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18 国の為に…

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フランキーは私の手に手を重ねた。そして頬から離し私の両手を包むように握った。


「一緒にか?」

「そう一緒に。フランキーが足りない所は私が助け、私が足りない所はフランキーが助けるの。

言いたい事だって、文句だって、嫌な事だって何でも話すの」

「何でも、か…」

「そう何でもよ」

「何でも話して解決できるのか?できないものはできないだろ」

「そうね、できないものはあるわ。でも二人の知恵があれば解決できるかもしれないでしょ。

それに自分だけで溜め込めばいずれ壊れてしまうわ。心は繊細なの。話を聞いてくれる人がいる、それだけで一人じゃないと思える。私はフランキーの心を守りたい。

フランキーが私の心の支えの一人のように、私もフランキーの心の支えの一人になりたいの」


前の時と同じ間違いはしたくない。

フランキーを孤独にはしない。

いつかフランキーを支える人が現れるまで、それまで私がフランキーを支える。


フランキーは私の手を繋いで歩き出した。


「なぁグレース、国の為ってなんだろうな」


フランキーだって国の為に、その意味は理解している。それが大事な事も、個人の意見だけで何も変えられない事も。

王女との婚約、それにフランキーの意思は関係ない。

国の犠牲、そう思えても仕方がない。

お兄様が反対しなければ私が第一王子の婚約者になっていた。私が誰を好きだったとしても、もし婚約者がいたとしても、私は第一王子の婚約者になった。

国と国を繋ぐ為に

拒否すれば争いの火種になり、受け入れれば強固なものになる。

頭では分かっていても心は別。私も犠牲になった、そう思ったと思う。

民が汗水垂らし働いた証を私達は受け取り、民を守る為に他国から国を守るのが王族。

争いは人の命を奪う凶器

だから争いをしなくていいように交渉する。交渉の一部に王族同士の婚約がある。

でも心の感情はまた別だもの。王族でも心がある。フランキーは人形ではなく人間なんだから。

でも自分の意思を殺す、それも王族なの。

それが国の為に、に繋がる。


「難しいわね。犠牲という言葉は使いたくないけど犠牲という言葉がしっくりくるわよね…」

「あぁ…そうだな…」

「でも犠牲になるのは別にフランキーじゃなくてもいいんじゃない?」

「誰がなるんだよ」

「それこそ私が他国の王子と婚約するとか」

「は!?本気で言ってるのか?」

「何よ、怒らなくてもいいじゃない」

「お前を犠牲にするくらいなら俺が犠牲になる。お前は絶対に言うなよ、いいな!自分が代わりに王子と婚約するとか二度と言うな」


フランキーは本気で怒っている。


「フランキー、ごめんね…」

「グレース、お前が犠牲になる必要はない。それはこれからもだ。お前は好きな人に愛されて幸せになればいい。

それが俺達の願いだ」

「分かってる」


私はフランキーと繋ぐ手をギュッと握った。

お兄様だけじゃない、フランキーにだってフレディにだって私は護られている。


「で?何を助けてほしいんだ?」

「え?」

「さっき言ってただろ」


あれはそういう意味じゃなかったんだけど、ついでよね。


「そうそう、ダンスの練習に付き合ってほしいの。お兄様に頼んでも『上手だ』しか言わないもの。足を踏んでも『グレースはそのままでいい』って練習にもならないわ」

「ロニー兄上らしいな」

「だからお願いフランキー」


フランキーは突然繋いでいた手を引っ張って私の腰を引き寄せた。

近くにあるフランキーの顔。


「なに驚いてるんだよ。練習するんだろ?」

「何か言ってからにしてよ」

「練習するぞ」

「それを先に言ってよね」


近い顔、少し高い視線の高さ、見つめ合った。


「足を踏んでもいいから下は向くな。俺を見てろ」


俺を見てろって言われても…

耳元近くで聞こえるフランキーの声

リードして踊るフランキー

私は何度もフランキーの足を踏んだ。下を向こうとすると『グレース』と私を呼びまた目が合う。

今自分がどう踊っているのか全く分からない。

練習に、なってるの?

だって私の腰を持つフランキーの手の感触や耳元にかかるフランキーの息、ぶつかり接した体から伝わるフランキーの体温、

そっちが気になって…


「グレース集中しろよ」

「したくてもできないの!」

「何を怒っているんだよ」

「もう分からないわよ!」


緊張?もう訳が分からないわ。


「どうだ?練習できたか?」

「練習?」

「おいお前な…」

「できたと、思うわ。うん、できたわ、ありがとうフランキー」


なんか、とっても疲れたわ。先生と踊る時はこんなに疲れないもの。ダンスって疲れるのね…。


「グレース様」


ロイスの声に振り返った。


「ロイスどうしたの?」

「皆さんがフランシス殿下をお探しです。お戻り下さい」


私はフランキーの顔を見た。険しい顔をしているフランキー。


「フランキー、戻りましょ」

「あぁ…」


私はフランキーの手を握った。『私が側にいるわ、大丈夫よ』その思いが伝わるように。

フランキーは私の手をギュッと握り私の手を離した。

一人で戻るフランキーの背中を私はただただ見えなくなるまで見つめた。



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