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136:報告
しおりを挟む何故か鼻を押さえて床で蹲っているテオ様を無視して、ベッドに入りました。
うつらうつらとしていると、お風呂から上がったのであろうテオ様が、ベッドに入り後ろから抱き付いてきました。
「ミラベル、起きてる?」
「んー……はぃ」
寝ぼけ眼をくしくしと擦っていましたら、頭をよしよしと撫でられました。
「明日の朝食後に時間をもらったから、二人で報告しよう」
「はい、ありがとうございます」
くるりと後ろを向いて、テオ様にお礼を伝えると、ちゅ、と軽いキスを落とされました。
何度かバードキスを繰り返したあと、鼻先同士をツンとくっ付け、「楽しみだな」と囁かれました。とても嬉しそうな、ワクワクとしているようなお顔で。
はい、とお返事してテオ様の胸に顔を埋めると、お風呂上がりの、石鹸の匂いがしました。
テオ様のこの匂いも好きです。
テオ様に抱きしめてもらうと、胃の辺りのムカムカしたものがスッと軽くなるような気がしました。
朝食を終わらせた後、陛下たちとお約束をしていた小サロンに向かいました。
国王陛下と王妃殿下に確定にはまだ早いが、たぶん妊娠している事をお伝えしました。
何故か、陛下とテオ様が妙に余所余所しいのですが、触れないで欲しそうなので気にしないことにしました。
「先ずは、おめでと、ミラベルちゃん」
「はい、ありがとう存じます」
「セオドリックが我慢しなかったのでしょう?」
いや、それは、まぁ。『はい』とは言い辛いですが。
それに私も、求めてはいましたから。
「取り敢えず、結婚式は年始の行事の後に前倒しね」
「えっ……」
「そうなるわよ、お腹大きくなってからじゃ、ドレスも碌なもの着れないし、対外的にも、ちょっとね」
そうでした。
貴族、王族の場合、結婚後に妊娠が望ましいのでした。
つい最近まで、その考えだったはずなのに、絆されまくりで、すっかり忘れてしまっていました。
「大変申し訳ございません」
「いいのよぉ。体調は大丈夫? きつかったら直ぐに休むのよ?」
「はい」
「ミラベル嬢、新たな孫をありがとう。これからもっと大変になるだろう、困ったら何でもいいなさい」
王妃殿下には体調を心配してもらい、陛下には気を遣っていただき、とても温かい気持ちになりましたが、陛下がテオ様の方を向かれた瞬間、場の空気がガラリと変わり、とても重たく苦しいものになりました。
「セオドリック、お前にはこのあと少し話がある。ミラベル嬢を部屋に送ったら戻って来い」
「……はい」
陛下が声のトーンを落とし、かなり厳しいお顔をされながらそう言われました。
もし私たち二人に関係のあるお話であれば、私も聞きたいと思ったのですが、王妃殿下が柔らかく微笑まれて大丈夫よと仰られたので、頷くしか出来ませんでした。
部屋に戻り、テオ様に大丈夫かと聞きましたら、何てことないように、大丈夫だと微笑まれて部屋を出て行かれました。
「本当に大丈夫かしら?」
「お嬢様、顔色があまり良くありません。お部屋に入って座られて下さい」
廊下でテオ様を見送っていましたら、ザラに戻るよう言われて渋々と部屋の中に入りました。
「ミラベル様、来週に予定されていた『パジャマパーティー』ですが、どうされますか?」
「あっ、そうだったわね――――」
リジーに言われて、すっかり忘れていた打ち上げパーティーを思い出しました。
ザラやリジーとパーティーの話しをしながら、テオ様の帰りを待つことにしました。
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