異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ

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 ひとしきり泣きじゃくったせいで目を真っ赤に腫らせた日門の後輩である雪林くりなは現在――――日門に土下座をさせていた。

「あ、あの……」
「せんぱ~い? 誰が喋っていいって許可しましたぁ?」

 そこには人懐っこい笑みを浮かべ、ヒカ兄と呼んでくれる妹分はおらず、小悪魔的美少女で学校の後輩としての仮面を被った少女がいた。
 同じ笑顔でもこうも違うかと思うほどに、目の奥が笑っていない、むしろまるで旦那の浮気を咎める妻のソレのような凄まじい威圧感が放たれている。

 昔からそうだ。日門がくりなに対し、何かとんでもないことをしてしまった時には、こうして土下座をさせられ一方的に問い詰められてきた。説教モードと日門は呼んでいる。
 しかし周りを良く見れば、日門がぶっ倒した敵やくりなの仲間たちが転がっている。その中での説教というのはシュール以外の何物でもない。

「まったく! 生きてたんならどうして連絡くれなかったんですか! 私がどれだけ心配したか分かってるんですか! このバカッ!」

 早々に説教モードは少し崩れ、その目尻にはまたも並みだが零れそうになっている。
 こちらにも事情があったとはいえ、心配をかけてしまったのは事実だ。だからもしまた再会できたならば、甘んじて説教を受けようと思っていた。

 ただこの状況での時間の浪費は控えた方が良いのも確かだ。それはくりなも分かっているだろうが、それでも勢いそのままに文句を言わずにはいられないのだろう。

「マジですまん! いろいろ話さねえといけねえことはあるけど! その前にお前にはやるべきことがあるんじゃねえか?」
「! ……そうです。そうでしたね。私としたことが熱くなり過ぎちゃってましたよ」

 本来も目的を思い出してくれたようで何よりだ。
 ということでまずは倒れた敵を拘束し、まだ生きているくりなの仲間たちの蘇生を行うことにした。

「って、何です先輩、まだその変な仮面をつけたままなんですか?」
「できれば正体をあまりバラしたくねえんだわ。まあ、俺がこれからやることを見たら分かると思うけどな」

 そう言って日門は魔法で土を操作し、敵の身体を沈み込ませ頭だけを出した状態にした。奴らの周りの土をガチガチに固めておいたので自力での脱出はほぼ不可能であろう。

「ヒ、ヒカ兄……い、今の何?」

 完全に仮面が剥がれて素に戻ってしまっている。

「あ~それも全部終わったあとにちゃんと説明すっから」
「……そういえばヒカ兄、あんなに強くもなかった。もしかしてそれも失踪してた原因にあるの?」
「だからあとで説明するっての」
「ホントだからね! 絶対のぜ~ったい説明してよね!」
「はいはい。ったく、お前は変わらねえな」

 一度気になったら解明するまでとことこん追及してくるところはまったく変わらない。それが日門の心を幾分かホッとさせる。こんな世界になってしまい、彼女も少なからず変わっているかもと考えていたからだ。

「あとは……ほれ、コレをまだ生きてる奴らに飲ませてやれ」

 そう言って《ボックスリング》から取り出したのは複数本の小瓶である。
 コレについても説明が欲しそうだったが、素直に受け取ったくりなは倒れた仲間のもとへと駆け寄り小瓶に入った液体を飲ませていく。

 すると傷ついた彼らの身体が凄い速度で治癒していき、それを目の当たりにしたくりなもギョッとしている。

「っ……ぁ? ……俺は……あれ? 雪林の嬢ちゃん?」
「!? 大丈夫ですか? 痛いところは?」
「へ? あ、いや問題ねえけど……ってあれ? 俺確か敵に襲われて……」
「じゃあもう大丈夫ですね! あとは自力で起き上がってください!」

 くりなはいまだ呆然としている仲間から離れると、次々と息がある仲間に小瓶の液体を飲ませていった。
 その間、日門は拘束した敵の一人の頬を軽く叩いて意識を覚醒させていた。

「あぐっ……!?」
「よぉ、目ぇ覚ましたな?」
「ひぃっ!? な、ななな何だ身体が動かねえっ!?」
「ちょいと黙れや」

 頭を鷲掴みにして殺気を向けてやると、恐怖に満ちた表情で何度も頷く男。

「よし、聞きたいことがあるから素直に言え。本物の人質はどこだ?」
「そ、それは……」
「言っとくけどよぉ、嘘を吐いたらすぐに分かる。その時は……殺す」
「!?」
「黙ったままでも殺す。時間稼ぎをしようとしても殺す。いいか、命が惜しければ素直に答えろ」
「わ、わわわわわ分かりました! だから殺さないでくださいっ!」

 これでコイツは素直に情報を吐くはずだ。
 この大学に侵入して、大黒頭海彦の存在を目にした時に、久しぶりの再会と心配させたであろう詫びのつもりで、人質を救い出してついでに暴君をぶっ倒してやろうと思い、まずは情報収集かと探っていたところに、懐かしい気配を感じた。

 それがくりなの存在だったのである。慌てて駆けつけて今に至るわけだが、この現場の様子から察するに、くりなたちは恐らくは人質奪還のための部隊だった可能性が高い。 

 そして彼女たちはどうやら罠にハマり殲滅されそうになっていたのだ。
 これも想像でしかないが、あの倉庫に人質を監禁していると思わされていたのだろう。しかし結果は見ての通りというわけだ。

「……先輩?」
「んぁ? おう、くりな。そっちは……三人だけだったか」

 声をかけてきたくりなの背後には、立っている男が三人。悲しそうに俯くくりなを見て、他の者たちは手遅れだったようだ。
 相手は刃物を持っていて、それが即死を与えるような攻撃だったのだろう。もっと早く駈けつけられていれば話は別だったが、それでも三人を無事に救えたことは良かったといえる。

 ちなみにその三人は、自分たちが助かったこともそうだが、地中に埋まっている敵を見て言葉を失っている様子だ。

「先輩は何をしてるんですか?」

 とりあえず聞きたい情報は手に入れたので、軽く敵を殴りつけて気絶させた。

「なぁに、ちょいと人質がどこにいるか聞いてたんだよ」
「じゃ、じゃあ!」
「ああ……これから人質を奪還しに行くぞ」


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