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第二章

エピローグ

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 俺たち迷宮攻略隊は現役復帰したトーニャちゃんをリーダーとして再び『悪魔の迷宮』へと挑んだ。攻略はとんとん拍子で迷宮を進み、第三十七階層でついに迷宮核を発見した。

 その一番の要因はトーニャちゃんにエレナという二人の規格外のエースがいるおかげだろう。だがもう一つの要因として、厄介なレッサーデーモンが出なくなったということも大きかったと思う。その理由は俺たちがあの悪魔を倒したからだと推測しているが、その真偽は定かでない。

「さ、エレナちゃん。これを壊せばもうこの迷宮は悪さができなくなるわン」

 黒い迷宮核を前にしてトーニャちゃんがエレナにそう指示を出した。

「あたしがやって良いんですか?」
「ええ。サバンテの領主様も王都の高等学園に恩が売れるし、ギルドも領主様に恩が売れるのよン。どうせ誰がやってっも一緒なんだから、やっちゃいなさいン」
「……わかりました。聖なる力を使ったほうがいいですか?」
「ん-、そうねン。念のためにお願いできるかしらン」
「はい。剣の舞」

 エレナは光輝く剣を一本出現させた。なんとあの悪魔の一件以来、エレナはフラウの応援を受けずとも聖なる力も扱えるようになったのだ。

 エレナの生み出した光の剣は滑らかに空中を進み、黒い迷宮核に突き刺さる。

「聖なる審判!」

 ベヒーモスを葬ったアーツが発動すると迷宮核のある小部屋は眩い光に包まれた。

 やがて光が消えると、迷宮核は粉々に砕け散る。

「良くやったわン。これで、この『悪魔の迷宮』は魔物を生み出さなくなったわよン」
「これで、サバンテは救われたんですね?」
「ええ、そうよン。エレナちゃんとディーノちゃんのがんばりのおかげねン」

 そう言ってトーニャちゃんは俺とエレナをひとまとめにして抱き寄せた。

「わ、ちょ、ちょっと!」
「アントニオさん。苦しいです」
「あらン? ごめんなさいねン。つい嬉しくなっちゃったわン」

 そう言って放してくれたトーニャちゃんだったが、前に俺はこれで死にかけているのだから勘弁して欲しいものだ。

 ともあれ、これで悪魔と迷宮というサバンテを騒がせた二つの災厄は取り除かれたのだ。

「さあ、帰るわよン」
「はい」

 こうして俺たちは迷宮の出口へと向かって歩きだしたのだった。

◆◇◆

 迷宮を攻略してからエレナが王都に戻るまでの間、俺は長期休暇ということでエレナとの時間を過ごした。

 何か特別なことをしたわけではない。例のパンケーキ屋で時間を潰したり懐かしい場所を歩き回ったりしていただけなのだがあっという間に時間が過ぎ去り、エレナの夏休みの期間が終わりを迎えてしまった。

 今は王都の学園へと戻るエレナの見送りにやってきている。

 昔は会うのがあれほど憂鬱だったというのに、エレナと別れるのがこれほど寂しいと思うだなんて想像だにしなかった。

 勝気な物言いや性格は変わっていないものの、感謝や気遣いができるようになっただけでなくほとんど手を出さなくなったエレナは本当に可愛いのだ。

 ほとんど、というのはたまに過度にからかわれたりすると怒って反撃をするのだが、まあそれも可愛いと思える程度のものだ。

 本当に、昔とのギャップが大きい。前のエレナだけを知っている人が今のエレナを見たらよく似た別人だと思うに違いない。

「ちょっと、ディーノ?」
「ああ。ごめん。エレナも変わったよなって思って」
「あら。そんなこと言ったディーノだって随分変わったわよ? 昔はちょっと大変なことがあったらすぐに逃げ出していたくせにね」

 エレナは穏やかな笑顔を浮かべた。

「でも、今のディーノはすごくかっこよくなったわよね。フラウのおかげかしら?」
『えっへん。あたしのおかげなのだー』
「フラウ。聞こえてないから」
『じゃあ、召喚してよっ』
「そうだな」
「えへっ。エレナ。元気でねっ!」
「うん。フラウも、ディーノをよろしくね? 昔みたいなヘタレに戻らないように、よろしく頼むわよ」
「任せるのだーっ! あたしがディーノをしっかり応援してあげるっ」
「うん。よろしくね」

 そう言ってエレナはフラウに頬を寄せた。フラウはその頬に頭をぐりぐりとこすりつけている。

 俺の扱いが微妙なのは少し気になるけれど、フラウがいなければここまでこの結果が手に入らなかったことは間違いない。

「学生さん。そろそろ出発するから乗り込んでくれるかい?」

 エレナが搭乗予定の乗合馬車の御者さんがそう声を掛けてきた。

「あら、もうそんな時間なのね。それじゃあ、あたしはそろそろ行くわ」
「ああ。元気でやれよ」
「当たり前じゃない。かならず首席で卒業して見せるわ」
「ああ。がんばれよ」
「ええ。もちろん。それからあたし、卒業したら冒険者になるわ。ディーノと一緒に冒険するの」
「それは楽しみだな」
「ねえ、あたしも一緒だよねっ?」
「もちろんよ。フラウも一緒に、三人で冒険しましょう」
「うんっ」
「卒業は来年の冬だっけか?」
「そうよ。必ず迎えに来てよね?」
「ああ。少しでもランクを上げて、剣姫のパートナーに相応しくなっているよ」
「ふふ。期待してるわよ。断魔の英雄様」

 そう言ってエレナはすっと俺に体を寄せてきた。

 それを俺は優しく抱きとめると顔を上げて瞳を閉じたエレナの唇に口付を落とした。

 ほんの数秒だけれども、確かな温もりが伝わってくる。

「ふふ。じゃあ、またね。ディーノ、フラウ」

 するりと俺の腕の中から抜け出した温もりが離れていき、ふわりと残り香が鼻をくすぐる。

「ああ、またな」
「エレナ。まったねーっ!」

 エレナは赤い髪をなびかせて馬車に乗り込むとすぐに馬車は発車した。

 馬車の中からはエレナが大きく手を振っており、俺たちはそれに負けじと大きく手を振り返した。

 ごとごとと音を立てて進む馬車の姿はあっという間に小さくなっていく。

 そんな馬車を俺たちは見えなくなるまで手を振って見送り続けたのだった。

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 本日より新作「勇者召喚されたが俺だけ村人だった~ならば村で働けと辺境開拓村に送られたけど実は村人こそが最強でした~」の投稿を開始しております。

 本来の意味でのチートを使って最強になっていくお話で、サクサク進めるようになっております。よろしければそちらもお読み頂けると幸いです。
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