46 / 60
46.
しおりを挟む夕食後、
「ジル」
「ああ、行くか」
キース様が立ち上がり、
「シア、すまない。今から作戦を詰める」
「分かりました」
「シアも聞くか?」
「良いのですか?」
「おい!ジル!」
「シアなら大丈夫だ」
「ジルが良いなら良いけど」
3人で執務室へ移動し、ソファーに座る。
一枚の絵が机の上に置いてあり、
「シアに簡単に説明する。海側から王弟が王城を目指す。で、帝国側から帝国が王城を目指す。王弟はもう王城近くに陣を構えているし帝国も国境を越えた」
「帝国はもう国境を越えたのですか?」
「ああ、帝国の辺境の騎士隊が既に入り込んでいる」
「平民としてですか?」
「帝国とは行き来が簡単だ。特に平民は調べられる事はない」
「確かにそうですね。隣国と帝国は平民の行き来が多いので」
「帝国は皇太子が指揮をとってる」
「お義兄様がですか?皇帝ではなくて?」
「皇帝より皇太子の方が策士だぞ?」
「え?」
「皇太子の軍も国境に陣を構えた。でだ、逃げ道を塞がれた平民はこの国へ逃れてくる。それを5部隊で対応するが、1部隊は王弟への物資の支援にあてるから実際は4部隊だ」
「少なくありませんか?」
「少ないな」
「王城か帝国側の辺境に協力を頼んだ方が…」
「帝国側の辺境は帝国へ逃れる者達の対応にあたってもらう。皇太子の軍が王城を目指した時、帝国側の辺境が手薄になるからな」
「そうですね。既に辺境の騎士隊が隣国へ潜入しているなら辺境は手薄です。今はお義兄様がいますが」
「王城の騎士達は国王を護ってもらわないといけない。ただ、もう少ししたら大国側の辺境の騎士隊が応援に来てくれる」
「大国側ですか」
「大国の国王が軍を連れて身重の娘の見舞いに来るらしい」
「軍を連れて、ですか?」
「国王が動けば軍も動く、らしいぞ」
「ふふっ、大国の国王陛下らしいです」
「この国は中立と言っている以上軍を動かす事はできない」
「そうですね。軍を動かせば敵と見なされます」
「だがそこに大国から軍を連れて来る国王を辺境の軍が監視の為に動いてもおかしくはない」
「ええ」
「そこで監視の為に王城に着いた辺境の騎士隊に国王から隣国から逃げてきた民の保護の応援を頼んだならどうだ?」
「保護なら中立です。それにたまたま王城へ来た騎士隊なので軍を動かした事にはなりません」
「中立国にもし攻めて来たとして、大国の国王がこの国にいる時に攻めれば大国にも戦を仕掛けた事になる」
「隣国の国王陛下は袋の鼠状態になります」
「自ら白旗をあげれば良いがそんな事はしないだろう」
「でしょうね、賢い王ならこんな事になっていません」
「シアは皆に愛されてるな」
「どうしてです?」
「帝国の皇太子が動いたのは義理の妹が傷つけられたからだ。そして大国の国王が動いたのは娘に頼まれたからだ。義理の妹を傷つけた暴君も元王子も許せないとな。
そして中立と言っているが秘密裏に王弟に手を貸しているのは国王だ」
「え?お父様?」
「第二王子を護る為にと言って王妃に口添えをした。王宮の内から手引きするようにな。国王の交代を求める公爵を筆頭に侯爵に連絡を取り、王弟を王宮へ手引きした後、第二王子と王妃を匿うように願い出た。だから王妃は王弟に手を貸す事を決めた」
「シアは皆から愛されてるな」
「はい、そのようです」
「隣国が落ち着いたら王城へ行くか」
「ジル様もですか?」
「報告がてらな」
「はい、一緒に行きましょう」
ジル様に手を握られ、私とジル様は見つめ合い、ジル様の唇が私の唇と重なった。
ジル様に抱きしめられ、私はジル様の胸の中でジル様に包まれた。
「あのさ、二人の世界に入るのは良いけど、俺も居るけどね?」
「あ!」
「王女様忘れてたでしょ」
「はい、すみません」
キース様がいる事をすっかり忘れていました。
「で、話を戻すよ」
「はい、お願いします」
「大国側の辺境の騎士隊が来るまでは俺達でどうにかしないといけない。まぁ、王城から明日には出発出来るとしてそれでも10日はかかる」
私が来た時は観光しながら休憩も取りつつゆっくり来たから1ヶ月かかったけど、騎馬なら10日しかかからないのね。
「俺達が明日国境へ向けて出発して数日で仕掛けると思う」
「今は睨み合いだからな」
「帝国の辺境の騎士達の武装も済んだみたいだし頃合いだね」
「国境の牢屋はどうだ」
「牢屋だけでは足りなくなる」
「だろうな」
「野営用のテントに女性と子供を入れるけど」
「子供か…男児は牢屋にいれたいが」
「子供ですよ?」
「違う国だが子供に暗殺させようとした事があったんだ。昔だけどな」
「子供に?」
「どうしても子供には警戒心が薄くなる」
「そうですね、まさかと思いますもの」
「そこを逆手に取った。まぁ子供だから失敗したが」
「子供にそんな事させるなんて」
「だがそれも作戦だ。まさかと思う事があり得るのが戦だからな」
「用心するに越したことはないと言う事ですね」
「ああ」
「なら野営は女性と女児だけ。後は赤子や幼児は大丈夫だな」
「それはな」
「後、大事な事なんだけど、どうしても全員捕らえるのはできないと思う。大国側の辺境の騎士隊が間に合えば違うけど」
「まあそうだな」
「民の大半は王弟の領地へ行ったけど、大半はこっちへ来ると思う。抜け道は作らせないから捕らえるのにこぼれた人達がここに来る」
「ここは大丈夫だ。こっちの心配はいらない」
「分かった。なるべく国境で捕らえるから」
「頼むぞ」
75
あなたにおすすめの小説
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】
幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。
そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。
クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる