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第58話 一瞬でバレちゃった件につい
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皆様、現在とっても超絶大変ベリベリー危険な状況であります!
何故かって? それはですね……。
「あぁ? コイツがお嬢が連れてきた余所者ぉ?」
「冴えねえ面ぁしてやがんな」
「『白世界』のスパイってことも考えられるけど?」
今、敵意満々の人たちが俺を囲っているからだってばよぉぉぉっ!
しかも! しかもだ!
さっきから誰よりも怖い睨みを利かせている奴が目の前にいるんだよぉっ!
さらに! さらにだっ!
そいつってば、俺が知ってる奴で関わり合いになりたくなかった人物なんだよぉ!
そう、目の前にいる人物こそ、群馬の二大『コミュニティ』の一つ――『紅天下』を率いるリーダーのヤナギって奴だった。
ちなみに【榛名山】で見た三人の男女も俺を睨んでいる。
「もう! イチ兄ちゃんら、そんな凄まんであげてよ! この人はウチのお客さんなんよっ!」
ただ一人、俺の味方をしてくれるのが、ここに俺を連れてきた莱夢だ。
でも莱夢さん、君のせいでこうなってるとも言えるんだけどね……はは。
「ごめんなろっくん、イチ兄ちゃんらが迷惑かけて」
「い、いえいえ、そんなことありませんことですよ?」
本音をいえば今すぐ帰りたいけども。
「おいてめえ、ウチの妹に取り入って何するつもりだ、あぁ?」
まるでヤクザみたいに恐怖感を煽ってくる。
コイツ、『飛柱組』関連じゃねえだろうな。てかまだ飛柱兵卦の方が接しやすさすら感じるぞ。
「と、取り入るなんて!? 俺はただ探し人を訪ねてやってきたしがない一般人なんですけど!」
「……一般人? 嘘吐いてねえよなぁ?」
ギロリと見定めるかのように睨みつけてくる。
こう衆目の最中にあってはスキルを使っても無意味だ。
それに現在俺がいるのは、営業はやっていないがホストクラブらしく、角の席に座らされ逃げ場所を『紅天下』の連中で塞がれているので、とてもではないが逃げることは難しい。
今俺の服の中にはバレないように平べったくなって隠れているヒーロがいるが、もしこの子がバレたらと思うと心臓がバックバクである。
「おいてめえ、俺と腕相撲しやがれ」
「……は、はい? 腕相撲……っすか?」
いきなり何言いやがってんだコイツ?
しかし本気なのか、テーブルを挟んで俺と相対するヤナギが右肘をテーブルについて手を差し出してくる。
え? マジですんの?
「ちょ、イチ兄ちゃん!」
「うっせぇ、お前は黙ってろ莱夢!」
キツク言われ莱夢が押し黙ってしまう。いやいや、そこはもっと頑張ってよ!
このまま何もしなければ、益々機嫌を損ねてしまいそうなので、俺は仕方なく腕相撲に応じることにした。
ギュッと互いの拳が握り合う。
まだ向こうは何の力も入れていないというのに、組んだだけで勝てないことが分かる。
まるでそう、横綱とでも対峙しているかのような圧倒的な存在感が伝わってくるのだ。
どちらかというと相手は細身だ。しかしそれは見た目だけで、よく観察すると全身がよく鍛え上げられていることが分かる。
きっと『持ち得る者』だからって驕らず、日々鍛錬を怠っていないストイックな男なのだろう。
ヤナギは真剣な表情で俺の目を見つけてくる。その瞳をジッと見つめていると、何か見透かされている気がして、思わず目を逸らした。
まったくもって……勝てる気がしねえや。
一体何故急にヤナギがこんなことを言い出したのか気になるが、俺の思考とは関係なく状況は進む。
ヤナギの仲間の一人が、「レディ……」と言葉を漏らすと、全員が楽しそうに息を飲む。
「……ゴーッ!」
開始の合図と同時に、俺は目一杯の力を込めて相手の拳を倒そうとする。
どうせ負けるのは分かっているが、こういう手合いには手加減しようものなら、そっちの方がヤバイことになりそうだと思うから。
そして案の定、俺が全力で押し倒そうとしているにもかかわらず、ヤナギの腕はピクリとも動かない。
「んぎぎぎぎぎぎぃぃぃっ!」
まるで巨岩でも押しているかのようにウンともスンとも言わない。
え、何この人、ゴリラなの!?
少しは震えるくらいあってもいいのに、マジで微動だにしないし。
「…………てめえ、もう一度聞くがよぉ」
何だよ腕相撲の最中に?
「マジで一般人なのか?」
どういうことでしょう? 何故かものすっごく疑わしい目で見られてるんですが?
「にしては鍛えてもいねえのに、かなりの力がありやがる。おかしくねえか?」
…………っ!? しまったぁぁぁっ! そういや俺ってば『持ち得る者』だった!?
ステータスを持っていることで、俺は大して鍛え上げなくともレベルさえ上げれば自然と力が増すのだ。
故に筋肉量とか関係なく、通常では考えられないほどの膂力が備わっているのである。
きっとヤナギは俺の身体つきから判断したんだろう。あ、コイツ鍛えてねえもやしっ子だなと。
それなのに実際勝負してみたら、想像以上の力を発揮してみせた。ヤナギにはビクともしていないが、彼にとって今の俺の力は普通では有り得ないパワーだと感じているのである。
俺はすぐさまこの腕相撲は、ヤナギの試しだったことに気づき、ここからどうすればいいか激しく思考を回転させた。
そして俺の優秀な逃げの頭脳が出した答えは――。
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁっ!」
日本一、いや、世界一美しいと思われるような綺麗な土下座をすることだった。
当然俺の奇行に対し、ほぼ全員がキョトンとしているが、矢継ぎ早に俺は続けることにする。
「じ、実は俺は『持ち得る者』なんですっ! 嘘を吐いてすみませんでした! でも言い訳をさせてもらえるなら聞いてほしいですお願いしますっ!」
……さあどうだ? もしこれで完全な怒りを狩って、俺を始末するってことになるのなら、その時はヒーロに暴れてもらって、その隙に逃げるしかなくなるが……。
………………沈黙が痛い。
土下座をしている俺に、すべての視線が刺さっているのを感じる。
するとヤナギが近づいてきて、俺の胸倉を掴んで顔を近づけてきた。
「てめえ……何企んでやがる?」
「た、企んでなんかないですって!」
「吐かねえか? だったらここで死ぬか?」
グッと首を絞めつけてきた。
ヤバイな……ここはヒーロに暴れてもらって、その隙に逃げるしかねえか……。
けど周りに人が多過ぎだし、なかなかに難しいミッションに冷や汗が溢れ出てくる。
だがその時だ。
「……イ、イチ兄ちゃん! 話を聞いてあげてよ! ろっくんは悪い人じゃないから!」
「莱夢……」
「ウチを信じてよ! お願い……イチ兄ちゃん」
「………………言ってみろ」
おお、お許しが出たぞー! どうやらこの兄、妹には弱いらしい。
マジで助かった。ありがとう、莱夢!
ならここは思い切ってこう言うだけだ。
「じ、実は俺、あなたのことを知ってました!」
何故かって? それはですね……。
「あぁ? コイツがお嬢が連れてきた余所者ぉ?」
「冴えねえ面ぁしてやがんな」
「『白世界』のスパイってことも考えられるけど?」
今、敵意満々の人たちが俺を囲っているからだってばよぉぉぉっ!
しかも! しかもだ!
さっきから誰よりも怖い睨みを利かせている奴が目の前にいるんだよぉっ!
さらに! さらにだっ!
そいつってば、俺が知ってる奴で関わり合いになりたくなかった人物なんだよぉ!
そう、目の前にいる人物こそ、群馬の二大『コミュニティ』の一つ――『紅天下』を率いるリーダーのヤナギって奴だった。
ちなみに【榛名山】で見た三人の男女も俺を睨んでいる。
「もう! イチ兄ちゃんら、そんな凄まんであげてよ! この人はウチのお客さんなんよっ!」
ただ一人、俺の味方をしてくれるのが、ここに俺を連れてきた莱夢だ。
でも莱夢さん、君のせいでこうなってるとも言えるんだけどね……はは。
「ごめんなろっくん、イチ兄ちゃんらが迷惑かけて」
「い、いえいえ、そんなことありませんことですよ?」
本音をいえば今すぐ帰りたいけども。
「おいてめえ、ウチの妹に取り入って何するつもりだ、あぁ?」
まるでヤクザみたいに恐怖感を煽ってくる。
コイツ、『飛柱組』関連じゃねえだろうな。てかまだ飛柱兵卦の方が接しやすさすら感じるぞ。
「と、取り入るなんて!? 俺はただ探し人を訪ねてやってきたしがない一般人なんですけど!」
「……一般人? 嘘吐いてねえよなぁ?」
ギロリと見定めるかのように睨みつけてくる。
こう衆目の最中にあってはスキルを使っても無意味だ。
それに現在俺がいるのは、営業はやっていないがホストクラブらしく、角の席に座らされ逃げ場所を『紅天下』の連中で塞がれているので、とてもではないが逃げることは難しい。
今俺の服の中にはバレないように平べったくなって隠れているヒーロがいるが、もしこの子がバレたらと思うと心臓がバックバクである。
「おいてめえ、俺と腕相撲しやがれ」
「……は、はい? 腕相撲……っすか?」
いきなり何言いやがってんだコイツ?
しかし本気なのか、テーブルを挟んで俺と相対するヤナギが右肘をテーブルについて手を差し出してくる。
え? マジですんの?
「ちょ、イチ兄ちゃん!」
「うっせぇ、お前は黙ってろ莱夢!」
キツク言われ莱夢が押し黙ってしまう。いやいや、そこはもっと頑張ってよ!
このまま何もしなければ、益々機嫌を損ねてしまいそうなので、俺は仕方なく腕相撲に応じることにした。
ギュッと互いの拳が握り合う。
まだ向こうは何の力も入れていないというのに、組んだだけで勝てないことが分かる。
まるでそう、横綱とでも対峙しているかのような圧倒的な存在感が伝わってくるのだ。
どちらかというと相手は細身だ。しかしそれは見た目だけで、よく観察すると全身がよく鍛え上げられていることが分かる。
きっと『持ち得る者』だからって驕らず、日々鍛錬を怠っていないストイックな男なのだろう。
ヤナギは真剣な表情で俺の目を見つけてくる。その瞳をジッと見つめていると、何か見透かされている気がして、思わず目を逸らした。
まったくもって……勝てる気がしねえや。
一体何故急にヤナギがこんなことを言い出したのか気になるが、俺の思考とは関係なく状況は進む。
ヤナギの仲間の一人が、「レディ……」と言葉を漏らすと、全員が楽しそうに息を飲む。
「……ゴーッ!」
開始の合図と同時に、俺は目一杯の力を込めて相手の拳を倒そうとする。
どうせ負けるのは分かっているが、こういう手合いには手加減しようものなら、そっちの方がヤバイことになりそうだと思うから。
そして案の定、俺が全力で押し倒そうとしているにもかかわらず、ヤナギの腕はピクリとも動かない。
「んぎぎぎぎぎぎぃぃぃっ!」
まるで巨岩でも押しているかのようにウンともスンとも言わない。
え、何この人、ゴリラなの!?
少しは震えるくらいあってもいいのに、マジで微動だにしないし。
「…………てめえ、もう一度聞くがよぉ」
何だよ腕相撲の最中に?
「マジで一般人なのか?」
どういうことでしょう? 何故かものすっごく疑わしい目で見られてるんですが?
「にしては鍛えてもいねえのに、かなりの力がありやがる。おかしくねえか?」
…………っ!? しまったぁぁぁっ! そういや俺ってば『持ち得る者』だった!?
ステータスを持っていることで、俺は大して鍛え上げなくともレベルさえ上げれば自然と力が増すのだ。
故に筋肉量とか関係なく、通常では考えられないほどの膂力が備わっているのである。
きっとヤナギは俺の身体つきから判断したんだろう。あ、コイツ鍛えてねえもやしっ子だなと。
それなのに実際勝負してみたら、想像以上の力を発揮してみせた。ヤナギにはビクともしていないが、彼にとって今の俺の力は普通では有り得ないパワーだと感じているのである。
俺はすぐさまこの腕相撲は、ヤナギの試しだったことに気づき、ここからどうすればいいか激しく思考を回転させた。
そして俺の優秀な逃げの頭脳が出した答えは――。
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁっ!」
日本一、いや、世界一美しいと思われるような綺麗な土下座をすることだった。
当然俺の奇行に対し、ほぼ全員がキョトンとしているが、矢継ぎ早に俺は続けることにする。
「じ、実は俺は『持ち得る者』なんですっ! 嘘を吐いてすみませんでした! でも言い訳をさせてもらえるなら聞いてほしいですお願いしますっ!」
……さあどうだ? もしこれで完全な怒りを狩って、俺を始末するってことになるのなら、その時はヒーロに暴れてもらって、その隙に逃げるしかなくなるが……。
………………沈黙が痛い。
土下座をしている俺に、すべての視線が刺さっているのを感じる。
するとヤナギが近づいてきて、俺の胸倉を掴んで顔を近づけてきた。
「てめえ……何企んでやがる?」
「た、企んでなんかないですって!」
「吐かねえか? だったらここで死ぬか?」
グッと首を絞めつけてきた。
ヤバイな……ここはヒーロに暴れてもらって、その隙に逃げるしかねえか……。
けど周りに人が多過ぎだし、なかなかに難しいミッションに冷や汗が溢れ出てくる。
だがその時だ。
「……イ、イチ兄ちゃん! 話を聞いてあげてよ! ろっくんは悪い人じゃないから!」
「莱夢……」
「ウチを信じてよ! お願い……イチ兄ちゃん」
「………………言ってみろ」
おお、お許しが出たぞー! どうやらこの兄、妹には弱いらしい。
マジで助かった。ありがとう、莱夢!
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