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第二章

第二章第36話 MP求めて三百連(中編)

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「おい! また馬の糞か!」
「だからしょうがないじゃないですか」

 次の十連でも最初の木箱から馬の糞が出てきたせいで俺はまた支部長に文句を言われてしまった。

 たが、俺だって引きたくて引いているわけではないのだ。頼むからこればかりはどうしようもないということを分かってほしい。

「ねえ。そんなの出してないで早くフラウを出しなさいよ」
「だから、俺が選べるんじゃないんだって」
「それでも何とかしなさいよ」
「いや、だからさ……」

 こっちの都合を考えないのは相変わらずだ。まあ、昔だったらもう殴られていただろうからこれでも良くなったのだろうが。

『ディーノっ! がんばって!』
「はあ。そうだな、フラウ。がんばるよ」
「まあっ! 今のはフラウちゃんがディーノさんを応援してくれたんですね?」
「え? あ、はい。そうです」
「じゃあ、早くフラウちゃんを召喚できるようになるしかありませんね」
「そ、そうですね。早く『MP強化(大)』と『精霊花の蜜』を引きたいです」
「ああ、その蜜はフラウちゃんのものですものね。早く引けると良いですね」
「はい」

 俺はそう答えると画面に視線を戻すが、どうにもやりづらい。

 まるでガチャと向き合えている気がしないのだ。こんなことで神引きなんてできるのか、という不安がどうにもついて回ってネガティブに考えてしまう。

 とりあえずは八箱目までは木箱だったのでさらりと流して九箱目の銀箱に望みを繋ぐ。

「変われ!」

 いつものようには騒げないが、俺は小さくそう呟いてパワーを送ってくれる妖精が金箱に変えてくれることを祈る。

『☆4 鉄の槍』

「ああ、ダメか……」
「何これ? あんたのスキルは鉄の槍を買うスキルなの?」
「いや。そうじゃないから。これはどちらかというと外れだから」
「ふうん? だったら早くとフラウを出しなさいよ?」
「ああ、もう。分かったから待てって。ちゃんと神引きしてやるから」
「神引き? って何? 神様がどうかしたの?」

 エレナが小首を傾げてそう聞いてくる。

「……」

 ああああ! 本当にやりづらい!

 俺はさっさと終わらせようと画面をタップして次の箱へと進める。次は銅箱なので目当てのものが出る可能性はないはずだ。

 そう思ってタップすると銅箱は銀箱へと変わり、中から『☆4 VIT強化』が出てきた。

「お?」
『あっ! おめでとうっ! ステータス強化だねっ!』
「あ、ああ。ありがとう。ただ MP じゃないからなぁ」
『でも、良かったねっ。あたりだよっ』
「ああ、そうだな」
「ちょっと! フラウと何喋ってるのよ? あたしたちも話したいんだからね!」
「え? ああ、ええと。ステータス強化が出ておめでとうって言われただけだよ」
「ふうん? 何が上がったの?」
「VITだよ」
「へえ。じゃあ、ちょっとは頑丈になったのかしら?」
「いやいや。上がったって言ってもたったの 1 だけだからな?」
「そう。ならそんなに変わらないわね。そんなことより、いつになったらフラウを召喚できるようになるの?」
「いや、だからな――」

 こうして再びいつ出るかわからないことを説明すると、再びガチャを引くボタンをタップする。

 妖精たちが運んできた箱は……銅箱、木箱、木箱、木箱、銀箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱だ。

 銀箱があるなら☆5の可能性もある。

 俺はさっさと他の箱を開けて銀箱のところまで進める。

 さあ、来い! 変われ!

 心の中で強く念じるが残念ながら銀箱は変化せず、中からは『☆4 DEX強化』が出てきた。

『あっ! おめでとうっ! 二回連続でステータス強化だねっ』
「(ああ、そうだな。だけど今は MP か精霊花の蜜が欲しいんだよなぁ)」
『あ、そっか。うん。ありがとうっ! でも、他のステータス強化だって当たりだよっ! だから、おめでとうっ!』
「(そうだな。ありがとう)」
「ちょっと! 何こそこそ喋ってるのよ! さっさとフラウを召喚できるようになりなさいよね」
「わかった。わかったから集中させてくれ」

 面倒くさくなった俺はやや投げやりにそう言うと残りの箱を開け、すぐさま次の十連を引いていく。

 そこから二十連は爆死が続き、六十連目を引いていく。

 妖精たちが運んできたのは木箱、木箱、木箱、銅箱、木箱、木箱、銅箱、銅箱、木箱、木箱だった。

 ああ、またダメか。

 そう思って画面を連打して開けていくと、七箱目の銅箱が銀箱へと変化した。

「おお?」

 そしてその中からは『☆4 STR強化』が出てくる。

『あっ! おめでとうっ! なんだか今日はステータス強化がいっぱい引けるね』
「はあ。まあ、嬉しいんだけど肝心の MP が引けないんだよなぁ」
「ちょっと! 今度は何なの?」
「え? ああ。STR が 1 上がったよ」
「ふーん。……多少は……」
「え? 何か言ったか?」
「な、何も言ってないわよ! そんなのはいいから早くフラウを出しなさいよね!」

 ぼそぼそと言っていて聞き取れなかったので聞き返しただけなのだが、エレナは何故か
慌てた様子で怒りだした。

 一体何なんだ?

 どうにも釈然としないが、今はそんなことよりもガチャだ。

 俺は残りの箱を開けていくが、残念ながら銅箱が変化してくれることはなかったのだった。

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次回更新は通常通り、2021/04/16 (金) 21:00 を予定しております。
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