどうだ?」
「以前のようなやり方は通用しないかと。敵は山の稜線に長い壁を築いています」
「バケモノどもめが……」
教皇は吐き捨てるようにそう呟いた。そんな教皇とは対照的にルーカスは表情を一切変えていない。
「攻めるのでしたらやはりジャーミー峠からということになるでしょう」
「仕方あるまい。そのために聖剣を用意したのだ。勇者には先陣を切らせ、一匹でも多くの魔族を駆除させよ」
「はっ」
それからしばらくの間、教皇とルーカスの間に沈黙が流れる。
「……あれを使うことはできないのか?」
「不可能です。あれは血筋に反応しています。我々の手駒には資格を持つ者がおりません」
「そうだな。まったく、惜しいことをした。残る本物はあれしかなかったというのに、まさかあれだけが行ってしまうとはな……」
「……」
教皇のこぼした愚痴にルーカスは一切反応せず、まるで彫像のようにじっと教皇を見つめている。
「ちっ。まあいい。ルーカス、どうせ奴らは我々の要求を拒否する。それを理由に攻め、魔族どもを一人でも多く殺すんだ」
「分かっております」
「ならばいい。準備はぬかるなよ?」
「かしこまりました」
そうしてルーカスが退室すると、残された教皇はニヤリと黒い笑みを浮かべた。
一方のルーカスも退室すると、ゾッとするほど冷たい笑みを浮かべたのだった。
◆◇◆
「勇者様、見違えましたな」
大聖堂にある教皇の執務室にやってきた将司を、にこやかな笑みを浮かべた教皇が出迎えた。
「いえ。マックスさんのおかげです」
「マックスというのは、流れの剣聖殿でしたな」
「はい。マックスさんも大切な人を失ったらしくて、それで俺たちと一緒に魔族を倒したいって言ってくれてるんです」
「そうでしたか。やはり魔族はどうしようもありませんあ」
「本当ですよ! 俺は今でもあの娘が魔族に操られて利用されているかと思うと!」
「全くですな。今日お呼び出ししたのはまさにその件なのです」
そう言って教皇は一枚の紙を机の引き出しから取り出した。
「ご覧ください。先日、聖女を返還するようにとした我々の要求に対する奴らの返答です」
「はい」
将司は手紙を受け取り、それを読んでいく。
「え? 魔族領において聖女を名乗る人族の女性は存在しない? どういうことですか!? だってたしかにあの娘は!」
「奴らは聖女を利用しつくそうという魂胆なのです。次の文をご覧ください」
「はい。えっと、我々魔族は同胞がその意に反して連れ去られることを許容しない? これって……」
「要するに、聖女を操って同胞だと言わせたのでしょう。自分たちでそう言わせておきながら、一体どの口がと言いたくなりますな」
「っ! なんて奴らだ!」
「ええ。我々はこれから魔族どもを攻め、聖女を取り戻します」
「……また戦争をするんですか?」
「ええ、そのとおりです。我々も戦争などしたくはありません。ですが、そこに魔族がいるのです。魔族はこの世から抹殺しなければいけないのです。分かりましたな!」
すると将司の胸元でネックレスの赤い宝玉が光を放ち、将司の瞳から一瞬光が消える。
「……はい。そうですよね」
「一人でも多くの魔族を殺しなさい。特に女子供は確実に殺すのです。女は子を産み、子は我々に牙を向きます。分かりましたな!」
将司の胸元でネックレスの赤い宝玉が再び光を放った。
「……はい。そうですね。魔族は殺さなきゃ」
「そして必ずや聖女を無事に救い出し、ここまで連れてきなさい。そうすれば、儂が必ず聖女にかけられた魔法を解き、正気に戻して差し上げましょう」
「はい! 魔族を殺して、あの娘を絶対に助けます」
「お願いしますよ。勇者様」
「任せてください!」
将司は力強くそう答えた。
「ではそんな勇者様にはこちらをお授けいたしましょう」
教皇はそう言って一振りの剣を差し出した。柄の部分には聖導教会のシンボルがあしらわれており、中央には聖導のしるしにあるものと同じ赤い宝玉が埋め込まれている。
「この剣は?」
「これは聖剣エクスニヒル。勇者様のために生み出された剣です」
「これが……聖剣……」
将司がそう言って剣を抜いた。その刃は白銀色で、淡い光を放っている。
「すごい……」
「聖剣には魔族どもの魔法に対抗する力がございます。これで魔族どもを殺し、聖女を救い出してください」
「はい! ありがとうございます!」
こうして聖剣エクスニヒルを授けられた将司は強い決意を胸に大聖堂を後にした。
その様子を見送った教皇はニヤリと黒い笑みを浮かべるのだった。
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ここはサンプロミトにある聖導教会の大聖堂。その一室で二人の男が何やら話をしている。
「ルーカス、調子はどうだ?」
そう呼びかけたのは教皇だ。もう一人の男は長い金髪と青い瞳で、女性と見まごうほどの美しい顔をしている。だがその表情はゾッとするほど冷たい。
彼こそが聖騎士団の団長ルーカスである。
「問題ありません。潜在魔力も開花しましたし、洗脳もほぼ完璧です」
ルーカスは感情を感じさせない声で淡々と答えた。
「うむ。ところであの剣聖を名乗る男の素性はわかったのか?」
「いえ。経歴は不明です」
「……だが勇者に剣を教えているのだろう? 大丈夫なのか?」
「腕は確かです。剣の腕だけで言えば聖騎士団にも敵う者はおりません」
「自分から魔族と戦いたいと言ってきたのだったな?」
「はい」
「……まあいい。次の戦争では最前線にでも投入してやればいいだろう」
ルーカスは何も答えず、じっと教皇を見続ける。
「な、なんだ? 何か文句でもあるのか?」
「いえ」
すると教皇はふうっと大きなため息をついた。
「ゾンビはどうだ?」
「以前のようなやり方は通用しないかと。敵は山の稜線に長い壁を築いています」
「バケモノどもめが……」
教皇は吐き捨てるようにそう呟いた。そんな教皇とは対照的にルーカスは表情を一切変えていない。
「攻めるのでしたらやはりジャーミー峠からということになるでしょう」
「仕方あるまい。そのために聖剣を用意したのだ。勇者には先陣を切らせ、一匹でも多くの魔族を駆除させよ」
「はっ」
それからしばらくの間、教皇とルーカスの間に沈黙が流れる。
「……あれを使うことはできないのか?」
「不可能です。あれは血筋に反応しています。我々の手駒には資格を持つ者がおりません」
「そうだな。まったく、惜しいことをした。残る本物はあれしかなかったというのに、まさかあれだけが行ってしまうとはな……」
「……」
教皇のこぼした愚痴にルーカスは一切反応せず、まるで彫像のようにじっと教皇を見つめている。
「ちっ。まあいい。ルーカス、どうせ奴らは我々の要求を拒否する。それを理由に攻め、魔族どもを一人でも多く殺すんだ」
「分かっております」
「ならばいい。準備はぬかるなよ?」
「かしこまりました」
そうしてルーカスが退室すると、残された教皇はニヤリと黒い笑みを浮かべた。
一方のルーカスも退室すると、ゾッとするほど冷たい笑みを浮かべたのだった。
◆◇◆
「勇者様、見違えましたな」
大聖堂にある教皇の執務室にやってきた将司を、にこやかな笑みを浮かべた教皇が出迎えた。
「いえ。マックスさんのおかげです」
「マックスというのは、流れの剣聖殿でしたな」
「はい。マックスさんも大切な人を失ったらしくて、それで俺たちと一緒に魔族を倒したいって言ってくれてるんです」
「そうでしたか。やはり魔族はどうしようもありませんあ」
「本当ですよ! 俺は今でもあの娘が魔族に操られて利用されているかと思うと!」
「全くですな。今日お呼び出ししたのはまさにその件なのです」
そう言って教皇は一枚の紙を机の引き出しから取り出した。
「ご覧ください。先日、聖女を返還するようにとした我々の要求に対する奴らの返答です」
「はい」
将司は手紙を受け取り、それを読んでいく。
「え? 魔族領において聖女を名乗る人族の女性は存在しない? どういうことですか!? だってたしかにあの娘は!」
「奴らは聖女を利用しつくそうという魂胆なのです。次の文をご覧ください」
「はい。えっと、我々魔族は同胞がその意に反して連れ去られることを許容しない? これって……」
「要するに、聖女を操って同胞だと言わせたのでしょう。自分たちでそう言わせておきながら、一体どの口がと言いたくなりますな」
「っ! なんて奴らだ!」
「ええ。我々はこれから魔族どもを攻め、聖女を取り戻します」
「……また戦争をするんですか?」
「ええ、そのとおりです。我々も戦争などしたくはありません。ですが、そこに魔族がいるのです。魔族はこの世から抹殺しなければいけないのです。分かりましたな!」
すると将司の胸元でネックレスの赤い宝玉が光を放ち、将司の瞳から一瞬光が消える。
「……はい。そうですよね」
「一人でも多くの魔族を殺しなさい。特に女子供は確実に殺すのです。女は子を産み、子は我々に牙を向きます。分かりましたな!」
将司の胸元でネックレスの赤い宝玉が再び光を放った。
「……はい。そうですね。魔族は殺さなきゃ」
「そして必ずや聖女を無事に救い出し、ここまで連れてきなさい。そうすれば、儂が必ず聖女にかけられた魔法を解き、正気に戻して差し上げましょう」
「はい! 魔族を殺して、あの娘を絶対に助けます」
「お願いしますよ。勇者様」
「任せてください!」
将司は力強くそう答えた。
「ではそんな勇者様にはこちらをお授けいたしましょう」
教皇はそう言って一振りの剣を差し出した。柄の部分には聖導教会のシンボルがあしらわれており、中央には聖導のしるしにあるものと同じ赤い宝玉が埋め込まれている。
「この剣は?」
「これは聖剣エクスニヒル。勇者様のために生み出された剣です」
「これが……聖剣……」
将司がそう言って剣を抜いた。その刃は白銀色で、淡い光を放っている。
「すごい……」
「聖剣には魔族どもの魔法に対抗する力がございます。これで魔族どもを殺し、聖女を救い出してください」
「はい! ありがとうございます!」
こうして聖剣エクスニヒルを授けられた将司は強い決意を胸に大聖堂を後にした。
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