妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ

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次の日マティス様を見送った。昨日の夜言われた『足掻け、諦めるな』その言葉が私を強くする。

私はその足で馬車に乗り込む。


「何処へ行く」

「実家へ」

「実家か、なら良い、行って来い」


友達は駄目で実家なら良い。それに実家ならアーロン様は付いて来ないのね。


実家に着いた私はお父様ではなくお兄様を探した。


「お兄様」

「ジュリアどうした」

「お兄様お話しが…」

「どうした?ジュリアがそんな真剣な顔をするなんて大事な話なんだな?」

「はい」


お兄様の私室へ行き、私は全てを話した。


「あの男!父上も父上だ。何が我慢しろだ!」

「お兄様もう少し声を」

「これが怒らずにいられるか!直ぐに離縁して帰ってくるんだ!」

「ですがお父様は許しません。だからお兄様にお願いがあって来たんです」


政略結婚、家と家の繋がりを強固にする為の結婚。そこに愛は必要ない。家の為、ただそれだけ。家を守る為に子が犠牲になるのは当たり前。家を繁栄させる為に繋がりを広げる。それがこの国の習わし。

男性だって女性だって好きな人と結婚できない。恋愛結婚なんて夢のまた夢。そんな事分かってる。それでも婚約中から仲を築こうと努力する。私も築こうと努力し築いたと思っていた。

友達のように白い結婚も珍しくはない。それでも白い結婚での離縁は相手側の有責になり今後も繋がりは無くならない。

形だけの夫婦も珍しくはない。愛人がいようが目を瞑る。離縁して繋がりを切られたら実家を守れない。何の為に政略結婚したのか分からなくなる。あの時感情に突っ走った私が馬鹿だったの。

だから今度は侯爵家を敵に回しても実家が潰れない強固なものを作る。


私はお兄様にマティス様の事を話した。そして紙切れを渡した。


「商会を作ればいいんだな。他国との経路も船もあるなら簡単だ。ジュリア、後は俺に任せてくれるか?」

「お願いします」

「早くあんな男と離縁出来るように俺も手を回す。少しだけ待てるか?」

「はい」

「あんな男の所に帰るなと言いたい所だが、今後俺と会うのを許さないと言われても困る。それに毎度一緒に付いて来られても困る」

「私もそれは困ります」

「友達とはここで会えばいい。実家に帰って来たら偶然会った。隣の家はジュリアの幼馴染みの家だしな」


隣の家は16歳で嫁いだ友達の実家。2人目を宿してたまに実家に帰って来ているらしい。


「お兄様…」


私は安心して涙が溢れてきた。


「ッ、ジュリア…」


お兄様は私を抱きしめ私はお兄様の胸で泣いた。


「もう少しの我慢だ」

「は、い…」


私はお兄様に任せ邸に戻って来た。
もう少しの我慢、早くて1年、遅くても3年、アーロン様から侯爵家から解放される時を得た私はまだ見えない先に希望を持った。

これからはアーロン様に気付かれないように注意をしないといけない。


「嬉しそうだな」


突然の声に後ろを振り返れば


「ただいま帰りました」


愛人を連れていないアーロン様がいた。


「早かったな、泊まってきても良かったんだぞ?」

「本当ですか?」

「俺だって実家に泊まるのを責めたりしない」

「ありがとうございます。久しぶりに家族と会っても食事もせずに帰って来たので、今度はもう少しゆっくり過ごせそうです」


アーロン様は機嫌が良いみたい。本命のあの女性と会っていたのね。紫系の服を着ているから。

分かりやすい人。



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