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135:バレた⁉
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温かい何かに包まれているような、バスタブの中を揺蕩っているような、心地の良い世界が不意に打ち消されました。
重たい目蓋を押し上げると、小鼻を限界まで広げて目をギラギラに輝かせたテオ様が、私を覗き込んでいました。
何故にそんなにギラついて、と思った瞬間、妙に硬質な物が自分の口に当たっている事に気が付きました。
――――ガントレット。
テオ様、ガントレット、テオ様、興奮。
――――ひっ。
「ぎゃぁぁぁ!」
この顔はあれです、嗅いでいた事がバレたやつです。
あまりの羞恥心に、叫びながらガントレットを力いっぱい遠くに投げてしまいました。
取り敢えず布団に潜りました。
何もなかったことにしましょう!
あぁぁ、鮮明に思い出しました。
ヤヴァイです! 思い出してしまいました!
テオ様の匂いを嗅いで、安心して、うっつらうっつらしてーの、爆睡です。
完全にやっちまった感が拭えません。
人が布団の中で精神統一をしているというのに、テオ様ときたら、出てこいとか、何してたのかとか、かなりウザめに聞いてきます。
布団から顔を半分出して、引かないかと確認すると、ヘッドバンキングするような勢いで頷きつつ、床に膝を付かれました。
ズーハーズーハー、ムフーフムーと、荒い鼻息が顔に掛かりますが、いつもの如く無視です。
「テオ様がお部屋にガントレットを忘れられていたので――――」
少し遊びつつ、こちらの部屋に持ってきました。
何となく、匂いを嗅いでみたら、とても安心してしまったのです。
テオ様に包まれているような、そんな気持ちになって来て――――。
「ふ、ふう、うんっ、でっ⁉」
「えらく前傾姿勢ですが……」
「気にするなっ!」
「はぁ…………。えっと、それで、そのままベッドに入り――――」
「っ、クッ!」
テオ様が何故かとても苦しそうです。
布団をギュッと握りしめ、俯いて震えています。
一瞬、笑いを堪えているのかと思いましたか、深呼吸をしつつ、脂汗を垂らされているので、どうやら本当に苦しいようです。
「テオ様っ? 体調が悪いのですか⁉ どこか痛いのですか⁉」
「いやっ! 話の……話の続きを頼む。教えて……お願い」
「え……は、はい。続きと言っても、そのまま寝てしまった、で終わりなのですが……」
シーンとしています。
水を打ったように、ブラックホールの中にいるように? いえ、どんな状況か知りませんけど。
とにかく、途轍もなく静かです。
「………………それ、だけ?」
「え?」
絞り出すような震える声で聞かれました。
テオ様のお顔が、きょとーん、となっています。
眉が下がりに下がって、お口が三角形にポヘーっと開いています。
「匂いを嗅いで、寝た、だけ?」
「はい」
「……自慰は?」
「は?」
――――じい?
「手淫、してたんじゃないの⁉」
――――しゅいん。
「私の匂いで昂って、クチクチ、つぷつぷ、触ってたんじゃないのか⁉」
――――をい。
テオ様がザッと立ち上がって、ガントレットを掴み、ガチャガチャと揺らして、声を荒らげていらっしゃます。
「これ! 私の手に見立てて、蜜壺に突っ込んでみたりとか!」
「するかぁぁぁぁ!」
「フゴッ…………ウグッ」
取り敢えず、ベッドの上に立ち、軽く腰を落として、右手で拳を作り、少し後ろに引いて、勢い良く前方へと繰り出しました。テオ様の顔面目掛けて。
この男、脳内でいったいどんな妄想を繰り広げていたのよ!
――――最低!
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