世界がダンジョン化していく件について ~俺のユニークジョブ『回避術師』は不敗過ぎる~

十本スイ

文字の大きさ
27 / 62

第四十一話 使い魔をゲットした件について

しおりを挟む
 あれれぇ~、おっかしいぞ~。
 この使い魔、レベル1なのにご主人様より強いんだけど……?
 何この綺麗に上下に整ったステータスは?

「ど、どうしたの六門? そんな引き攣った顔して」
「い、いえ……どうやらさすがは《コアの遺産》って感じっすね。かなり高いステータス持ちです」

 しかもこのスキルの数よ……。初っ端から四個って!

 それに《擬態》や《吸収》も応用性に溢れ、かなり使い勝手の良いスキルだということも理解できた。

 それに物理攻撃が効かないって時点で、きっと俺はコイツには勝てないんだろうなぁ。
 30レベルなのに……。
 だってナイフで切っても死なないんだから。反則過ぎねぇ?
 あと称号の『一番目のスライム』って何さ?

「ふ~ん、良かったじゃん六門」
「何がっすか? 今俺は自分の不甲斐なさを噛みしめると同時に、羨ましさと嫉妬で狂いそうなんですけど」
「けど使い魔ってことはあなたの武器……ってことよね?」
「……!」
「あなたは確かに攻撃力が低いけど、その子が十分に補ってくれるんじゃない?」
「ようこそ俺のしもべよ! 歓迎するぞ、ヒーロ!」

 俺はギュッとヒーロを抱きしめてやると、ヒーロもまた嬉しそうに蠢いている。

「現金ねぇ。まあ気持ちは分かるけど」
「使い魔かぁ。そうだよな! これからはヒーロがいれば攻略だって断然やりやすくなるじゃん! やったぜ俺!」

 どうやら剣や盾にも擬態できるらしいし、コイツがいれば手ぶらで攻略だってできそうだ。いいぞヒーロ、偉いぞヒーロ、可愛いぞヒーロ!

「そういえば六門」
「ん? 何すか?」
「改めて言っておくわ。今回のダンジョン攻略、手を貸してくれて感謝するわ。ありがとうね」
「いえいえ、結果的に見れば俺も最高の宝をゲットできたみたいなので」

 俺は差し出された手を握り返す。

「あ、あの! わたしからもお礼を言わせて有野くん!」
「え? シオカも?」
「うん! 今回、お姉ちゃんが無茶なことばかり言ったと思う。でも有野くんはそれに応えてくれた。本当にありがとうございました!」

 丁寧に頭を下げてくるシオカ。本当にこの子は人格者なんだなぁ。

「ダメダメな姉だけど、また手助けしてくれたら嬉しいです! もちろん有野くんが何か手伝ってほしい時は言ってね? わたしも全力でお手伝いするから!」

 いやぁ、マジで出来た子だ。一家に一人欲しいくらい。

「ぶぅ~、妹がお姉ちゃんに厳しい件について」
「黙っててお姉ちゃん! 言っとくけど、今回のことだってお父さんカンカンだしね! 帰ったら説教されるくらいは覚悟しておくように!」
「マジで? ……ねえ六門、ワタシと一緒に逃避行しない?」
「しません。素直に叱られてください」
「冷たっ!? それがおっぱいの感触を知ってる女にする態度?」
「お、おっぱ……有野くん?」
「ちっ、違うからな! 勘違い……ってわけでもないけど。で、でもそれはこの痴女が押し付けてきたからで!」
「誰が痴女かっ!」
「あんただあんた! 俺を陥れようったってそうはいかねえぞ! 飛びつけっ、ヒーロ!」
「きゃぁーっ!? こないでぇぇぇっ!」

 飛びついたヒーロから慌てて逃げ出し、玄関から外へと出て行くヒオナさん。
 マジで苦手みたいだ。あの人の弱みを握れたようで俺としては満足だ。

「もう、お姉ちゃんったら」
「シオカも苦労してるみてえだな。……頑張れ」
「はは……」

 こうして俺は初の迷宮化した大規模ダンジョンを攻略できたのであった。







 ヒーロを使い魔にしたその日の夜のことである。
 四奈川から『ワールド』が何件も来ていた。
 どうやらダンジョン攻略が初めて失敗した件に関してのもので、どこが悪かったかアドバイスが欲しいとのこと。

 顛末は知っているが、一応彼女からどんな攻略だったのか聞いて、差し障りのない忠告をしておいた。
 単純にいえばレベルを上げろ的なやつである。
 あのドラゴンを倒すには、スキルだけではどうしようもない。根本的な地力を上げる必要があるのは確実だ。

 恐らくレベルで示すと、あのドラゴンは40くらいあったのではなかろうか。もしかしたらもっと?
 RPGでいえば中盤で出てくるようなモンスターだ。まだまだ序盤の冒険をしている四奈川たちでは攻略は難しいだろう。
 俺のような特殊なスキルがあれば別だが、普通に考えれば学校のダンジョンは、彼女たちには早かったというだけ。
 俺もドラゴンが出ることを知ってれば、多分ヒオナさんに攻略を見送るように言っていたはずだから。

「……げ、マジかよ」

 一ノ鍵のガキが『仮面の人物』について気にしていたという報告があった。
 やっぱそうだよなぁ。あれで気にしない方がどうかしてる。
 何せあの場に彼女たち以外にいたのは俺とエロ猫だ。そしてエロ猫は姿を見せていない。
 四奈川たちが逃げ出してすぐにダンジョンが攻略されたということは、明らかに俺がやったことは明白だ。
 有能な手駒が欲しいあのガキが俺を気にしないわけがない。

「四奈川には、絶対に俺の許可なく知り合いを連れてこないように言ってはいるけど。もう一度念を押しておくか」

 あのガキなんか連れてきた日にゃ、速攻で逃げ出す必要があるしな。
 俺はスマホをリビングのテーブルの上に置いてソファに寝そべる。
 するとヒーロが俺の腹の上に乗ってきた。

「おぉ、ヒーロ。どうやら腹一杯になったようだな」

 コイツ、雑食というよりマジで何でも食べる。ゴミでも喜んで食べるので、俺としては助かっていた。
 俺はヒーロの頭? を撫でつつステータスを開いた。


 有野 六門   レベル:30   EXP:11%   スキルポイント:78

 体力:151/151   気力:120/120
 攻撃:E++  防御:D++
 特攻:C++  特防:D++
 敏捷:B+   運 :D

ジョブ:回避術師(ユニーク):Ⅳ  コアポイント:33%
スキル:ステルスⅣ・スキルポイント上昇率UP・自動回避Ⅱ

称号:ユニークジョブを有する者・コア破壊者・スニークキラー・盗聴のスペシャリスト・使い魔を持つ者・迷宮攻略者


 一番嬉しいのは何といってもスキルポイントだ。もうすぐで100になるから。そうすれば《テレポート》を……。

「あ、そういや《テレポート》ってジョブランクが〝Ⅴ〟じゃなかったら取得できなかったっけか?」

 それを思い出し頭を抱える。
 次のランクが上がるまでに、幾つのコアを破壊すればいいのだろうか。幸い今回のことでワンランクアップしているのはナイスだ。

「けど《ステルス》と《自動回避》をランクアップしておくのも魅力的なんだよなぁ。それに違うスキルだって……」

 だがそうすれば《テレポート》が遠のく。……マジで悩む。

「……ま、今日はもう考えるのは止めよ」

 ハッキリいってかなり疲れた。いろいろなことがあったしな。
 それに今後の攻略には、頼もしい味方もいる。

「ヒーロ、これからよろしくなー」
「~~~~!」
「おっふおっふ、ちょ……そこで跳ねないで」

 軽いボディブローを受けている感じだから。
 でもコイツもやる気が十分そうなので良かった。

「ま、全部終わって言えることはあれだな」

 す~っと大きく息を吸って、

「――生きてて良かったぁ」

 俺にとって、何よりもそれが一番の褒美であった。
 今後も今回のような恐ろしいダンジョンに挑む時はあるだろう。
 そうでなくても、ヒオナさの言うような終末がいつ訪れるかも分からない。
 何が起きても行き抜いていけるように、どんどんレベルを上げ、スキルを増やし、生存率を上げていこう。

 そして極めていこう。そうすれば必ず誰にも負けることのない力を得られるだろう。
 仮に俺の物語を、ライトノベル風につけるとしたらこうだ。

「『俺のユニークジョブ『回避術師』は不敗過ぎる』……ってか」

 そこに辿り着くためにも、こんな世界に負けないためにも――。
 俺は逃げ延びてやる。必ずな。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...