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ガイがお父様に会いに来る約束の日。私は朝から落ちつかず…。
お父様は今日一日仕事を休んで邸で領地からの書類に目を通している。
約束の昼過ぎ、私は玄関の外でガイの到着を待つ。邸の門から騎士団の馬車が入って来た。
私の隣には執事のロナルドが立ってる。馬車は私の前に止まり、中からガイが出て来た。正装の騎士服を着たガイは私を見つけると笑顔で笑いかけてくれた。
ガイが降りた後、レオンお兄様?何で?
「レ、隊長さんまでお出で下さったのですね」
「アイリス嬢、本日は部下の為に予定を空けて頂き感謝する」
「いえ、こちらこそ感謝致します」
「ガイは身内が亡くなり独り身故、私がご両親の代わりにガイの後見人となった」
「そうでしたか。お父様がお待ちです」
「失礼する」
ロナルドの後を付いてお父様が待つ客間へ向かった。
コンコン
「旦那様、お客様がお見えになりました」
「入ってくれ」
ロナルドが扉を開け、私、レオンお兄様、ガイの順に入り、お父様はソファーから立ち上がった。
「本日はお時間を頂き感謝致します。私がガイと申します」
「嫌、こちらこそ急に申し訳なかった。アイリスの父だ」
「伯爵、お久しぶりです。本日は部下の為にお時間を頂き感謝します。私はガイの後見人として本日は伺わせて頂きました」
「久しぶりですね。確か今は隊長でしたか、立派なご身分になられて」
「お父様!」
「アイリス嬢、いいんだ」
「ですが」
「いいんだ」
「はい」
「さあ立ち話は何だ、腰掛けて下さい」
お父様がソファーに座り、レオンお兄様はお父様の向かいに腰掛けた。私とガイは隣に並んで立っている。ガイはそっと私の手を握り微笑んだ。
「お父上、私とアイリスは番です」
「アイリスから聞いてるよ」
「それなら、」
「嫁に欲しいと言うのだろう?」
「はい」
「番なら私達が例え嫌だと言ってもどうにもならない、そうではないか?」
「それは…」
「私達家族は獣人を嫌悪している。喜んで娘を差し出す親がいると思うか?」
「それは…」
「君は狼獣人だね」
「はい」
「牙と鋭い爪を持ってる」
「はい」
「その牙と爪を娘に向けないと何故思える? 娘は人族だ、番に囚われない人族だ。もし娘が他の男性に目がいったら?もし娘が他の男性を愛したら?君は獣の本能で娘を傷つけないと何故思える? 番を愛してるからか? 番に囚われる君達獣が番の心変わりを素直に認めるのか?番を殺してまでも自分のものにするのではないのか?」
「お父上の思いは分かります。確かに私達獣人は獣の本能を持っています。だから番に囚われ番を側におきたい。自分の中で愛し護り自分の匂いで包み込む。人族は番に囚われないそれも分かっています。
もしアイリスが私の牙と爪が怖いと言うのなら私は牙を抜き爪を剥ぎましょう。もし他の男性を愛したなら私は喜んで狂いましょう。番を求め番を憎みそれでも番を愛しながら狂い死にましょう。
私はアイリスが番だから、愛する番だからだけでなく人族のアイリスも愛しています。私達は憎むべき相手同士です。それでも私達はお互いの手を取ると決めました。
私はアイリスを幸せにしたい、そしてアイリスにも幸せになって欲しい。ですが、アイリスの幸せにはご両親始め家族の祝福が無ければアイリスは幸せにはならない」
「なら私達家族が祝福しないと言ったらどうする?勝手に娘を連れて行けと言ったらどうする」
「祝福して頂けるまで何度もお願いに上がります」
「君とは会わないと言ったら?」
「邸の前で何日でも待ちます」
「………君がアイリスを愛しているのは分かった。だが君の服装を見れば騎士のようだが、君が仕事に行ってる間にアイリスが襲われたらどうする?傷つけられたらどうするつもりだ。君の番だから傷つけられないと襲われないとでも言うつもりか? 獣には発情期がある。発情期の獣に襲われない保証はないだろ」
「番を襲う獣人はいませんが絶対とは言い切れません。酩酊状態の獣に判断能力はありませんから。 どれだけ私の匂いを纏っていても雌と言うだけで襲う獣もいます」
「その時君は娘を見殺しにするのか」
「私も騎士の端くれです。必ず護ると言い切れますがそれは側に居る時だけです。それなら獣の発情期の間は仕事を休んで側に居ます」
「君は騎士だろ」
「それなら騎士を辞めます。アイリスの側から離れない仕事をすれば良いだけです」
「そんな現実味のない事を言うな」
「自宅で護身術や剣を教えればいい」
「伯爵少しよろしいか」
「何だ」
「共存街は安全な所です。何故なら共存街は番がいる者しかいないからです。番がいる者は番以外に興味も無ければ、番以外に触れる事すら嫌がります。発情期中は番休暇が取れ番と家に籠もります。番以外を襲う獣人は誰一人いません。
それに発情期中は特に獣人街から獣人が出る事は出来ません。番がいる獣人に限っては違いますが、それでも恋人の許可なしに出る事は出来ません。
もし酩酊状態の獣人がいたとしても出入口は騎士団の詰所の横だけです。詰所に着く前に騎士によって捕えます。詰所迄の間に騎士の住居があり匂いに敏感な獣人がいち早く駆けつけ捕えるからです」
お父様は今日一日仕事を休んで邸で領地からの書類に目を通している。
約束の昼過ぎ、私は玄関の外でガイの到着を待つ。邸の門から騎士団の馬車が入って来た。
私の隣には執事のロナルドが立ってる。馬車は私の前に止まり、中からガイが出て来た。正装の騎士服を着たガイは私を見つけると笑顔で笑いかけてくれた。
ガイが降りた後、レオンお兄様?何で?
「レ、隊長さんまでお出で下さったのですね」
「アイリス嬢、本日は部下の為に予定を空けて頂き感謝する」
「いえ、こちらこそ感謝致します」
「ガイは身内が亡くなり独り身故、私がご両親の代わりにガイの後見人となった」
「そうでしたか。お父様がお待ちです」
「失礼する」
ロナルドの後を付いてお父様が待つ客間へ向かった。
コンコン
「旦那様、お客様がお見えになりました」
「入ってくれ」
ロナルドが扉を開け、私、レオンお兄様、ガイの順に入り、お父様はソファーから立ち上がった。
「本日はお時間を頂き感謝致します。私がガイと申します」
「嫌、こちらこそ急に申し訳なかった。アイリスの父だ」
「伯爵、お久しぶりです。本日は部下の為にお時間を頂き感謝します。私はガイの後見人として本日は伺わせて頂きました」
「久しぶりですね。確か今は隊長でしたか、立派なご身分になられて」
「お父様!」
「アイリス嬢、いいんだ」
「ですが」
「いいんだ」
「はい」
「さあ立ち話は何だ、腰掛けて下さい」
お父様がソファーに座り、レオンお兄様はお父様の向かいに腰掛けた。私とガイは隣に並んで立っている。ガイはそっと私の手を握り微笑んだ。
「お父上、私とアイリスは番です」
「アイリスから聞いてるよ」
「それなら、」
「嫁に欲しいと言うのだろう?」
「はい」
「番なら私達が例え嫌だと言ってもどうにもならない、そうではないか?」
「それは…」
「私達家族は獣人を嫌悪している。喜んで娘を差し出す親がいると思うか?」
「それは…」
「君は狼獣人だね」
「はい」
「牙と鋭い爪を持ってる」
「はい」
「その牙と爪を娘に向けないと何故思える? 娘は人族だ、番に囚われない人族だ。もし娘が他の男性に目がいったら?もし娘が他の男性を愛したら?君は獣の本能で娘を傷つけないと何故思える? 番を愛してるからか? 番に囚われる君達獣が番の心変わりを素直に認めるのか?番を殺してまでも自分のものにするのではないのか?」
「お父上の思いは分かります。確かに私達獣人は獣の本能を持っています。だから番に囚われ番を側におきたい。自分の中で愛し護り自分の匂いで包み込む。人族は番に囚われないそれも分かっています。
もしアイリスが私の牙と爪が怖いと言うのなら私は牙を抜き爪を剥ぎましょう。もし他の男性を愛したなら私は喜んで狂いましょう。番を求め番を憎みそれでも番を愛しながら狂い死にましょう。
私はアイリスが番だから、愛する番だからだけでなく人族のアイリスも愛しています。私達は憎むべき相手同士です。それでも私達はお互いの手を取ると決めました。
私はアイリスを幸せにしたい、そしてアイリスにも幸せになって欲しい。ですが、アイリスの幸せにはご両親始め家族の祝福が無ければアイリスは幸せにはならない」
「なら私達家族が祝福しないと言ったらどうする?勝手に娘を連れて行けと言ったらどうする」
「祝福して頂けるまで何度もお願いに上がります」
「君とは会わないと言ったら?」
「邸の前で何日でも待ちます」
「………君がアイリスを愛しているのは分かった。だが君の服装を見れば騎士のようだが、君が仕事に行ってる間にアイリスが襲われたらどうする?傷つけられたらどうするつもりだ。君の番だから傷つけられないと襲われないとでも言うつもりか? 獣には発情期がある。発情期の獣に襲われない保証はないだろ」
「番を襲う獣人はいませんが絶対とは言い切れません。酩酊状態の獣に判断能力はありませんから。 どれだけ私の匂いを纏っていても雌と言うだけで襲う獣もいます」
「その時君は娘を見殺しにするのか」
「私も騎士の端くれです。必ず護ると言い切れますがそれは側に居る時だけです。それなら獣の発情期の間は仕事を休んで側に居ます」
「君は騎士だろ」
「それなら騎士を辞めます。アイリスの側から離れない仕事をすれば良いだけです」
「そんな現実味のない事を言うな」
「自宅で護身術や剣を教えればいい」
「伯爵少しよろしいか」
「何だ」
「共存街は安全な所です。何故なら共存街は番がいる者しかいないからです。番がいる者は番以外に興味も無ければ、番以外に触れる事すら嫌がります。発情期中は番休暇が取れ番と家に籠もります。番以外を襲う獣人は誰一人いません。
それに発情期中は特に獣人街から獣人が出る事は出来ません。番がいる獣人に限っては違いますが、それでも恋人の許可なしに出る事は出来ません。
もし酩酊状態の獣人がいたとしても出入口は騎士団の詰所の横だけです。詰所に着く前に騎士によって捕えます。詰所迄の間に騎士の住居があり匂いに敏感な獣人がいち早く駆けつけ捕えるからです」
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