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――体中が痛い。
死ぬほど痛いという言葉を耳にしたりするが、この痛みがそうなのかも。
放っておいたらマジで死んじまうくれえ……痛ぇ。
目を開けると、すぐ地面が映った。それにどうやら自分の血液らしいものが大量に流れ出ている。
地面の上に横たわっていることはすぐに分かった。
雨も降っているようで身体も冷え、死のレールに乗って終着駅まで猛スピードで走っているようだ。
何が起こってこうなったのか、記憶が混乱していてよく分からない。
ただ何もしなかったら絶命することだけは理解できた。
俺は必死で声を上げようとするが、喉も焼けるように熱くて声にならない。
ああ、俺……また死ぬのか……。
――ん? また……また?
自分で思った言葉だが酷く違和感を覚えた。また、とはどういうことだろうか、と。
薄れゆく意識の中、ジャリッと地面を踏みつける音が耳に届く。
顔を上げ、音が聞こえた前方に意識を向けると、そこには天使のように輝きを放つ、一人の少女が立って俺を見下ろしていた。
まだ十歳くらいの金髪おかっぱ少女だ。いや、よく見れば後ろで髪を結っていて、足元まで伸びている。
澄んだ空のように美しい碧眼に、ふっくらとした白い肌。まさしく美少女と断定するのに些かの躊躇もないだろう。
「――うわ、血だらけだし」
明らかな嫌悪感が伝わってきて、結構心にグサッときた。子供だ。だからこのまま逃げていってしまうかもと不安になったその時、不意に身体に浮遊感を覚えた。
――え?
少女の顔が近い。それに身体に温もりが伝わってくる。
自分がまだ幼い子供に抱き上げられていることに気づく。
嘘……だろ? 俺……二十歳の男だぞ?
小学生のような少女に抱えられるほど貧相な身体でもない。
どんな怪力の持ち主だと思考がストップしていると、
「嫌は嫌だけど、見捨てるのも何か違うっぽいしね。しょうがない」
少女がそう呟き、自身の唇を歯で噛み切り、そのまま薄く血で赤くなった小さな唇を近づけてきて俺の嘴に――って、嘴ぃぃぃぃっ!?
目の先にある、俺の口から伸び出た嘴にようやく気付いたが、すでに少女の唇はその嘴に優しく触れた。湿り気のある柔らかい感触を感じる。
刹那、俺の身体が淡い発光現象を引き起こす。
ぁっ……何だこれ…………あったけぇ。
まるで一度入ったら出られない温度に温められた風呂にでも浸かっているような感覚だ。
これぞ幸せ。そんな心地好さを感じていると、次第に身体の痛みまでもが消えた。
ほとんど動かなかった身体も動くようになり、自分に一体何が起こったのか分からずキョトンとしていると、
「これでもうだいじょぶ。お前は自由だよ」
ニッコリと微笑んで彼女が言った。
雨の中にいるというのに、もう全然寒さを感じない。むしろ心の中が温かいもので満たされていくように心地好い。
この瞬間、俺は間違いなくこの子の笑顔に心を奪われてしまっていたのだ。ついでにファーストキスも……。初めてが小学生ってどうよ……って思ったけど。
そしてこれが、俺――クロメと、エルフ少女――ロニカの最初の出会いだった。
死ぬほど痛いという言葉を耳にしたりするが、この痛みがそうなのかも。
放っておいたらマジで死んじまうくれえ……痛ぇ。
目を開けると、すぐ地面が映った。それにどうやら自分の血液らしいものが大量に流れ出ている。
地面の上に横たわっていることはすぐに分かった。
雨も降っているようで身体も冷え、死のレールに乗って終着駅まで猛スピードで走っているようだ。
何が起こってこうなったのか、記憶が混乱していてよく分からない。
ただ何もしなかったら絶命することだけは理解できた。
俺は必死で声を上げようとするが、喉も焼けるように熱くて声にならない。
ああ、俺……また死ぬのか……。
――ん? また……また?
自分で思った言葉だが酷く違和感を覚えた。また、とはどういうことだろうか、と。
薄れゆく意識の中、ジャリッと地面を踏みつける音が耳に届く。
顔を上げ、音が聞こえた前方に意識を向けると、そこには天使のように輝きを放つ、一人の少女が立って俺を見下ろしていた。
まだ十歳くらいの金髪おかっぱ少女だ。いや、よく見れば後ろで髪を結っていて、足元まで伸びている。
澄んだ空のように美しい碧眼に、ふっくらとした白い肌。まさしく美少女と断定するのに些かの躊躇もないだろう。
「――うわ、血だらけだし」
明らかな嫌悪感が伝わってきて、結構心にグサッときた。子供だ。だからこのまま逃げていってしまうかもと不安になったその時、不意に身体に浮遊感を覚えた。
――え?
少女の顔が近い。それに身体に温もりが伝わってくる。
自分がまだ幼い子供に抱き上げられていることに気づく。
嘘……だろ? 俺……二十歳の男だぞ?
小学生のような少女に抱えられるほど貧相な身体でもない。
どんな怪力の持ち主だと思考がストップしていると、
「嫌は嫌だけど、見捨てるのも何か違うっぽいしね。しょうがない」
少女がそう呟き、自身の唇を歯で噛み切り、そのまま薄く血で赤くなった小さな唇を近づけてきて俺の嘴に――って、嘴ぃぃぃぃっ!?
目の先にある、俺の口から伸び出た嘴にようやく気付いたが、すでに少女の唇はその嘴に優しく触れた。湿り気のある柔らかい感触を感じる。
刹那、俺の身体が淡い発光現象を引き起こす。
ぁっ……何だこれ…………あったけぇ。
まるで一度入ったら出られない温度に温められた風呂にでも浸かっているような感覚だ。
これぞ幸せ。そんな心地好さを感じていると、次第に身体の痛みまでもが消えた。
ほとんど動かなかった身体も動くようになり、自分に一体何が起こったのか分からずキョトンとしていると、
「これでもうだいじょぶ。お前は自由だよ」
ニッコリと微笑んで彼女が言った。
雨の中にいるというのに、もう全然寒さを感じない。むしろ心の中が温かいもので満たされていくように心地好い。
この瞬間、俺は間違いなくこの子の笑顔に心を奪われてしまっていたのだ。ついでにファーストキスも……。初めてが小学生ってどうよ……って思ったけど。
そしてこれが、俺――クロメと、エルフ少女――ロニカの最初の出会いだった。
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