悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

文字の大きさ
42 / 107

37 平行線の話

しおりを挟む

王宮へ着き、私はアルバートの執務室へ行った。イーサンの静止を無視し執務室へ入る。

執務室の中にはフォスター公爵が居た。


「おや妃殿下お帰りでしたか」

「ええ、今帰ったの。それよりフォスター公爵、申し訳ないんだけど陛下と二人きりで話がしたいの。少し席を外してもらえないかしら」

「ええ、私は席を外します。久しぶりの夫婦水入らずの時間です。邪魔者は退散しましょう」

「あら助かるわ。フォスター公爵は案外話の分かる人だったのね。今度ゆっくり話がしたいわ」

「私も妃殿下と今度ゆっくり話がしたいです」

「また今度、ゆっくりと、ね?」

「ええ、また今度ゆっくりと」


公爵が執務室を出て行き、執務室にはアルバートと二人。私はアルバートが座る机の前に立ちアルバートと見つめ合う。


「今戻りました」

「疲れただろう。今日はゆっくりしてくれ。明日話を聞く」

「話は直ぐ済みます。陛下、私と離縁して下さい」


アルバートは勢いよく立ち上がった。


「何故だ!」

「なぜ?それは陛下が一番良く分かっていると思いますが」

「俺はリリーアンヌとは離縁しない」

「では私も勝手に離縁します」

「そんな事許さない」

「許さない?ならなぜ、私の了承もなしに第二夫人を娶ったのです?」

「それは、」

「私は陛下とは一対、そう思っていました。ですが、第二夫人を娶ると言うのも陛下から聞かされませんでした。

なら、私はもう陛下にとって用済み。用済みらしく陛下の側から身を引きたいと思います」

「それは困る」

「困る?なぜ?第二夫人のナーシャ様に王妃になって頂けばよろしいかと。第二夫人は王妃が留守にしている時の代わりです。だからこそそれなりの権限を持ちます。

なら、私が居なくても第二夫人のナーシャ様が陛下を支え側に居ればいい」

「俺はリリーアンヌに側に居てほしい」

「あら、陛下もご冗談を言うのね。愛してもない私を側に置く理由はないかと思いますが」

「俺はリリーアンヌも愛してる。ただ、ナーシャの方がリリーアンヌよりも愛してるだけだ」

「そんなのは愛じゃない。

陛下、それを心変わりと言うんですよ?」

「俺はリリーアンヌを愛してる。離したくない、その気持ちは本当だ。リリーアンヌはずっと俺を支え側に居てくれただろ?これからも俺を支えてくれないか」

「陛下のご寵愛も頂けないのに?ナーシャ様と仲良く陛下を共有しろと?私をどこまで馬鹿にするおつもりです」

「俺はリリーアンヌを馬鹿になどしていない。それに邪険にもしていない。俺の隣にはリリーアンヌしかいないんだ」

「ただ陛下の横で黙って座っていろ、と陛下はおっしゃりたいのね。王妃として貴族の相手をし、王妃として面倒な仕事を押し付け、王妃として王妃の座を与えておけば私が納得するとお思いなのですね」

「違う!俺は本当にリリーアンヌが必要なんだ、信じてくれ」

「陛下の何を信じろと言うのです。先に私の信用も信頼も裏切ったのは陛下です。

私の望みは離縁して頂く事です。離縁して頂けるまで私は何も致しません。第二夫人のナーシャ様と二人で力を合わせて政務を行えば良いと思います。私は口出しは致しません。

では長旅で疲れたので体を休めます」


踵を返して私はアルバートの前から立ち去ろうとした。


「リリーアンヌ待ってくれ!俺を、俺を捨てるのか…」


私はアルバートに背を向けたまま


「捨てる?捨てられたのは私の方です。

貴方を信じた私が馬鹿だった。貴方を愛した私が馬鹿だった。貴方の夢を、叶えようと努力してきた私が馬鹿だった。私がしてきた事は何もかも無駄だった…。

私はもう用済み…。アルバートに捨てられたのは私よ…。これ以上私を惨めにしないで、お願い……。

……ごめんねアルバート、もう私はアルバートを側で支える事は出来ないわ……」


そのまま執務室から出て私室へ戻ると私室の前にはマックス隊長が立っていた。

目が合ったマックス隊長は気まずそうな顔をし私から顔を背けた。

私はマックス隊長に近付き、


「私は自分の部屋に入りたいだけよ?長旅で疲れたの。早くベッドで横になりたいのよ」

「ッ、妃殿下、申し訳ありません。こちらの部屋は第二夫人ナーシャ様の私室です」

「この部屋は歴代王妃の私室。いつから第二夫人の部屋になったの?」

「それは…、すみません」

「なら私の部屋はどこ」

「ご案内致します」


私はマックス隊長の後ろを付いて行く。


「ねぇ、ボビーの姿が見えないんだけど、どこにいるの?」

「陛下の執事だったボビー氏は解雇されました」

「解雇?なぜ?」


マックス隊長は振り返り辺りを確認してから私の耳元近くで、


「第二夫人を反対したので」

「そう。分かったわ」


マックス隊長はまた前を向いて歩き出した。一番端の部屋の前、


「妃殿下の私室はこちらです」

「ありがとう」


部屋の中に入るとそっくりそのまま私の私室だった。

ミーナが慌てて入って来て、


「妃殿下、妃殿下付きの侍女もメイドも第二夫人付きになりました」

「ミーナは?」

「私は変わりません。妃殿下付きです」

「良かった。ミーナとマイラ、私は二人だけで良いわ。これからもよろしくね」



しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。 自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。 このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく── ─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─

見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい

水空 葵
恋愛
 一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。  それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。  リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。  そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。  でも、次に目を覚ました時。  どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。    二度目の人生。  今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。  一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。  そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか? ※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。  7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

処理中です...