婚約破棄します

アズやっこ

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おまけ エリーナ視点 ④

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ウィングル国へ来て3年、私は今日アランと婚姻式を挙げる。

ハーベルト国からお父様とお母様、エリオットも参列し、お兄様とお義姉様、4歳の甥っ子と1歳の姪っ子も参列してくれた。

教会の扉の前、お父様は『俺で良かったのか』と聞いた。『私はお父様が良いの』と答えた。


アランは持久戦と言ったように少しづつ少しづつ私の内に入って来た。

私の手を取り一歩前へと連れ出してくれるのはいつもアランの手だった。新しい世界を見せてくれるのもアランの手。

アランはいつも輝く希望の光だった。

人は光がある方へ進み、でもその光を手に取る事は出来ない。だから希望の光。

友人にはなれても恋人にはなれない、そう私は言った。私を導く光の跡を残すアランに追い付く事は出来ないと。

『でもそれって俺とエリーナの道は繋がってるって事じゃないの?エリーナは俺の跡を付いて来てるんでしょ?なら俺がゆっくり歩けばいつかエリーナは俺に追い付いて俺が隣に並ぶ事だって出来るだろ?それに道が繋がっていて向かう場所が同じなら一緒に向かえばいいと俺は思うけどな。進む先にもし魔王がいても一緒に力を合わせて戦えばいいし、それにエリーナは整えられた道に興味はないだろ?』

整えられた道、殿下との婚約の事を言っているのは分かった。整えられた道がいいのなら目を瞑り私は婚姻していた。

『そうね、整えられた道には興味はないわ』

『なら答えは一つだ。一緒に魔王を倒そう』

『ふふ、魔王?うん、でも楽しそう』

アランと居るとなぜかいつも笑ってる自分がいる。自分の素を隠さなくてよくてこんなに一緒に居て心地良い人はいない。

お母様は言ったわ。『10年後20年後、自分の隣には誰がいるか想像してみたら?私とオスカーは幼馴染みなの。家柄だけなら釣り合わないわ。オスカーは王族の血を継ぐ侯爵家、私は男爵家、それでもお互い10年後も20年後も一緒にいるのだけは想像できたの。反対に一緒にいない方が想像できなかったわ。オスカーの隣に別の女性がいて私の隣に別の男性がいて、久しぶりなんて声を掛ける姿が想像できなかったの。身近にいたから気が付かなかっただけでお互い自分の内に入っていたわ。それは恋なのって友人に聞かれたけど私は恋よと答えたわ。オスカーの良いところも悪いところも含めてオスカーでそんなオスカーを愛しいと思う気持ちは私の心だもの。それに10年後も20年後も楽しい毎日になるわってわくわくしたの。そんな毎日は幸せだなって』

10年後20年後、私の隣にはいつものようにアランがペンを無理矢理置いて私の手を繋いで出掛ける姿、アランの笑顔に自然と笑う姿、もうアランって私が怒る姿、アランと過ごす毎日は楽しそうでそんな毎日を送れたら幸せだなって想像した。

この気持ちを恋と呼ぶにはまだ早い。それでも予感はした。いつか恋よと言える日がくると。

本当に単純な話よ。

アランと街を歩いていた時に騎士が数人走って来たの。アランはぶつからないように私を端に寄せ騎士達の道を開けた。そして騎士達が走って行った先を見つめていた横顔がいつも笑ってるアランじゃなくて男性らしい顔だったの。その顔に私はドキンと胸が高鳴った。『エリーナ大丈夫?怪我はしてない?』アランの優しさは知っていた。でもその優しさに安心する笑顔に『ああ、この人の隣は私で在りたい』そう思った。

それから私は『アラン、一緒に魔王を倒してくれない?』アランは笑って『俺を婿にもらってくれるなら一緒に魔王を倒そう』『ええ、私のお婿さんになって』『好きだよエリーナ』

アランは好意は示してくれていたものの好きとかの言葉は決して言わなかった。言葉を言われるときっと私は困り距離を置いた。同じ心が返せないのに甘えるべきではないって。


アランはお父様とお母様に結婚の許しをもらい、お兄様とお義姉様に結婚の許しをもらい、わざわざハーベルト国まで行きお父様とお母様から結婚の許しをもらいに行った。

私はというと義理のお父様とお母様になる公爵ご夫妻に挨拶に行った時『ありがとう、この子の結婚は諦めていたんだ、本当にありがとう』なぜか感謝されたわ。私は反対されると思っていたのよ?私の事は言わなくても知ってるだろうし。

親の許しをもらい婚約し半年後の今日婚姻式を挙げる。

半年間、本当に大変だった。お兄様とお義姉様には報告だけで済まそうと思っていたのに『予定、絶対空けるから』お義姉様の顔が怖かったわ。ハーベルト国からお父様達が来るにも距離が距離だしと思っていたら『エリーナ、ハーベルト国のお父様達の滞在先はここで良いかしら』私はポカンとしてしまった。『父と母と弟は呼ぶつもりはなかったわ』『あら私が連絡して話は進んでいるわよ?』

ドレスも公爵家の力で大急ぎで作り、それだって私のドレスだけじゃなくてお義母様、長兄お義姉様、次兄お義姉様のドレスもよ?勿論アランのも合わせたら…、お針子さん達に本当に申し訳ない気持ちになったわ。

ウィングル国は嫁ぐ方が新郎新婦の服を用意し嫁ぎ先の方がその他を用意するらしいわ。持参金も様々らしい。アランの両親は持参金を持って侯爵家へ来た。お父様はアランに『どうするか君が決めなさい』とアランに渡した。アランはそのままご両親へ返した。『今まで充分な暮らしをさせて頂きました。今後どうなろうと自分で何とかします。その為の人脈作りを父上から教わりましたから』お互いの家同士で話し合い決めるらしいわ。

私が侯爵家へ養女に入る時実のお父様は支度金として侯爵家のお父様に渡した。でもお父様は受け取らなかった。『娘を迎え入れると決めたのは俺達の意思だから支度金を受け取る理由がない』って。今回も実のお父様から婚姻準備金として元々私の為に準備していた持参金を持ってジョーンズが侯爵家へ来た。ジョーンズは受け取りを拒否されお兄様に相談した。色々あり今は私が受け取った。違う形で返そうと思う。

招待状を送るにしても一応アランは公爵令息だし聞いたのよ?『兄上二人が貴族を招待したし、俺は侯爵家に婿に入るから招待するなら侯爵家の繋がりの貴族だけで良いよ。それに数ヶ月前に次兄の婚姻式をしたばかりだからきっと皆内心またかよって思ってるよ』お義母様に聞いても『確かに貴族を招待した方が良いとは思うわ。でもアランは三男だし侯爵家へ婿に入るんだから侯爵家の決まりでこちらは良いわよ』

お父様とお母様に聞いたら『女王陛下がお見えになるのなら婚姻式は身近な人だけにしてお披露目会で貴族を招待しましょう』となった。

それからお披露目会の招待状を送り、お披露目会の準備をお母様とお義母様と考えて今日に至る…。

どうして半年?

そうよ、そもそも半年で準備するのが間違っているのよ。


「エリーナ、花嫁は眉間にしわを寄せたりしない」

「ごめんなさいお父様、この半年を思い出したら…」

「でもそれはいつか幸せな思い出になる」

「そうね」


扉が開きお父様と一歩一歩アランの元へ向かう。

お姉様、お父様とお母様の実の娘のお姉様家族は来れなかったの。他国に住むお姉様は今3人目を懐妊している。身重のお姉様の体調を考えて残念だけど今回は欠席。でも手紙でお祝いの言葉を貰ったわ。

新婦側の席、お兄様、お義姉様、甥っ子姪っ子、お父様、お母様、エリオット、そして一番前の席にはお母様が座っている。


「エリーナ、誰にも平等に与えられる神からの贈り物を見つけられるかは君次第。君は幸せを見つけた。二人の父二人の母、そして今日から君は三人の父と母がいる。いつでも頼りなさい、娘の幸せを願わない親はいないからね。アラン君と幸せになりなさい」

「はいお父様」


お父様の手からアランの手に私の手を託された。

これから進む先、いつも隣にはアランがいる。そして私もアランの隣にいる。寄り添い助け合い、そして未来を繋ぐ。


「エリーナ?疲れた?」


婚姻式が終わり今はお披露目会。


「疲れたわ、この半年がね…」

「最短が半年って言われたら半年しか待てないだろ?」

「私は1年待ってほしかったわ」

「俺は6年待った。勝手に待ってただけだけどね」

「6年?」

「マイアとエリックの婚姻式の時に一目惚れしてからだから6年」

「聞いてないわ」

「言ってなかった?」


初めて聞いた話に驚いたけど、従者として公爵家へ来たのも、お父様がアランを雇ったのも、もしかしたらこうなる運命だったのかもしれない。

お兄様はお義父様とお義母様をこの国の父と母と言っていた。そしてアランを友人であり家族だと。

陛下が殿下の養子先にこの国を選び結果慰謝料として私が養女になった。

偶然か必然か、それは分からない。それでもアランと繋がる道はありその道を光り照らし暗い道で迷子になっていた私に教えたのはアラン。

どれだけ光り照らしても気付かなければそこに繋がる道は無いのと同じ。私と殿下の道が繋がらなかったように。

私は繋がったアランとの道をこれからも大事に大切にしたい。時に喧嘩してもそれでもアランとのこれからは毎日が楽しく笑顔に溢れた幸せな日々が送れると確信しているから。


「エリーナ」

「ん?」

「俺達の道の先に魔王はいないけどきっと可愛い3人、いや4人?いやいや5人の天使達が俺達を待ってると思うんだ。早く会いたいな」

「アラン、そんなに無理よ…」


思わず呆れた顔をしたのも呆れた声を出したのも仕方がない。


「それこそ神のみぞ知るだよエリーナ」


笑顔で私を見つめるアラン。


「ありがとう、俺の心に心を返してくれて、そして俺を隣に立たせてくれてありがとう。この先もしどんな困難が待ち構えていてもエリーナとなら立ち向かえると俺は信じてる。

ありがとうエリーナ、俺の手を取ってくれて、愛してる愛しい俺の奥さん」


アランは私の手の甲に口付けを落とした。


「ありがとうアラン、いつも光り照らし続けてくれて、だから私はアランに辿り着けたの。手を差し出してくれたのはアランの方よ。私はアランの手を取ったんじゃなくて逃さないと掴んだの。これからも逃さないから覚悟してね」

「それはエリーナもだ」


アランは私の手をぎゅっと握った。


「俺も逃さないから。なんなら手と手を繋ぐ紐でも作ろうか、そしたら四六時中一緒だ」

「あらそれは良い考えね。そしたらアランの苦手なダンスを四六時中教えられるもの」

「それは困るな…、でもそんな紐作らなくても俺はエリーナの手を離さないし四六時中一緒にいる」

「私も紐に頼らなくてもアランの手を離さないしずっと側にいるわ」


アランは私を抱き寄せた。

耳元で囁かれるアランの声。


「愛してるエリーナ」


アランの耳元で囁やく。


「愛してるわアラン」


アランは頬に口付けした。


「エリーナねえさま、おかおまっかっか」


私達の足元に座り見上げている可愛い甥っ子。

甥っ子?


「アレク、どうしてここにいるの?」

「かあさまもとうさまもいるよ、ほら」


アレクの指の先、変装したお兄様とお義姉様の姿。それもメイドと給仕の格好をし今まさに招待客に給仕をしている。


「あの二人なら俺はどんな事をしても来ると思ったけど?お転婆姫とお転婆姫をこよなく愛する従者だからね」


アレクは『おじいさまだっこ』とお父様に抱っこされている。『おばあさまあーん』お母様はアレクに果物を食べさせている。お父様もお母様もハーベルト国へ帰ればまたアレクと過ごす事は叶わない。甘やかす事が出来るのは祖父祖母と孫の関係性だから。


「新郎新婦様もどうぞ」


目の前に差し出されたグラスを受け取る。


「ありがとう、お、お義姉様?」


お義姉様は口元をシッと人差し指を当てた。


「おめでとうアラン、エリーナ」

「ありがとうございますお義姉様」

「マイア、お転婆もほどほどにな。エリックをあまり困らせてやるなよ」

「あらエリックものりのりよ。それとアレクを一週間よろしくね。ここでお泊りしたいらしいわ。お祖父様とお祖母様と一緒に遊びたいって。本音を言うと私もお泊りしたいけどね」


お義姉様は笑ってまた給仕に向かった。

お兄様も変装を楽しんでいるみたい。ハーベルト国でのお兄様は私のお手本になる人。お兄様はお義姉様と出会い変わった。色々な人と出会い交じり人は形作られる。

お兄様も幸せなのね。


私も色々な人との出会いで今の私がいる。そして出会いはまだまだ無限大に広がっている。

でもその中でいつまでも光り輝く愛しい人。そして私はその光に守られて私も光が消えないように守る。

私も幸せよ。


でもフレアを抱っこしているエリオットを見ていると気が気でないわ。




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