悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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「罪人リリーアンヌ、王の権限を勝手に使用し不要な金品を騙し取り、国の大事な民を奴隷として売り飛ばし、不当に得た金を己の欲の為に使用した。妻子ある男性を己の欲を吐き出す為に無理矢理従わせ強要し王妃として国の品位を著しく落とした。

この国を、自ら王になる為に虚偽をし王から政権を奪いこの国を己の私物化に企む悪女。そして、悪魔の如く己の立場を揺るがす王の子を殺害した重罪で処刑を執行します」


私の隣に立つ騎士が大きな声を張り上げた。


「処刑を許可する。迅速に執行を行う」


私の視線の先、アルバートが大きな声を張り上げ処刑の執行を許可した。


ウォォと言う歓声が会場中響き渡り、隣に立っていた騎士は私の鎖を持ち、私を無理矢理引っ張り処刑台の前に移動した。

目の前の処刑台にはまだ乾ききっていない血が赤く鮮明に残っている。辺りは血飛沫が何重にも散っていて、刃からは血がポタポタと垂れている。

私の大切な人達を引きずったであろう跡もまだ生々しく残っていた。


私は握り拳に力が入った。下唇をいつの間にか歯で噛んでいたのだろうか、下唇から血の味がした。


私はアルバートを睨む。

貴方が憎むのは私でしょ?なら、私だけで良かったはず。

それを、それを…


「執行せよ」


アルバートの声が会場に響き渡った。

私の後ろに立つ騎士が鎖を引っ張り私を押した。


「歩け」


一歩一歩と処刑台に向かって歩きだす。


「待て!待つんだ!」


騎士の大きな声が響き、私は声のする方を見つめた。


「……ちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん」


騎士達の間をすり抜け壇上に上がって来た良く知っている一人の少女。

騎士達の静止を交わし私の足に抱きついた。


「おねえちゃん、どこにいくの?シスターがおねえちゃんはたびだつからおわかれしましょうっていってたの」


私を見上げ、泣きながらそう言っている少女。


「その者を早く捕えよ!」


アルバートの声が響き渡る。騎士達が大勢周りに集まった。

私はアルバートを真っ直ぐ見つめ、


「国王陛下、この子は今後この国を支える陛下の大切な民。こんな幼い子を捕えてどうするおつもりです。それにこんな幼い子にこのような残忍な所を見せるなど陛下はいつから無慈悲になったのです。

貴方は無慈悲な王ですか?」

「違う!」


アルバートは手を上げ騎士達を静止させた。

私は足に抱きつく少女と目を合わせた。


「アンネ…」

「ねぇおねえちゃん、どこにいくの?わたしもつれていって」

「アンネ、お姉ちゃんね、遠い遠い所に行くの。お姉ちゃんがこれから行く所はまだアンネが行くには早い所なの。アンネは夢があるでしょ?お洋服をたくさん作りたいのよね?お姉ちゃんに作ってくれるって約束したわよね?だからね、アンネは一緒に連れていけないの」

「いや!そとにいるおじさんやおばさんがいってたの。おうさまにいえばやめてくれるって。おうさまってこのくにでいちばんえらいひとでしょ?

おじさんもおばさんもおねえちゃんのなまえよんでた。リリーアンヌさま、リリーアンヌさまってないていたの。おねえちゃんのことみんなだいすきなの。だからおうさまにいうの。おねえちゃんをどこにもいかせないでって。だからわたし、だから、がんばって、ここに、きた、の……。

うぇぇぇぇん、うぇぇぇぇん」


私は両膝を付き、アンネは私の首に手を回して声を出して泣いている。

アンネが泣き止むのを待って優しく話しかける。


「アンネ、お姉ちゃん、アンネがお洋服作る人になれるって信じてる。その為には何をしないといけなかった?」

「えをいっぱいかく」

「そうね、たくさん絵を書いて。後は?」

「おべんきょう…」

「そうよ、今日はお勉強したの?」


アンネは顔を横に振っている。


「ならお勉強もしないと。シスターがアンネを待っているわ」


視線の先にシスターの姿があった。シスターはきっと皆に私と最後のお別れをさせようと離れた所からお別れだけ言いにきたのかもしれない。処刑される所を見せるつもりはなかった。


「おそとのひとたちみんないってた。こんなのひどいって。どうしてこんなむごいことをするんだって。どうしてへいみんのはなしをきかないのかって。おねえちゃんはえらいひとたちがいうようなひとじゃないって」

「そう…」


城門より内側に入れなかった平民の人達には今までの私の思いは伝わっていた。

私が今までしてきた事は無駄じゃなかった

私がしてきた事は、

無駄じゃなかった……

ありがとう

ありがとう……

最期にそれを聞けて、

私は嬉しい………


「おねえちゃん、おうさまってどのひと?」

「アンネ、お姉ちゃんが遠い遠い所に行くのはもう決まった事なの。王様でも止める事は出来ないの」

「どうして?」

「アンネ、ほらシスターが待ってるわ。さぁ行って」

「おねえちゃんもいっしょにいこ?どこにもいかずわたしといっしょにくらそ?」

「お姉ちゃんね、先に旅立ったお友達が遠い遠い所でお姉ちゃんを待ってるの」

「おともだちがまってるの?」

「そうよ、お姉ちゃんの大切な人達。後から必ず行くって言ってたのにお姉ちゃんが行かないと心配しちゃうでしょ?」

「おねえちゃんはさみしくないの?」

「アンネや他の子達と会えなくなるのは寂しいけど、お姉ちゃんいつも見ているわ。だからね、もしアンネが寂しいって思ったり、何かお姉ちゃんに話したい時はお空に向かって話しかけて。そしたらお姉ちゃんに届くから」

「どうやって?」

「アンネの声が風にのって遠い遠い所にいるお姉ちゃんに届くの」

「ならまいにちはなす」

「ならお姉ちゃんは毎日アンネの声が聞けるのね、すごく嬉しい」

「おともだち、おねえちゃんいかないとさみしいよね。でもアンネもさみしい…」


最近ようやく私と言うようになったアンネ。甘えたい時はアンネと言うのは知っている。

私は後ろにいる騎士に、


「少しだけ手の鎖を外して」

「出来ません」

「早くしなさい」


違う騎士が近くに来て私の手の鎖を外した。


「ありがとう」


私はアンネを両手で抱きしめた。


「アンネ、お姉ちゃんもアンネと離れるの寂しい。でもね、人はいつか巣立つ時がくるの。アンネが大きくなれば孤児院から巣立つわ。そしてもっともっと、そうねお婆ちゃんになったら皆旅立つ時がくるの。

お姉ちゃんは今日が旅立ちの日なの。ここにいる皆がお姉ちゃんの旅立ちを見届ける為に集まっているのよ。

今ね、お姉ちゃんの出立式をしていたの。皆に見送られてお姉ちゃん幸せでしょ?」


アンネは壇上から周りを見た。そして私の顔を見た。

私はアンネに笑顔を見せた。


「うん、わかった」

「ほら、シスターが心配そうにアンネを待っているわ」


アンネは私から離れシスターの元に走って行った。

シスターは祈りの格好をし私に一礼した。私もシスターに頭を下げた。

子供達をお願いしますと、

そして、

ありがとう

と、思いを込めて……



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