婚約破棄します

アズやっこ

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おまけ エリーナ視点 ⑤

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「エリーナ本当にここから見るのか?」

「ええ、私はこの国では平民だもの」


ルーファー殿下の婚姻式を見届ける為に王都へやって来た。

港が開港し王都は活気が溢れている。アイリーン国との貿易で色々な店が建ち並ぶ。10年前は貴族が街で買い物はしなかった。お茶をしに来る令嬢達はいたけどそれだってほとんどが家でだったわ。どこどこの店のケーキが美味しいと聞けばメイドが買いに来て家で食べる、それが普通だった。子爵や男爵令嬢達は街で食べていたそうだけど。

小物店には高位貴族令嬢達も来ていたみたい。それでもドレスやワンピースといった着る物や髪飾りや宝石は商会で購入していた。

でも今は貴族令嬢でも気軽に街で服を買うと聞いたわ。商会ではお茶会や夜会で着るドレスやその装飾品を購入し、普段着るドレスを街で購入する。貴族御用達の高級店として他国のドレスも扱っているらしい。髪飾りも銀細工だけでなく他国で流行りの髪飾りを扱う店もあると聞いた。

ルーファーが学園に通っていた時に令嬢達が言っていたそう。商会はどうしても種類が限られる。色々な種類から自分が気に入った物を買える店があるといいと。そして自分の理想な物を作ってくれる職人がいると尚更いいと。それは髪飾りだけじゃなく服も鞄も靴も、小物や雑貨にいたるまで自分で選んで購入したいと。もしそれで高いと思ってもそれだけ大事に大切に扱うし良い物は長持ちする。

令嬢達の夢のお店が王都の街は建ち並んでいる。

私もウィングル国の街を歩いた時、商人を信用していない訳ではないけど自分の目で見て触れて購入できるのは良いと思った。色々な種類から自分のお気に入りを探す、また違う日に行けばまた違う物が置かれている。貿易が盛んなウィングル国ならではだと思った。

店が建ち並べば人が集まり、人の噂により店は繁盛する。繁盛すればまた違う商品を仕入れる。そうして活気が溢れる街になる。

平民には手が出ない店ばかりじゃない。平民の為の店もありこれなら不平不満は出ない。

良い街づくりは治安も良くする。そして街行く人達の笑顔が溢れている。

ルーファーの成果を見れて私も嬉しい。


婚姻式が終われば教会から王宮まで王都の街を馬車で通る。私はその姿を一目見に来た。ルーファーには王宮でお披露目をするから来てほしいと招待を受けた。港を開港できたのも私の寄付のお陰だからと。でもお断りしたの。平民が貴族達と同じ場に入る事はできない。私を知ってる人達もいる。だから私はひっそりと見守りたいの。

アランはもう手遅れだと思うけどと言うけどね。そうなの、ルーファーは何を考えているのかエリーナ港って私の名前を港の名前にしたの。名誉だと思うし嬉しいわよ?でも恥ずかしいわ。


歓声があがりルーファーを乗せた馬車が近づいて来た事を教える。皆手には花びらを持っている。馬車が通る時その花びらを手から放おる。街の花屋では今日は花びらを売っていた。

遠くから『おめでとう王太子』『ルーファー殿下、ジュリエッタ妃殿下』その声に私は涙が出そうになった。

弟を送り出す姉の気分、子を送り出す親の気分、様々な思いで胸がいっぱいになる。

パカパカと馬の蹄の音が近づきゆっくりと馬車は私の前を進む。沿道にいる人達は花びらを放おりおめでとうと声を掛ける。馬車からルーファー王太子とジュリエッタ王太子妃が笑顔で手を振る。花びらを放おった人達は手を振り返す。

ジュリエッタ妃殿下と顔を見合わせ笑顔でお互いを見つめる。


おめでとうルーファー、貴方の笑顔を見れて私は嬉しい。貴方の幸せを見届けられて本当に嬉しい。


私の目の前にもヒラヒラと花びらが舞う。

後悔とは違う。誰だって初恋の人と大人になったら婚姻してこういう婚姻式を挙げたいなって夢をみるわ。私の初恋はローレンス殿下だった。だから今目の前の光景を20年前憧れた時もあった。こうして沿道に集まる民に手を振り笑顔を返し、お互い見つめ合い笑顔になるの。幸せだねって嬉しいねって。

大勢の民に祝福されそしてこれからは自分も王族の一人として国を民を護る一人になるんだって改めて実感するの。

そんな夢を見た時もあった。

でも私と殿下では婚姻しても幸せの象徴にはならなかったわ。幸せそうに笑う事も嬉しそうに振る舞う事も出来なかったもの。作り物の幸せに作り物の笑顔、幸福ではなく地獄への入口に私は去る事を選んだ。

だから後悔はしていない。

愛しい人と出会い今の私は毎日が幸せ。笑顔には心が表れると私は思っている。心から幸せだと嬉しいと思っていれば本物の笑顔になる。今のルーファーやジュリエッタ姫のように。

そして二人の笑顔は二人を見ている人達も笑顔にさせる。

この国は二人がいればこれからも今以上に発展し豊かな国になる。そして二人の笑顔で心まで豊かな国になる。

凄いわルーファー、貴方の10年は誰よりも辛く険しい道だった。握り拳に力が入った時もあったでしょう。唇を噛んだ時もあったでしょう。心を失くしそうになった時もあったでしょう。それでも貴方は努力家で挫けずコツコツと積み上げてきたからこの国は発展し豊かな国になったの。

貴族を民を大切に思い耳を傾け手を差し伸べる。

努力家の貴方だからできる事よ。

貴方は生まれながらに王冠をつけていたの。なるべくしてなる定めだったの。

幼い貴方の夢物語を聞いていた頃が懐かしい。想像力豊かな貴方はいつも目をキラキラとさせていた。

夢を持つ事は大事な事よ。夢は夢と諦めればそこで終わり。でも夢を叶えようと努力すれば手にできる。そして想像力は先を想像し、そうなるようにどう動けばいいかどう動くか考える事ができる。どうすればいいか決まればあとは行動あるのみ。

ね?ルーファー、貴方が今までしてきた事よ?

見て?この街の活気を、街の人達の笑顔を、豊かな国を、発展した国を、

貴方の努力が報われた結果よ。

貴方には自然と手を貸したくなる。貴方の夢に誰もが夢を見る。でも貴方は夢で終わらせない。だから人は貴方に付いていくの。

凄いわルーファー。


馬車がゆっくりゆっくり遠ざかる。私はルーファーの背中を見つめる。

私の知っている子供のルーファーではなく大人になったルーファーの背中が見えなくなるまでいつまでも見つめ続けた。


「帰ろうか」

「そうね」


沿道にいた人達も今は少なくなった。馬車も動き出した。


「お兄ちゃんお花がいっぱい落ちてる」


私の横をフラフラと歩き道に落ちている花びらを集めている。手に沢山の花びらを集めたらその花びらを上に放おった。フワフワと花びらが舞、被っていたマントが顔を露わにさせた。


「え?」


また落ちた花びらを集めている。

パカパカと軽快な馬の蹄の音が聞こえ私は音のする方を見た。


「危ない!」

「ミリア!」


同時に発せられた言葉は彼女には聞こえない。

ヒヒーン

馬の声が聞こえ目の前の光景をただ目が映しているだけだった。

伸ばされた自分の手は間に合わず、身を挺して守った彼は血を流し倒れている。

私は我に返り彼のもとへ駆け寄り自分のマントを被せた。


「で……」


殿下とは言えない。彼は王都へ入ったら捕縛され打首になる。騎士達が来る前にここを去らないといけない。


「アラン!」


アランは分かってると走って行った。


「お兄ちゃん?どうしたの?」


今は彼女の事は構ってられない。


「す…ま……な…い………ミ、リ……」

「今は喋らないで下さい」

「エ、リー………か…?」

「黙って!」

「し、ぬ……前、に……お、前……に………あや……ま、ら…ない…と……いけ…な……………」

「私が貴方を死なせません!貴方は生きて!それからなら謝罪を受け入れます。だから諦めないで…生きて……」

「何があったんですか」


後ろから声が掛けられ私は振り返る。王宮の騎士服を着た男性。


「何もありません。知人が王太子殿下の婚姻を祝福してお酒を飲み過ぎてしまって寝てしまっただけです。今馬車が来るので私達の事は気にしないで下さい。直ぐに立ち去りますから」


馬車が近づき私達の横に横付けされた。

馬車から降りてきたアランは私の後ろにいる騎士に気付いた。


「すみませんね、おい飲み過ぎだぞ」


アランは私の横に膝を付き身を屈めた。アランと見つめ合いお互い頷く。

アランは馬車から水を持ってきた。


「少し酔いを覚ませよ、水は飲めるか?」


アランはまた馬車に向かい私や子供達の膝掛けを敷きその上に自分の外装を敷いた。

後は殿下を馬車に寝かせるだけ。早くこの場を去り医師に見せたいのに、と気は焦っても後ろの騎士がいる間は動かせない。


「エリーナ、様です、か?」


私は騎士を見た。


「ええ」

「私はルーファー殿下付きの騎士です。もしかしたら私の探し人かも知れません。確認させて下さい」

「はあぁぁ、今はゆっくり話している時間はないわ。ルーファーの騎士ならちょうど良いわね。この男性をあの馬車に乗せて」

「こちらは」

「ローレンス元王子よ。怪我をしているの。早く医師に見せないと死ぬわ」


騎士は殿下を横抱きに抱え馬車に寝かせた。アランは外装で殿下を包んだ。


「貴方名は?」

「ルカードです」

「ルカード良い?できるだけ頭が動かないように馬車の中で固定していてほしいの。貴方も早く馬車に乗りなさい。

アランゆっくりで良いからなるべく早く公爵家に来て。私は先に行って指示を出すわ」

「分かった」


私は殿下とぶつかった馬車の御者のもとへ行った。ガタガタと震え真っ青の顔をした若い男性。


「馬車にはお客を乗せてるの?」

「へ?い、いえ…」

「客待ち?それとももう決まったお客がいるの?」

「あ、あの……」

「どっち!」

「い、いま、せん…」

「なら今日一日貴方の馬車を私が貸し切るわ。だから貴方には私の指示で動いてもらうわよ、良い?」

「は、はい…」

「なら今から直ぐにハウバウル公爵邸へ向かって。なるべく急いで、でも安全によ」

「わ、分かりました」

「シャルル!フィン!」

「はいお母様」

「流石ね」


私は娘のシャルルと息子のフィンの頭を撫でた。

シャルルとフィンはミリア様と手を繋ぎ、ミリア様のマントを深く被せて顔を隠していた。『お姉ちゃん、もっと綺麗なお花が沢山咲いてる所に行きましょ?』『うん、ミリア行きたい』『後でお菓子も一緒に食べようね』『お菓子!うん食べる』そんな会話をしている。

私達4人は馬車に乗り込み先に公爵家へ向かった。

門の前、私は馬車の扉を開けて外に出た。


「お嬢様!」

「後でもう一台馬車が来るわ、そのまま門は開けておいて。家の馬車だから大丈夫よ」


馬車に乗り込み邸の玄関に馬車を横付けし私だけ先に降りた。


「ジョーンズ、今から怪我人を運ぶわ。急いで公爵家の医師を全員集めて。王宮にいる医師もよ。後、ローレンス殿下の主治医だった医師も連れて来てって伝えて。外に馬車が停まっているから誰か一人急いで公爵家の主治医を迎えに行かせて。ジョーンズは公爵家の馬車で王宮へ行って連れて来て」

「ですが本日は」

「ええ、だから内密に動いて、お願い」

「王宮の医師を動かすには陛下の許可が必要です」

「なら医師達にはこう伝えて『恩を返す時よ』陛下のお叱りは全て私が引き受けるわ、だから急いで」

「承知しました」

「後、お父様に伝えるのは全てが終わってからにして。今日はルーファーの婚姻式だもの」

「心得ております」


王宮に勤める医師の中にはお父様が投資し医師になった者達がいる。医師になるにはお金がかかる。そのお金を全てお父様が出した。他国に医術を学びに行き今も代わる代わる医術を学びに行っている。かかったお金を返す者もいるけどお父様は一切受け取らない。その代わり籍を公爵家に置いている。

殿下は公爵家の領民。お父様が今この場にいても同じ事をしたわ。

だから必ず殿下を死なせない。何が何でも。


お父様もお母様もエリオットも今日は婚姻式の後王宮へ行っている。お披露目が終われば王宮の一室で休憩しドレスを着替え祝賀会に出席する。手慣れたメイドは王宮へ付いて行っている。それでも私付きのメイドだったメルティは公爵家に残っている。それだけは幸運よ。


「メルティ」

「お嬢様お帰りなさいませ」

「メルティ今から一人メイドを庭園に行かせて。シャルルとフィンが外にいるわ。あとミリア様も。なるべく客間には近づけさせないで邪魔になるから」

「分かりました。何かあったのですね」

「ええ、殿下が怪我をしたわ。直ぐに運ばれてくる。だから客間を準備して。あと清潔な布が沢山必要だわ、水も」

「分かりました。ノイル坊ちゃまはレイアに任せてもよろしいですか」

「ええ、任せるわ」


私達が着いて数分後殿下を乗せた馬車が公爵家へ入って来た。

ルカードは殿下を横抱きにし客間のベッドに寝かせた。

公爵家の主治医が邸に到着し私達は別室で待機している。部屋の外ではバタバタと足音が聞こえ、部屋の外にまで漏れる医師の声。それから王宮からも医師が来た。その中には殿下を幼い頃から診ていた医師もいる。

ソファーに座る私の隣にアランも座りアランは私の手をずっと握っている。


「大丈夫だ」

「ええ」


ルカードは部屋の中を行ったり来たりしている。


コンコン

「ジョーンズです」

「入って」


部屋に入って来たジョーンズの険しい顔に私は背筋を伸ばした。


「どうなの?」

「今は医師にお任せするほかありません」

「そうね。シャルルとフィン、それからミリア様の方はお願いね」

「はい。それからお嬢様、支度の準備を」

「ええ、祝賀会が終わり次第陛下にお目通りさせていただかないといけないわね。その前にお父様と話せると良いんだけど」

「俺も付いていくよ」

「ありがとうアラン。でもアランは残って指示を出してほしいの。私がジョーンズを連れて行くと誰も指示が出せないわ。お父様達が帰ってくるまでアランにお願いしたいの」

「分かった、でもお叱りは俺も一緒に受けるから」

「ええ、ありがとう」

「それより彼女…」

「ええ、聞いていた通りね。殿下をお兄ちゃんと呼んでいたし、それにまるで幼子のようだったわ。シャルルとの会話もまるで子供同士の会話だった。それに状況がまるで分かっていなかったの。殿下よりもお花やお菓子の方に興味があったみたい」

「幼児退行か…」

「彼女は強かだと思っていたんだけど」

「演技してるって事?」

「そうは見えなかったわ。でも私の中のミリア様は強心臓の持ち主だったわ。確かに殿下と王都を出てからは地獄のような日々だっただろうし生死を彷徨い心を病んだのも分かるんだけど」


ミリア様が演技をしているようには思えない。もし演技をしているならそれはそれですごいけど、何年も幼子の演技を続けるなんてできるのかしら。

医師は言っていたわ。目を覚まさないかもしれないって。でも彼女は目を覚ました。目を覚ました彼女に医師は質問をした。どこまで覚えているか、自分が何をしたのか、そしたら彼女は『私はミリア、5歳です』と屈託のない笑顔を見せたらしい。

6歳のシャルルの方がお姉さんに見えたし、4歳のフィンと変わらない、ううんフィンの方がお兄さんに見えたわ。



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