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第二章

第二章第52話 覚悟の全ツッパ五百連(3)

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 それからかなりの間、爆死が続いてしまった。☆5もステータス強化も出てはくれず、唯一出た☆4は『鉄の槍』だけだ。

 普段なら焦ってしまうところだろうが、今の俺はこの程度でどうこうなるほどのやわなメンタルはしていない。

『ディーノ。大丈夫?』
「ああ。大丈夫だ。フラウが応援してくれているからな。この程度の爆死、どうってことないさ」
「うんっ! がんばれっ!」
「ああ!」

 俺は次のガチャを引くボタンをタップする。木箱、銅箱、金箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱だ。

 お! 金箱!

 最初から金箱があるのはアツい! あとはここから欲しいものを出すだけだ。

「来い!」

 俺は小さく気合を入れるとドヤ顔でサムズアップをしている妖精を横目に箱を開けていく。

『☆5 体術』

「ん? ああ、うーん。これは、反応に困るな。悪くはないけど……」
『ディーノ! おめでとうっ!』
「あ、ああ。そうだな。これは良いほうだもんな」
『うんっ!』

 まあ、体術のレベルが一つ上がるのは良いことだろう。

 俺は残る木箱をすべて開け終えるとすかさず次の十連を引いていく。

 爆死だった。

「まだまだ!」

 俺はもう一度十連を引くボタンをタップする。銅箱、木箱、木箱、木箱、木箱、木箱、金箱、木箱、木箱、木箱だ。

「お! また金箱!」
『すごーい! やったねっ!』
「ああ。今度こそ!」

 俺は箱を次々と開けていき、金箱の順番になった。木箱ばかり運んでくると憎たらしく見えるこの妖精たちだが、金箱を運んできてドヤ顔でサムズアップしているこの妖精はなんとも可愛いらしく見える。

 そして金箱の中から飛び出してきたのは『☆5 槍術』だった。

「あ、ああ? うーん? どうしてこう、微妙に近いところで外すかな。俺が欲しいのは『剣術』なんだが……」
『でも、おめでとうっ! これで『槍術』はレベル 3 だよねっ?』
「ああ、そうだな。まあ、そうなんだが『剣術』のほうが……」
『でもでもっ! 鉄の槍も一緒に持っていけば良いと思うなっ!』
「まあ、それもそうか。よし! 次だ!」
『うんっ! がんばろうっ!』
「ああ。よし!」

 俺は残りの箱を開けると次の十連を引いていく。爆死だった。

 それからは爆死が続き、次は二百三十連目までやってきた。だが、フラウがそこにいて見守ってくれているおかげで不思議と焦燥感はない。

「よし! 今度こそ!」

 俺はガチャを引くボタンをタップする。銀箱、銅箱、木箱、木箱、銅箱、木箱、木箱、木箱、銅箱、木箱だ。

「変われ! そろそろ当たれ!」

 俺の気合が天に通じたのが、銀箱がキラリと光って金箱へと変化する。

「よーし! 来い! 来い! 来い!」

 そして中から飛び出してきたのは……。

『☆5 水属性魔法』

「よーし! よし! よし! よし! これでレベル 3 だ!」
『すっごーい! おめでとうっ! ディーノ!』
「ああ、ありがとう。だが、まだまだだ。この調子で神引きしていくぞ!」
『うんっ! ディーノならきっとできるよっ!』
「ああ!」

 気分がいい。狙っていたうちの一つをしっかり手繰り寄せることができたのだ。

 この調子であと二百七十連、しっかりと神引きしてやろうじゃないか!

 そうして俺はガチャを引き続け、三百連を引き終えた。

 あれから☆5は引けず、☆4は『VIT強化』『ショートボウ』『HP強化』の三つだけだ。数としてはやや不満ではあるが、ステータス強化を二つ引けているのでそこまで悪い結果ではないと思う。

 だが、ここから先が後半戦だ。ここまで☆5を三つ引けているので悪くはないが、神引きとまでは言えない結果だった。後半戦はしっかりと神引きをし、万全の準備を整えて救出作戦に臨みたい。

 そのためにもまずは『MP強化(大)』と『MGC強化(大)』が欲しい。

『ディーノっ!』
「ああ。任せておけ、フラウ。これからが勝負の後半戦だ。中途半端に終わる気なんてない。一念天に通ず、だろ?」
『うんっ!』

 フラウの暖かい眼差しはいつだって俺に勇気をくれる。

 そうだ。俺はできる。フラウがこうして応援してくれている限り、俺は何だってできるのだ。

 俺が、ガチャだ!

 全能感に包まれた俺は神引きを確信してガチャを引くボタンをタップする。運ばれてきたのは銅箱、木箱、木箱、銅箱、木箱、木箱、木箱、木箱、銀箱、銀箱だ。

 なるほど。銀箱が二つか。

 だが、俺は知っているぞ! この銀箱はきっと二つとも金箱へと変化するのだ。

「よし!」

 そう考えた瞬間、小さくガッツポーズをしてしまった。

 まだ早い、というのは分かるが何故か金箱に変わる気しかしないのだ。

「さあ、変われ! 変われ! 来い! 来い! 来い! 来い!」

 タップして最初の銀箱の順番になり、俺は大きな声で気合を入れた。

 すると銀箱はキラリと光って金箱へと変化する。

「よーし! 見たか! どうだ! 金箱!」

 そして金箱の蓋が開き、中身が飛び出してくる。

『☆5 召喚術 (フラウ)』

「え? あ、あれ? 二回目!?」
『おめでとうっ! ディーノっ!』
「あ、ああ。これでフラウがもっとすごくなるんだよな?」
『うんっ! あたしもディーノの役に立つのだっ!』

 そう言われて思わずじーんと来てしまった。

「フラウ……」

 もう十分に、それこそ返しきれなくらい俺を支えてくれているよ。

「ありがとう」

 俺はそんな想いを感謝の言葉に託すとガチャの画面に目を移した。まだ最後の銀箱が残っている。

「さあ、次こそ! 来い! 神引き! 来い! 来い! 来い!」

 目いっぱいの気合を込めて画面をタップした。

 しかし残念ながら銀箱は変化せず、中からは『☆4 鉄の鎧(上半身)』が出てきたのだった。

「ああっ! くそっ!」

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次回更新は通常通り、2021/05/18 (火) 21:00 を予定しております。
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