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14話 武具店
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新居で、姉上と別れた後。
僕とベガは、ニエル武具店を目指し、並んで歩いていた。
「……という事。昨日の連中は、この先のニエル武具店の商品を持っていたよ」
「ほう。あの一瞬で、よく確認できたな。心の底から、この仕事に向いてると思うよ」
ベガが僕の新居に訪問してきた理由。
それは、昨日の連中について僕と話し合うためだったらしい。
フードをかぶった、明らかに怪しい風貌。
身代金が云々という、これまた怪しい会話。
ベガも僕と同様、彼等を探る必要があると考えたらしい。
それで、彼等の手掛かりを話し合おうと訊ねたけど……僕は全て覚えていた。
だから、こうしてニエル武具店に向かっている。
魔物との戦闘に役立たない記憶力も、こういう事では役に立つようだ。
「褒めてくれてありがとう、素直に嬉しいよ。……っと、あそこだね」
頭にインプットした地図を頼りに進んでいた僕達だったが、看板が目に入った。
『ニエル武具店』
目的の店だ。
「イオ、分かってるとは思うけど、落ち着いて普段通りに振る舞うんだよ。そうだね……晩餐会の時みたいに」
「うん、分かったよ」
扉を開き、店に入る。
からん、からんっ。
入店を告げるベルが鳴り、カウンターの奥から店主が出てきた。
「へいへい、お客様ですか。どんな物をご所望で?」
ぱっと見、人の好さそうなおじさんだ。
ベガはカウンターに近づき、腰から短剣を取り出した。
「これと同じ長さの投げナイフを、数本ほど見繕ってもらえるかな」
まるで数物を扱うように、それを無造作にカウンターに置く。
木目みたいな表面の刀身。
ツタのような護拳(ナックルガード)。
柄には、王家の紋である日食の紋様。
直後、店主は目を剥いた。
「な……っ! こ、これは、まさか……ッ」
当然だ。
その短剣はまさしく、帝都騎士学校の実技試験主席卒業者にのみ贈呈されるものなのだから。
「──気魄の短剣。一年に一本しか作られねぇこれが、こんなとこに……」
店主が短剣に気を取られている間に、僕とベガは店内を見回した。
壁や棚には、武器・防具が所狭しと飾られていている。
新しい商品を置く場所がないほど、いっぱいだ。
というより、いっぱい"すぎる"。
普通なら、繁盛していると思わせるためにも、あえて隙間を作る。
そうして、"ここにあった商品が売れた"と思わせるのだ。
しかし、この店はどうだ?
まるで、『商品が大量に売れたことを隠したがっている』かのようだ。
……もし白だったとしても、探る必要があるね。
「じゃあアリア、僕は朝食を買ってくるから。三十分後にギルドで合流ね」
そう"ベガ"に伝え、店を出た。
もちろん偽名だし嘘だ。
アリアなんて知らないし、姉上の手料理を食べたばかりだ。
だけどこれも、このニエル武具店を探るため。
僕は店の裏手に回り、垣根を跳び越える。
杖を抜き、先端を勝手口の扉にくっつけ、
「《エクスプロール》」
魔術を発動。
頭の中に、周辺の生物の位置情報が流れ込んでくる。
大通り。これは通行人。
裏路地。これは野良猫。
店内。これは店主。
同じく店内。これはベガ。
地下。これは──誰だ?
ニエル武具店の地下に、生物の反応があった。
形・大きさから考えるに、人間だ。
鍛冶師の一人だろうか?
それとも、店主の家族?
はたまた、フードの連中の仲間?
この目で確かめてみるまでは分からない。
だが逆に、この反応以外は皆無。
表の店主とベガ、地下の誰か以外に、ニエル武具店には誰もいない。
チャンスでもある。
「これで白だったら、僕が犯罪者だね……《ウィンド》」
詠唱し、風を発生させた──扉の裏へと。
かんっ。
下から吹き上げる風で、かんぬきを上げたのだ。
扉を押してみると、いとも簡単に開いた。
ギイィ……。
「ん? 今、裏口のほうで物音がしたような……?」
ま、マズい……ッ!
さすがに、店主の耳にまで届いたのか!
「ふぅ……蒸し暑いね、ここ。奥に鍛冶場でもあるのかな? すまないけど、少し服を緩めさせてもらうよ」
「お、おォ……っ! け、結構立派なものをお持ちで……」
「セクハラかい? 私の胸ばかり見てないで、商品を見せてくれないかな?」
「す、すいやせん! えっとですね、確かこの辺に……」
た、助かったぁ……。
ありがとう、ベガ。
恩に着るよ。
二人が会話する音に紛れて、抜き足差し足で中に入る。
中は、ごく一般的な鍛冶場だった。
金床、炉、ハンマー、工具等々……。
だけど、それらに一切手を付けず、僕は奥の部屋へと向かった。
そこにある机をひっくり返し、床に敷かれた布をめくると……
「……やっぱりあった。地下室への道」
地下へと階段が続いていた。
僕とベガは、ニエル武具店を目指し、並んで歩いていた。
「……という事。昨日の連中は、この先のニエル武具店の商品を持っていたよ」
「ほう。あの一瞬で、よく確認できたな。心の底から、この仕事に向いてると思うよ」
ベガが僕の新居に訪問してきた理由。
それは、昨日の連中について僕と話し合うためだったらしい。
フードをかぶった、明らかに怪しい風貌。
身代金が云々という、これまた怪しい会話。
ベガも僕と同様、彼等を探る必要があると考えたらしい。
それで、彼等の手掛かりを話し合おうと訊ねたけど……僕は全て覚えていた。
だから、こうしてニエル武具店に向かっている。
魔物との戦闘に役立たない記憶力も、こういう事では役に立つようだ。
「褒めてくれてありがとう、素直に嬉しいよ。……っと、あそこだね」
頭にインプットした地図を頼りに進んでいた僕達だったが、看板が目に入った。
『ニエル武具店』
目的の店だ。
「イオ、分かってるとは思うけど、落ち着いて普段通りに振る舞うんだよ。そうだね……晩餐会の時みたいに」
「うん、分かったよ」
扉を開き、店に入る。
からん、からんっ。
入店を告げるベルが鳴り、カウンターの奥から店主が出てきた。
「へいへい、お客様ですか。どんな物をご所望で?」
ぱっと見、人の好さそうなおじさんだ。
ベガはカウンターに近づき、腰から短剣を取り出した。
「これと同じ長さの投げナイフを、数本ほど見繕ってもらえるかな」
まるで数物を扱うように、それを無造作にカウンターに置く。
木目みたいな表面の刀身。
ツタのような護拳(ナックルガード)。
柄には、王家の紋である日食の紋様。
直後、店主は目を剥いた。
「な……っ! こ、これは、まさか……ッ」
当然だ。
その短剣はまさしく、帝都騎士学校の実技試験主席卒業者にのみ贈呈されるものなのだから。
「──気魄の短剣。一年に一本しか作られねぇこれが、こんなとこに……」
店主が短剣に気を取られている間に、僕とベガは店内を見回した。
壁や棚には、武器・防具が所狭しと飾られていている。
新しい商品を置く場所がないほど、いっぱいだ。
というより、いっぱい"すぎる"。
普通なら、繁盛していると思わせるためにも、あえて隙間を作る。
そうして、"ここにあった商品が売れた"と思わせるのだ。
しかし、この店はどうだ?
まるで、『商品が大量に売れたことを隠したがっている』かのようだ。
……もし白だったとしても、探る必要があるね。
「じゃあアリア、僕は朝食を買ってくるから。三十分後にギルドで合流ね」
そう"ベガ"に伝え、店を出た。
もちろん偽名だし嘘だ。
アリアなんて知らないし、姉上の手料理を食べたばかりだ。
だけどこれも、このニエル武具店を探るため。
僕は店の裏手に回り、垣根を跳び越える。
杖を抜き、先端を勝手口の扉にくっつけ、
「《エクスプロール》」
魔術を発動。
頭の中に、周辺の生物の位置情報が流れ込んでくる。
大通り。これは通行人。
裏路地。これは野良猫。
店内。これは店主。
同じく店内。これはベガ。
地下。これは──誰だ?
ニエル武具店の地下に、生物の反応があった。
形・大きさから考えるに、人間だ。
鍛冶師の一人だろうか?
それとも、店主の家族?
はたまた、フードの連中の仲間?
この目で確かめてみるまでは分からない。
だが逆に、この反応以外は皆無。
表の店主とベガ、地下の誰か以外に、ニエル武具店には誰もいない。
チャンスでもある。
「これで白だったら、僕が犯罪者だね……《ウィンド》」
詠唱し、風を発生させた──扉の裏へと。
かんっ。
下から吹き上げる風で、かんぬきを上げたのだ。
扉を押してみると、いとも簡単に開いた。
ギイィ……。
「ん? 今、裏口のほうで物音がしたような……?」
ま、マズい……ッ!
さすがに、店主の耳にまで届いたのか!
「ふぅ……蒸し暑いね、ここ。奥に鍛冶場でもあるのかな? すまないけど、少し服を緩めさせてもらうよ」
「お、おォ……っ! け、結構立派なものをお持ちで……」
「セクハラかい? 私の胸ばかり見てないで、商品を見せてくれないかな?」
「す、すいやせん! えっとですね、確かこの辺に……」
た、助かったぁ……。
ありがとう、ベガ。
恩に着るよ。
二人が会話する音に紛れて、抜き足差し足で中に入る。
中は、ごく一般的な鍛冶場だった。
金床、炉、ハンマー、工具等々……。
だけど、それらに一切手を付けず、僕は奥の部屋へと向かった。
そこにある机をひっくり返し、床に敷かれた布をめくると……
「……やっぱりあった。地下室への道」
地下へと階段が続いていた。
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