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「お、お兄ちゃんっ!?」
当然、自分の兄がいきなり可愛い人形に頬を叩かれたことに驚く小色。
対して日門は、いまだクツクツと笑いを堪えながら状況を見守っている。
「い、痛ったぁ~……って、いきなり何するんだよ!」
「シャラァーップッ!」
文句を放つ理九だったが、さらに畳みかけるようにして黙れと言う教官コアラの気迫に、理九が気圧されたように言葉を噤む。
そして教官コアラが、ビシッと理九を指差した。
「教官の前でだらしなく尻もちをつくとは弛んでる証拠! いいから早くスタンダップするのであります!」
「え? え?」
「そのイヤーは飾りなのでありますか! さっさと立てぇぇぇっ!」
「は、はいぃぃぃっ!」
凄まじい威圧感を放つ教官コアラに、反射的であろうが理九は立ち上がるとそのまま姿勢を正す。
「そっちのガールも気を付けするでありますっ!」
そして小色も「は、はい!」と、理九と同じようにピンと立つ。そんな彼女たちを目の前にし、教官コアラが背中から教鞭を取り出し、軽く自分の手を叩き始める。
「良いでありますか? まず諸君らに伝えておくことがあるのであります」
下手に口を出すと危険だと察しているのか、二人とも黙って耳を傾けている。
「ワタシはユーたちの教官を務める教官コアラなのであります! 故に今後はワタシのことを教官と呼ぶであります。アンダスタンド?」
「「……え?」」
「理解できたなら返事っ!」
「「は、はいっ!」」
「返事はサー・イエッサーであります! もう一度!」
「「サー・イエッサー!」」
「もっと大きな声で!」
「「サー・イエッサーッ!」」
「シャラァーップっ!」
「「ええっ!?」」
ナイスリアクション。大声を求められて答えた次の瞬間に黙れと来たんだ。日門ならもっと大げさにツッコんだかもしれない。いや、実際に過去にツッコんだ経験はあるが。
そんな二人が、日門に向かって説明がほしいそうに見つめてくる。
そろそろ助け舟を出すかと動くことにした。
「まあ、そういうわけで今後、お前らに《魔石》の使い方とかを教えてくれる先生だ。よろしくしてやってくれ」
「い、いや、それなら日門が教えてくれたらいいんじゃ……?」
いつ怒鳴られるか、もしかしたらまたどつかれるかと怯えている様子の理九。チラチラと教官コアラを見ながら喋っている。
「俺にもやることが多いしな。物資を補給にし行ったりするし、あと……めんどくせえし」
「おいこら、最後の」
「むぅ、わたしもどちらかといえば日門さんの方が……」
「貴様らぁぁぁっ! 余計な私語を誰がパーミットしたでありますか!」
バシィッと、教鞭で地面を叩きつける教官コアラ。それにビクッとして慌てて二人は気を付けの体勢を取る。
「ウハハ、コイツの言うことは聞いた方がいいぜ。それにな、こう見えてもコイツは過去、俺に《魔石》の使い方を教えてくれた奴なんだ。だから安心して学ぶといい」
「日門さんも……? ……はい、分かりました」
「え、小色? い、いいのか?」
「うん、お兄ちゃん。だって日門さんの先生なら間違いないと思うし」
「それは………………ああもう! 分かった! 僕もオーケーだ!」
ということで、二人の先生役が決まった。
日門が口にしたことに嘘はない。元々この教官コアラは、師であるマクスが編み出した《魔道具》の一種。
理九のように、最初は自分も叱られたり殴られたりとキレそうに……いや、何度かキレたこともあったが、それでも教えだけはしっかりしていた。
だからちゃんと言うことを聞いて学べば、小色たちは間違いなく成長することができる。
(本当はコイツらにも魔法が使えたら一番なんだけどな。さすがにそれは……)
彼女たちは自分と同じ地球人。つまり魔法は扱えない。
扱うとするなら、日門が辿ってきたあの極悪ロードを歩ませないといけない。確かに自分は耐えられたが、彼女たちが乗り越えられるとは限らない。
《魔核》を埋め込んだ時点で、そのまま戻ってこられずにあの世にいく確率だって非常に高いのだ。そうでなくとも、あんな経験を彼女たちに勧めることなどできはしない。
だから最低限、彼女たちが身を守れる程度の武器だけでも与えてやりたいと思ったのだ。
こんな世の中だし、いつどこで何が起きるか分からない。自分の手が届く範囲にいるのなら全力で守るつもりだが、運命の悪戯が起きることもあり、その手が届かないかもしれない。そうなった時に、少しでも彼女たちが自衛できるように。
「さあ、それではさっそくトレーニングのお時間であります!」
「「…………」」
「そこは返事でありますっ!」
「「サー・イエッサー!」」
「ならまずはその状態でランニング!」
「え、な、何で?」
「上官には敬語を使うであります!」
教鞭で尻を叩かれて悶絶する理九。小色はそれを見て顔を真っ青にしている。
「だあもう! DVだ! 暴力反対っ!」
「これは愛の鞭なのでノープロブレムなのであります! ほら、さっさと立てぇっ!」
「痛ってぇぇぇぇっ!?」
またもや尻を叩かれている。あれでは今日風呂に入った時に可哀そうなことになるだろう。
(精進しろよ、理九)
とりあえず心の中で合掌し、あとは教官コアラに任せ、日門は畑へと踵を返した。
当然、自分の兄がいきなり可愛い人形に頬を叩かれたことに驚く小色。
対して日門は、いまだクツクツと笑いを堪えながら状況を見守っている。
「い、痛ったぁ~……って、いきなり何するんだよ!」
「シャラァーップッ!」
文句を放つ理九だったが、さらに畳みかけるようにして黙れと言う教官コアラの気迫に、理九が気圧されたように言葉を噤む。
そして教官コアラが、ビシッと理九を指差した。
「教官の前でだらしなく尻もちをつくとは弛んでる証拠! いいから早くスタンダップするのであります!」
「え? え?」
「そのイヤーは飾りなのでありますか! さっさと立てぇぇぇっ!」
「は、はいぃぃぃっ!」
凄まじい威圧感を放つ教官コアラに、反射的であろうが理九は立ち上がるとそのまま姿勢を正す。
「そっちのガールも気を付けするでありますっ!」
そして小色も「は、はい!」と、理九と同じようにピンと立つ。そんな彼女たちを目の前にし、教官コアラが背中から教鞭を取り出し、軽く自分の手を叩き始める。
「良いでありますか? まず諸君らに伝えておくことがあるのであります」
下手に口を出すと危険だと察しているのか、二人とも黙って耳を傾けている。
「ワタシはユーたちの教官を務める教官コアラなのであります! 故に今後はワタシのことを教官と呼ぶであります。アンダスタンド?」
「「……え?」」
「理解できたなら返事っ!」
「「は、はいっ!」」
「返事はサー・イエッサーであります! もう一度!」
「「サー・イエッサー!」」
「もっと大きな声で!」
「「サー・イエッサーッ!」」
「シャラァーップっ!」
「「ええっ!?」」
ナイスリアクション。大声を求められて答えた次の瞬間に黙れと来たんだ。日門ならもっと大げさにツッコんだかもしれない。いや、実際に過去にツッコんだ経験はあるが。
そんな二人が、日門に向かって説明がほしいそうに見つめてくる。
そろそろ助け舟を出すかと動くことにした。
「まあ、そういうわけで今後、お前らに《魔石》の使い方とかを教えてくれる先生だ。よろしくしてやってくれ」
「い、いや、それなら日門が教えてくれたらいいんじゃ……?」
いつ怒鳴られるか、もしかしたらまたどつかれるかと怯えている様子の理九。チラチラと教官コアラを見ながら喋っている。
「俺にもやることが多いしな。物資を補給にし行ったりするし、あと……めんどくせえし」
「おいこら、最後の」
「むぅ、わたしもどちらかといえば日門さんの方が……」
「貴様らぁぁぁっ! 余計な私語を誰がパーミットしたでありますか!」
バシィッと、教鞭で地面を叩きつける教官コアラ。それにビクッとして慌てて二人は気を付けの体勢を取る。
「ウハハ、コイツの言うことは聞いた方がいいぜ。それにな、こう見えてもコイツは過去、俺に《魔石》の使い方を教えてくれた奴なんだ。だから安心して学ぶといい」
「日門さんも……? ……はい、分かりました」
「え、小色? い、いいのか?」
「うん、お兄ちゃん。だって日門さんの先生なら間違いないと思うし」
「それは………………ああもう! 分かった! 僕もオーケーだ!」
ということで、二人の先生役が決まった。
日門が口にしたことに嘘はない。元々この教官コアラは、師であるマクスが編み出した《魔道具》の一種。
理九のように、最初は自分も叱られたり殴られたりとキレそうに……いや、何度かキレたこともあったが、それでも教えだけはしっかりしていた。
だからちゃんと言うことを聞いて学べば、小色たちは間違いなく成長することができる。
(本当はコイツらにも魔法が使えたら一番なんだけどな。さすがにそれは……)
彼女たちは自分と同じ地球人。つまり魔法は扱えない。
扱うとするなら、日門が辿ってきたあの極悪ロードを歩ませないといけない。確かに自分は耐えられたが、彼女たちが乗り越えられるとは限らない。
《魔核》を埋め込んだ時点で、そのまま戻ってこられずにあの世にいく確率だって非常に高いのだ。そうでなくとも、あんな経験を彼女たちに勧めることなどできはしない。
だから最低限、彼女たちが身を守れる程度の武器だけでも与えてやりたいと思ったのだ。
こんな世の中だし、いつどこで何が起きるか分からない。自分の手が届く範囲にいるのなら全力で守るつもりだが、運命の悪戯が起きることもあり、その手が届かないかもしれない。そうなった時に、少しでも彼女たちが自衛できるように。
「さあ、それではさっそくトレーニングのお時間であります!」
「「…………」」
「そこは返事でありますっ!」
「「サー・イエッサー!」」
「ならまずはその状態でランニング!」
「え、な、何で?」
「上官には敬語を使うであります!」
教鞭で尻を叩かれて悶絶する理九。小色はそれを見て顔を真っ青にしている。
「だあもう! DVだ! 暴力反対っ!」
「これは愛の鞭なのでノープロブレムなのであります! ほら、さっさと立てぇっ!」
「痛ってぇぇぇぇっ!?」
またもや尻を叩かれている。あれでは今日風呂に入った時に可哀そうなことになるだろう。
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