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しおりを挟む朝ケイトが起こしに来てくれて、
「ケイト、昨日は夜中にごめんなさい」
「私はアリシアお嬢様に頼られて嬉しかったですよ?またいつでも頼って下さいね」
「ありがとう」
ワンピースに着替え食堂へ向かう。
「ジル様おはようございます」
「おはよう。その…なんだ、元気か?」
「元気ですよ」
「なら良い」
「ジル様どうかされましたか?」
「え?いや、さあ、朝食を食べよう」
私達は朝食を食べ始めた。
「シア、俺の果物も食べろ」
「ありがとうございます」
ジル様は私の前に果物の皿を置いた。
「ジル様、もう騎士隊へ行かれますか?」
「いや、今日は邸にいる予定だ」
「そうですか」
「何かやりたい事や手伝ってほしい事はあるか?」
「これといってありませんが…ジル様、何かありましたか?」
「え?いや、何もない」
「そうですか?」
「ああ。後で、その、お茶でもしないか?」
「はい!今からでも大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ」
ジル様と手を繋ぎ庭のベンチへ来た。
「日差しは強くないか?」
「はい」
「何かあれば直ぐに言ってほしい」
「何か、ですか?」
「ほら、暑くなったとか、調子が悪くなったとか、あるだろ?」
「分かりました。ジル様も言って下さいね?」
「俺は騎士だから体は丈夫だ」
「ふふっ、そうですね」
ケイトがお茶を用意してくれ、
「シア、今更だが……メイドを増やすか?」
「私はケイトだけで大丈夫ですが、ケイトに負担がかかるなら増やしても良いと思います」
「いや、王城から一緒に来たメイド達がいただろ?」
「はい」
「その者達を呼ぶか?」
「ですが…」
「俺からメイドは連れて来るなと言っておいて何だが、邸に住むメイドがいた方が良いと最近思ってな」
「確かにケイトは夜になると家に帰りますものね」
「それにその者達もここに残りたいと言っていただろ?」
「ケイトに聞きましたか?」
「いやイザークだ」
「確かに残りたいと言っていました。ですがお兄様の子が産まれれば子のメイドになります」
「だが、」
「ジル様、私も子が産まれればもう一人メイドを雇ってほしいと思います。ケイト一人に負担がかかり過ぎるからです。ですが今は一人で色々するのを負担とは思っていません。私、これでも結構楽しんでいますよ?」
「そうか?」
「はい。お風呂の時は鼻歌を歌ったり、今日は面倒だなと思う時は手入れを手抜きしたり、王城では出来なかった事がここでは出来ます。確かに邸に住むメイドがいれば助かる事もあると思います。
ですが、それは今ではなく将来的には、です。メイドの教育を兼ねてでしたら雇うのを反対するつもりはありません」
「もし雇うにしてもシアの身近の者が良い。それに辺境にはメイドの教育を受けた者はいない。メイドになりたい者は隣町や王都へ行く。ここにはこの邸しかないからな。
ケイトもメイドの教育は受けていない。洗濯と掃除だけを任せていたし、俺は寝に帰って来るだけだったからな。領主の仕事はまとめてしていたし緊急の時はイザークが騎士隊へ届けてくれた。
ケイトは子を育ててきたからメイドの仕事も出来るが、王城のメイドとは違うだろ?」
「確かに違いますが手を借りる所はケイトの手を借りていますし不便と思った事はありませんよ?」
「そうか…」
「急にメイドとは何かありましたか?」
「別に何もないがもし遠慮してるならと思っただけだ」
「今後もしメイドが必要と思った時はジル様にお願いしますね」
「そうしてくれ」
「それよりジル様、私でも戦う術はありますか?」
「シアが戦う必要はない」
「剣を振るとかではなく護身術とかなら出来ると思ったのですが」
「シアは俺が護る」
「勿論ジル様がお強いのは知っています。ですがジル様が側にいない時の為です」
「俺が側にいない時はキースが側にいるし、キースがいない時は団長か副団長が側に付く」
「そうですね、分かりました…」
「もしもの時は男性の大事な所を思いっきり蹴り上げろ」
「大事な所、ですか?」
「急所だな」
「は、い……」
「男根だ」
「まあ!」
「もしもの時だぞ?シアは俺やキース、騎士達から離れるな」
「はい」
大事な所を思いっきり蹴り上げるね…、それだけで大丈夫なのかしら。
「今後もし騎士達に話しかけられたら足の甲を思いっきり踏んでやれ」
「そんな事出来ません。辺境の大事な騎士です」
「シアは可愛いんだ、それを自覚してくれ」
「私を可愛いと思ってくれるのはジル様だけですよ?」
「鏡見たことあるか?」
失礼ね!毎日鏡見てるけど私のどこが可愛いの?ジル様は本当に可愛い人を見たことがないんだわ!
「シア、何を怒ってる?」
「私は可愛くないです」
「可愛い!シアは可愛い」
「ジル様だけに可愛いと見えるなら嬉しいです」
「いや、誰が見ても可愛いけどな」
「それは言い過ぎです」
「お願いだから自覚してくれ」
「それならジル様も自覚して下さいね?ジル様はとても格好いいんですから」
ジル様がなぜか呆れた顔をしているけど…。私よりもジル様の方が格好良くて心配だわ。
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