悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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36 夜這い?

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夜遅くコナーが私の部屋に入って来た。それも窓から。


「どうして窓から入ってくるのよ」

「夜這いらしくて良いだろ?」

「はあぁ」

「で」

「皆は?」

「寝かした。夜に来いって事はそういう事だろ?」

「まあそうだけど」

「流石隊長だよな、最後まで落ちなかった。でも全員朝までぐっすりだ、安心しろ」

「何したの?」

「眠りの香を焚いただけだ」

「そう」


私は机の上にこの国の地図を広げた。


「コナー、側室に反対した貴族の領地に色を付けて」

「付けてどうする」

「良いから早くして」

「へいへい」


コナーは領地に色を付けていった。


「これで全部だ」


そこに私に忠誠を誓った辺境を加えた。


「三分の一ね」

「少ないな」

「でも三分の一なら護れるわ」

「どうするつもりだ」

「当主と一人一人会うわ」

「全員とか?」

「この中で既に会って話した人は除くわ。手紙で伝えても大丈夫な人達だから。

コナー、これはコナーにしか頼めない事なの」

「俺はお嬢の騎士だ。今更遠慮なんかするな」

「ふふっ、そうね。貴方には私の護衛として王宮に秘密裏で入ってもらう。隠密に近いけど大丈夫?」

「お嬢、俺の主は旦那じゃない。お嬢だ」

「分かってるわ。コナー、今から私の側に来て」

「承知した」


ローレン隊長はじめ私付きの近衛隊は貴族出身の者達。そして側室賛成派。反対派は近衛隊に子息がいない者達が多い。

もしかしたらフォスター公爵から何らかの圧力があったのかもしれないし、公爵と繋がっているかもしれない。

ローレン隊長はじめ騎士達が親と同じ意見とは思わない。それでも今回ばかりはローレン隊の騎士達には秘密裏で進めるしかない。


「俺は寝る」


コナーは部屋の中にあるソファーに横になった。

私はベッドに入り目を瞑る。

コナーは寝ると言っても横になり目を瞑っているだけ。今も辺りを警戒しながら横になっている。それは昔から。公爵家に居る時はきちんと寝る。それでも公爵家から出るとコナーの感覚は鋭くなる。

どれだけ警戒していてもそれを誰にも悟らせない。私は長年一緒に暮らしてきたから分かるけど。


「ねぇコナー」

「寝ろ。明日は遠乗りするんだろ」

「うん。久しぶりに走りたい気分なの」

「なら今は寝ろ。お嬢の事だからずっと寝てないんだろ?俺がここに居るから安心しろ」

「うん」


私はいつの間にか久しぶりに深い眠りについた。



早朝目が覚めたらコナーはすでに部屋には居なかった。

マイラを呼んで身支度を整える。今日は乗馬服。遠乗りに行く時はこの服の方が楽だから。

部屋を出るとコナーが部屋の前で待っていた。


「行くか」

「ええ。その前にローレン隊長にだけ伝えてくるわ」


私はローレン隊長が騎士達と稽古をしている庭に出た。


「ローレン隊長、今日はコナーと遠乗りに出かけようと思うの。出来れば気性の荒くない馬を貸してほしいんだけど」

「私も付いていきます」

「大丈夫よ。騎士達も今日は休んで。明日は王宮へ帰るから。私も今日は休み。だから久しぶりに遠乗りへ行きたいの。久しぶりの休みを楽しみたいの」

「分かりました。コナー、妃殿下を頼むな」

「任せろ」


ローレン隊長から馬を借り、マイラから昼食と飲み物をコナーが受け取った。

コナーとゆっくり歩き出した。


「どこへ行くつもりだ?」

「本当はトネードの所に行きたいんだけど一日では無理ね」

「無理だな」

「なら隣の領地を行った先に森林があるの。そこに行きましょ」


それから馬を走らせ風を受ける。一つに束ねた髪が後ろに流れ、コナーは付かず離れずの距離で後ろを付いてくる。

コナーが私を追い越し手で静止をする。

少しづつ速度を落としゆっくり走る。隣に並んだコナー。


「少し休憩だ」


木陰で休憩をする。


「久しぶりなのに飛ばすな」

「久しぶりだからでしょ」

「今は無心になれ」

「なってるわ。だから無理をしたのよ」

「ならいい」


休憩をし隣の領地を抜け目的地の森林へ着いた。

少しひんやり涼しい森林の中をゆっくり進む。虫の音、鳥たちの羽ばたき、木の枝にはリスがいる。

森林を抜けた先に小さな池があった。芝生の上に座りそこで昼食を取る。寝転がり流れる雲を見ながら今後の事を考える。

目を瞑り目から流れる一本の涙


私は涙を拭い起き上がった。


「コナー、王宮に帰ったら敵ばかりね。さあ帰りましょう」



次の日の早朝、全員で子爵とお別れをする。騎士達は各々馬に跨り、コナーも馬に跨った。

私は両膝を付いて座りまだ子爵の眠る場所から離れず目を閉じている。これから私のすべき事、それを子爵に聞いてもらう。


「妃殿下」


ローレン隊長の声に目を開ける。


「もうそろそろ」

「ええそうね」


私は立ち上がり土を払う。


「ローレン隊長、出発しましょう」


馬車に乗り込むとミーナとマイラが座っている。二人の向かいに座り馬車の扉は閉められた。

王宮へ向けて1ヶ月かけて帰る。その道のりは長く、毎日近づくたびに私の体は重くなった。



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